風雲児  烈風伝
  ・変な物を釣ったばかりに・・・。
          奇跡の釣行、秋の夜長の硫黄島

2011年 9月23日〜24日(夜釣り) 鹿児島県 硫黄島 
・人吉、そして枕崎
9月22日(木)〜27日(火)が6連休になってしまいました。
期限ギリギリまで温存しておいた夏季休暇を元々の連休に組み合わせたら、こんなことになってしまったのです^^

9月に大連休なんて、フカセ釣りメインのアングラーにとってはほとんどメリットを感じない・・・はずですが、夜釣りの味を覚えてしまった今年の私ですから、その心に「遠征」という野望が生じるのはごく当然のこと。
そこで九州の「かまちゃん」と連絡を取ってみると、「23日に硫黄島の夜釣りを予約している」ということでしたので、厚かましくも同行させて頂けることになりました。

しかし、連休前には台風が沖縄近海に長時間居座り、天候や道路状況等ギリギリまで様子見を強いられる状況が続きましたが、ラッキーにも出発前日になって台風は去っていき、9月22日早朝4時に自宅を出発することが叶いました。
今回は往復ともに陸路、軽四を走らせ、14時に八代IC到着。そこからは台風の雨で増水し、濁流と化した球磨川沿いの国道を通って熊本県の最南端・人吉市までやってきたのです。

 想像以上に旨かった、きじ刺し
釣りの前にまず観光です。
22日は世界にも類を見ない井戸付きの地下室遺構を備えた武家屋敷跡を見学し、「かまちゃん」オススメのキジ料理店「きじ屋」で川の音、水車の音、球磨焼酎の空瓶を使った自家製オルゴールが奏でる「五木の子守唄」を聞きながらキジ肉の優しい甘みを楽しみ、帰り道の明哲温泉でくつろいでから、人吉駅前のボロいが安いビジネスホテルで就寝。

翌日23日は、国宝・青井阿蘇神社(境内になぜか放し飼いにされているニワトリの姿ばかりが印象に残ってます。)と、予想外の規模の大きさに圧倒された人吉城跡を訪れてから、10時過ぎに「かまちゃん」と合流。
再会の挨拶もそこそこに道具を積み替え、人吉ICから渡船の出る枕崎へ出発です。

青井阿蘇神社境内にあった
子どもが乗れる「きじ馬」。
人吉の郷土玩具をベースに
した遊具だそうです。
車窓には気持ちのいい青空が広がり、霧島・新燃岳の白い噴煙がほぼ真っ直ぐ立ち上っています。
この日の天候は最高!これは3日前には全く想像できなかった展開だ!
九州へ行けたところで硫黄島釣行は串木野沖の一文字釣行に化けてしまうだろうと、覚悟を決めていたというのに(笑)

九州自動車道から有料の山道(指宿スカイライン)を経て、南九州市川辺町にある「AZ」というスーパーで、フカセ釣り用のオキアミや小物類を購入し(この店、モヤシやカイワレ大根から、自動車とか墓石までも売ってます。)、山一つ超えて枕崎市へ入りました。

枕崎ではとりあえず「魚処まんぼう」の絶品の鹿籠豚殿(丼)(かごぶたどん)で腹ごしらえを済ませます。
それから市内の普通の食品スーパーで人間の食料を買い、硫黄島ではブッコミ釣りをするかまちゃんは「カツオの腹皮」、フカセ釣りをする私は「解凍ボイル剥きエビ」等を入手し、そして、黒潮丸へ!

・出港!
この日の乗客は7〜8人だったでしょうか。
ほとんどはシブダイ狙いのようですが、アラ(クエ)タックルを手にされた方と、船からの釣りの方もおられました。
全員のバケツリレーで頼んでおけば船側で用意してもらえる冷凍餌 〜キビナゴのトロ箱と、冷凍サンマ10kg箱〜 を船に積み込み、キャビンの思い思いの場所に寝床を確保して、出船の時間を待ちます。

    堂々たる硫黄島の風景、今回も大いに感動!
15時、長い眠りから覚めた黒潮丸のスクリューがベタ凪の海面を切り裂き、船は釣り師憧れの地・硫黄島へ向かって一直線に進み始めました。

黒潮丸はなんと一月ぶりの出航だそうです。
週末のたびに台風や時化に襲われており、この3連休さえも「今日はベタ凪ぎでも、恐らく明日の後半からは次の時化が始まり、明日の夜釣りは無理かもしれない」という予想を立てねばならない船長の言葉が悲しそう。

高速船黒潮丸は、ほとんど揺れる事もないまま約90分で大隈海峡を突破。
高揚感を押さえきれずにキャビンを飛び出した私の目に、高々と聳える頂から青空に向かって噴煙を上げ続ける硫黄岳の姿が飛び込んできました。
尾長グレ57.5cmを仕留めたあの日から約2年8ヶ月、ついにこの地に帰ってきたぞ!!
ダンディーな黒潮丸船長が、ポイントを解説。この永良部崎を回れば、
硫黄島港の変色域。「恋人岬」とも呼ばれるこの半島に架かる橋も見えます。

今回の硫黄島遠征には目的がありました。
それは前回見そびれたこの島の代名詞ともいえる光景・・・ 島の南側・硫黄島港やその周辺に広がる、温泉成分によって赤茶色に染め抜かれた海を自分の目で見ることです!
釣りとはあまり関係のない、一見しょうもない目的ではありますが、これを見ずして硫黄島に来たとは言えますまい。

が、誤算。
鵜瀬や平瀬からの磯付けかな?と思っていた船が、それらの磯に立ち寄りもせず、島の西側を回って進んでいくではありませんか。
そして黒潮丸は硫黄島の南側に長く伸びる永良部崎の西側で停止しました。

断崖絶壁が海に突き刺さる「永良部崎」は「鬼界カルデラ」の外壁をなしています。
「鬼界カルデラ」というのは、約7300年前に「アカホヤ噴火」と呼ばれる破局噴火を起こして巨大火砕流で南九州を焼き払い、この地域の縄文人を壊滅させた恐るべきカルデラです。
そして、この岬の向こうには赤茶色の海が広がっているのですが・・・残念、船は先端を回ることなく、半島西側のカメクレから引き返しながらの瀬付けとなりました。

硫黄島本島と、そびえ立つ「西の立神」の間に
小さく見えるのが「ミジメ瀬」。その隣の大きいのは
「大瀬」
・夕映えのミジメ瀬
私たちが渡礁したのは「ミジメ瀬」という所。
島の西端近く、天空に向かって屹立している西の立神と、硫黄島の断崖の間に浮かぶという独立磯です。
上がるのをためらってしまいそうな磯の名前とは裏腹に、名礁が並ぶ硫黄島の西磯の中でも潮通しがよく、大物の確率も高い人気磯とのこと。
ただし、立神側の水道など水深が相当深く、フカセ釣りにはかなり厳しい磯のようですな・・・。

前にも書きましたが、今回も私はフカセで挑戦なのです。
暗くなればキビナゴを撒いてシブダイ狙いの予定ですが、それまではグレをターゲットにオキアミ+集魚材で勝負です。
「こんな時期に、ここでクロ(グレ)が釣れるはずがない!」と言われはしますが、硫黄島からそう遠くない津倉瀬や鷹島でグレがボコボコ釣れているということですし、夜釣りでオキアミを撒きまくっていない時期だからこそ、尾長も??なんて詰まらぬ事を考えてしまってました。
四国では釣れないような外道も来るかもしれませんしね〜。

時間は既に17時です。 明るい時間はもう1時間ちょっとしか残されていません。
私は大急ぎで竿3号、道糸5号、ハリス4号、針速攻X8号、ウキはBの2ヒロ遊動という仕掛けを組み上げ、立神側の水道に撒き餌をパラリ。
するとどうでしょう、真っ先にその撒き餌に食いあがってきたのはなんと、1尾の40cmくらいのグレではありませんか!
しかし次の瞬間には海面はもうキツ(イスズミ)とオヤビッチャの群れに埋め尽くされ、針に掛かるのもその2種類ばかり。

   狙い的中!34cmの口太グレ。
ウキの頭に撒き餌を被せるのは不可。
そこで、撒き餌と仕掛けを随分離して投入し、潮上からサシエを滑り込ませて合わせてみれば、ウキがスッと消しこんで、竿にストレートな気持のいい引きが伝わってきました。
一気に浮かせてブチ抜いたのは34cmの口太グレ。
これを見て、かまちゃんは「信じられない。奇跡だ。」と呟き、後には船長や他のお客さんも一様に感心してしまうのですが、この一枚が皮肉にも今回の釣りの足を引っ張ることになってしまうとは・・・。

エサトリの群れの中に時折グレらしき魚は見えるのですが、潮が緩んでエサトリをかわしきれません。
時計を見ると既に6時、口太が狙える時間は早くも終わろうとしていました。

澄み切った秋の空気の中にはっきりと浮かび上がる、薩南三島の一つ黒島と、絶海に佇む湯瀬(デン島)との間に夕日が沈んでいきます。
私は竿を4号、道糸10号、ハリス12号のタックルに持ち替えましたが、肝心のウキは電輝ドングリ3B、針は閂マダイ11号と、明らかにシブダイではなく尾長グレを意識したものを選択していました。
「無理だと言われた口太が釣れたのだ、尾長が釣れないはずが無い」と。

・夜釣りに突入
  澄み切った秋の空に夕日が落ちます。
  右は「黒島」、左にポツリと見える岩礁は「湯瀬」!
日が暮れるとともに、猛威を振るっていたオヤビッチャは影を潜め、その代わりにギンユゴイの群れがサシエに群がり始めました。
ギンユゴイはシルバーメタリックの結構カッコイイ魚ではありますが、身は血生臭いですし、投げても投げても25cmクラスのこの魚という状況にはうんざりとしてしまいます。

このギンユゴイに苦しんでいるうちに、磯は早くも闇のベールに覆われてしまいました。
ブッコミ釣りのかまちゃんはこれまでキツの切り身やサンマの切り身を餌に、明るいうちが勝負だというアカジョウ(バラハタ)を狙っておられましたが、本命からのシグナルは全く届かず、仕掛けをシブダイ用の物に替えて船着きへとお引越し。

私はかまちゃんと入れ替わりに北側本島向きに移動して、オキアミをパラパラと撒いてみました。
すると、すぐ近くの暗い水面で夜光虫がギラッ!ギラッ!と発光し、そこそこのサイズの魚が撒き餌を拾っているのが感じられるではありませんか。
その夜光虫の光るタイミングと餌をあわせてみると・・・ 来るには来たのですが、それはコッパギツ・・・。

こうして何投か続けているとこちら側にもギンユゴイが現れ、次いで赤い悪魔(ナミマツカサ)も登場。
尾長、ギンガメアジ、カスミアジ、あるいはグルクン・・・という野望とは裏腹に、状況は最悪。
ユゴイとマツカサ、たまにイスズミ。これではどうにもなりません。
一方で、かまちゃんの方も、マツカサモリモリ!なのか、餌が全く持たず、エサトリに強いカツオの腹皮ですら大苦戦、釣れてもウツボという有様です。

それでもいつか必ず、「いい魚」がこいつらを追い払ってくれるはずだと信じ、上層狙いにこだわっていると、沖を流していた電輝ドングリが浅い角度で走りました。それは8時21分のこと。
ギンユゴイのアタリよりも素早いウキの動きに期待たっぷりにファイトを始めると、右へ左へよく走ります。
何かな?これは?ん?トッパクアジか。
何の迷いも無く磯に抜き上げられたその魚は、大きな眼がトレードマークの標準和名メアジ31cmでした。
九州での評価は分かりませんが、四国だったらあまり喜ばれない魚。でも、この状況ならキープでしょう。
しばらくはこのメアジが連れ続くかな?と思って水道中央部を狙い続けますが、後に続くのはギンユゴイばかりなり。

これでようやく上層狙いに見切りをつけられました。
トロ箱のキビナゴやイワシを撒いてから、ウキを5号の棒ウキ、ウキ下も2本〜2本半に変更。
まずは足元の壁際にその仕掛けを落としてゆっくりと潮に乗せていると、仕掛けが何かに引っかかったようにして止まってしまいました。
竿を煽ってみると案の定、根掛かり・・・ いや、ズルッと外れたぞ。何か掛かっているようだ。
首を傾げながら回収してみると、仕掛けの先に何やら30cmほどの細長い物が身をくねらせています。
磯に抜き上げて、ライトを照らしてビックリ仰天!
白地に黒い斑点を散りばめた、おどろおどろしい生物が、磯の上でのたうっていたのです。
「ウミヘビや!!」

パニックになりかけたため、
こんな写真しかありません。
ラインも絡んでるし。
「ウミヘビ」と呼ばれる生物には、ウナギ目に属する魚類のウミヘビと、爬虫類のウミヘビの二通りあるのですが、この白黒のカラーリングは確かコブラ科の海蛇だ!!強烈な神経毒を持つこんなのに咬まれたら到底助からない。
そんなのが、まるでウツボのように、体を結ぶような動きでハリスを這い上がってくるのです。私は半ばパニックになりながら糸を切って、暗い海へ放り投げたのです。
すっかり蒼ざめてしまった私が、この恐ろしい生き物が実はウツボの幼魚であり、決して爬虫類のウミヘビなどではないことを知るまでには、次の夜を待たねばなりませんでした。
(私はこれを「ニセゴイシウツボ」の幼魚かと思っていたのですが、釣りんぼさんと、玉野海洋博物館のtama先生が「クモウツボ」ではないかと教えてくださいました)

・さらなる恐怖
この夜、私たちが体験したもっと恐ろしいこと。

硫黄島と立神、そして湯瀬の方角に霞の帯を引いたような天の川と、漆黒の海へと降り注ぐ満天の星明り。
硫黄島との水道を流すウキの灯りと、船着きとの間を隔てる岩の壁の向こうから突き出されたかまちゃんの竿に取り付けられたケミホタル。
そして磯の上にはもう一箇所、光を放ち続けるものが存在していたのです。

私は2つに仕切られた餌入れをバッカンに引っ掛けて使っているのですが、そのうちの片方が黄緑色に発光しています。
そこに入っている解凍ボイル剥きエビが全て、ちょうど夜明けのケミホタルくらいの色と明るさで光り輝いてるのです!
その剥きエビを手に取って針に刺そうとすると、指にまでベットリと蛍光物質が付着しますし、仕掛けを振り込む際にはウキの灯りと一緒に、真っ暗闇でも形がはっきりと分かるエビが宙を舞います。
何なんだ、これは!?

これが集魚効果を期待して、そういうふうに加工された釣り餌であれば問題はないでしょう。
が、この確かインドネシア産だったはずの「解凍ボイル剥きエビ」は、枕崎市内の食品スーパーで人間の食用として売られていたものを購入したもの。
私たちは知らず知らず、このような添加物を食べさせられていたのですね。
こういうものを大量に食べ続けてきた私たちの、100年後、200年後の子孫は一体どうなってしまっているのだろう・・・と、ゾッとして鳥肌が立ってしまいました。(その上、ひた隠しにされているであろう、もっとややこしい物質までも食べたり、取り込んだりするしかないですしねえ)
とりあえず、「冷凍の剥きエビは食べるのをやめておこう」と決意した二人の磯釣り師でした。

北向きの先端のポイント。右は硫黄島本島。
・本命登場
潮が再び北へ方向転換して動き始めた10時過ぎ、キビナゴ餌で底スレスレを攻めていた私のウキが鮮やかに消しこみました。
魚は小さいですが、これまでとは違う引きを見せています。
構わずゴリ巻きで引き抜き、ライトを当ててみると、フエダイ科の魚が跳ねているではありませんか!
一見シブダイ(フエダイ)によく似たカラーリングながら、トレードマークの白点を欠き、背ビレの縁を鮮やかな赤で染めた28cmのオキフエダイ。
これもまあ、本命の一部。これを見たかまちゃんも活性急上昇で、船着きで正真正銘のシブダイを立て続けに2枚ゲットしてしまいました。

ただし、本命が食ってきたのはこのほんの一瞬だけでした。
やがて潮は北方向への激流となり、いつしかエサトリのアタリすら遠のきました。
仕掛けを再び上層狙いにしてみても、釣り座を立神向きに戻してみてもキツくらいしか食いませんし、体力も限界。
既に眠りに落ちていたかまちゃんの近くで、1時間だけ眼を閉じました。

・夜明けの遅さがもどかしい
耳元に置いていた携帯電話のアラームで眼を覚ました4時には、首をもたげ始めた荒波が磯を叩く音が随分と大きく響き渡り、磯には硫黄の臭いが立ち込めていました。
回収まであと3時間。
私は急いで立神向きの釣り座に下り、3Bのウキで2ヒロのタナを攻めてみました。

夕刻、立神側のポイントで投げるかまちゃん
その数投目でウキが鋭く消しこみ、この日一番の引きが襲ってきたのです。
ただ、その引きも4号竿の前では問題にもならず、浮かすことは非常に容易。
しかし抜き上げるとなるとしんどそうだな・・・と思っていたら、かまちゃんがタモ入れの助っ人をしてくれました。
でも、この魚、サイズこそ50cm近くあったのですが、全体的に白っぽくて、顔付きが悪かったんです。
まあ最初からガンガン竿を叩いてくれていたので、ライトを当ててからガッカリなんてことは無かったんですけどね。
その後もいくらかキツが掛りましたが、アタリはすぐに遠のいてしまいました。

狭い磯ですし、餌付けの明かりがあらぬ方向へ飛ぶのは避けられませんけど、それが水面にこぼれて悪影響を及ぼしているのかもと思って場所を移動しますが、船着きの本島側はマツカサに占拠されていてアウト。
さらに船着きの横の狭い足場に移動して、ここから立神側の先端〜水道を探ってたところ、空が急激に白み始めました。

時間はすでに5時45分。私は大急ぎで竿を3号に持ち替え、ハリスも3号まで落として最後のチャンスに全力を注ぎます。
残された時間は実質40分、時間との戦いです。

投げて、掛けて、取り込んで、リリースして、投げて、掛けて、取り込んで、リリースして、投げて、掛けて・・・
この僅かな時間の間に、私は30cmクラスのキツをどれだけ釣ったことでしょう。
そんなキツの群れと、太陽の高度と正比例して数を増すオヤビッチャ、そしてポイントの水道を疾駆していく硫黄島の漁師の小船をかわしながら「奇跡のグレ」の再来を必死で狙ったのですが、撒き餌に群がる魚群の中に白い尾鰭の魚は見当たりません。

そんな中、手前に撒き餌を固め打ちして、仕掛けだけを立神の際近くに投入していた時のことです。
スルスルッと入っていったウキにアワセを入れたと同時に、竿が一際大きく曲がりこみ、スピード感たっぷりの抵抗を見せる魚が掛かりました。
寄せてきた魚は、足元の根際に勢いよく突っ込んでいきます。
久しぶりに味わうスリルに胸を躍らせながら、竿を突き出してブレイクを2度防いだところで観念した魚が浮いてきました。
私はそこそこ大きいキツだろうと思っていたのですが、目に映った魚は細長い。
全長40cmのその魚はムロアジでした。
それほど喜ばれる魚ではありませんが、この状況ですのでキープを決め、とりあえず磯の上に置いておこうとした所をかまちゃんがクーラーにしまってくださいました。

回収直前のかまちゃん。「大瀬」と「中の瀬」の沖に
屋久島、右端に口永良部島のシルエット。
そのかまちゃんの方は、最後までブッコミに賭けていました。
明るくなってから船着きで待望のヒット!しかも、浮いてきた魚は赤い!!
が、これは期待のアカジョウ(バラハタ)ではなくて、ヒレをいっぱいに広げたハナミノカサゴでした。
「近所の釣具屋の店員がいつも、ミノカサゴはめっちゃ旨いと言っている」と伝えると、恐々クーラーに納める、苦笑いのかまちゃんです。
これを機にかまちゃんは納竿。

残る私は相変わらず必死で硫黄島の海を探り続けますが、グレが針に掛かることはありません。
そして、6時20分に30cmほどのキツをヒットさせた時に、穂先の全てのガイドがウキの上へと降り注いできました。
経年劣化していた3号竿のトップガイドの軸が折れているではありませんか。
もちろんこれでキッパリと終了です。

ミジメ瀬からの回収は7時10分。
枕崎への帰り道、疲れきった私たちに、満足な眠りは許されませんでした。
すでに牙を剥きはじめた時化が黒潮丸を大きく揺らし、半分船酔いした状態に耐えながらの船旅だったからです。

・楽しい夜はもう一夜
24日10時前の枕崎港。
見事なサイズのシブダイを手にした他のお客さんたちや、夢溢れるフィールドに案内してくれた黒潮丸船長に再会を約した私たちは、枕崎市内の「なぎさ温泉」に浸かって、先ほどまで戦いを繰り広げた硫黄島を眺めながらゆっくりリフレッシュした後、枕崎おさかなセンターで土産を買い求めてから北上を始めました。
途中、桜島SAで、対岸の桜島の小規模噴火を目にしながらの昼食を採り、午後1時頃、相良村に帰還しました。

剣豪・丸目蔵人佐
私は一旦かまちゃんと別れて「道の駅錦町」に行き、丸目蔵人佐長恵(まるめ くろうどのすけ ながよし。戦国期の「剣聖」上泉信綱の高弟にして、(新陰)タイ捨流の祖。)の銅像を見、一眠りしながら時間を潰し、一昨日と同じ人吉駅前の安宿にチェックインしてから再び相良村を目指しました。

その夜はかまちゃんのご自宅の庭で焼肉パーティーです。
いつもお世話になっている「てんびんばかり」のKICIROWさんが、「ちょうど近くの渓流で釣りをしているので、そちらに行きます」と、鹿児島県加治木周辺でしか手に入らないという「謎の豚肉」を手に相良村までお越しくださったのです。

そして、かまちゃんとそのご家族、KICIROWさんと私は、人吉市街で開催されていた花火を眺めながら鉄板を囲み、時を忘れて、いつまでも尽きない話に花を咲かせてました。

この翌日に、私は人吉を後にし、なぜか中国道、作東、上郡を経由する遠回りルート、約710km+αの道を走りぬけ、相生へと引き上げたのでした。

今回の硫黄島での釣りは、偶然の口太のヒットから変な期待を引きずってしまったがために、結局は上層か底層か、どっちつかずの釣りに終始するだけで終わってしまいました。
ああすればよかったかも。あれに徹していればよかった等々、後悔ばかりが残っていますし、目的の変色した海域も見られずじまいでした。
それでも時化の狭間に滑り込むことができるという奇跡に恵まれ、硫黄島の豪快な自然に触れられた今回の釣行は、何物にも代えがたい幸福としかいいようがありません。

次回の遠征への原動力として最高のものを得ましたし、今度は火山に育まれたグレ達と真正面から戦える時期に、ぜひとも行かねばなりますまい!

 ● 硫黄島 ioujima
利用渡船 黒潮丸 出港地 鹿児島県枕崎市・枕崎漁港
時間(当日) 15:00(枕崎発。航程約90分)
〜7:00(回収)
料金 16000円(夜釣り)
(昼釣り13000円)
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 磯割りあり
磯替わり 夜釣りは無し 餌の用意可
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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