風雲児  烈風伝
      ・竜串&小才角 時化男梅雨グレに挑む

2009年 6月27日〜28日  高知県竜串・小才角
・プロローグ
小才角で開催される予定だったダメ親会への参加を断念した先週と同じく、この週末も北上する梅雨前線と台湾から大陸へと向かう台風が微妙な判断を強いてきました。
スーパーマルチアングラー(ゲテモノ五目釣り師)の戦略は、高知県の太平洋が荒れなければ小才角へ、滋賀県に雨が降って琵琶湖が濁れば、この時期がチャンスだというビワコオオナマズを求めて琵琶湖へという極端な両天秤。
しかし何とも皮肉なことに海は時化の予報&大雨、滋賀県は晴ればかりで雨の気配なんて全くありませんでした。
なんというめぐり合わせの悪さ・・・

されど出発予定日になってみれば、高知方面の天候は思ったより崩れません。
2日目は豪雨の予報ですが、とりあえず初日はどうにかなりそう。
これなら小才角に行ってみるか!2日目は港で釣ってもいいし!ってことで問い合わせてみましたが、この日の小才角はいい磯は全て予約で埋まっているとのこと。

そこで私が選んだのは以前に一度行ったことのある竜串の磯でした。
尾長は沖磯に行かないと釣れないけど、うねりにも比較的強い場所もありますし、尾長がダメでもイサギが狙えればそれでよし。
ただ、夕釣りからゆっくりと・・・の予定だったのが、うねりの事もあり急遽朝釣りになってしまい、一睡もせずに約6時間半の道のりを走り切りました。

・初日、蒸し暑き竜串。
午前五時、真っ赤な朝焼けに頬を染められながら竜串港をゆっくり出港する西本渡船。
船長の他には釣り人2人だけ。
私と、この渡船の常連客―「撃沈戦隊グレンジャー」のヤス隊長です。
面識はありませんでしたがサイトは何度も覗かせてもらっていました。こういう出会いは嬉しいんですよね。

覚悟したほどではありませんが、やはりうねりが付いているということで足場の低い沖磯は無理との船長の判断。
ならば見残し湾にでも行くのかなと思っていたのですが、船は左手に舵を切りました。
年中夥しい数の巨グレが乱舞する「釣り人お断り」(当たり前じゃ)のポイント・竜串海中展望塔の少し西に浮かぶ「弁天島」へと程なく到着です。

グレンジャーの隊長さんは西の鼻と呼ばれるポイントへ。私はそのすぐ隣、西の丘という所に渡礁しました。
背後は爪白キャンプ場やらガソリンスタンドやら。船のエンジン音かと見回せば国道を行きかうトラックのタイヤの唸り声。

南北に走る溝に向かって足元からダラダラと緩やかに落ちている磯際に撒き餌を入れてみますが、魚の姿は見えません。
とりあえず0のウキにG7のガン玉を2つ打って、少し沖を縦に幅広く探ってみますが餌はそのまま戻ってきます。
最近はあまり人が入っていないということでしたので、魚が出てくるまでに時間がかかってるのかな。

              弁天島・西の丘
結構撒き餌を打ったところでやっと見え出したのは小さなオヤビッチャ。
その頃にはウキをG2に変更して竿1本半くらいの層を狙っていましたが、思い出したようにホシササノハベラやヤマブキベラが釣れてくる他はほとんど餌も取られません。

待ちに待った一撃は7時ごろだったでしょうか。
スーッと沈んだウキに反応すると同時に豪快なパワーが竿と私を襲いました。
しばしのファイトののち浮いてきた魚は予想通り40cmほどのキバンドウ(ヒブダイの雌)でしたが、種類は何にしろ、この状況でのこの強引は嬉しいものです。

これで状況は好転するかと思いましたが、その後は小さなクマノミが釣れたくらいでした。
以前食べてみましたが、とりたてて美味しくもありませんでしたのでリリースです。

イサギが欲しかったこともあり、ここまで深めの釣りにこだわってきましたが、背後の西の鼻ではグレンジャー隊長さんがスルスル仕掛けで魚を掛けているし、そろそろ浅い釣りもやってみるかな・・・と、00のウキとー0のナビの仕掛けに交換してみました。
う〜ん、しかしどうも00では合ってない感じ。親ウキを0に付け替えて、撒き餌・仕掛け同時打ちで15mほど先にキャスト。ここでやる必要はなさそうですが、地元播磨灘ではこうでもしなきゃまともに釣れませんからなあ・・・。
なんて考えてると一発でウキが入ったではありませんか!

小気味のよいグレ特有の引き。これはなかなか元気がいいぞ!!
じっくりやり取りを楽しんで、いよいよ最後、取り込み体勢に・・・と思った時、一発波が来ました。
この西の丘はなだらかな傾斜の続く磯。次の瞬間にはグレは自動で磯の上に上がってしまいました(笑)
これにはグレも納得できないのか、磯の上で大暴れし、針を外そうとした私の小指に背ビレの棘がザックリと!
拡張型心筋症の治療のために飲んでいる抗血栓薬の影響もあって血がなかなか止まらず、魚にやられたにしてはかなりの流血を蒙ってしまいました。
棘はまだ指の中ですが、元魚屋の経験では一週間ほどしたらニョキッと出てくるでしょう。

こうして取り込んだ口太グレですが、これは魚体が分厚い!ナイスサイズだ!40cm超えたか!?
・・・実際は34cmだったんですけどね〜。普段は播磨灘で30cmの壁をどうにかして越えようと夢中になっている今期の私にはそれほどこのサイズでもとんでもなく大きく見えてしまって・・・。これって実はお得な感覚なのかも(爆)

血が止まったので同じ場所を攻めてみると、程なくしてまたヒット。
今度はかなり小さく見える口太ですが30cmありました。どうも感覚がおかしいなあ。
今回は慎重に魚バサミ(廉価品)で掴んでキープしておこう(笑)

ちょうどこの時、9時半過ぎが上げ潮から下げ潮への潮代わりの時間帯でした。
この一瞬が最大のチャンスだったのです。
その後はまた餌もあんまり取られない厳しい状況に逆戻り。
嫌になるほどの蒸し暑さで集中力が途切れそうになります。

それでもたまには大きなアタリが来ることがあり、弁当船の直後には竿をいきなり引っ手繰られ、なんじゃこりゃ〜??と声を上げてしまうほどのパワーで足元の磯際をグリ〜〜っと回り込むシマアジを思わせるような引き。
しかし15秒ほどで針外れ。

そのしばらく後で、アタリをハッキリと出そうと口ナマリを装着してみたところウキに反応!
反射的に合わせると竿が根元まで絞り込まれました。
このポイントは南方向以外にはややこしい根が無いので心の余裕が違います。しばらく戦って更に余裕が。
底へ向かって何度も突進する魚についていくように、やんわりと、じわじわと浮かせてくるイメージで立ち向かっていきました
外から見れば荒っぽい大雑把なやり取りだったのでしょうが・・・。
随分粘った末にとうとう音を上げた魚は50cm! 
50cmとはいえ尾鰭の付け根にナイフを装備した50cmです。よく引いたけど、よく竿先を叩きました。

このファイトで水分をまた失いました。
この日は午後から雨のはずが晴れ間まで出て、風も無く、とにかく蒸して、クーラーの中の2リットルの飲み物が見る見る減っていきます。
当初覚悟していたうねりコールドは無くなりましたが、一時は水切れコールドになるかと・・・。
ともかく無事に3時の納竿を迎えることができましたが。

厳しかった釣りも、港での船長や隊長さんとの歓談で楽しいものになりました。
そして再会を約してそれぞれの道へ。

さて、私は明日、どうするかな?
取り合えず土佐清水の銭湯にでも行って、このまとわり付く汗を洗い流してからじゃないと考える気にはならないな・・・。。


・第2日 さらに蒸し暑き小才角。
土佐清水の相生湯の湯船で日焼けした首筋に悲鳴を上げ、餌と食糧を準備して、その夜はいつもお世話になりっぱなしのカルロス・ガ〜ンさん邸で話に花を咲かせました。
外ではかなりの雨が降り始めましたが、寝ている間に止んでしまっておりました。

さて、翌日。
予想に反してうねりは出ず、小才角が船を出せるということで前夜にガ〜ンさんが手配をしてくれていました。
一がハエに行けますよ!とのことでしたので攻略法も仕入れていざ出陣!

10分ほどで小才角新港に着いて身支度などをしていると、隣に車が停まり、助手席から底物師が降り立ちました。
声をかけられたのでふと気付けば、何と808おんちゃんではありませんか!
お互いこれにはビックリです。予想もしなかった邂逅に、ここでも話が弾みます。

5時15分、柏原渡船に乗り込んで一路東磯へ。
各磯に夢を抱えた釣り人達を乗せて、次は目的の一がハエ。
基本的に各磯仲間一組の小才角の磯ですが、この磯だけは広いこともあって乗り合いです。
4名ほどの上物師、808おんちゃんとご友人の底物師2名に続いて私も降りようとしたのですが、船長から「カゴバエに行ってもいいですよ!」とのお誘い。
それは何とも耳よりな話。808おんちゃんとワイワイと話をしながらの釣りも捨てがたかったのですが、私はカゴバエで気兼ねなくじっくり釣る方を選択しました。

           コンヤ(手前)と一がハエ (AM7:45)
カゴバエは以前上がったことのある「コンヤ」を間に挟んで一がハエと相対する磯です。
ロクマル尾長の実績もあります。
難点は足場の高さでしょうか。潮の高い今の時間なら釣り座からでも6mのタモが水面に届くんですが、引いてきたら大変そう。

見下ろす海面はかなりざわついています。沖のシモリ、コンヤの東側、コンヤとのワンド、陸側の足元と断続的にサラシが現れては消えて行きます。
昨日と違って撒き餌にはいきなり銀色のエサトリが殺到し、水面下を縦横に走り回っています。
2号のロッド、3号の道糸に3.5号のハリスを結び、まずはG2のウキでウキ下を2ヒロ弱に設定して磯際から様子を見てみると、一投目からウキが横走りし、15cmほどの銀色が水面でのたうちました。

走り回っているエサトリはギンユゴイです。
精悍なフォルムに鏡のような銀の鱗、白黒のストライプが走る尾鰭。
水槽に入れたくなるような姿かたちは好きなんですが、掴むと生臭くて味ももうひとつ。
今日のギンユゴイの群れの物量は厄介だぞ・・・。

撒き餌でギンユゴイを横に走らせ、仕掛けをサラシから忍び込ませていきます。
また数投目にウキに反応!すかさず合わせると、結構強烈に抵抗されます。
細かく竿先をバイブレーションさせながら、重量の割りになかなか浮いてこないこの引きには覚えがありますが、それにしても浮かないな・・・
と言ってもこのタックルの敵ではありません。ゴボウ抜きすると毒針の恐怖を乗せて宙に舞うアイゴです。
この海域で去年も釣ったブルーのアイゴ、セダカハナアイゴの33cm。しかもきゅっとくびれた尾鰭へのスレ掛かり。そりゃ〜引くわ〜

しばらく撒き餌を打っていると、このセダカハナアイゴの群れが海中で乱舞を始めました。
相変わらずギンユゴイも数とスピードを生かして走り回っています。
何匹も何匹も針に食らいついてきました。

ふと思いついて私はこの魚を腹掛けに刺しなおし、少し規模を増しながらあちこちに広がっているサラシの中に放り込んでみました。
しかし期待したものは飛び出してきません。
骨っぽいギンユゴイには魅力がないのか、この個体に瀕死の小魚を演じる演技力が足りないのか、それともヒラスズキがいないのか。

いつもなら本命そっちのけで深追いするところですが、この日の私はすぐに気持ちを切り替えてフカセに戻りました。
他のものに構っている時間はありません。
この水面のざわつき加減、太陽の隠れたこの空の加減、そしてカゴバエという申し分ないステージ。
すべては「その瞬間」のために。

薄曇りから分厚い黒雲へ、目まぐるしく変わる空から雨粒が落ちてきました。
この日は朝から昨日を上回る、熱帯のような恐るべき蒸し暑さ。
カッパなんてとっくに脱ぎ捨てていましたが、この雨に慌てて着用します。
体は濡れてもいいのですが、偏光グラスだけは濡らしたくなかったのです。
これもまた「その瞬間」のために。

すぐに雨は上がりました。その頃にはセダカハナアイゴの数がますます増えていました。
しかし時間の経過とともに青く輝くイスズミが姿を見せはじめ、徐々に数を増やしていきつつあります。

この時間帯の私の戦術は沖の潮のヨレに狙いでした。
問答無用に仕掛けを引っ張り込む潮にはウキを替えて対抗し、微妙なウキの変化には春の若狭湾で体験してきた攻撃的アワセで対処。

ビシバシとアワセを入れていくと瞬間的に竿が大きく弧を描きました。
スピードを上げてシモリに突っ込んでいく魚を締め上げて止め、激しい攻勢を凌ぎきって魚に空気を吸わせます。
その間にドラグの微調整を行い、タモ入れの可否の確認、色々のシミュレーションを行っていきました。
大きく上下する5.5m下の海面に、タモが何度も空を切りましたが、どうにか魚は手中に。
高所でのタモ入れのリスクと低所へ移動するリスク、やっぱり移動する方がいいな。
「その瞬間」をものにするための様々なデータをもたらしてくれたことに感謝しつつ、良型イスズミから針を外してリリースです。

俄かに潮の向きが変わったのと合わせるように、海中では良型のイスズミの数がセダカハナアイゴを圧倒してしまっていました。
そして、そのイスズミとは明らかに違うデカイ魚が撒き餌の帯に突っ込んできたのです。
遂に出た!尾長だ!
待ちに待ったこの一瞬。

一つ大きく息を吸い込んでからバッカンの中のオキアミを尾長針に刺し、竿を振りかぶって沖のポイントへ。
次の瞬間・・・・


来たっ!!!


波を蹴立てて走ってくる柏原渡船がです。
何だ?弁当船にはまだまだ早いぞ??
大声で何かを叫んでいる船長。手で大きく×のサインをして「終わり〜!終了!!」と。嘘ぉ・・・

この足場が高く、独立磯に囲まれてやや入り組んだ場所にあるカゴバエでは実感できませんでしたが、右手後方の一がハエには波が大きく襲い掛かっていました。
沖では渡船が流されたロッドケースを回収しています。
渡船の中で見た808おんちゃんは何度も頭から潮を被り、パンツまで水浸しの悲惨な姿でした。

かくして午前8時、全員小才角新港に上陸と相成ったのです。


その後の私は撒き餌の残量たっぷりのバッカンを抱えて土佐清水市内の港や四万十川河口の港を彷徨いましたがフグすらも釣れることなく、早々に諦めては四万十川の畔の農産物直売所のかき氷、水車亭の塩けんぴ、窪川の豚まん、須崎の土佐丼などをヤケ食い堪能して、兵庫への帰路についたのでありました。
昨日小才角に行ってました。
朝、港で私の停めた車の隣に”姫路”ナンバーの車が停まってます。
一瞬嫌な予感が頭を過ぎりました。
前に回って見てみるとやはり風雲児君でした。
久々の挨拶を交わし話をしました。
前日にはガ〜ンさんちに泊っていたとか・・・
力は侮れません・・・・悪天大魔王〜〜〜!!
かくて撤収8時には港に帰って来ました。
頭から10回位潮を被りました。クリニング代を下さい風雲児君・・・!!


風雲児まじっく犠牲者、808おんちゃん談。

 ● 竜 串 tatsukushi
利用渡船 西本渡船 出港地 高知県土佐清水市・竜串港
時間(当日) 5:30〜16:00
(融通ききます)
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 船長にお任せ
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

 ● 小 才 角 kosaitsuno
利用渡船 柏原渡船 出港地 高知県大月町・小才角新港
時間(当日) 5:15〜16:00(予定)
(融通ききます)
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 磯予約制
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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