風雲児  烈風伝
  ・由良半島の寒グレ SEA MASTER大会 
                    & VS 晴れ魔王

2011年 2月20日〜21日 愛媛県由良半島
『古事記』に「浪振比禮」(なみふるひれ=波を起こす呪力を持った、マフラーのような物)・「風振比禮」(かぜふるひれ)という物が登場します。これは兵庫県豊岡市の出石(いずし)神社の祭神となっているアメノヒボコ(天之日矛)が、故郷から持ってきた宝物なのですが、私もこれらの宝物をどこかに隠し持っているのかもしれません。そんな物よりも、これらと対になっている「浪切比禮」(なみきるひれ)・「風切比禮」が欲しいのですが・・・。

年末の九州で大寒波と霧島の噴火を呼び、凪ぎのはずの柏島を大風に変え、2月の3連休を風雪で吹き飛ばした私が、今回日曜日と月曜日の代休を使って挑もうとしたのは柏島&小才角でした。
いい情報が飛び交っていて物凄く期待をしていたのですが、案の定と言おうか天気晴朗なれども波高し。
見かけ上は抜群の天気に見えて、紀州沖由来の東うねりのために高知方面の磯は絶望的に思えました。
その代わりに宇和海方面はベタ凪ぎになる模様なので、そちらで安全に釣ろうと行き先を物色していたところ、「磯際の魔術師」さんから「明日、由良でシーマスターの大会があるよ!G−AREXさんに電話すると参加できますよ。どうせなら参加したら楽しいと思いますよ。ご一考を!」というメールが届いたのです。

由良半島かあ、懐かしいなあ・・・。
あそこに初めて行ったのは2001年の盆過ぎのこと。
その時に沖釣4番で尾長の乱舞に遭遇してしまい、それからしばらくはホームグラウンドのようにしていた場所です。
結局いい釣りもできなかったし、撤収、停船が連続した上、ついには沖釣で大波に弾き飛ばされて死にかけたりして、足が遠のいてしまって早8年・・・。久しぶりに行ってみてもいいなあ。

G−AREXさんに電話してみると「大歓迎ですよ!」と快くオープン参加を承諾してくださったので、半島のくねくね道を走り抜けて船越運河の袂、今回初めて利用する松田渡船へ。

駐車場で一眠りしていたら、いつの間にか辺りは車で埋まっていました。
そろそろ起きるか・・・。車の中でゴソゴソと支度していると窓がコンコンと叩かれました。おおっ、GーAREXさんではありませんか。
そして挨拶もそこそこに受付へと案内され、「SEA MASTER」を率いる岡田会長と初顔合わせ。

ご存知、岡田健治名人。
ダイワ、サイトマスター、カツイチのフィールドテスターを務める腕も人気も抜群の美形釣り師です。
しかしながら驕りなど微塵も感じさせない親しみやすい「兄貴」でした。
そんな岡田さんを慕って集まった、シーマスターのメンバーも「人を押しのけてでも釣果を!」というのとは対極の、「とにかく楽しく釣るのが好き!」という方々ばかりでした。(Gさん曰く、ベストに揃って「トーナメントチーム」とプリントしているけど、それはただ恰好良さそうだったから・・・だとか)

この日の参加者、合計21名が集まったところでGさんと岡田さんから25cm以上のグレの3尾重量で勝負というルールと、ここの所の釣況の説明がありました。
それによると、宇和海北部は既に厳しい状況になっているが、ここ由良半島はムラはあるものの、まだグレは釣れているということ。そして今日は午前9時ごろまでの、暖かい満ちの潮が残っている時間帯が最大のチャンスになるのではないかということでした。
また、この日は「磯釣りスペシャル」の取材であり、記事にしてもらえる事も告げられました。
前日の御五神で行われた取材は、岡田さんの真鯛一枚で終わってしまっているため、今日釣らないと大変まずいとのことですので責任は重大ですね。

解散して各自準備をしていると釣巧会のリョータさんから電話が入ってました。
このときのリョータさんは鵜来島に向かう渡船の中。
電話の向こうからは「今日はベタ凪ぎですね!渡船も全然揺れてませんよ。ゆっくり釣れますね〜」という声が聞こえてきます。
フフフ・・・。果たしてそうかな・・・。

6時半、由良の我々も出港です。
船は沖釣、大ウド穴の口、地釣の北、小島などにメンバーを下ろした後、観音島へ一気に引き返します。
岡田さんと、磯釣りスペシャルの細田社長が船着きに、高場やオムスビ、いきつきなどにメンバー達が渡っていきました。
そしてジンゴロウにGさんとkoutagureさんを降ろすと、もう船の中には、私とIさんのオープン参加ペアしか残っていません。
そう、私がクジで最終を引いてしまったために、私たちは船越運河の手前側にある低い磯「長ハエ」へ向けて舳先から飛び降りることになってしまったのです。
振り返るとすぐそこに港と渡船があります。泳ぎが達者なら渡って来れそうな場所・・・。
しかしながらここも結構実績のある場所で、前年に岡田さんも50cmの口太を上げられたんだとか。

9時ごろの長ハエ。最初は海の中だったポイントから。
朝のうちは船付き周辺にしか安定した足場がありませんでしたから、そこにIさんと並んで竿を出す事になりました。
周辺は浅いけど、少し張り出した根際はオーバーハングになっている感じ。
0号のウキにG7を打った仕掛けをそこに打ち込み、様子を探ってみると1投目から餌が齧られてます。
予想外に魚の活性があるのか・・・ でも針に掛かってくるのは20cmほどのフグとホシササノハベラばかりで、ハリスもたちまちギザギザです。

8時半頃になると少し潮が引いて、先端へ行けるようになりました。
ここまで、東向きの角でIさんがコッパを一枚掛けたのが一番の出来事という状況でしたので、迷うことなく移動。
駆け上がってくる波を気にしながら沖向きを攻めていると、丁度9時、0号のウキが一気に引っ張り込まれました。

平たい磯の上を走り回って棚際を強引にクリアし、波の洗う中にザバザバと駆け込んでタモに入れた茶色い魚体は軽く40cmを超えています!
そのエラブタは黒くくっきりと縁取られ、尾鰭は鋭く尖っています。
やった!尾長グレ ・・・じゃないんですね。キツ。何で顔にペイントなんかしとんのじゃぁ〜!
もちろん大会対象魚である筈ありませんので、「絵の具を持ってきて色を塗り替えたらよかった」なんて、Iさんと冗談を言い合いながら放流です。

 Iさん、ナイスサイズ!
その30分後に大きく竿を曲げたのは、東向きの際狙いに徹していたIさんでした。
柔らかくやり取りして、北側から波に乗せてずり上げたのは、見紛うことなき大本命の口太グレ。しかも40cmに届きそうなサイズ!
「やりましたね!」「タナは2ヒロくらいです」
私も続かねば。

それにしても寒い・・・。
晴れて、気温も15度くらいまで上がるという予報もどこへやら。この日は結局僅かな時間薄日が射しただけでしたし、何よりも風が強かった。
後ろからの風なので釣りに困るということは無く、奥まった地磯という場所柄、波の心配は全く不要でしたがその冷たさと言ったら・・・。
Gさんの上がっているジンゴロウでも、リョータさんの上がっている鵜来のグンカン低場でも「原因はあいつだ・・・」という会話がなされていた様子。私の「風振比禮」は本日もトラブルなく発動中。

10時半過ぎ、磯際をしっかりと攻めるために、ウキをBに、オモリをG2の2段打ちに変更。
その一投目にいきなり反応が出て、30cmの口太を手にしてしまいました。
直後には20cmくらいのサンバソウもヒットし、この日のパターンを掴んだかに思えましたが、それからは潮がドンドン冷たくなる最悪の状況に。
私は潮が引いて大きくなった長ハエを探り歩いてガシラを数匹釣るのがやっと、Iさんも迎えがやってくる2時の間際に小鯛を2枚上げたくらいで終わってしまいました。

迎えの渡船ですぐ側の港に戻ると検量タイムです。
さすがの手練れ揃いのメンバーです。ムラの激しい時期にも関わらず、21名中12名がウェイイン。
しかも皆さん、型がいい!
予想に反してこの日は沖磯が好調、観音が不調でしたが、優勝者は奥まった地磯「ジンゴロウ」から出たのでした。
40オーバー4匹、30センチクラスが3匹に、チヌの50オーバーまで上げてしまったG−AREXさんです!おめでとうございます!
数々の大会で活躍し、数々のバッカンを賞品として受け取ってこられたGさんが、この日手にした賞品は・・・
・・・バッカンの親玉みたいな、クールバッグでした。 いいなあ〜。
あっ、私の成績ですか?30cm1枚、重量0.4kg、当然、ウェイインした中ではぶっちぎりの最下位。

       磯釣りスペシャル取材風景!
リラックスして楽しめた一日。
先に書いたとおり、有名テスターのクラブの大会だけに部外者は居場所が無いのではという心配は杞憂に過ぎず、実に大らかな雰囲気に包まれていました。参加してよかったなあ。

ところで、明日はどうしようかな。
実はこの時点でもノープラン。仮眠所のある須下か、久々に御荘の八栄丸に行ってみるかなんて考えているところに岡田さんからの提案がありました。
「明日は一緒に釣りますか?これから高知に帰って、朝の飛行機で沖縄にイラブチャーを釣りに行くんで、午後には竿を出せますよ! どう?」
ご、ご遠慮いたします・・・。(笑)
「それなら明日もここで、ジンゴロウに乗せてもらえば?ここなら仮眠所もあるし。」
おっ、無料の仮眠所有ったんですね!そうと分かれば迷う必要なんてありません。

「岡田さん、今日はお世話になりました。ありがとうございました。」「日が合えばまたいつでも参加してくださいね〜」
こうして私は、一人由良に残留し、仮眠所で10時間ほど昏々と眠り続けました。
明日はこの由良で、あの人との対決です。
2日目の朝、腹ごしらえをしていると仮眠所の戸が開けられました。
晴れ魔王こと、磯際の魔術師さんの登場です。
本当は3月の連休に私のホームグラウンド柏島でご一緒しようという話をしていたのですが、私の仕事の関係で連休が消滅したこともあり、今回のチャンスに急遽駆けつけてくださったのです。

その磯際さんと船長を交えて仮眠所でしばし歓談した後、6時半に出港。
お客さんはジンゴロウを希望する私たち2人と、観音島の船着きを希望する常連さん1人だけですので、松田渡船は沖に出ることも無く観音島の前で停止。沖で他の渡船が場所決めの抽選を行う時間を待って渡礁開始です。

昨日、GーAREXさんが素晴らしい釣りをされたジンゴロウは、観音崎の北西に大きく入り組んだ湾の奥深く、魚神山集落の近くにあります。
遅い時期まで釣れるし、魚影が濃い釣り場と聞いていましたが、足元へパラリとマキエを落としてみると、たちまち何か青白い魚がいっぱい集まってきました。それも結構デカイ!
私はG5のウキにG7のオモリを2つ、ウキ下を2ヒロに設定して、船着きから第一投。

ブシュ!!
いきなりウキがシモリ目掛けて突き刺さりました。。
竿は一気に絞り込まれ、あれよあれよという間にハリス切れ。
正体はテス(標準和名イラ)です。足元は40〜50cmのテス天国・・・。

今、際にこだわり過ぎるとえらい事になりそうですのでメインポイントを中間距離に設定。
それから1時間ほど後に23cmのコッパと美味しいお土産・丸ハゲをゲットすることができました。
左隣の磯際さんも小ぶりのグレをヒットさせています。

この日は風もほとんど無く、日差しも燦燦と降り注いでポカポカと暖かい一日です。
これを受けて磯際さんが口を開きました。
磯際さんが釣行する日はいつもいつも穏やかな凪ばかり。たまには波でかき混ぜられて魚の活性の上がった海で釣りがしたいと思って、君が来る時にはいつも期待してるのに、一体どうなってるんや・・・と。

ベタ凪ぎ、水澄み渡るジンゴロウ。無敵の
晴れ魔王・磯際の魔術師さん。後ろには
観音崎の半島と道路が見えます。
そう言われれば仕方ありません。ゴソゴソ・・・
「ふううんじは かぜふるひれ を つかった!」
「しかし ふしぎなちからで かきけされた!」
結局私はほんの僅かな時間だけ、そよ風を吹かせることしかできませんでした。
私一人では、この「風切比禮」「浪切比禮」の化身のような天敵には手も足も出させてもらえませんね。

釣りの方も苦戦中。
「針を小さくするとええよ」磯際さんが電話で必勝法をGさんに聞いてくださいましたので、私も早速、それまで使っていた拳グレ6号を軽い速攻グレ5号にチェンジ。
ついでにウキもMサイズの0からSサイズの00に変更してみました。
答えが出たのは9時過ぎのこと。

潮が俄かに左手の磯際さんの方に流れ出した途端、シモリ際でウキが加速しました。
竿を立ててみると重量感がずっしりと伝わってきます。
それは、激しく首を振るばかりで、走ったり、突っ込んだりという動きはあまりありません。
ヘダイかな?ブダイ(赤)ほど引かないこともないし??
しばらくして浮上してきた魚は予想に反して本命の口太グレでした。しかもデカイ!!タモ・・・タモはどこだ!!

タモはすぐ近く、釣り座から後ろへ飛び降りて、溝をまたいだ所にあるのですが、私はあまりに予想外の展開に混乱してしまっていたようです。
大声でタモ!タモ!!なんて叫んでしまって、隣の磯際さんも目を白黒させて慌てています。
ま、次の瞬間には我に返ってタモを取り、無事ランディングできましたが。

やったぞ!この前クリアしたばかりの口太の自己記録47cmをいきなり超えたぞ!
私は小躍りしながらメジャーを出し、魚に押し当てて驚愕しました。
えっ?42cm??
「ここのグレはあまりの体高の高さに、異常に大きく感じる」
これは前日にG−AREXさんが漏らされていた感想なのですが、まさにその通り。
元々の体高も高いんでしょうが、さらに腹をはち切れんばかりに漲らせた産卵直前のグレは魔物です(笑)

それから40分後くらいにラインがツッと微妙に引かれたので穂先でソフトに誘ってみると、追いかけるように重みがジワッと乗ってきました。
先ほどよりはるかに激しい抵抗がロッドを襲います。
左右に暴れるのを押さえて押さえて、浮かせてみるとウマヅラハギではありませんか。
しかも38cmとナイスサイズ!見るからに肝もパンパン!!
嬉しすぎる外道ですな、これは(笑)

その直後、今度は磯際さんの竿が大きな弧を!
見る者も手に汗を握ってしまうファイトがそこにありました。
底へ底へと突っ込んでいく魚の、物凄いパワー。ジワリ、ジワリと放出されていくライン。
何なんだ!これは!

何度もヒヤリとする瞬間を潜り抜けて、ついに磯際さんが攻勢に出ました。
その魚の正体を先に捉えたのは私でした。
ピンクの体に淡いブルーの光沢を纏い、体に一本の黒い襷を掛けた、想像通りのその姿。
「テスです!」「えっ?」「イラです、イラ!」「えっ?」
しばらくして磯際さんの位置からも、その姿が見て取れるようになりました。
「あ〜、ポッポちゃんか〜。」

 磯際のポッポちゃん
程なくタモに収まったポッポちゃんを、磯際さんはクーラーへ。
何でも、職場の魚好きのおばちゃんにお土産を頼まれているそうなのですが、そのおばちゃんがクーラーを開けて、この派手な魚を見たときの顔を想像して、しきりにニヤニヤとされています。
それを見て私は、この魚は皮と身の間に旨味が集中しているので、湯引きとか煮付けで皮ごと食べるのがいいと伝えてあげてとアドバイス。

さて、これから後は昨日と同様、潮が冷たくなってアタリもすっかりと遠のいてしまいました。
私は狙いを深タナに絞り込みましたが、それはGさんが前日、真鯛らしき魚に三発も飛ばされたという話を聞いたから。
折角この時期の宇和海に来たんです、高知じゃ釣れたという話もほとんど聞かない磯からの真鯛に挑戦しなくてはもったいない。
実は私は何度も何度も、真鯛を夢見て宇和海に来ているのですが、未だに磯からの真鯛のレコードは20cm。
船からでも30cmちょっとの物しか釣った事が無いのですが、今回もやっぱり反応は無し。
7cm程度のガシラを連発させたのと、なぜか25cmの口太を追加しただけで終了してしまいました。
グレを狙い続けた磯際さんも、ブダイ(赤)を一枚追加しただけで終了です。

私はともかく、磯際さんがこの釣果ですから、やっぱり厳しい時期ですね。
まあ、磯際さんが渡礁前に気にされてた通り、ここの目ぼしい魚は前日にG−AREXさんとkoutagureさんが釣り切ってしまっていたのかもしれませんけど。

それでも足取り軽く帰ることのできる魚も上がりましたし、今回も「仲間」との心豊かな釣りをさせてもらうことができました。
松田渡船もまた利用してみたいし、由良にもまた来なきゃなぁ〜。

 ● 由良半島 yura-hantou
利用渡船 松田渡船 出港地 愛媛県愛南町・船越
時間(当日) 6時半〜14:00
料金 3500円(地方磯の場合)
駐車場 無料 弁当 無し?
宿/仮眠所 無料仮眠所あり システム 一組目はジャイケン。
その後は他船との競争。
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

特に、今回は自信がありませんので。

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