風雲児  烈風伝
         ・初挑戦 舞鶴野原釣行記

2010年 5月9日 京都府野原(舞鶴市)
大河ドラマ「龍馬伝」がなかなかいい。
全てが破綻し、ドラマとしてすら成立していなかった去年の「泣いてばかりの軍師さん」の話では早々に視聴を挫折した私だが、今年の硬軟取り混ぜたストーリーにはワクワクさせられている。(後半失速したが・・・)
変な所も無いわけではないが、それも役者陣の名演の前にかき消されてしまうのだ。
田中泯、近藤正臣、貫地谷しほり・・・イメージとは全く違うが佐藤健の岡田以蔵もなかなかいいな・・・。
中でも、一筋縄ではいかない人物・岩崎弥太郎を、埃まみれになって演じている香川照之には、毎回いい意味で呆れてばかり。
そのせいか、多くの人(私もそうだった)に三菱の創業者としてしか認識されていなかったであろう岩崎弥太郎その人にも注目が集まっているようだ。

沖から戻ってきたその男、岩崎弥太郎は、スラリとした立ち姿と、海の男が持つ強靭さが印象的な人物であった。
彼は岸壁に船を結わえると、私たちにこう語りかけたのである。
「急に大うねりになって磯替えで走り回ってました。湾内でしかやれませんがいいですか?」と。

ここは舞鶴市の野原。
いくつもの島々を浮かべ、潮通しのいい岬とワンドが激しく交錯する海岸線を抱えるこの釣り場は、チヌはもちろんのこと、グレ釣りにおいても近年その評価をますます高めています。
渡船屋は一軒のみですが、エリアが広く磯数も非常に多いという事もサンデーアングラーにとっては嬉しいところ。

その野原でゴールデンウィーク、グレの釣果が突如爆発し、35cm辺りまでのサイズが10枚、20枚とか、地元の方々でも一年に1枚上げることができるかどうかという40cmオーバー、しかも44cmという日本海でのビッグサイズが出ていたりという情報が飛び込んできたのです。
前から興味のあった釣り場ですし、しかもその日は凪ぎ予報、まさに「今行かずして、いつ行かん」という状況。
今年もまた、アタリを出さないグレとの深ダナ神経戦が楽しめるかな〜?

舞鶴エリアの特徴として、釣りの時間が長いということが挙げられます。
野原の渡船もこの日は午前4時半出港、午後4時納竿予定。渡船代3500円と駐車場代500円で嫌というほど遊べます。
ただ、私は近頃の疲れもありましたので午前8時の船でのスタートとさせてもらいました。

野原の港に7時過ぎに到着したら、ちょうど今お客さんがあって、船は今出たところだと女将さんの話。
私は食事を取り、餌を準備し、船着場の隣で作業をされていた気さくな漁師の方や、同じ船に乗り込む地元のお客さんと、船長はなかなか帰ってこないけど釣りでもしているのかな?なんて話しながら船を待っていたのでした。

岩崎渡船の岩崎弥太郎船長、
戻ってきたと思ったら私たちを乗せてとんぼ返りで出港です。
予想外の時化に驚く私たちに船長は「一番船で渡したときはベタ凪だったのに、突如として大うねりになってしまった」と説明してくれました。
そんな海の豹変ぶりに首を傾げながらも岩崎渡船は、先客たちが張り付くようにして釣っている毛ナシ、高嶋などの磯に立ち寄り、様子を注意深く見回りながらゆっくり東へ向かいます。
この渡船なら荒れた時でも安心だろうな・・・

8時半過ぎ、私は「小マン」などの磯がある岬とナブ岬との間の大きなワンドの奥に位置する「オクズロ島」という足場のよい磯に上げてもらいました。
「表でやれるような場所がなくて、こんな所になってしまって済みません。正面沖で3ヒロ半〜4ヒロです。磯の低い方には行かないようにしてくださいね。」こう言い残して、弥太郎船長は次の磯へと向かっていきました。

グレ狙いのつもりでしたが、磯を見た瞬間にチヌ狙いに気持ちを切り替えました。
今年はチヌもダラダラと釣れ続いていて、いい型が出ているそうですからねえ〜♪
まずはチヌ釣りのセオリーどおり、撒き餌を数十発挨拶代わりに投入しておいてからゆっくり仕掛け作り。
そしてG2でウキ下を3ヒロ半取り、中間距離にある二つのシモリの間に投入してみました。
ん?この設定で何で沈む??もしかして!
アワセを入れてみると一投目からヒットでした。魚は大きなホシササノハベラでしたけど。

序盤は餌どころか針まで残らない展開です。
海の中はフグの楽園となっておりましたが、チヌがやってくるまで我慢我慢。
そのうちフグの攻撃は遠のきましたが、代わりにオセンの群れが現れ、やはり餌が残りません。
厳しいなあ、今日も。

先は長いですし、こういう時は一息つきながらやりましょう。
海のほうばかり見ていないで時には後ろを振り返ってみると、そこには素晴らしい色彩があふれているのだから。
みずみずしさほとばしる新緑は、所々に藤や桐の薄紫色を散りばめながら周囲を柔らかい光で満たしています。
迫り来る明るい色合いの断崖、その方々に配された名も知らぬ木々は枝一面を白い花で彩り、それはまるでこちらへと降り注いでくるかのよう。

海面に目を戻すと、左側にゆっくり流れていた潮が当て潮になっています。時間はもう昼前。
普通なら最悪の展開ですが、水温の低い時期のこのエリアでは当て潮はむしろチャンスだとも言えます。
一向に現れないチヌを一旦諦めて、狙いをグレに変更。
広い磯ですので斜めから流し込む形を取れるように足場を移動し、沖にオセンを集めておいてから温存しておいた磯際へ向けて仕掛けを放つと、狙い通りゼロウキの下の潮受けウキゴムがツツーッと動いてくれました。
25cmですけど、グレの登場です。

それからしばらくの間ポツリポツリとグレが釣れてくれましたが、20cm有りや無しやのミニサイズばかり。
しかも再び潮が変わると、それすらも沈黙です。
釣果らしい釣果と言えば25cm近い青ベラ(キュウセンのオス)くらい。
このキュウセンは瀬戸内以外では見向きもされないのですが、瀬戸内ではキスより高値で取引される魚なんですよね。
個人的には白焼きにして山葵醤油につけて食べるのが大好き!当然、これはキープです♪

静かな時間が流れます。
3時、港から渡船がやってきました。
岩崎弥太郎船長は各磯の前でマイクを取り、「この次は最終5時半!5時半になります!」とアナウンスしながら離礁希望者を回収していきました。

確か、今日は4時までと言ってたはずやけど・・・時化の磯替わりでタイムロスがあったためかな?
ま、撒き餌もいっぱいあるし、夕方の時合いに期待して最後までやってみますか。
・・・そう考えたのは良かったのですが、やっぱりチヌはいないし、グレも居なくなったままです。
よし、こういう時は!
私は仕掛けからウキを外し、その代わりに丸オモリとサルカンを通しました。
私の海釣りの原点でもある「探り釣り」に作戦変更です。

ここは日本海。
いつもの四国のように黄色や青色のどうにもならないバケモノはいませんが、メバル、ガシラ、アブラメの根魚御三家が期待できます。
特にアブラメなんて、瀬戸内のような30cmで超大物なんてケチ臭い事を言わず、45cmとか、そんなサイズが潜んでいる可能性が大いにあります!
期待たっぷりで磯際に仕掛けを落とし、アブラメ用の誘い方を使って上下に探ってみたのですが、アブラメからの反応はありませんでした。
しかしガシラとクロソイが立て続けにヒット。

その後チヌ釣りに戻してみた所、相変わらず気配もありませんでしたので、早めに片付けて道具を洗い、キープした魚を取り出してナイフを使って鱗と内臓を取り始めました。
その1匹目の処理が終わりかけた時、視界の中に映し出された大きな影!
手元のガシラを掻っ攫おうと上空からトンビが急降下!
考える前に薙ぎ払った私のナイフが、トンビの鼻先をかすめます!!
            今回も討ち死に〜。
両者ともあわや!
魚はどうにか守りきりましたが、これではおちおち下処理もできませんので、手持ち無沙汰で迎えの渡船を待っていました。

港に戻ったら、乗り場から少し離れた民宿岩崎荘で支払いです。
弥太郎船長の話によると、この日は全体的にチヌもグレも低調でしたが、やはり30cmまでのグレを多数釣っている方もおられましたし、チヌも50cmが2枚も上がっていました。
それにしても今日のウネリでいい所が使えなかったのには参った。朝はベタ凪ぎ、夕方になってまた一気に穏やかになったのに・・・と、また申し訳無さそうに言ってくださったのですが、このウネリの原因、言わずもがななんですよね(汗)

こうして、私の野原初挑戦は「風雲児まじっく」以外は不発のまま幕を閉じました。
しかしながら、この船頭さんのところには必ずまた来てみたいな!そう強く思った、今回の釣りでした。

 ● 舞鶴野原 maizuru-nohara
利用渡船 岩崎渡船 出港地 京都府舞鶴市・野原港
時間(当日) 4:30〜17:30
(8:00から利用)
料金 3500円
駐車場 500円 弁当 無し
宿/仮眠所 民宿を経営 システム 船長にお任せ
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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