風雲児  烈風伝
           ・突然の・・・、武者泊へ。

2010年 1月17日  愛媛県 武者泊(福浦)
五目釣り師の新たなる挑戦、冬の日本海に潜む怪物タコとの勝負するための準備を、この週末を使って整えるはずでした。
土曜日の夜、近所に住む従弟の家まで小道具に関するアドバイスを聞きに行った私。
・・・なぜか「これから四国へグレ釣りに行こう」ということが決まって家へと帰ってきました。

何せ行くのが決まったのが釣りの前日・夜8時5分です。
それから慌てて道具を調え、餌を手配し、従弟の車でバタバタと慌しく出発。

道中、愛媛の大洲と宇和は雪景色でした。
前々日までの寒波がもたらした記録的な大雪による残雪と、凍結した路肩、それに濃霧のコラボレーション。
(地元ではいつものように海面は凍っていても、雪なんて1mmも積もっていなかったのに・・・。)
帰り道の西予のローソンには「かまくら」が残っていたし、高速はまるで播但自動車道のようだったし、今回ばかりは自分の車で来なくてよかった〜と・・・。

それでも愛南町福浦の港へは無事、片道6時間ばかりで到着しました。
全国にその名を轟かす
武者泊の沖磯。
私は未だ未挑戦。
「武者泊」と言った方が通りのよい、西海南部の磯への渡船は、武者泊集落や、そのずっと手前の福浦集落などに合計7軒(だったかな?)の業者が点在しています。
今回私たちが利用したのは福浦の「いろは渡船」。
福浦からの船は「基本的に」ですが、全国的に有名なヤッカン・アブセ・本バエなどを擁する沖の磯(おきのそう)・地の磯(じのそう)ではなく、西海半島の南岸一帯の地磯をメインフィールドにしています。

6時半に港を離れた船は30分ほども時間をかけてゆっくりゆっくり西海半島を半周して鼻面岬の沖でストップ。
その船上で船長があらかじめ渡るべき磯を人数を見ながら割り振っていきました。
私と従弟は鼻面岬の東側、泊まりのお客さんが前日に40オーバーを5枚上げたという「3番の三角」に上がることを勧められ、そして、その当人からポイントから時合いまで詳しく貴重なアドバイスをして頂きました。

千畳の船着きスレスレで待機していた渡船は7時12分、日の出の時間とともに渡礁を開始。
この辺りの海域は磯割りではなく「西海方式」と呼ばれる渡礁方法を取っています。。
その渡船の第一希望の磯だけは他船とのジャンケンで決めるのですが、その後は早い者勝ち。
あんなにゆっくり走っていた渡船は、実は日本有数の高速船。それがフルスピードで磯を取り合う、非常に危険な時間が繰り広げられるのです。
この日は鼻面周辺を狙うライバルがいなかったので、いろは渡船は余裕の磯着けとなりました。

すぐ沖をコバルトライン(宿毛佐伯フェリー)
が行きます。情報を下さった泊まりのお客さんが
釣っているのが1番の三角。

3番の三角は名前の通り足場の悪い磯でした。
しかも窪みという窪みには腐った水溜りがあるので荷物を置ける所も限られます。
魚を掛けたらいかにして水溜りに落とさずに外してクーラーへ運ぶかが問われるな・・・。

従弟は船着きのV字型の足場から磯際〜2番の三角方向狙い、私は磯の中央から地向きのワンド狙いでスタートです。
いいかげん結果を出したい1.65のメガチューンに、道糸ハリス2.5号。0号のウキにG5を打った仕掛けを選択。
「昨日は2ヒロからドンドン入れていって深いところで食った」そうですので、それを心に留めつつヒットゾーンを模索していきます。。
ただ昨日はこのワンドではダメだったということが気にかかりますが。

8時ごろ、ウキがジワジワと微妙に引き込まれていくのを感じました。
そこで軽くテンションを掛けてみると、ウキは少しスピードを上げて海底へ。
満を持してアワセを入れると大きく竿がしなります。
なかなかの引き。しかし魚はゴンゴンと妙に頭を振ります。それにつれて叩かれる竿先。
ようやくの今年初ヒットに顔は少しほころびながらも、内心では少しガッカリもしながら、海面近くに引き上げた魚・・・ぐ、グレじゃないか!
しかも、今期目標に掲げ、どうしても釣りたかった40cmオーバー!
沖の島・鵜来島以外で40cmオーバーの口太を釣ったのはいったい何年ぶりだろう。(何と4年ぶりでした)
もしや口太の自己記録も更新したか!?とも思いましたが1cm及ばず、42cmでした。(皆様随分と呆れられたことでしょうが・・・)

その直後に従弟も「ここのグレは首を振るなあ」とつぶやきながら30cmちょっとの口太を取り込みました。どちらも針を飲まれているわけじゃないんですけどね・・・。

これで時合い到来か!?と思われたのですが、それからは手のひらサイズのキツが2枚食っただけ。
グレはなかなか食ってきてくれません。というより、狙いは分かったのに海が思うような釣りをさせてくれなかったのです。
この日は風雲児の釣行が嘘であるかのようなベタ凪ぎ。しかしながらこのワンドはとてつもなく不安定でした。
鏡のように何も無い水面と、ヒラスズキが幾らでも釣れそうな海が瞬時に交錯しています。
一瞬で仕掛けをコントロール不能にしてしまう突発的なサラシ。それもいい感じで仕掛けが行っている時に限っていつもいつも・・・。
オモリをしっかり打っても止められず、仕掛けは問答無用にハエ根に押し付けられて根掛かりばかりしていました。

足場の悪い3番の三角。帰り道、従弟は「足がプルプルする」
と言ってました。
そうやって手を焼いているうちに、沖向きの磯際で口太グレが見え始めました。
その数は徐々に増え、40cmを越えるサイズも混ざるようになってきてるではありませんか!
もちろん、二人、あの手この手で全力で狙いますが、今回もやはり食いません。
鋭く上下運動して撒き餌を貪る、これで食わなきゃおかしいやろ!というような行動を取っているにも関わらず25cmほどのサイズすら食ってきません。

軽くしてもダメ、仕掛けを止めて撒き餌を待ってみてもダメ。
深く入れたスルスル仕掛けを回収しようとすると、居食いしていたのか、何と魚がヒットしているではありませんか!
しかしその引きは到底グレとは思えないものでした。
細かいバイブレーション、ビビビビと横走りしてなかなか浮いてこないこんな引きの正体、あの魚しかありませんな。
そう。網に収まったのは37cmのアイゴだったのです。

この見えているグレは従弟の腕を持ってしても食わせることは至難でした。
それでもどうにか30cmに届かない口太を一枚。あとはやはりアイゴ1枚とブダイ2尾を食わせただけ。
私もその後はアイゴを一枚追加・・・と思いきや、横着をして足場を動かさなかったために磯際でラインブレイク。

そうそう、ここのアイゴは脂ノリノリでしたよ。
私は今回、味噌煮にして味わいましたが、こうやるとアイゴの臭いが消えて家族にも好評でした。(ただ私は、アイゴ特有の匂いがしないのをちょっと物足りなく感じてしまいましたが・・・)
魚類学者の荒賀忠一先生が、その著作で紹介されていた「生肝」もやはり「臭みは全くなく、舌にとろける味わい」でした♪

時計は1時を指しています。
もうこの頃には食わない見えグレは無視して沖狙い一本でやっていました。
ウキはB、ウキ下は3ヒロ半〜4ヒロ半。
ですが、沖でも反応は無く、ハリスもいつの間にやら2号にまで落ちていました。
そんな折・・・

1番の三角方向を向いて流れていたウキが、ジワジワと波間を潜りはじめました。
潮に乗って噛み込んでいるのだろうと思いながらも、竿先でスッとテンションをかけてみるや否や、いきなりのフルパワーが私を襲いました。
竿は瞬間的に胴まで大きく絞り込まれていますが、構わず突っ込む強烈なパワー!
それは竿を叩くことなどせず、ストレートに突進する本当に気持ちのいい怪力です。
このメガチューンは浮かすのには時間がかかるが胴の粘りは凄い!それを頼りに魚の攻撃を必死で凌ぎ、執拗な突撃を何度も何度も潰していきました。
磯際へのアタックを防げばもうすぐ魚が見える!私は壁に向かう魚に対してその手前で勝負を賭けます。
よし!まずはかわした!と手ごたえを感じたその瞬間、思いもかけずハリスが飛びました。
「何で!?」思わず叫んだ私。
ハリスはチモトでスッパリと噛み切られていました。
あと一歩で姿を見損ねたので言い切れはしませんが、ナイスサイズの尾長グレだったに違いない、私はそう信じております。

私には気を落とす暇なんてありませんでした。急いで仕掛けを作り直して同じ所に投入。
仕掛けがしっかり馴染むのを見計らったように波の下へ沈み込んでいくウキ。
今回は待つことも無く一気にアワセです!
再び私を襲う激震!
しかしながらこれは胴に入りきる少し前に、問答無用にハリスを引きちぎられてしまいました。

釣りたい、なんとしても釣りたい!
「急ぎの用はゆっくりと話せ」という武将・小早川隆景の言葉を思い出した私は、急ぎの仕掛けはゆっくり作れ!焦りを押さえつけながら仕掛けを組み直し、すぐさま投入。

そんな私の目に映ったものは、マワリハナを越えてこちらへ向かってくる渡船の群れでした。
迎えか!?いやそんなはずはない。時計を見ると1時40分、渡船屋のホームページに書かれてあった納竿時間の2時30分とか、2時40分までにはまだ時間があります。
それでも次々と目の前を通って沖へと向かう渡船たち。
そうだ、一番の三角に居るのは昨日も釣っていた方。あの方の様子を見れば・・・って片付け始めていますがなっ!
せめてあと30分、いや15分でも時間があれば!!
無念この上ない離礁でした。
所々にありますなあ、こういう渡船区。

我々はこんな釣果でしたが、みなさんのクーラーにはグレは結構収まっていました。
やっぱり愛媛にはグレが多いなあ。
渡船屋そのものはいい所だったし、今度また、この無念を晴らしに来んとアカンな。
そんな話をしながら西海を離れ、ふたたび「雪国」を経由して瀬戸内へと帰還したのでありました。

 ●武者泊 (福浦) musyadomari (fuku-ura)
利用渡船 いろは渡船 出港地 愛媛県愛南町・福浦
時間(当日) 6:30(ただし日の出時刻7:12まで海上待機)
〜14:40(ただし、その1時間前に回収)
料金 6000円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 宿泊、仮眠所あり システム 一組目はジャンケン。
その後は他船と競争。
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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