小さな魚たちと仲間たちがくれた幸せな釣行

2005年1月29日 兵庫県千種川・中流域
昨年、秋も深まり、待ちに待ったグレシーズンもいよいよ本番という頃、体調を崩し病院へ行きました。
横になった途端に体の奥深くからこみ上げてくるような激しい咳が続いていましたがなかなか休みが取れず、ようやく診察に行けたときには夜もほとんど眠れない状態になっていました。
それでも自分では気管支炎か何かだろうとタカをくくっていました。半月以上休みなしで早朝から夜まで働いたのが原因で風邪がこじれてしまったのだろうと。
とりあえずレントゲンを撮ってもらいましたが、先生が難しい顔をしています。心臓がビックリするほどに巨大化して映っているんです。「これは奇病かも知れんなぁ。」
奇しくもその日は28歳の誕生日。最悪の誕生プレゼントです。
 
その翌日、隣町にある病院の門をくぐり、寒い待合室で5時間待たされた末、数分の診察で即刻入院が決まってしまいました。
かなり重度の心不全でした。心臓と肺に水が溜まっていました。
 
一夜明けて一日600ccという水分制限と利尿剤での心不全の治療、それに心不全を引き起こした原因の究明が始まりました。
エコー、レントゲン、心シンチ・・・ 一通りの検査が終わると薬を飲んで寝るだけの日々が続きました。先生も滅多にやってきません。
そして心不全の症状も落ち着きを見せた12月、病名を確定するためと、より高度な治療を施してもらうために大阪府吹田市の国立循環器病センターに転院となりました。
 
大掛かりなエコー、MRI、足の付け根の動脈と静脈から心臓の中に管を通し心臓の筋肉をちぎってくる心臓カテーテル検査と心筋生検、腕から様々な放射性物質を注射してその動きを調べるRI検査など、多種多様な検査の結果ようやく病名が確定しました。
 
拡張型心筋症。
心臓の筋肉が蝕まれ、伸びてしまった風船のように薄くなって力を失い、全身に血液を送り出す機能が衰えて心不全や命に関わる不整脈を起こす病気です。
現時点では病気の原因も根本的な治療法も分かっていないそうです。
重症化すれば心臓移植の対象になるものの提供はほとんど無く、当面は薬で心臓を保護することで進行を遅らせるしかないことも知らされました。
 
ショックでした。落ち込みました。
それでも自暴自棄になることもなく入院生活に耐えて頑張ってこれたのは掲示板やメールを通じて暖かい励ましの言葉、応援のメッセージを寄せてくださった皆さんのおかげに他なりません。どれだけの力をもらったか。どれほどの勇気をもらったか。
薬の調整も終わり、最後の運動許容量の検査でもなかなかの評価を勝ち取るまでに回復し、合計3ヶ月近く続いた入院生活にピリオドを打つことができました。
 
塩分制限、水分制限はついて回り、走ったり重いものを持ちつづけるなど激しいことはできないけど、基本的には運動も仕事もできるというのが嬉しいです。何よりも大好きな釣りが続けられるということが!
ただ、風邪をひいたり、無理をしてしまうとすぐに心不全の症状があらわれて急激に病状が進行し、例え治療を施しても現在のレベルまでは絶対に回復することはなく、二度と竿を握れなくなってしまうので無茶は禁物です。
 
退院したらすぐにでも釣り場に繰り出したかったのですが、やはり3ヶ月もの間、薬を飲んで寝るだけの生活を送っていたので体力も筋力もありません。それに薬の副作用の眩暈があって体調のいい日と悪い日が極端です。
暫く散歩や素振りで体を慣らし、車の運転の勘も取り戻します。
そして本日、体調も比較的良く、外はポカポカと暖かく快晴。副作用の落ち着いてくる昼過ぎ、ついに釣り場へ復帰ぃ!
 
軽量なハエ竿と道具箱を1個車に積んで、まずは餌屋に向かいました。
が、川釣り用の餌が無い!!
聞いてみると昨日、餌置き場の温度が狂って餌が全滅したとのこと。そんなぁ・・・。
仕方ないので家にUターンして卵の黄身と小麦粉、砂糖で練り餌を作り気を取り直して出発。15分ほど車を走らせて、本流とは伏流水で結ばれた河原の溜まりに到着。
快晴だったはずの空を見上げるとなんと一面、雲!日差しも薄日に変わってしまっていました。それでも暖かいのでポイントを探して釣り開始です。
 
魚の大部分は岩の下やテトラの中に入ってしまっているのでアタリはあまりありません。そんな中、5〜8cmのカワムツやヌマムツが数匹とアブラボテがピンピンと竿先を弾いてくれました。
しかし、雲は瞬く間に厚くなってきます。冷たい風も吹いてきました。
残念ですが大事を取って今日のところは撤収です。
 
僅か1時間の釣りで釣果もゼロに等しいけれど、それは満ち足りた時間でした。そしてこれは第一歩。じっくりじっくり体を慣らしていけば夢の魚に挑める日も必ず戻ってくるはず。
釣りができるという幸せが一日でも長く続くように、これからもしっかり養生して頑張っていこうと改めて決意した、2005年の初釣りでした。


ヌマムツ(旧カワムツA型)とアブラボテ。前に釣った分ですけど。
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