風雲児  烈風伝
  ・年末大セール? 薩摩硫黄島 瀬泊まり釣行

2011年 12月29日〜30日(1泊2日釣り) 鹿児島県 硫黄島 
・プロローグ
兵庫県たつの市ゆかりの人物・藤原惺窩(せいか)は安土桃山〜江戸初期に活躍した大儒学者で、弟子でも友でもある赤松広秀(広通・広英とも。但馬・竹田城主として仁政を行い、今もなお慕われている人物)とともに四書五経に新たな訓点を付す事業を行うなど、日本の教育史に絶大な功績を残している人物であります。
そんな彼は儒学の真髄を得るために明国への密航を図ったことがありますが、嵐に遭って鬼界島(薩摩硫黄島)に漂着、渡明を断念したとのこと。彼にとって硫黄島というのは嘆きと涙に満ち溢れた島だったのでしょう。

たつの市の隣町に住む私にとっての硫黄島は、心躍る希望と、行動の欲求を駆り立てる魅力に満ち溢れた島。
私がなぜ男女・五島・宇治・草垣といった島々ではなく硫黄島に通うのかというと、私の天邪鬼な性格もさることながら、ここと、口永良部島、諏訪之瀬島、三宅島等ほんの数箇所でしか体験できない「常に噴煙を上げ続ける活火山での磯釣り」というものにはまってしまったから。

2011年の年末釣行の目的地も硫黄島。我が家から陸路823km、枕崎港で渡船に乗り換えて約45kmの場所。
今回は私の距離感覚をぶっ壊してしまった犯人である「かまちゃん」と、その釣行記の常連である「uenoさん」、そして、かまちゃんの同級生の「M中」さんとの1泊2日の釣りなのです。
今の私の境遇で年2度の遠征というのは正直厳しいですが、酒もタバコも賭け事も一切やらず、女性との付き合いすらも皆無に近い私の楽しみ。心臓病の恩恵も利用して辛うじてGOです。

今年の行程に観光はほとんどありません。
掲示板でHP「オーシャンパラダイス」のG鹿児島さんに教えていただいたヘルシーランド(指宿市)の絶景の露天風呂に唯一立ち寄ったのみで、さっさと枕崎の宿に入って睡眠を試み、29日午前3時前、黒潮丸の待つ岸壁で、かまちゃん達との合流を果たすことができました。

一週間前の週間予報では雨とその後の時化が予想され、一時は大隈半島への転進をも覚悟した私でしたが、今や予報からは傘マークも消えて波も1〜1,5mに。
年末にこの天候ですから、硫黄島や湯瀬(5人以上なら挑戦できるそう)に泊まりでチャレンジする人多数で、岸壁にはとんでもない量の荷物が並んでいます。
これらをリレーで船に積み込み、3時半に枕崎を出港!

・夜尾長・第1弾!
南九州屈指の名礁・竹島ノ鵜瀬(2009年撮影)
順調な航海90分で黒潮丸のエンジンが緩み、硫黄島エリアの最北端に浮かぶ鵜瀬(竹島ノ鵜瀬)に到着。
予想外に風が激しく、今までの航海が嘘のように船が前後左右に揺さぶられる中、私とuenoさんが渡礁を完了しました。
今回はここが瀬泊まりの舞台。

私たちは最初二組に分かれて頑張り、午後にこの鵜瀬で合流する予定なのです。
船内に残ったかまちゃんとM中さんは鵜瀬の南東に浮かぶ新島(昭和硫黄島)に向かいました。
新島は昭和9年からの半年間に起こった海底噴火によって出現した溶岩ドームで、こちらも実績抜群のポイント。
お互い頑張って釣りましょう!

さて、私とuenoさんが渡った「鵜瀬」は底物でも名高いようですが、上物でも「シーズン中に上がれれば尾長は確実」とまで言われる、この南九州でも屈指の名礁とのこと。
そして年末は、ワカナ(回遊性の尾長グレ)の第一陣が接岸してくることの多い絶好のチャンスだそうです。
狙うは手の届く所にいるであろう70cm!
私たちは大急ぎで怪物と戦えるタックルを準備し、闇の中でキラキラ輝くオキアミ生&赤アミを撒き、夜明けまでの約2時間、南側にある船つけ(船着き)の磯際を執拗に攻め続けました。

最初に竿を曲げたのは夜釣りの税金・ナミマツカサ。続いて35cmクラスのイスズミ。折角のハリスをギザギザにするコイツらに二人揃って手を焼かされることになりました。
私には開始早々にマキエ杓が前触れも無く真っ二つに折れて飛んでいくという不吉なトラブルまで発生です。

5時46分、私のウキが勢いよく消しこみました。
これまでとは違うパワーに一瞬期待しましたが、取り込んでライトを当てたら45cm程のテンジクイサキ(イスズミの一種)が跳ねているだけ。
他には私が50cm近いクサヤモロ(水ムロ)、uenoさんがオジサンを釣ったくらいで、尾長タイム第一弾は残念ながら終了となってしまいました。
硫黄岳の麓の海は、硫黄などの成分で
黄色く染まっています。

これが、鬼界島(黄海が島)の由来だとか。

・昼のワンドはパラダイス!
夜釣りのポイントである南向きは、実は底が見えているほど浅く、夜が明ければイスズミしか望めなくなるとのことで、7時半にポイント移動です。
鵜瀬の昼間のポイントは、船着きの正反対、北側に丸底フラスコのように入り込んだワンドとその周辺。
uenoさんはすでにワンドのボトルネックに陣取って「もう釣れたよ。ばってん、小さかバイ」と、30〜35cmくらいのクロを3枚ほど、立て続けに抜き上げておられました。

 開聞岳をバックに、クロを次々と
 ヒットさせていたuenoさん。
私は対岸の開聞岳のシルエットを背景にして釣り続けるuenoさんの姿に目をやりながら、ツインパワー2号(今の2.5号くらい?)に3号の道糸を通し、普段なかなか使い道が無い3.5号のハリスを直結しました。
風を背負って釣れた船着きと違って、こちらのポイントは吹きっさらしだし、ワンドの中はいくつものサラシが複雑に蠢動しているのを見て3Bのウキを選択、ワンドの奥側の釣り座から投入です。

まずはリュウグウベラがヒットし、続いて30〜40cmのイスズミが連発。
ただ、グレが出ません。「今日は3号では簡単に切られるので4号ハリスを使っている」というuenoさんとは対照的に・・・。

しかも今日は何故だか静電気がやたら貯まり、掛かった魚を外そうと手を伸ばすたびにバチッ!バチッ!と指先のまあ痛いこと。
困った物ですが、これを利用何かにできないものだろうか。私は試しに磯に抜き上げた魚の脳天目掛けて、スターウォーズに出てくる皇帝気分で電撃(大げさな!)を放ってみたのですが・・・イスズミは何らダメージを受けた様子も無く、こちらの指が痛いだけ。電撃〆はやはり不可能のようです。(そりゃそうやろ)

その後短時間ながら雨が降ったことで静電気からは解放されましたが、その代わりに雨後は風と波が一層強くなって私たちに襲いかかってきました。
uenoさんがつぶやきます。「こりゃ、回収になるかも知れんと!」と。
早く釣らねば・・・。

焦る気持ちがそうさせるのではないにしろ、この時間帯の私はフックアウトやフッキングミスのオンパレードでした。
私はいつもどおり、速攻X7〜8号、拳グレ6号、サイト尾長H8号等の針を選択していたのですが、以前使ってバラシが多く、ケースの肥やしと化していた剣華グレ8号を何気なく使ってみたところ、8時半にようやく今回初のグレ、35cmの尾長が食ってくれました。
どんな針にもバッチリ合う場面というのはあるようで、これで針外れによるバラシからも解き放たれました。
が、掛かってくるのは元気一杯のイスズミばかりで、次のグレを手にするには9時12分まで待たねばなりませんでした。

 ワンド奥のポイントで釣る私。
その2匹目の35cm尾長は大きなヒントをもたらしてくれました。
私はすぐに仕掛けを切って0号のウキと潮受けウキゴムを通し、ハリス1ヒロ弱のゼロスルスルの仕掛けにして、サラシでもみくちゃのワンドの中に投入。
ハリスの太さもありますが、仕掛けがサラシの切れ目から綺麗にジワジワと入っていきます。
あまり深く入り過ぎないように注意を払って、竿先で引き戻したり、糸を送ったりして行くとグゥゥゥン!と穂先がゆっくりお辞儀を始めました。
重みが充分乗ったところでアワセを入れると、狙い的中!口太グレです!

これ以降、私は硫黄島の実力を存分に感じることになります。
今までの不調が嘘のように本命が連発!
もう一息で40cmというサイズの口太が、尾長が、射程範囲にある3つのサラシの根元や脇、ぶつかりなど、ここぞ!と思ったスポットで次々アタックしてきます。
私は穂先で仕掛けを細かくコントロールして、それらを引きずり出していきます。
ワンドの最奥部のサラシ脇や、対岸の磯際では尾長がヒット!そのうち2枚は42cmの納得サイズ!
やがて口太の40cmも登場し、数も着々と伸びていきます。
グレは小さくても32cmですが、そのサイズは迷うことなくリリースです。

・釣りバカカルテット再集結
午後1時には、かまちゃんとM中さんが合流し、磯泊まりの道具や、黒潮丸の方で用意してもらえる夜の分の餌、別に用意した予備エサや集魚材で重たいクーラー等を運び上げた時、私の手元には8枚の本命と、1枚の他魚が収まっていました。


カラーリングにビックリの
モンガラカワハギ32cm。
目の下や尾鰭なんて、
パステルピンク〜青緑の
グラーデーションですぞ!
合流した2人が目を疑い、呆然としたのは、その他魚を見たときのこと。
どぎついほどのカラーリングが目を奪うモンガラカワハギ32cm!それがアクアリストの水槽ではなく、クーラーボックスの中に入っているのですから!
「食う気ですか?」「はい。もちろん!」(味については当HPの「おさかな拾い食い」をご覧下さいませ!)
ワンドの真ん中で食ってきたこの魚は、カワハギとは思えないほど身が厚く、重量感たっぷりで、サイズに似合わない強烈な引きにビックリ。
取り込んでみて派手さにまたビックリ。
そんなのを釣り上げたゲテモノ五目釣り師は磯の上で一人大喜びしておりました。

ちなみに私の昼釣りでの外道は、モンガラやイスズミ以外には、小さなダツ、45cmのムロアジ(金ムロ)、ハナアイゴ、ソウシハギが1枚ずつと、リュウグウベラが少々でした。

   イチモンジブダイ
一方、uenoさんはグレの数も伸ばしていますが、ブダイのようなサイズのキヌベラや、50オーバーのサンノジ、イチノジの他、ツマジロモンガラやハナアイゴ、タテジマキンチャクダイ、でっかいイチモンジブダイ等も連発しておられました。
Uenoさんは「色物ばっかり」とうんざりしていましたが、私はもちろん指をくわえて羨ましそうに見てました(笑)

「ところで、新島(昭和硫黄島)はどうでしたか?」
かまちゃんに聞いてみると、夜が明けて諦めかけたころに相当デカイ尾長がヒットしたのに残念無念の針外れ。
昼の部では40〜50cm近いクロが乱舞し始めたところで時間切れ。それでもあと一息で40cmというサイズまでを9枚ゲットとのこと。
磯釣り2回目(しかも2回とも硫黄島!)というM中さんも、尾長や口太を仕留めておられました。

 かまちゃんとM中さんは、ワンドの先端を選択。
さて、昼釣り後半戦のスタートです。
新島から移ってきた2人は、潮も引き、波も収まってきて、使用可能になっていたワンド外の鼻先に入りました。
かまちゃんは重い仕掛けで磯際を攻めて、1時間半ほどで35〜40cmを6枚ゲット。
uenoさんも相変わらず釣れ続いています。
ゼロスルスルで狙う私にも面白いくらい・・・いや、もはや面白くないくらい本命がヒットしてくれたのですが、3時を過ぎた頃からワンドの奥に嫌な嫌なソウシハギの群れが入ってきて苦戦しはじめ、サラシも徐々に弱まった上に水温も下がったのか、魚の食いも落ちていきました。

「変なカラカブ(カサゴ・ガシラ)が釣れたバイ。」
そんな時にuenoさんが声を上げました。
多分アレだな・・・と近寄ってみると、茶色のまだら模様の、口と胸鰭の厚ぼったい20cm程の魚が横たわっています。
「これは、ゴンベ科のイソゴンベですね。特別に旨いわけでもないけど食えますよ。」
ダイバーには人気のゴンベ科ですが、普通は磯釣り師はそんなの知りません。uenoさんも色物は勘弁〜とばかりにリリースしていましたが、その後同寸のこの魚をuenoさんが2回、私も2回、翌日にはM中さんもヒットさせることに・・・まさか、同じ魚?(笑)
真相はともかく、初日の昼釣りは5時過ぎに終了です。

・夜尾長・第2弾! 前編
 初日午後のuenoさんと、朦々と噴煙を上げ続ける
 活動レベルAランクの活火山・硫黄岳(703.7m)
夜限定の巨大尾長ポイント・硫黄島向きの船着き周辺に全員が並んで釣ります。
話し合いにより、東側からuenoさん、M中さん、かまちゃんが並び、私はこのポイントの西端、「鵜瀬のハナレ」との境界をなしている岩の屏風の裾に入ることを決め、各自タックルと餌の準備にかかりました。

私の夜釣りタックルは12年前からの一張羅・磯遠投EV4号、アルテグラ1万番という、合計重量1,2kgコンビに、道糸10号、ハリス12号1ヒロ、閂マダイ11号。それにBのウキと、からまんホタルをセットして1ヒロ半〜2ヒロのタナ狙い。
他のメンバーは5号竿やタマンロッドや石鯛竿を使用しラインももう少し太めだったのかもしれませんが、大体同じ仕掛け・・・と思いきや、かまちゃんはしばらくの間、竿受けを竿を預けての脈釣りを試しておられました。

静かに始まった夜釣りで、初めての歓声が上がったのは午後6時過ぎのこと。
一番遠くで釣っているUenoさんが尾長をぶり上げた模様です。
闇の中から聞こえてくる声によると、サイズは30cm台のようですが、これで一気に全員の活性が急上昇。

6時14分、ゆっくり右に流れる潮に乗った私のウキが、鵜瀬のハナレとの境界付近のデッパリ付近の磯際でスッと消しこみました。
問答無用にこっちを向かせて強引に引き抜いた魚は、左側に居るかまちゃんの方に落下。
極力ライトを点灯しないように細心の注意を払って釣っていましたし、釣り座から見えない位置に抜き上げてしまったけど、これもどうせイスズミでしょう・・・。
「やりましたね!尾長ですよ!」
「えっ、そうなんですか?」
かまちゃんの予想外の声に驚きながら、ハリスを引っ張って魚を手繰り寄せてみると確かに尾長グレじゃないですか!
サイズは40cmちょっと。狙いより30cmばかり小さい(笑)ですけど、嬉しくないはずないですよね♪。

それから沈黙の時間が続きます。
みなさん、掛けても掛けてもイスズミとナミマツカサばかり。
「潮どまりの9時までやって、鍋にしましょうか。」
かまちゃんの提案にすでに諦めムードになっている全員が頷きます。

私のウキが斜めに走ったのはその直後。50cm近いムロアジが上がってきました。
大葉とワサビを叩き込んだタタキにすればなかなかいける魚ですが、日程的に美味しく味わうのは不可能ですので迷わずリリース。

午後8時半、ムロアジのヒットから数投後、私の足元に引き付けていたウキが再び、水面直下を魚雷のように走りました。
針掛かりした魚は水面近くを右へ左へ走り回ろうとしますが、タックルがタックルだけに水面を割らせるのは容易なこと。
「今度はやたらとデカいムロアジやな・・・」という程度に考えて強引に決着を付けようとしますが、これが重くて抜き上げられない!
「何か分かりませんが、青物が来ました!」
夜目にも派手な水しぶきを上げ、右に左に大暴れする魚に私はキャップライトを点灯して、タモ入れを試みます。
むむっ、魚の長い上に、LEDライトの距離感の無さが災いして全然タモに入らない・・・。
見かねたかまちゃんの加勢によってなんとか無事に取り込んだ魚を見てみると、62cmのヒラマサ!やったぜ!!

この1匹を自分のことのように祝福してくれた仲間たちに感謝です。
「ヒラマサは寝かせて三日目が旨いですよ!これで正月用の刺身はバッチリですね!」と言うかまちゃんの言葉通り、元日には最高に旨い刺身を味わうことができました。(同時期に遠征していた従弟が男女群島から持って帰ってきた同サイズ、持ち帰り条件ほぼ同じのヒラマサより味があってはるかに旨かった!)

私がヒラマサを取り込んでから間をおかず、M中さんが小ぶりの尾長をゲットしました。
その数分後に大きく竿を曲げたのもまた、M中さんでした。
何度もの突進に耐え、慎重なやり取りの末に手にした尾長グレは45cm!
2回目の磯釣りで手にしたナイスサイズに興奮です!

よく、夜の尾長釣りでは海面を照らすのは厳禁、魚はしばらく寄り付かなくなると聞きます。
しかし、底が見えるくらいのこの浅いポイントで、ヒラマサのタモ入れに思い切りライトを点灯しましたし、みなさん頻繁に海面を煌々と照らしているのにも関わらず、尾長の連発です。
う〜ん、実は魚はあまり気にしていないのか、それとも屈折で光は余り入っていっていないのか・・・
磯の夜釣り経験があまり無いこともあってよく分かりませんが、どちらにせよ今回の時合いはあっという間に終わってしまいました。

・冬高巌の風の宴、そして夜尾長2 後編。
潮が止まり、魚の食いも止まった10時前、磯の上で釣り師たちの宴会が始まりました。
かまちゃん達はコンロや鍋、金網等を磯に持ち込んでいたのです。
uenoさんが2007年に買った分の残り(天候に阻まれ続けたため、今回は2007年以来の瀬泊まりだそうです)だというクヌギの薪に火を付け、焼肉と、塩とんこつ鍋と、雑炊に舌鼓を打ちました。
ただ、宴会場となった平らなスペースは強い北風が舞い込んでくるので、煙と火の粉が四方八方に降り注ぎ、ボロボロと涙を流しながらの宴会になってしまったのもまた楽しい瀬泊まりの一幕。

それぞれ腹が膨れた所で寝袋を引っ張り出して、思い思いの場所で眠りに付きました。
鵜瀬は眠るのに最適の平らな場所が多くて助かるのですが、今回は風の強さが厄介です。
これじゃ折角持ち込んだ銀マットも使えませんし、吹きかかる風と寒さで度々起こされてしまいます。
眠れないなら釣りでもするか〜。

私が釣りを再開したのは午前4時前のこと。
エサトリのアタリも全くありませんが、釣り座は風もほとんど当りませんし体も温まります。
やがてかまちゃんも寒さで目を覚まし、釣り座に復帰されました。

5時過ぎになると枕崎から黒潮丸がやってきて、この日の分のオキアミ&赤アミと、「これからチャンスなので寝ている二人を起こして釣ってよ!回収は12時半!」とのメッセージを届けてくれました。
黒潮丸と入れ替わるように、硫黄島をテリトリーとするもう1軒の渡船「かいしん丸」も登場し、鵜瀬のハナレに4名のニューカマーが上陸しました。
どうやら底物の方らしく、岩の向こうの闇の中からドリルの音が響いてきます。

むむむ、ワカナ(尾長)の
接岸には少し早かったか・・・。
(これは昼間に釣った尾長)
辺りが明るくなり始めた6時頃、ようやく夜釣り後半戦初の尾長がヒット。
釣り上げたのはまたしてもM中さん、サイズは40cm前後のようです。
夜釣りではここまで一人沈黙を守っていたかまちゃんも、夜明け頃に40cmクラスを2枚仕留めてホッと一息。
順番に食うなら次は私だ!と期待しましたが、尾長艦隊はかまちゃんのところでトーゴーターンを決め、結局私はエサトリのアタリも稀という大苦戦のまま、夜釣りを終えることになってしまいました。

狙いの巨グレも誰一人掛けることができなかった、という以前に気配すら感じることができませんでした。
いくら名礁・鵜瀬とはいえ、接岸が遅れているとなれば打つ手無しですね。

・最終日もグレ祭り!
 昨夜は休養充分!本日も絶好調のuenoさん。
夜が明けてからのポイントとなる磯の北側は強風によって昨日以上に真っ白になっていました。
今日は海の向こうに開聞岳は見えず、大隈海峡には数え切れないほどの白波が跳ね飛ぶばかりでした。(帰り道が思いやられるなあ・・・)
そんな中、uenoさんはワンドの先端に陣取って、すでに昼釣りをスタートしています。

私はやはり昨日と同じワンドの奥に入りました。
風は吹いているけど四国の鵜来島なんかに比べたらそよ風だし、サラシのぶつかりが昨日より強いので仕掛けは簡単に馴染むと判断して、昨日と同じゼロスルスルをセットし、7時40分に第1投。

それから1分、私は2投目で30cm後半の口太を手にしていました。
次の一投でも同サイズ、その次には早くも40cmをゲット。
怒涛の早業・3連発に、タックル準備中だったかまちゃんとM中さんも呆然。

さあ、今日も祭りです!先端のuenoさんも、ワンドのボトルネックのかまちゃんも次々とグレを抜き上げていきます。
私は対照的に、サイズに関係なく、掛けたグレを全てタモ入れしていきます。
高い足場、激しく上下する海面。苦手なタモ入れの練習には持ってこいの状況や!
ただ、ワンド最奥に入ったM中さんだけが、経験の少なさもあって波に乗り切れていませんでした。

  かまちゃんも負けじとヒット!
昨日と同じであればM中さんのポイントの足元、サラシの脇は尾長の巣。
しかし、仕掛けを馴染ませやすく、圧倒的に釣りやすいのは私のポイントということで、現在釣れている仕掛けや、その操作法などをアドバイスしてからポイントを交換しました。

私の新たな釣り座は、サラシの上に覆いかぶさるように突き出した平坦な岩棚で、6mのタモが辛うじて届く高さの特設ステージ。
足元のサラシの向こうは一見穏やかな海面で、ゴミだまりのようになっています。
その海面に仕掛けを投入して馴染ませ、引き戻しの流れを利用して手前のサラシの脇や磯際を攻めていきます。
そして、穂先にゆっくりと重みが加わっていきます。
換わって数投でヒットさせたのはやはり尾長グレ。おおっ、今度はタモがなかなか重い!
これは44cmのナイスサイズ!四国じゃ私にはどうしても釣れてくれないサイズ(汗)

その後も尾長のヒットは続き、M中さんに申し訳ない気がしてくる中、またグレが食ってしまいました。しかも、それは一際力強く暴れまわっています。
しかし、この特設ステージの上なら魚のコントロールは自由自在、その剛力も膝のクッションで打ち消して主導権を渡さず、海面に浮かせることに成功。
白い水面で暴れる尾長グレは50cmまではなさそうですが、間違いなく今回の釣行での最長寸だ!
が、タモに手を伸ばした時、水面で大きくヒラを打たれ、その瞬間3,5号のハリスが弾け飛んでしまいました。
残念、飲まれていたか。

 よく釣り、良く笑った最高の2日間でした!
10時過ぎになるとサラシが一段ときつくなり、食いも急激に悪くなってフィーバータイムも終了の様相。
一人、また一人と休憩タイムに入っていく中、私は0号の仕掛けにBのオモリを打って、サシエを深ダナに送り込んでみました。
しばらくやっているとスッ!と道糸が走って42cmの口太グレをキャッチ!
嬉しい一枚ではありますが、27リットルクーラーはすでに満杯ですのでこれはリリースです。
いや〜、こんなサイズのグレをリリースすることになるなんて。
硫黄島の実力、恐るべし。

・もうこのへんでよか♪
私もここで一旦竿を置き、のんびりと休憩することにします。
そして磯バックから登山用のコンロと小鍋を取り出して湯を沸かし、「干し飯」に湯と「ホテイの焼き鳥缶」を注いで戻した「焼き鳥ご飯(焼き鳥雑炊?)」やカップラーメンを作って、対岸の硫黄岳を眺めながらゆっくり味わうという、プライスレスな贅沢極まりない時間を堪能!

食後に戻ったワンドのポイントには、最早アタリは残っていませんでした。
私達はゆったりと道具を片付け、2日分のゴミを拾い集め、記念写真を撮り合うなどして時間を過ごし、午後1時前に鵜瀬を離れたのでした。

枕崎までの航程は行きとは対照的な白波の道。
アネロンと寝不足、果たしてどっちが勝つのだろうか?と思っていたら。これが寝不足の方が勝ってしまったんですね。
さすがのアネロンも、3日間も睡眠不足が続いていたら無理ということなのでしょう。
フェリーでもよく寝られなかったし、枕崎の宿でも、結構人通りの激しい道路を行き交う人々の話し声や、近くの家?から聞こえてくる女性のあえぎ声などに邪魔されて眠れませんでしたから。

まあ、それでも完全にKOされることなく3時前に枕崎港到着。
楽しい楽しい2日間を過ごさせてくれた黒潮丸と、素晴らしい仲間たちに再会を誓い、別れを告げました。
その夜はHP「てんびんばかり」の管理人・KICIROWさんがご自宅に泊めてくださり、何と10時間以上も眠ることができたので、翌日には加治木からの約740kmを軽四で一気に走り切り、無事に帰ってくることができました。
分かりにくいですが、今回の獲物。
ヒラマサとモンガラカワハギのほか、
44cmまでの尾長グレ7枚と、
口太グレを6枚だけお持ち帰り。
私にとっての2011年は「仲間たち」との釣行が圧倒的に増え、新たな事にも多く挑戦できた一年でした。
そして、多くの人とのつながりを実感できた一年を、このような素晴らしい釣行で終えることができました。
かけがえのない皆様に心から感謝するばかりです。

また、この年は東日本大震災や和歌山の豪雨など、忘れられない苛烈な天災、数多の人災の多かった一年でもありました。
されど、人との絆や、日本人の美徳が今も息づいていることを再認識できた一年でもありました。
笑顔でなんて言いません。悲しみと二人三脚ででも、すべての人が前へ足を踏み出し始められる日が、一日でも早く訪れることを心より願っております。

 ● 硫黄島 ioujima
利用渡船 黒潮丸 出港地 鹿児島県枕崎市・枕崎漁港
時間(当日) 3:30(枕崎発。航程約90分)
〜翌日12:45(回収)
料金 21000円(1泊2日釣り)
(昼釣り13000円
 夜釣り16000円)
餌代別
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 磯割りあり
磯替わり 可能 餌の用意可
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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