風雲児  烈風伝
  ・時化男復活祭盛大に開催!・・・のはずが・・・

2009年 11月2日〜3日  高知県名鹿
私の父は、私が中学生くらいの頃までは釣りによく行っており、特にブツエビを撒いてのメバル釣りや、カレイの投げ釣りなどが好きでした。
一緒に釣りに行くことはそう何度もありませんでしたが、私がこうやって釣りに狂っているのはこの父のせいなのかもしれません。
その父が亡くなり、喪に服していました。

やがて49日の法要も終わり、私は釣りの世界に復帰することができましたが、その復帰戦には父が愛用していた釣具を持っていって、十数年ぶりに一緒に釣りをしようと心に決めておりました。

釣行の舞台となったのはいつものように四国です。
我が家は真言宗ですから、やはり弘法大師のふるさとで・・・(思い切り後付けの理由やろ〜)

で、選択した釣り場は高知県の名鹿(なしし)でした。
ここは50cmオーバーの確率はかなり低いものの、魚種が多く、また魚影もなかなか濃いという私のお気に入りのポイントです。
すぐ近くを流れる四万十川の影響を受けて比較的釣れ出しが早いということも、この地を選んだ理由なのです。(雨後や厳寒期は四万十川の影響がマイナスに出て、悲惨な事になることが多いですが)

この釣行の少し前には北緯20度付近を台風がうろついており、おそらく磯釣りではなく河川内や港内でのメッキ釣りにエスケープする事になるだろうという覚悟をしていました。
しかし、台風は東南アジア方面へと去り、それに代わるかのように強烈な寒気を伴った低気圧が日本を襲ったのです。
各地で暴風、波浪予報図は真っ赤っ赤、西日本でも各地の山沿いであまりにも早い積雪が木枯し一号とともにやってくるという、まさに時化男復活祭絶賛開催中のありさまです。

ただし、この前代未聞の天候は北西風に強い名鹿にはプラスに働きました。
大荒れの日本国内でこんな時化男が2日間とも、何の問題なくぬくぬくと釣りをしているという、なんとも皮肉な展開となってしまったのです。


・初日はヨボシでのんびりと。

  ヨボシ南向きのポイント。海底は複雑。
朝6時に港を出て、事前に予約していた磯「ヨボシ」へと向かう勝丸渡船の甲板には私一人。今日は名鹿貸し切りです^^
ヨボシは辺りを数多くのシモリに取り巻かれた小ぶりな磯。朝一番が大潮の満潮でしたので手狭には感じましたが、この時期いかにも釣れそうなシチュエーションに胸が高鳴ります。

南向きに釣り座を取り、足元から出ている小さなサラシの切れ目をまずはスルスル仕掛けで探ってみます。
−0のパラソルストッパーがゆっくり沈んでいって・・・加速!おっと、一投目からヒット、手のひらサイズの尾長グレの登場です。
これがしばらく続きました。足元でも沖でもコッパ尾長ばかり。
どうやら撒き餌に合わせてしまうとコッパ尾長の餌食にしかならないようです。かといって、表層まで食い上がってきているようでもなし。

そこでウキをG5に替え、なるほどウキ止めを1ヒロ半の位置に設置。そしてG5のオモリを二つ打ち、潮を掴めばジワジワ沈む設定にしてみました。
そして足元に数発、沖に一発の撒き餌を入れておいて、撒き餌の沖に仕掛けを入れるパターンで攻めてみると、効果覿面32cmの口太がヒット!これを皮切りに、次々といいペースで竿が曲がります。

   ツマリテングハギ
25〜26cmくらいの口太が多いですが30cm前後のサイズもちらほら混じり、35cmくらいのキツやら、名鹿名物のサンノジやら、中にはツマリテングハギなんて魚も掛かって実に賑やか。
細かいバイブレーションを響かせながら必死の抵抗を見せた魚は30cmほどのアイゴ。
これが都合3枚掛かったのですが、どれも体の白斑がやたら数多く、細かく、これまでに見たことの無い感じでした。
釣りを終えた後、宿にあった魚類図鑑をめくってみると、どうも高知県以南に分布する「シモフリアイゴ」(沖縄で言うマーエー)だったような。
沖縄にしか居ない魚だと思い込んでいましたよ。まあ、写真を撮っていないし、リリースしてしまっていたので本当にそうだったのか、何とも言えないのですが。

今回は2日間、じっくりと腰を落ち着けて釣るということで心の落ち着きが違いましたし、初日はクーラーの中身にこだわる必要もありませんでした。
さらに午前中は予想に反してポカポカと波も風も穏やか(全国的には大荒れでしたが)、何よりこんな具合にペースよく魚が掛かってくれたこともあって、本当にのんびり、ゆったりと釣りを楽しむことができていました。これまでこんなことは無かったかも。
ゆっくりと贅沢な時間が流れていきます。 あぁ、磯釣りは楽しいなあ・・・。

     ヨボシの東向きのポイント。
昼前になると西風が強くなり、南向きの釣り場では少々釣りづらくなってきました。
潮も引いて浅くなり、アタリも遠のいていましたので、狙いを東向きに転じて風を背負って釣ることにしました。
「東向きは釣れそうに思えるが、サンノジが多く本命ポイントではない」と磯釣りスペシャルの記事に書いてあったけど、どうかな!?

足元には大きなキバンドウやシラコダイ、カワハギが見えています。
それらを撒き餌で引き止めておいて、沖に並んで顔を出しているシモリの際や、その間の深みを直撃。
しばらく間をおいて、朱色のウキが紺碧の水中にスルスルと吸い込まれていきました!
おおっ!ストレートに突っ込むこの気持ちのいい引きはグレじゃないか!
やっぱりサンノジは食ってきましたし、キバンドウも当ってきたけど、こちらのポイントでも30cm前後の口太がいい感じに竿を曲げてくれました。

午後3時、迎えの渡船に満ち足りた気分で乗り込む私。
裏本命だったシマアジが釣れなかったのはちょっと心残りではありますが(一つ、口切れのような怪しげな針外れがあったんですよねぇ)、その分明日が楽しみってことで。


・2日目はカメで筋肉痛

季節を先取りした寒波の一夜、強い北西風が絶えず宿を揺らしていたようです。
目覚めて、宿の扉を開いた時の寒さ、港で出港を待つ間の寒さは、まだ冬の備えのできていない体には厳しいものでした。
しかし、船が一歩港を出た途端に温度がグッと上がる感じ。やはり水温はまだまだ高いことが実感できました。

2日目は祝日でしたので、少しうねりのある海上を南に進む渡船の上には7名の釣り人の姿。
まずはフタツバエに2人を降ろし、その次に私が呼ばれました。「カメに行ってみますか?」
この日は特に希望の磯はありませんでしたが、「カメ」に不満のあろうはずがありません。
ここは釣巧会のリョータさんにいい情報をもらっていましたしね。シマアジ〜♪

    潮が引いた後の釣り座。朝は狭かった〜
カメは地寄りにある大きな磯。しかし!先端(東向き)の釣り座に上がってみると予想外に狭い!
潮が高く、少しうねっているせいでこの釣り座だけが孤立しています。
後ろは切り立った壁、前は海に向かって傾斜していて道具を置くのにちょっと苦労。しかも、こういう狭い足場でこそ威力を発揮して快適な釣りをプロデュースしてくれた竿立てが無いっ!
いや、本体とハンマーは磯の上にあるのですが、磯に打ち込まれるべきピトンがこの時、中村フィッシングの洗い場で眠りを貪っていたのです。
今ここにあるの、重たいばっかりの役立たずかいっ!!
今日はトラブルが続きそうな予感が・・・。

まあ、さっさと準備して釣りを始めましょう。
仕掛けは昨日と同じ感じでいいかなと、オレガ一徹1.5号に道糸2.5号、ハリス2号に拳グレ6号を結び、0号のウキにG7のガン玉2つ、2ヒロの位置にウキ止めを付けて、竿2本ほど先にウキを入れてみました。
ここで初めての撒き餌。ウキの頭に2発ほど被せます。

あっ!!
少しの間バッカンの方にやっていた視線を海面に戻した時、水煙を立てるような勢いでウキが吸い込まれていくのが見えました。ほぼ同時に根元からひん曲がる竿!

私は何もできませんでした。一瞬のうちに高切れ。一投目で仕掛けを失いました。
しばし茫然自失、一体何だったのでしょうか・・・ (まあ、その後一日中足元でウロウロしていたバカデカいキバンドウだったんだろうとは思いますが)

正面から顔を出した太陽が徐々に高度を上げると、撒き餌を追っていく魚が見え始めました。
やはり水面まで出てくるのはキビナゴくらいのもので、ほとんどの魚は一ヒロ半くらいまでしか浮いてこない様子です。
最初と同じ仕掛けで撒き餌の中心を釣っていくと簡単にヒットしますが、それはコッパ尾長だったり、大小様々なキツだったり。

この日も答えは沖にありました。
撒き餌と仕掛けの射程距離ギリギリの正面沖、名鹿港方向へ動く潮のかなりの潮下。
昨日とは逆に、撒き餌の手前・潮上に少し離して仕掛けを入れるのが正解でした。
そこでウキが潮を掴み、ジワジワと吸い込まれていけば、穂先は高確率でアタリを表現してくれました。
33cmくらいまでの口太グレ、40cmくらいまでのキツ、45cmくらいまでのサンノジが代わる代わる上がってきます。
中でもやっぱりグレの引きは気持ちいいですね〜。

そのうちに水中で妙に青光りする魚がヒット。
最初は竿先を叩くので気楽にやり取りしてましたが、姿を見てから急に慎重になり、26cmでもしっかりとタモに納めて取り込みました。
お待ちかねのシマアジの登場!
すぐに〆てクーラーに納め、ヨダレを垂らしながら同じ所を攻め立てますが、結局今回のシマアジはこれ一匹で終了でした。

その後もいいペースで竿が曲がりました。グレとサンノジがほとんどですが・・・。今日はやたらにサンノジが多いなあ。
足場が高いのでタモを出さなくてはいけないのですが、うねりで沖へ何度も引っ張られるものでタモの柄が2度も固着してしまい、何とも面倒な事。

釣り座は壁の反対側。カメの地寄りは広いですが、
潮が引かないと移動は不可能。
そしてまた、潮下のシモリの辺りでキープサイズの口太がヒットしました。
今回心がけている柔らかいやり取りで水面に浮かし、空気を吸わせることでエラを張り付かせて魚の呼吸を封じます。
タモ・・・ ええい面倒だ!竿を跳ね上げて引き抜き・・・ あっ、角度が悪い! バキッ!
魚は磯の上に身を横たえて暴れていますが、その動きと一緒に垂れ下がった穂先と2番が踊り、カラカラと空中で音を立てています。
関東に留学していた頃、千葉県鴨川の磯でデビューして以来、全国を共に駆け巡ってきた99年モデルのオレガ一徹1.5号、遂に討ち死にです。 横着をしたばっかりに・・・。 
この盟友と引き換えにクーラーに収まった口太が36cmあり、今回の最長寸であったことを知ったのは家に帰ってからでした。
この時は魚なんて見えてなかった・・・。

時間はまだまだあります。ロッドケースから制覇1.5号を取り出し、2号ー2号で仕掛けを組みなおして再開です。

この頃から撒き餌の周りをボラの小編隊がうろつき始めました。
ボラはサシエをこちらから引っ張って動かしさえしなければ、ついばんでも大概吐き出すのであまり気にせず釣っていきますが、それでも65cmくらいのが一つ掛かって大暴れ。

気を取り直してもう一投。見つめていた竿先がまたグーッと引っ張られて、スプールから糸がバラバラバラと出て行きます。よし掛かった!
魚はあまり潜らずに水面近くを横走りし、時折バタつくような引き方。
先程より小ぶりなボラのような感じですので、ガッカリしながら寄せてきた魚は緑色をしていました。
ありゃ、50cmの近畿で言うハマチ、四国で言うヤズだ!(近畿と四国ではハマチの出世ランクが違うからややこしいですなあ)

いつの間にか時計の針は1時を指しています。さあラストスパート!と思ったのですが、昨日同様、この時間帯からは妙にアタリが遠くなってしまいました。
実は棚が浅いのか?とゼロゼロのウキに、喪中で釣りに行けない間の手慰みで作っていた子ウキを組み合わせて実戦投入・・・
・・・どいつもこいつも不恰好な上に使い物にならないガラクタだ・・・
すぐにメーカーものの子ウキに替えましたが、どっちにしろスルスルでは結果は出ず、元の仕掛けへ。

    カメから名鹿港方向をズームで。 釣り人が居るのはフタツバエ。
結局その後はグレは出ませんでしたが、竿はボチボチ曲がりました。
掛けても掛けてもガガガガ・・・と細かく竿を叩くサンノジばかりでしたけど。

朝から、いや昨日から散々釣ってきたサンノジ、いくら名鹿の名物とは言え、30cmから47〜8cmまでを一日で20枚以上はさすがにしんどい・・・。
後半は一ランク下の号数の竿として使っているような、強さに不安を感じる竿を手にしてましたし、竿を折った直後で荒っぽいこともできなかったので時間ばかりかかる上、疲労も募って「お前らええかげんにせ〜や!」とサンノジと同じような口で一人ボヤいておりました。
翌日は筋肉痛で辛かったなあ。

午後3時、この日もいい感じにキープサイズのグレを仕留めて渡船に乗り移りました。
いや〜、2日間よく遊びました。父もきっと心から楽しんでくれたことでしょうね。

さて、次はどこへ行こうかな?
磯釣りの本格シーズンを前にして磯釣りの楽しさを再認識した風雲児。
四国からの帰り道は、次回の往路に心を躍らせる道のりでした。

 ● 名 鹿 nashishi
利用渡船 勝丸渡船 出港地 高知県四万十市・名鹿漁港
時間(当日) 6:00〜15:00
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 磯予約可
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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