逆転サヨナラホームラン!? 日振島名礁二人旅

2004年9月10日 愛媛県日振島
前日の御荘に続く二日目の釣り場は少々迷ったが、台風前の僅かな情報を頼りに日振を選んだ。
早々に潜り込んでいた魔王船の仮眠所でさわやかに目覚め、腹ごしらえをして駐車場に向かうと眠そうな顔の釣り人が一人。
そう、今日はmotomatsu君との久々に竿を並べて釣ることになったんです。
それにしてもえらい眠そうなので訳を聞くと、昨夜仕事が終わったあとに荘内半島にエギングに行き、夜中近くまで釣ってその足で走ってきたとのこと。相変わらずの釣り三昧の日々のようですなぁ。

二人とも準備が整ったところでまー君船長登場。
挨拶を交わして船へ乗り込み、屋根の上に横たわって揺れに身を任せていたのだが、降り出した雨とうねりに起こされ、船内へ移動。
再び眠りについたが今度は船のスローダウンで起床。
抽選会場にでも着いたのかと思ったがさにあらず。ここは既に日振島じゃありませんか!
おおっ!今日は魔王船のみ!しかも地元船の姿も全くなし!
なんと、今日は底物1組、上物1人、そして我々2人の3組で日振全島貸し切りということじゃぁありませんかっ!!
2番、7番にそれぞれ降りていき、我々は船長一押しのキマグレへ上陸。
早速ポイントを観察して撒き餌に水を加え、道具をセットしてさあやるぞ〜!
ん?motomatsu君はもう既に釣りしてますがな。
「ビュン!!ビシッ!ビシッ!シャッシャッ!乗った!!」
旨そうなアオリイカが次々クーラーへ。

イカは彼に任せてこちらはわき目も振らずにフカセ1本でいきましょう。
足元に撒き餌をバン!バン!
暫く待ってバン!バン!更に追い打ち、バン!バン!
な〜んにも居りませんがな。
諦めずに撒いているとキタマクラとウマヅラが数匹、よろよろという感じで寄ってはきたけど・・・。
船長の話では台風前、撤収になるまでこの磯が一番食っていたようで、沖方面で湧いて釣りにならなかった豆アジもこっちにはいないはずだったけど、アオリを5杯ゲットしたmotomatsu君が竿を持ち替えた途端に現れた赤い小魚の群れは明らかに豆アジ。肝心のグレは何処に・・・。
結局2人がかりで15cmのグレ1枚。
見回りに来た魔王船に迷うことなく飛び乗って、磯替わり。
 
少しだけ走り、いかにも釣れそうな5番に上陸。雨が完全に上がって風が強い。
その中2人であれこれやってみるが、撒き餌に集まったオセンすらあまり餌をとることもなく、結局コッパ2枚が風に吹かれてヒラヒラと宙に舞ったのみ。
隣のmotomatsu君は釣れているかなと覗いてみたら・・・飛沫を被りながら、寝てるがな。
 
こんな具合では埒もあかないし、次の見回り船でも当然磯替わり。
時化前は豆アジでどうにもならなかったからと船長は心配してくれたけど、折角の機会だからと船を13番に向けてもらった。幸い風もうねりも落ち着いていたし、まー君船長のGOサインとともに高鳴る鼓動を抑えつつ上礁!
 
日振島13番。星の如く散りばめられた磯群の中でもずば抜けた実績と伝説に彩られたこの名礁は、磯割表に名はあろうとも即ち空欄の如く、手の届きそうな所に島影は見えども近寄れば消えてしまう虹の如く、普通の手段で渡礁できることは無に近く、ましてや僕らなどが上がれることは一生かかっても無いだろうと羨望の眼差しで眺めながら、日振には13番という磯は存在しないのだと自分に言い聞かせてきた。
そんな思い入れがあったせいか、全身に異様な感覚が伝わってくる。日振の他の磯でも、周辺の他の島々でも受けたことのない感じ。かつて絶好調の鵜来・水島2番で感じた雰囲気と同質のものかもしれない。これが名礁の風格というものだろうか。
感傷に浸っている場合ではない。時間がない。
急いで南向き先端に荷物を運び仕掛けをセットする。一方のmotomatsu君も準備完了!しかし手にしているのはエギロッド。水島2番に続いてこの名礁でもエギングを試みるのか、この男・・・。
ともかく撒き餌をパラリ。するとこれまでの磯では全く見られなかった光景。サラシの白泡を割って青白い魚の群れが踊りあがってきた。小さいものの、まさしくグレ!
サラシからの払い出しが磯の角をかすめて早い流れに入っていくところで撒き餌のど真ん中を釣っていくと、30cmまでとはいえ飛び切り元気のいい尾長グレが面白いように竿を引き絞ってくれた。
そのうちサラシの中に巨大な魚影がちらつきはじめた。キツも居るが、明らかに大尾長も見える!!50、いや60cm近い!!
しかし食わせられない、届かない。そして潮の流れが変わってしまった。これはまさに船付きの潮!
 
motomatsu君はロッド担いで13番を一周したものの残念ながらイカの反応は全くなく、船付きのポイントでのフカセでも大苦戦をしていたが、こうなれば俄然力が発揮される。今までの不調が嘘のように次々尾長を宙に跳ね上げている。また、巨大尾長もそちらに移動したらしく、海中を指差して声を上げた。
僕は素晴らしい本流の中を絶好調で釣っているmotomatsu君に一声かけて高場と船付きの間のワンドに1投、仕掛けを入れさせてもらった。
ところがその時、一陣の風が巻き起こり馴染みきる前の道糸を攫ってしまった。ウキと針は磯際の絶好のポイントにあるのだが、道糸はカメノテとフジツボに引っかかってあわれ、磯の上。
竿をあおってどうにか外し、回収しようとしたその瞬間、竿が根元から信じられない力でひん曲がった。motomatsu君は見ていた。あの尾長がウキの下を横切ったのを。
たまたま竿の角度はよかった。必死で耐える。しかしすでに貝で傷だらけの道糸が何秒も耐えられるはずもなく、一気にはち切れて竿とともに天を仰いだ。
その視界に飛び込んできたのは迫り来る魔王船。
二人で夢中で釣っているうちに時間を忘れていたらしい。大急ぎで荷物をまとめ、慌しく夢の名礁を後にすることになったが、最後の最後にこの磯の底力を見せ付けられ、興奮状態のまま帰路についた。
 
この釣行から暫くしてmotomatsu君は四国を後にすることになり、僕は病に倒れることになってしまったのだが、最後に揃って忘れられない釣りをさせてくれた日振の海には感謝している。


早朝のキマグレにて。
小型ながらたちまち5杯ゲットの
motomatsu君。
まさか上がれるとは!
ずっと憧れていた日振13番です。
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