風雲児  烈風伝
    ・初挑戦!柏島。
           そんな落ち、ありですか!? 

2010年 3月13〜14日 高知県安満地、柏島
「明日ですか?明日は南のうねりで荒れるので船は出せませんよ。止めた方がいいと思います。明後日なら大丈夫そうなので、どうしてもこちらで釣りがしたいと言われるのでしたら日曜日に来てください。」
携帯の電話口の向こう、柏島の渡船屋の女将さんの声が響く金曜日の昼休み。

今シーズンほど釣りに行った年はありません。しかし、今シーズンほど釣っていない年もありません。
普段ならサイズは35cm、数は10枚を超えることはなくても、グレの顔くらいは大概見られていたはず・・・。
何とも消化不良の日々、こんなんでは今年度を終われないし、時期が悪くたって3月中に行っておきたいという諸事情もありました。
情報をリサーチすると柏島がどうやらボチボチと食っているらしい、天気予報を見てみても今週末は釣行のチャンスらしい、ということで決定した釣行だったのですが・・・。

2日間続けてやりたかったけど、船が出ないのでは仕方がありません。
あの近辺では珍しく南絡みに強い「一切」の渡船屋に数回電話するも応答が無く、初日は一切の北東に隣接する「安満地」という場所で過ごすことになりました。

「安満地」と書いて「あまじ」と読みます。
磯釣りでは無名の場所のようで、ここの常連の方に「兵庫の人がこんなマイナーな場所をよく知ってたなあ!」と感心されてしまうほど。
予約の電話を入れたとき「初めてなんです」と伝えると、女将さんまで「ウチのこと、どこで知ったんですか!?」なんて(笑)
どうやらグレは40cmが混ざればラッキーというような釣り場なんだそうですが、30〜35cmくらいのサイズが非常に濃いという、大スランプに悩む私にはありがたい釣り場かもしれません。
ネットで書かれている通り、のんびりした雰囲気と、よくしゃべる明るい女将さんもいい感じ。
ちなみに、ここはダイビングでは結構有名なようですが、10mも泳げない私にとってはあまり関係のない話です(笑)

「観音の内」より。
すぐ隣の磯は「観音内の内」だそうな。
南西の風がゴウゴウと音を立てる中、6時半ごろ港を離れた吉田渡船。
私は「観音の内」という磯へ渡礁しましたが、寸前に常連の方から頂いた「ここはチヌ釣り場で、グレはコッパしかおらん」という情報に大ショック。
家から5分の場所でタダで釣れる魚を月給の半分近くを投じて釣りたくないぞぉ〜(涙)

シモリというか、ゴロタ石というか、そういうものが点在する浅い釣り場ですからゼロウキでも使いたい所ですが、9時半の方向から吹き付けてくる風がなかなか強烈ですからG2でやってみましょう。
足元に安満地名物ネンブツダイを寄せ集め、仕掛けをそっと滑り込ませて攻めること1時間。2ヒロ程取っていたウキがゆっくりと入っていき、口太がヒットしました。
サイズこそ29cmですが、この久しぶりのグレ一枚の安堵感はスランプ中の人にしか理解できないかもしれません。

この調子でスランプとの決別を目指しますが、思いとは裏腹に、弁当船までに25cmに届かないコッパ1枚、カワハギ1枚、忘れた頃にアカササノハベラ、ネンブツダイが食ってくるのみという展開に。

常連さんには「この安満地では深く釣らない方がいい」というアドバイスをもらっていたのですが、こんな状況だとウキ下は自然に深くなってしまいます。とはいえ3ヒロちょっとも入れると根掛かり連発。
ウキ止めを少しずつ動かしながら根掛かりしない層を探っていくと、ジワッとシモっていたウキがスルスルと走ったではありませんか。
アワセを入れると大きくはないけど元気のいい引き!
その引き方はキツでもなく、アイゴでもなく、いったい何だろうとワクワクしながら浮かせた魚はモノトーンの縞模様、30cm手前の「標準和名イシダイ」でした。

これでウキ下設定はバッチリです。
風波で滑ってくる仕掛けと、潮上からの撒き餌をシモリの前で合流させると竿が曲がるようになり、27cm程度の口太2枚と20cm程度のカワハギ2枚、35cmほどのブダイ(赤)をバタバタと連続でゲット。

 ● 安満地 amaji
利用渡船 吉田渡船 出港地 高知県大月町・安満地
時間(当日) 6:30〜15:00
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 宿泊・仮眠所あり。 システム 磯予約可
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
されど時合いは短くて、たちまちキタマクラに何度も何度も針を取られるだけという状況に陥りました。
1時を過ぎた頃に風が収まって釣りやすくなりましたが、なぜかキタマクラすら姿を消してしまい、空しく3時の納竿を迎えることに。
グレは結局5枚にも30cmにも届きませんでしたが、何故か私が本日の竿頭になってしまっておりました。今の私には信じられない展開!

この日は安満地から泊浦までの海岸をドライブしてから、いつもの「幡多郷」へチェックイン。最近のお疲れモードをしっかり癒して、明朝はいよいよ初挑戦の柏島だ!
県道沿いの展望台から
見下ろす安満地の磯。

手前が「観音の内」のある
観音崎、中央に松島、
背景は沖の島です。

翌朝、底物を中心とした釣り師でごった返す柏島の渡船乗り場。
着替えを済ませて荷物を運んでいた私は、別の渡船の前に集められた荷物の一つに、見覚えのある名前が書かれているのを見つけました。
キョロキョロと辺りを見渡せば、居た居た、またしても「808おんちゃん」と遭遇です。
去年から色々な港でやたら会います。これでいったい何回目だ!?とお互い苦笑しながら話し込んでいたら・・・危うく渡船に乗り損ねる所でした(汗)

出船寸前に飛び乗った井上渡船は6時過ぎ、本日の磯廻りである「蒲葵島(びろうじま)」へ向かいます。
「遠い」とか、あちこちで聞いた「グレに関しては過去の釣り場」という話とかで、これまで柏島を敬遠していた私でしたが、まさか磯に渡りもしないうちにその魅力にKOされてしまうとは。

       蒲葵島・カジヤノキリ周辺
何と心を動かす風景であることか!
春霞に浮かび上がる柏島の白亜の断崖、大堂海岸の岩々の造形、釣り人の夢の中に列を成して浮かぶようなムロバエ群礁、そして紺碧の海と蒲葵島の岩肌のコントラスト!
次々と移り変わるこの風景を巡っているだけで、また来よう!なんて思ってしまえる柏島クオリティ、こんなところで2日間やりたかったなあ。

ギリシャかどこかの遺跡と錯覚してしまうような、否、これぞ離島!と唸りたくなるようなカジヤノキリ周辺に屹立する岩の柱の群れ。
このエリアに何組かが渡り、次に私も「東のミタライ」という磯の、滑り台のような足場に上礁しました。
船着きの横の急斜面に飛び降りて、背後の広いスペースに荷物を置きに行かねばなりませんが、渡礁の時に船長に注意されたとおり、これがまたよく滑って大変でした。
この日は結局何度も転倒し、挙句カッパまで破ることに・・・。

足場の良い場所もあるけど、潮が高いのとウネリが洗っているのとで、とりあえずは船着きでしかやれそうにありません。
左手に見える赤バエ(グンカン)と、最近よく当たっているという高バエの間から昇ってくる荘厳な朝日に心を奪われつつ、慎重に足場を決めてスタンバイ。

ポイントはワンド状になっていて、二本のサラシが出ています。
竿2号、ハリス2.5号、G2の仕掛けをサラシの切れ目で止めて待ってみますが、すぐには反応はありませんでした。
ウキ下を調整し、オモリの位置を変え、試行錯誤すること数時間。

その間、丸々と太ったカゴカキダイ(この魚旨いよ〜)を一つキープした他にはサシエもほとんど取られず、ウキへの集中力も徐々に遠のいてくるそんな頃。
サラシの脇にできた小さな潮目を流していたウキが、ズボッと海中に突き刺さりました。

全身を襲うパワーとスピード!この懐かしい感触に私は必死に竿を立て、魚の動きを止めようとするのですが、おかしい!止まりきらない!
ふと気付くとドラグがジリジリ滑っています。このときまで完全に忘れていたドラグの存在。
あまり出番がなく、使っていても作動すらしないこのスプールに完全に計算を崩されてしまいましたが、それでも戦いはまだ継続しています。
ドラグを締め込み、数度にわたる攻勢に耐え切ったその時、尾長グレと思しき魚体がサラシの中で反転しました。
明らかに40cmオーバー!四国で3匹目の40オーバーだ!

そう見えた瞬間、尾長らしき魚は右手に伸びたハエ根へと一直線に突っ込んでいきました。
ここはロッドワークとフットワークで凌ぎきらねばならぬところ、しかし、海苔がべったり付いた急な斜面では身動きが取れません。
魚は私が体勢を立て直すよりも早くハエ根に飛び込み、ロッドは空しく跳ね上がってしまいました。

バラシ。しかし、私の魂は久々に燃えました。
しばらく後にやってきた弁当船で船長が言います。「ここは太いのが見えるき、大事に獲らんといかんぞ!」
よし、やってやろうじゃないか!

事実、船長の言葉通り、足元から巨大なヤツが浮かび上がってきたのです!
そのサイズたるや40cm、50cmなんてレベルではありません。
悠然たるそのシルエット、頑強そうなその手足、重量感たっぷりのその甲羅。
また出た!今回のはメーターオーバーだ・・・

海亀の出現に再びアタリは消えました。
打つ手なし、私は美味しい弁当でも食べて一息つくことにします。
それにしても弁当箱の中のアルミカップやバランを一つも飛ばされずに食べきれるなんて・・・(笑)
朝のうち吹いていた風も完全に収まり、気温もグングン上昇していました。

さあ、気を取り直して再挑戦!・・・ですが、反応はなし。  
やっぱり何も食わんなあ、今日もダメかぁと再び集中力が切れかけた頃、ズボッ!と突然磯際から消えたウキ!
ベールオープンで構えていた私は反射的にベールを戻し、魚のパワーをガシッと竿で受け止めたはずでした。
しかしこのベールが回転不足の判定を取られてしまい、スプールの糸がバラバラバラ〜
我ながら嫌になります。

気を落としながら道糸を回収していると・・・おおっ!魚はまだ付いているではありませんか!
なかなかの引きっぷりに、今度こそは!と思った瞬間、本当にテンションが0になって・・・。
結局の所、針外れで終わってしまったのです。

この後は前日と同じようにキタマクラに針を取られるくらいとなり、やがて東からの風が吹き始めると、一旦収まっていたうねりが復活、ポイントは巨大な洗濯機と化してしまいました。
ルアーでも持っていればまさしく狂喜する展開ですが、ほとんど磯にルアーを持ち込むことの無いSWクラブ所属の私(笑)
早めに道具を片付けて磯を洗い流し、カゴカキダイが1枚だけ入ったクーラーを抱えて迎えの船を待ちました。

この国に「グンカン」という名の磯は数々あれど、
この角度からのグンカンほどカッコいいグンカンは
無いだろう。(あくまでも個人の感想です(笑))
港で支払いをする時、船長にこの日の釣果情報を聞いてみたところ、「中には釣っている人もいる」としながらも、
「今日はよくなかった。餌が落ちないところも多かった。昨日はあんなに釣れてたのに、一日違うだけでこれほど変わってしまうとは思わなかった。」というコメントが返ってきました。

ん?? 昨日は釣れてただってぇ!?
思わず私は聞き返しました。「き、昨日、船出とったんですか??」
船長は大きくうなずくと、岸壁で片づけをしているグループを指差し、「あの人たちなんかは昨日もよく釣ったし、金曜日には50枚以上釣ってた」と。

そんなの、ありかよぉ〜〜。

軽いクーラーを載せた帰り道は、すっかり慣れたといってもやはり遠いもの。
昨今の龍馬ブームの影響かサービスエリアはどこも大混雑で、晩飯にもありつけないまま四国を抜けてやっとの思いで帰宅しました。
そして一応両日の釣果情報をチェックすると、何とそこには・・・

13日(土) ビロー・カジヤノキリ: グレ50cmオーバーが2匹 
    ・デコボコ: グレ8匹、イサギ1匹、ヒラスズキ1匹
本島・神崎周辺の磯は、グレの40cmオーバーが混じり良く釣れています。 
14日(日) 尾長グレの62.6cmが沖磯で釣れました!! 
赤バエの各ポイントは、グレの35〜40cmが1人5匹程度の釣果。
大堂地磯・キヨジ: グレ5匹、2時くらいから釣れた。
         (いのうえ渡船HPより抜粋)

・・・何ということだ。

こうもチャンスを活かせない私に、果たして明日はあるのだろうか・・・。

 ● 柏 島 kashiwajima
利用渡船 井上渡船(弟) 出港地 高知県大月町・柏島
時間(当日) 6時前後〜15:00
(3月)
料金 5000円
駐車場 港:500円 弁当 700円
宿/仮眠所 民宿を経営 システム 磯割り制(5交替)
泊まり優先
磯替わり 数回
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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