風雲児  烈風伝
爆風亭風雲児の南西の旅!(2) 〜名鹿脱線釣行記〜

2011年10月10日 高知県四万十市 名鹿

ようこそのお運び、厚く御礼申し上げます。
今回は久しぶりに変わった釣行記にお付き合い願います。

節電節電で薄暗くて、気温の割りに暑かった夏も終わりまして、いつの間にやら秋も深まってきましたので、今回の書き出しはこれだ!と思いまして、

『野辺へ出てまいりますと、秋真っ盛りのことで、梢にはモズがチキチキさえずって、下には萩、鶏頭の花盛り。
天は高く澄み切って、遠山も手を伸ばせば届くよう。
稲が黄金の穂をたれて、コスモスの花が彩っていようかという本陽気、やかしゅう言うてやって参りました、その道中の陽気な事〜』

というようなのを用意しておりましたが、実際に高知へ行ってみると、この頃はまだまだ夏がしぶとく頑張っておりまして、昼間は半袖で、車のエアコンやらアイスクリームが要るほどの暑さでございます。
その上、アブラゼミやツクツクホウシの声が山の方から聞こえてきたりして、こんな書き出しではどうもしっくりと来ませんな。

タモと竿立て。2008年2月撮影の画像。
竿立
「古っ!今回撮るの忘れてたでしょ!」
実はこの時のタモも竿立ても、故障のため
新しいのにバトンタッチ済みなんです。
タモ
「えっ!?ワシらって、一体・・・」
それでもやっぱり10月、神無月。
あちこちでグレ釣りがそろそろスタートし始める時期でございます。
全国的には神様は出雲へ出張するべき時期だと思うのですが、最近パワー控えめの「時化の神様」は、グレ釣りの欲求抑えがたいということで、何と反対方向の土佐へ出張してしまったと言いますから、全く、迷惑な話ですわな。
ともかく今回の風雲児は釣れ出しの早い「名鹿(なしし)」の磯で、宿毛の「だいきち」さんと一緒の竿出しでございます。

10日午前6時前、連休にも関わらず二人で貸切状態の渡船に乗って磯に上がりまして、いつもどおり打ち込み式の竿立てを磯に打ち込み、タモ網をセットした風雲児でありますが、この竿立てやタモ網がただ黙ってそこにあるだけだと思っていたら、それは大きな間違いなのでございます。

タモ「おはよう。ワシら久しぶりの登場やなあ。」
竿立「おはようございます。確か3年半ぶりでしたかねえ?大丈夫なんでしょうか?」
タモ「こんな事せんと普通に書いたほうがええと思うんやけどな・・・。
   ところで今日の磯はゴデンかな?どこかで見たような形やけど。」

竿立「そうですね。「ゴデン」ですね。中村フィッシングのトップページを飾っていたりして、名鹿では実質、一番有名な磯かも。」
タモ「グレの魚影の濃い磯やとも聞くなあ。先端でやれたらええんやろけど、今はごっつい潮が高いから、引いてくるまで
   移動はお預けやな。」

竿立「平らな所はザバザバ洗ってますもんね。どうやらご主人はちょっと高くなってる船着きから、だいきちさんは
   沖向きの平らな所のサラシを後ろの方から狙うようですね。
   ところで、この「だいきち」さんとご主人は、一緒に竿を出すのは今回が初めてだそうですが、付き合いは
   結構長いんだそうですね。」

タモ「ここの掲示板に書き込んでくださったんが6年ほど前かなあ。この釣行記にもちょくちょく登場しとんやで。
   色々と情報を貰たり、釣りの時に覗きにきてくれたり、ご主人が四万十川で釣ってた時なんか、餌(金魚)が
   手に入らずに困っとったら、店で買うてわざわざ持ってきてくださったんやで。」

竿立「昨夜はご自宅にまで泊めてもらって、今朝も楽しそうでしたね。」
タモ「だいきちさんとは歳も近いし、子どもも可愛かった言うて、昼間の撃沈も忘れて楽しんでたようやな。」

竿立「そういえば、昨日の昼間も釣りをしてたんですよね。ご主人は一体何を狙ってたんですか?」
タモ「なんや「ユゴイ」とかいう魚らしいで。磯におるギンユゴイの仲間やけど、こいつは汽水から淡水に
   遡ってくるやつで、最近四万十川で激増しとる魚なんやと。」

竿立「本州・九州では知名度ゼロに近い魚ですよ。何でそんなのを釣ろうとするのか・・・この人の変人っぷりには
   呆れてため息すら出てきませんよ。しかも撃沈ですか?」

タモ「そら釣れんで。ポイントも分からん、どんなサイズのが居るのかも分からん。ほぼ唯一の情報言うたら、
  ネットで見た『近年、佐田の沈下橋周辺でも普通に見られるようになった』ちゅう新聞の記事だけやで。
  とりあえず佐田の沈下橋まで行ってみたら、面白そうなポイントはあったけど、観光客どっさりの橋の下じゃ
  とても竿、出せへん。」

竿立「へぇ〜、この変人でも観光地の真下で竿を出す勇気はありませんでしたか。」
タモ「結局、他に気軽に川に近づけそうな場所も無うて、角崎あたりの汽水域でやっと竿を出したけど、
   なんぼやってもミニキビレとウグイしか釣れへんのや。
   で、ご主人もスッパリと諦めて、マングローブジャック
(ゴマフエダイ)釣りに切り替えたんや。」
リョータさんが覗きに来てくださいました。
竿立「へっ?今度はマングローブジャック!?
   この人が中学生か高校生の頃から憧れている魚ですか?
   熱帯魚の本の汽水魚特集か何かに、『レッドフィンナンダス』
   とかいう名前で載ってたのを見て興味を持ったとか。」

タモ「そうらしいな。それで、前に泳いどるのを見た汽水域の港に移動して、
   水の中を覗き込んだらビックリ仰天や。
   チヌの群れに、クロホシマンジュウダイ
(グリーンスキャット)の群れ、
   ツバメウオ
(モノダクではない)の若魚が泳いどって、もちろん
   マングローブジャックも居る。さらにはでっかいグレまで見えとったりする。」

竿立「うわあ・・・。ヨダレ垂らしてたでしょ。」
タモ「そうなんやけど、これが全く釣れん。ルアーでも餌でもちょっと落とせば
   皆逃げる。
   落としてからじっくり待ってたところでアマギ
(クロサギ)すら食わん。
   釣り場にだいきちさんとJr君、小才角から帰る途中の釣巧会の
   リョータさんたちが遊びに来てくれて雑談なんかしとったんやけど、
   
あまりにも釣れそうな気配も無いもんでみんなさっさと帰ってしもた。
   諦めの悪いご主人もな、割りと早いうちに諦めて帰ってしもたんやで。珍しいと思わんか?何でやろ?」

竿立「へぇ。河口だけに、引きは早いようで。」

とまあ、後ろでゴチャゴチャゴチャゴチャ言われているのにも気付かず、セッティングをしていた風雲児でありますが、やっとのことで名鹿・ゴデンでの釣りの準備が整ったようでございます。

タモ「今回の竿は久しぶりに赤いぞ!あれはもしかして・・・」
竿立「メガチューンの1.65号、ご主人の言う「ボウズロッド」じゃないですか。半年振りの登場??」
タモ「最近調子がよかったの、この竿を全然使うてなかったからやないのか?ほんまにええのか・・・それで?」

周囲の心配もどこ吹く風の風雲児。
相性の悪い竿にゼロウキ+G5の仕掛けをセットして、船着きのデッパリから磯際にパラパラパラパラと撒き餌を入れてみたのですが―

タモ「エサトリがあんまり見えんな。チョウチョウウオが少々と、カワハギの小さいのがチラホラ。
   まるで冬の海やな。」

竿立「うねりが取れなかったので、餌があまり入ってないのか、それとも竿が魚を遠ざけているのか・・・」


タモ
「30分ほども撒き餌してたら、どうにかグレが見え出したけど・・・。小さいなあ。数もそこまで居らんし、
   動きもえらい悪そうな感じや。」

竿立「仕掛けをいじってゼロゼロのスルスルに替えたらどうにか針に掛けることが出来ましたけど、サイズはやっぱり
   手のひらですね。それもたまにしか食いませんし。」   
タモ「だいきちさんの方は2ヒロから1本くらいでサラシ狙いやけど、こっちもコッパグレがちょっととオジサンくらいやな。」


タモ
「もう7時半になったけど、状況は変わらんな・・・と言うとる側からウキが入ったで!」
竿立「そんなにパワーは無いけど、キュンキュンと元気に走り回ってますね。
   見えてきたのはグレじゃなくてアジ・・・おっ、シマアジじゃないですか。」
タモ「今回は低い所に上げられるからワシの出番は無しやな。
   普段やったらご主人、この魚だけはなんぼ小そうてもワシを使いよるけど。」
竿立「高々26cmですが、ご主人、嬉しそうな顔してますね。」
タモ「見てみ、必死で撒き餌打ちだしたで。もうあの人の頭の中には「シマアジの刺身食い放題」しか無いみたいや。」
竿立「シマアジが回ってきたら撒き餌をドンドン打てと教えてもらってましたもんね。でも今回はこの一枚だけで
   終わってしまったようですよ。」
タモ「そやけど、魚が見え出したで!サイズも40cmのやつに50cmくらいのも混じっとるようや。」
竿立「う〜ん、でもあれ、尾鰭が黒くないですか?」
タモ「たとえキツでも居るだけええやん。ご主人のテンションも上がってるし。」
竿立「仕掛けいじったり、タイミング計ったり、色々やり始めましたもんね。
   何々?沖に1発撒き餌打って、25秒待ってからウキを投入?それから被せ入れて・・・?おっ、来たっ!」
タモ「あれっ?グレやがな!サイズアップしたけど24cm・・・、それ、キープするんか。」
竿立「普段ならコッパですけど、今日の状況でリリースしたら家庭が危ないですからね。
   僅かなシマアジの刺身の奪い合いで、家族の絆がコッパ微塵に・・・。」
タモ「大げさすぎるわ!」

竿立「ご主人、首を傾げてますね?」
タモ「ウキをちょこっと押さえるアタリが出たんで、不審に思ってアワセ入れたら、結構な引きが返ってったけど、
   一瞬で針が外れてしもたみたいや。」

竿立
「もしや、いいグレだったんじゃないですか?ほら、よく聞くスレきった尾長のアタリだったとか」
タモ
「その可能性も無いことは無いやろけど、十中八九ボラやろなあ。」
竿立「でしょうねえ。でも、この人、絶対本命だと思い込んで目の色変えてますよ。まさに『ボラが手玉に取る男』。
   いっそ、これを機に改名したらどうでしょう?」

タモ「おい、どこかで聞いたフレーズやと思たら、お世話になっとる「てぼ@高知さん」のHPのパクリやないか。」
竿立「ですから改名した後で「実はこっちが元祖です。あちらが真似してるんです。」と訴えれば・・・」
タモ「海外とかやったら聞かんでもない話やけど、そんな恥ずかしい事、できるわけないやろっ!」

 だいきちさんとシブダイ(フエダイ)
タモ「おっ、またご主人の竿が立ったぞ!今度のはえらいパワーや!」
竿立「あっ!ハリスが飛んだ!あちゃ〜、噛み切られてますね。」
タモ「アワセが遅れたな。キツやないかとは思うけど、あんなやりとり・・・」
竿立「きたっ!!今度はだいきちさんがヒットですよ!」
タモ「連続ヒットやな!それっ、ワシの出番・・・はないか。
   ゴデンの鼻とサラシとの間のワンドから一気に抜き上げたった。」

竿立「何とまあ、シブダイ(フエダイ)じゃないですか!白星のやつ。
   昨夜は二人でシブダイ談義を繰り広げてたんでしょ?」

タモ「ミニサイズやけど、えらいタイムリーな1匹やな。」
竿立「おおっ、また来た!だいきちさんに連続ヒットですよ!
   今度は物凄く引いてますよ!頑張れ!」

(ブチッ!)
タモ「残念、今度はハリスが飛んだか。だいきちさんはバンドウやないか
   言うとってやけど、姿を見たかったなあ。」


しばらくすると弁当船がやってきました。
乗船の際、磯へ降りる際に「弁当」「弁当」と連呼したのがよかったようですな。
せっかくですので、二人とも暖かいうちにこの弁当を平らげてしまいまして、また釣りに戻ったのでございます。

タモ「潮が引いて先端への道ができたんで、ご主人、ワシらを持って移動する気やな。」
竿立「先端までには2箇所、低い所がありますが、そこを時々大波が洗っていきますね。」
タモ「あんなの食ろたらご主人もろとも流されてしまうな。よぉタイミングを計って・・・今や!」
竿立「ふう、無事に移動完了ですね。それにしてもこの先端、見ただけで笑みがこぼれるような好ポイントですね!」
タモ「凄いな!沖のチョボとの間には大きなシモリがあって、いかにも魚が潜んでそうやし、潮通しもバッチリやな。
   右にはワンド、左には狙いやすそうな棚がサラシに向けて伸びとる!」


竿立「ちょっと餌撒いたら、シモリ際から色々と魚が出てきましたよ。
   40〜50cmのキツがほとんどで、ボラやらキバンドウやら、他にもちょっと感じの違う魚も反応してますね。
   アグレッシブに表層まで突っ込んでくるわけじゃありませんが、下でしっかり撒き餌を拾ってますね。」

タモ
「オモリを付けたり外したり、ウキ止めを付けたり無効化したり・・・色々と仕掛けを試しとるけど、なかなか
   合わんなあ。」

竿立「今度はプラス浮力の小ウキを付けて、口オモリで浮力を打ち消したスルスルですか。」
タモ「おっ、食うたぞ!25cmやけど口太グレや。」
竿立「まさかあの小ウキで食いますか・・・。あれ、ご主人が作った出来損ないのやつですよ。」
タモ「どう失敗したらそうなるんか分からんけど、水に浸けたら何故かヌルヌルする、気色の悪いナビウキやろ?」
竿立「そうなんですよ。何で釣れたのか・・・。
  人があまり入っていなかっただけに、グレの警戒心も温々
(ぬるぬる)、いや、緩々だったとしか・・・」

タモ
「また何か取り出してるで。内ポケットに隠した・・・釣武者の餌巻き糸か。」
竿立「タマメさん推薦のイシダイ用のやつですね。これで生オキアミをグルグル巻いて―」
タモ「仕掛けが順調に入っていっとるな・・・。あっ!来たっ!!」
竿立「おおっ!強烈に引いてますね!これまでとは桁違いですよ!」
タモ「意外と、思うたとおりに魚を止められん竿に手こずっとるけど、どうにか足元の根をかわしたな。
   そやけど、これ・・・」

竿立「竿をコンコンと叩いてますね。これは間違いなく名鹿の名物・・・」
タモ「出た〜。サンノジや!軽々45cmあるな。今日は全然掛かっとらんかったんが不思議やったけど。」
竿立「多いですもんね〜、サンノジ。ここで一日釣ってサンノジを掛けずに終わるのは、50cmの尾長を釣るより
   よっぽど難しいことだと、ご主人が言ってましたね。」
タモ「「70cmの尾長を釣るんなんか、彼女というものを一人作るより絶対簡単や」とも言うとったな。」
竿立「基準がよく分かりませんね。まあ、この人が70cmの尾長を釣ることも、この人に彼女ができることも、
   生きているうちにはありえないということだけはハッキリと分かりますが。」
タモ「ワシもそう思う。
  そうそう、サンノジで思い出したけど、ご主人と釣巧会のリョータさんとで「サンノジマスターズ名鹿大会」を
  開催する計画が進行中らしいな。」

竿立「本気でやれば10数キロの勝負になるかもしれませんよ。でもそんな大会、参加者は2人だけだな。
   で、その大会の優勝賞品は消臭グッズだと見た!もしくは目には目をで、ニンニクとかニラとかキムチ鍋の素!」

タモ「前のんはともかく、後のは効かんし、ほとんど罰ゲームやがな!」
(ちなみに、時期や処理方法、産地や個体によっては普通に美味しく頂けると聞いています。)

タモ「あれっ?ご主人、仕掛けを1ヒロ固定にしたんか?サンノジマスターズの練習はもう終わりか?」
竿立「今日は幾ら釣ってもニンニクもらえませんからね。どうやら正面のシモリの上・スレスレを狙うようですが―」
タモ「うわっ!水煙を上げてウキが入ったやないか!」
竿立「あ〜、これは無理や!!」
と叫ぶが早いか、何もできないままハリス切れでございます。

タモ「どうにもならんかったけど、あのでっかいキツが食うたんかな?」
竿立「シモリの上をウロウロしてた60cmオーバーのコロダイかタマメ(ハマフエフキ)だったのかもしれませんよ。」
タモ「ハリスは2.5号やったんか。」
竿立「朝、噛み切られた時に2号から上げて、それから太さは変えてないですね。
   人によっては太いと言われるでしょうけど、この人の腕ではもっともっと太くても獲れてません!」」

タモ「そういえば、今度行く予定の中泊なんかやったら、60cmクラスの尾長を2号くらいのハリスで狙うんやろ?」
竿立「何年も何年も通って切られまくってたら、そのうちに獲れるようになるって聞きますが・・・」
タモ「地元の人やったら理に叶とる方法やろけど、この人には無理や。
   それに毎回名礁に乗れたとしても、5号とかのハリスばっかり使うて撃沈するで。確実に。
   何か知らんけど、名のある場所に行った時は妙に太いのにこだわるからなあ。」

竿立「そんなハリスでも問題なく食わす人は幾らでもいるでしょうが、この人には無理でしょうね。」
タモ「次回の釣行記は「撃沈」だけで終わりそうやから、せいぜい今回は思う存分脱線して、色々と書いとくか。」

回収直前の様子。先端への道は思い切り洗われてます。
沖はゴデンのチョボ、船着きは画面外、右の方です。
竿立「ご主人、今度もシモリの上狙いですか。」
タモ「このシモリは長々と続いとるようやから、今度はちょっと
   遠投してみるようやな。」

竿立「あっ、来た!何か今度は余裕で寄せてきてますけど。」
タモ「やったな、口太グレや。それっ、ワシの出番!
   34cmやけど、唇一枚の針掛かりやったな。
   危ない危ない。」

竿立「11時半にして、ようやく納得サイズが登場ですね。
   ワンドを狙い続けていただいきちさんも
   これを見て先端に移動してこられましたよ。」

タモ「だいきちさんはカブト向きに出とるサラシと、
   その切れ目を狙とってやな。
   ほな、ワシはご主人と一緒に船着きのクーラーまで
   行ってくるわ。」

竿立「波にさらわれないように気をつけてくださいね〜」

タモ「ただいま。船着きまでの道は干上がっとるんやけどなあ。
   あの溝からの駆け上がりの波が怖いな。
   タイミングさえしっかり見定めたら何とも無いんやけど、
   その待ち時間が長うて面倒くさいわ。」

竿立「おっと、ご主人が磯際で掛けましたよ。何か強い締め込み一発だけであっさり浮いてきましたが。」
タモ「40cm足らずのテス(イラ)やな。これ、湯引きにしたら旨いけど・・・えっ?またクーラー行きかいな〜」

タモ「ただいま。」
竿立「今度はだいきちさんが、サラシの切れ目で掛けましたよ!」
タモ「やれやれ、小さめのサンノジかいな。任せとき!」
(ザバッ)
竿立「何かホッとしてませんか?おっ、だいきちさんが続けてヒット!」
タモ「今度はええ型のアイゴやな。だいきちさんも引きをじっくり楽しんどってや。」
竿立「どうやらリリースされるようですね。こらっ!そんな嬉しそうな顔しなさんな!」

こうして夢中で竿を曲げておりますと、海の状況が見る間に変わってきたんですな。
これまでとは打って変わって潮が止まってしまったとかじゃないんですね。
カブトの方向に流れている潮はかえって早さを増しまして、沖のチョボとの間を見事な潮目がすーっと、一本の帯を描いて、足元のサラシもそこへと注ぎ込んでいるという状況でございます。まあ、これで釣れなければおかしいっちゅう状況ですわな。

  ワンドを攻める、 だいきちさん。
タモ「おかしいぞぉ!何で釣れへんのや!?」
竿立「一体どうなってしまったんでしょうね?見えてた魚も居なくなったし、
   エサもほとんど落ちなくなってしまいましたね。」

タモ「四万十川の川水が流れ込んできたんやろか?」
竿立「釣行前数日に大雨はなかったそうですし、冷たい潮でも
   入ってきたんですかねえ?
   だいきちさんはこのポイントから引き上げて、朝のサラシで
   なにやら始められましたよ。」

タモ「だいきちさん、ちょっとだけやけど生のキビナゴを
   持っとったったっんやな。。
   パラパラとサラシに撒いて、針に刺して放り込んどってや。」

竿立「ウツボでもいじめてみると仰ってますが、
   名鹿のことですから、サンノジにいじめられたりして。」


一方の風雲児は、先端に残って釣りを続けておりますが、魚からの反応は未だ途絶えたまま。さらに―
タモ「段々潮が上がってきて、たまに足元近くまで波が上がってくるようになってきたで。」
竿立「ご主人も後ろを気にしながら釣ってますが、そろそろ引き上げの潮時と判断したようですね。」
タモ「うわっ、問題の溝が真っ白や!酷い時はご主人の腰の高さまで潮がなだれ込んできとるがな。」
竿立「道ができる瞬間も相当短くなってますしね。」
タモ「だいきちさんが釣り座から受け取ってくれるちゅうとってやから、ワシだけお先〜。」
竿立「おいっ!ズルいぞ!」

まあそうは言っても、途中の安全地帯は無事ですし、タイミングさえ間違えなければまだまだ無事に渡れる時間帯でしたからな。
待ち時間はえらいこと長う掛かりましたが、マキエ杓が流されてしまったのと、一回、頭から飛沫を被ったという程度の被害で戻ってきた風雲児と竿立でございます。

タモ「さて、船着きの釣り座に戻ってきたけど、どう攻めるんやろなあ?
   直撃できる場所に潮目が伸びて、ええ感じなんやけど・・・。」

竿立「ご主人、Bのウキを取り出しましたよ。ハリスを3号に張り替えて、Bのオモリ打ちました。
    しっかりタナを取って深ダナを攻める気ですね。」

タモ「そやけど、ウキ止めが無いな。さては、ご主人が相当昔に本で読んだスルスル釣りやな。あの江頭さんの。」
竿立「まだ1:50なのに?」
タモ「あんた、もしかして、名前の読み方間違えとらへんか?」
(失礼しました。)
竿立張ったり緩めたりして深い所まで広く探っていくんですね。
    ご主人、たどたどしい操作で左に流れていく潮に乗せながら落としていってますが―」

タモ「ほら!きたで!えらい力で引いとるがな!!」
竿立「あっ!ハリスが飛んだ!竿を叩いている風でもなかったし、一体何が来てたんでしょうね?」

タモ「また何か食うたようやけど、今度はエサトリかな?」
竿立「ササノハベラですね。」
タモ「またヒットや!もう竿を畳んどってのだいきちさんが目ぇ〜丸うしとるがな。」
竿立「今度はコッパグレですか。今まで全然食わなかったのが嘘のようですね。」
タモ「このスルスル釣りな、ご主人が学生やった頃から知っとるはずやのに、これまで全然試したことなかったようやな。」
竿立「それは意外ですね。これからの釣行でこれ使って、何匹かでも魚を掛けたらまたあれが始まりますね。」
タモ「また、「この釣り方と、吉瀬美智子と、自家製サルサトーストが堪らんわぁ〜!」とか言い出すんやろな。」

面白い釣りを知ってしまった風雲児でありますが、コッパグレを食わせた後は、潮は当て潮、海面もゴミだらけになってしまいましたもんで釣りにならず、さらに納竿の時間も迫ってきてたもんで、釣りを終えることにしたのでございます。
そして2時45分頃に船が迎えに来て、港へ引き上げたのでございます。

タモ「今日の釣り、特筆するような釣果なんか、34cmの口太一枚と26cmのシマアジ一枚だけやし、
   だいきちさんもシブダイの小ちゃいの一つだけやったけど、なんやかんや言うて二人とも思い切り楽しんでたな。」

竿立「次回の二人での竿出しが楽しみですね。さあ、今日のところはさっさと帰りましょう。」


竿立「・・・名鹿から真っ直ぐ帰ってくのかと思ったら、何か色んな所に寄ってましたねえ。」
タモ「そうなんや。最初は中村フィッシングに寄って、タマメさんと話しこんでたなあ。」
竿立「えっ?この前、シブダイ釣りに連れて行ってくださったタマメさんですか?」
タモ「実は昨日の晩に、鵜来に向こて走っとったタマメさんから電話があったみたいでな、「帰りにどこかで
   落ち合おか?」言う話になったようや。」

竿立「なるほど。」
タモ「それからご主人、昨日やり残したことがあるとか言い出して、ルアーロッドを引っ張り出して、気になっていた
   ポイントを日が沈むまで攻めとったわ。」

竿立「でも、釣れたようには見えませんでしたが。」
タモ「昨日にも増して小さいギンガメアジと、ウロハゼが4〜5匹、ワームで釣れただけのようや。」
竿立「それで、「よっしゃ、今日はこれくらいで勘弁しといたる」とか言って帰ってきたんですね。」
タモ「池乃めだかかいな。まあ、そんな感じやったけど、まだ続きがあるんや。」
竿立「一体いつになったら終わるんですか?これ?」
タモ「上川口の辺りまで走ってきたときに、リョータさんから電話があってな、「さっき佐賀で40cmくらいの
   アカメを見た。ルアーを投げたら食うかもしれんから、やってみたらどうですか?」まあ、そんな内容や。」

竿立「いつも思うけど、うちのご主人、釣りを通した仲間というか、友達だけには本当に恵まれてますよね。」
タモ「釣果には恵まれてないのにな。
   ほんで、アカメのそんな情報、教えてもろたご主人、どうしたと思う?」

竿立「そりゃ、一も二も無く駆けつけたでしょ。マキエを撒いた時の小サバみたいに。」
タモ「今回は当然ミノーも積んどるし、見えたっちゅうアカメも都合ように積んだタックルで獲れそうなサイズや。
   その上、場所もちょうど目と鼻の先や。これで行かんかったら天変地異もんやで。
   それでポイントに走ったわけやけど、アカメが居った言う場所を探してあっち行ったりこっち行ったり。
   ごっついウロウロしたけど、よぉ分からんという事でリョータさんに電話してナビしてもろて、
   何とかたどりついたんやけど、何投かしただけで根掛かりしてミノーをロストや。」

竿立「この人、また大事な所で・・・」
タモ「新しいミノーを結ばなあかん。それで帽子に引っ付けたキャップライトに手ぇ伸ばしたら・・・」
竿立「ボン!と音を立てて砕け散った。」
タモ「どんなキャップライトやねん!違うがな、手ぇ伸ばしたけど、そこにあるはずのライトが無い。」
竿立「そんなの無くても、月明かりとか、周りの灯りとか、勘でどうにかなるでしょう。」
タモ「それが真っ暗な場所でな、めちゃ苦労して結び替えとったけど、この人、落としたライトが惜しい言うてな、
   電話した時に外れたんか、キャストした時に外れたんか・・・とかブツブツ言いながら元来た道をウロウロウロウロ。」

竿立「それで見つかったんですか?」
タモ「何せ暗闇やし、こんまいライトやし、歩いた道を全部回りなおしてみても見つからん。
   結局諦めて車に戻ってったら、なんと車の中にあるやないかいな。単に置き忘れしとっただけやったんやな。」

竿立「・・・とりあえず、よかったですね。」
タモ「これにはズッコケよったけど、あのケチ、ごっつう嬉しそうでな。これで安心して帰れる言うて、
   ようよう帰宅しよったわ。」

竿立「めでたし、めでたし。
   ・・・・・・・・ところで、釣りのほうは? アカメはどうなったんですか?」


・・・・・・・嬉しすぎて、釣りするの忘れてた。

 ● 名 鹿 nashishi
利用渡船 勝丸渡船 出港地 高知県四万十市・名鹿漁港
時間(当日) 6:00〜14:45回収
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 磯予約可
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)


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