風雲児  烈風伝
 ・From the new world ! 
   今売り出し中、ロクマルチヌ多発地帯でグレを討つ!

2012年 2月25日  高知県 藻津 (宿毛湾)
・プロローグ
全国各地に点在する渡船基地・渡船エリアには、ちょっとやそっとじゃ読めないような名を持つ場所が随分とあります。

思いつくままに列挙してみても、伊豆諸島の藺難波島(いなんばじま)、伊豆半島の石廊崎(いろうざき)、紀伊半島の石鏡(いじか)、海野古里(かいのふるさと)、新鹿(あたしか)、周参見(すさみ)、南部(みなべ)、淡路の沼島(ぬしま)、松山沖の忽那諸島(くつなしょとう)、宇和海の蒋淵(こもぶち)、御五神島(おいつかみじま)、須下(すげ)、舞鶴の小橋(おばせ)、島根の魚瀬(おのぜ)、玄界灘の蓋井島(ふたおいじま)、宗像沖ノ島(むなかたおきのしま)、的山大島(あづちおおしま)、五島列島の黄島(おうしま)、大分の米水津(よのうづ)・・・。う〜ん、なかなか読めませんよね。(正解は白黒反転で。)

今回私がチャレンジした釣り場は高知県の藻津むくづ)という所。
名鹿(なしし)、古満目(こまめ)、安満地(あまじ)等を擁する高知県でも、難読磯釣り場というジャンル(そんなのあるのか?)では横綱の地位にあるといってもいいのではないでしょうか。

そもそも、
『土地の人は藻津と書いてムクヅというが、昔の記録や本には、藻来津、モクヅ(地検帳)もく津(一豊公墨付)木津(寺院名記)木工津(南路志)毛久津(郷村石付)等とあるので、明治になる前はすべてモクヅと言っていたことがわかる。それがいつとなく訛ってムクヅと発音されだし、それが藻津の正式の呼び名となったのだろう。』(宿毛歴史館HPより引用)

というような状態だそうですので、余所者がぱっと見で読めるはずがありません。

沖の島・鵜来島への渡船や九州へのフェリーの発着地である宿毛湾奥・片島港の3つ4つ西側の港、つまり愛媛県との県境付近に位置するこの藻津には、大型のチヌが狙えるイカダ・カセが点在しています。
そのイカダ・貸し舟業者が磯渡しも行っているのですが、磯釣りフィールドとしては「知る人ぞ知る」を通り越して「知る人も希」というキングオブマイナー釣り場の地位に甘んじてきました。

が、最近は宿毛市観光協会が地域振興・観光の資源としての「沖磯でのチヌ釣り」に目を付け、藻津とその隣の宇須々木エリアの遊漁船業者4社(宿毛遊漁センター高内、フィッシング和竜、フィッシング吉村、西田渡船)によって「宿毛だるま夕日フィッシングクラブ」を結成、チヌ釣りの雑誌取材誘致やエギング大会等を実施するなど、ただ今売り出し中の釣り場となっています。

藻津でも、愛媛県の黒崎鼻周辺の磯はそれなりに知名度があり、釣巧会・リョータさんの釣行記でも情報収集できます。
一方で、港の真ん前のに浮かぶ大藤島(おとうしま)・桐島という島については、釣行日時点では船のかかり釣りやイカ釣り数件以外、全くといっていいほど情報が無いという、マイナー釣り場大好き人間=兵庫県の天邪鬼釣り師にはたまらない状況!
しかも磯でも筏でも日の出から日没まで2500円で遊べてしまうとなれば、懐具合にとってもたまらない状況です♪

今回はそういう場所をメインにしている「フィッシング和竜(かずりゅう)」を利用して、鼻息荒く初挑戦です!!

(藻津の岸壁でならかなり前、大風のときに竿を出したことがあります。その時はコッパグレしか釣れなかったものの、年に10回見られるかどうかという完璧な「だるま夕日」(大気と海水の温度差により、日没の瞬間に太陽がだるま型になる現象)を見ることができるという幸運に恵まれました。が、ここでの磯釣りとなるとさすがに未経験でした。)

・初挑戦!高知県宿毛市藻津の沖磯
藻津港の片隅で眠りを貪っている間にやや強く降り始めた雨は午前6時前には弱まってくれました。
ちょうどその頃、渡船乗り場の浮き桟橋に「宿毛だるま夕日フィッシングクラブ」の一員であるフィッシング吉村の船長と、そのプロジェクトの仕掛け人・宿毛市観光協会の職員の方が現れました。
岸壁に停まっていた車から降りてきた釣り人のうちの一人は、サムライの異名を持つというチヌかかり釣りの名手・正木義則さんでした。皆であれこれ喋っているうちにフィッシング和竜の久保船長も登場。
今日も何かの取材のようで、観光協会の方のセレモニー(挨拶)に私もちゃっかり参加してきました^^

さて出船。フィッシング和竜の小船は港の目の前に浮かぶ大藤島を目指します。
そしてほんの少しの航海で、「おとうしま」という独特な名を持つこの島の、南面西側にニョキッと突き出したタタミという磯に到着。朝のうちは潮が高いので下ろせる磯があまり無いということでしたが、ここなら大丈夫。
普通ならすでに明るくなっているはずなのですが、あいにくの小雨ですのでまだまだ真っ暗。明るくなるまで撒き餌をいじったりしながらしばし待機ですな。

その撒き餌は、オキアミ生9kgに制覇グレ、グレパワー、チヌパワーG2、純正イワシ粉末を各1袋という、チヌを意識したグレ用の配合になってます。(しかしまあこの配合、えづくほどの臭気ですなあ・・・。)
ここはロクマルチヌの多発地帯であり、前回の小才角&周防形釣行記でも少し触れた雑誌・レジャーフィッシングの取材では、大知昭さんや岡田健治さん達の手によって57、56、55cm等の大チヌが数多く仕留められたという事ですが、私は基本的には四国の磯でのチヌ釣りはやりません。
ですので今回もやはり狙いはグレなのです!
と言っても掛かってくるのは大歓迎ですし、不安定になりがちなこの時期のグレ釣りの保険としてもこれ以上心強い場所はありませんね。
正木名人や観光協会の方が上がって
いるフィッシング吉村の筏。
右側の大藤島のポイント「滝ノ下」と
中央の渡小島の間に見えるのが
藻津の集落。
7時前にようやく明るくなったので釣り開始。
船着きの平らな場所は波が洗っているので一段上の先端からの竿出しです。
う〜ん、シモリがゴロゴロ点在してますが、水が澄んで底が丸見えですなあ。
とりあえず真正面のシモリとそのすぐ左沖のシモリとの間に狙いを定めて撒き餌を投入、0号やらG2やら仕掛けを頻繁にチェンジしながらアタリを探っていきますが餌は全然落ちません。
ま、マイナー釣り場では魚が出てくるまでに時間が掛かることはザラですから気にしない気にしない。

40分ほどやっていると徐々に餌が取られるようになってきました。
ウキ止めの位置を2ヒロ弱まで詰めていくと、本日のファーストフィッシュ25cmほどのサンノジがHIT。最近こればっかりです。

撒き餌には早いうちからコッパサンノジの小さな群れが反応していましたが、やがてこれにネンブツダイが混じりだし、8時を過ぎる頃になると正面のシモリの上にグレの小集団の姿がちらつき始めました。
しかしこれが食わない。たまに餌を吸われるけどアタリが出ない。さらにフカセウキゴムでアタリを取ろうとしても小雨のために光量不足でよく見えない。

そこで棒状のハリスウキ・MATCH棒のMを装着、手前にネンブツダイを集めておいて、竿3本ほど沖に撒き餌1発とともに投入したところ、ウキの直下で魚が光るのが見えました。
チャンス!食えっ!食えっ!と強く念じますが、どうしたことか仕掛けが全然動かない・・・ ん?これは!?

そう。魚はすでに居食いしていたのです。竿を起こすと同時に重々しい引きと、魚が首を振る感触が伝わってきます。
おおっ!チヌではありませんか!
精悍な魚体が中層で身を翻してギラリ!と銀色の閃光を放つ瞬間、この一瞬にこそ、チヌという釣り対象魚の魅力は凝集されているといってもいいのではないでしょうか。
程なくタモに収まったチヌは、37cmと食べるにはいいサイズ。最初の1尾ということもありキープしました。

裏本命を仕留めてから10分後、8時38分にはシモリの向こうでMATCH棒、次いで親ウキがジワジワと沈んでいきました。
じっくりと待ってからアワセ!
今度は首を振らないシャープな引きで、本命の口太グレ33cmをゲット!やりました♪

・二並、グンカン、水島の気分をお手ごろ価格で味わう!?
「タタミの南」には、西田渡船から3人のお客さん。
沖には養殖筏が列を成しています。
この頃には見えている口太グレの数がかなり増えていました。
しかもキープサイズのものばかり。飛びぬけた大きさのはいませんが、25cmを下回るようなサイズも見えません!
これが撒き餌に盛んに反応し、足元に打っていた対ネンブツダイ用の撒き餌をも独占するようになっていました。
それなのに、どうして食わない!
撒き餌とサシエを完全に一致させることができる近距離で、その同調の位置を微調整してみても、足場を後退させて身を隠しながら釣っても、調整を試みながら沖目を攻めてみても、サシエにだけは見向きもしてくれません。
尾長だ・・・。沖に霞む、あの島々の尾長と同じだ・・・。

身もだえするような時間が続きました。
私の苦悶に追い討ちを掛けるように、正面の深浦・武者泊方面から白いカーテンが降りてきて、降っているのかいないのか分からないくらいだった雨の勢いが俄かに強くなってしまいました。

この雨が止むまでの間、私は試行錯誤を繰り返すほかありませんでした。
9時半ごろにG6浮力のナビウキsul-Gと、口ナマリ7号の組み合わせで掛けた31cmの口太グレと、ロクマルオーバーのボラ1尾の他には何も得られないままに。
足元にはグレに混じってナイスサイズのアオリイカが泳いでいるけど、気分転換に狙おうにもエギもヤエンも持ってないし・・・。

・ついにヒットパターンが!
転機は11時ごろ。
それまで湾奥方向に入っていた潮が逆向きになり、波の方向も変わって、正面とその左沖の二つのシモリの間がザワザワとしてきました。
そこに仕掛けを投入し、撒き餌を3〜4発かぶせます。
この時の仕掛けは、1.5号のハリスを4ヒロ取ってタイドマスター0号を通し、フカセウキゴムを1ヒロの位置にセット。ハリ元にジンタン7号を一つ。ハリも大チヌへの下心を消し去って「浅層グレ(のませ)4号」を使用していました。

これが見事に大当たり!
今までの苦戦が嘘であったかのように、次々とグレがヒットしてきます。
サイズもやはり27〜32cmと、どうしようもないコッパグレはいませんし、口太グレに関しては丸々太ってどれもこれも旨そうだ!
当然のようにキープした口太グレ、リリースを選択した27cm前後の尾長をあわせて、瞬く間に6枚の本命が私の掌中に収まりました。
また、この仕掛けに替えてからサンノジやら、ニセカンランハギやらも盛んに当たってくるようになって賑やかそのもの。そして一足早い桜色、マダイも登場していわゆる三色同釣というやつを初めて達成することもできました。(ただし、20cmに届かない標準和名マダイですけどね^^)

この好調時にハリの号数・種類を替えてみたらたちまち食わなくなりました。オモリを替えてもまた同様で、元に戻すと何も無かったようにまた食い始めます。シビアだなあ・・・。
地元の釣具屋でたまたま1袋100円で叩き売りしていた浅層グレ、買っておいてよかったぁ〜。前回の釣りで苦労しててよかったぁ〜。

・やっぱりこうなりますか・・・。
今回はクーラーの前の釣り座でやりました。
背景は50cmの口太も出る黒崎鼻。
このまま絶好調が続くかと思われた12時過ぎ、恐れていた事態が起こりました。
雨の後の北西風がついに吹き荒れ始めたのです。

このタタミという磯は西に突き出した岬の先端にありますので、まともに風がぶち当たります。
重いロッドケースが吹き飛びそうになるほどゴーゴーと吹く向かい風はつまり、せっかく見つけたヒットバターンである軽い仕掛けの使用拒否でもありました。

ちょうどその頃やってきた見回りの船で磯替りすることもできたのですが、私はここまでの釣果に後ろ髪を引かれてついついNOと言ってしまっていたのです。
まあ、これも最初から覚悟の事だし、強風には誰よりも慣れていますから、どうにかして打開策を探っていきましょう。

オモリを追加しても、比重の関係でスパスパ沈んでしまう00のウキを使っても全然上手くいきませんでしたので、ここは一つ棒ウキに頼ってみることにしますかな。投げづらいけど・・・。
で結局、このBの棒浮きで釣れた物はというと、数匹のアカササノハベラと、20cmちょっとのカモハラトラギスという魚のメスだけでした。
そして根がかりが連発し、とうとう高切れで棒ウキも流されていってしまいました。(木玉付きウキ取りネットで回収に成功!)

・ヒットパターン復活も・・・。
一時はどうなることかと思われた強風ですが、ラッキーなことに2時前にはすっかり収まってしまい、再び静かな海が戻ってきました。
朝から暖かい雨の日でしたが、この頃には薄日も差してきてポカポカといい気持ち。

再び使えるようになった軽い仕掛けに戻してやり直してみると、案の定、グレが食ってくるではありませんか!
2時55分には一際強い引きで、この日11枚目のグレにして、最長寸となった36cmの口太を手にすることができました。

その後はポイントに大きなボラの群れが沸いてしまってグレのアタリは無くなり、食ってくるのはコッパサンノジや30cmほどのキバンドウばかりになってしまいました。
そんな状況だったこともあり、迎えをお願いしている5時まで1時間半となった3時半からは残っている撒き餌を気前よく使ってチヌ釣りに挑戦してみることにしました。
ハリを速攻X8号に替え、Bのウキでの3ヒロ半狙いです。

カモハラトラギス。上がオスで下がメス。
刺身にすると結構身の量があり、
ほんのりと優しい旨みが感じられました。

この仕掛けに最初に食ってきたのは何と33cmの口太グレでした。あれれ??
そしてまたまた20cmほどのカモハラトラギス、今度はオスが釣れてきました。
もしかして、この魚も夫婦で釣れてくるという類の魚なのかな??(繁殖間近らしく、卵巣も精巣も充実してたし)
他にはアカササノハベラ、ミニキバンドウ、クマノミなどがヒットしてきますがチヌは気配すら感じられませんでした。
薄日が差していた空がまたしても一転して再び強い雨が降る中、せっせと頑張ってみましたが、やっぱり片手間でやってもダメですねえ^^

4時半に納竿として、バッカンを洗い、こぼれた撒き餌を流して、午後5時の船で港に帰還。
その頃には雨も上がって辺りは穏やかな夕凪。
船長いわく「チヌならこれからウキが見えなくなるまでがチャンスだから、もっとゆっくりやってもよかったのに」との事でしたが、今日は十二分にやりきりました。
グレ12枚、チヌ1枚。グレは25cm〜36cmでしたが、状況とやる人次第ではもっともっと良型も狙えるはず。
魚影の濃さも高知県では屈指の場所ではないかとも感じられました。

港には和竜のおかみさん、吉村の船長、西田渡船の船長というメンバーと、観光協会の方が勢ぞろいしていました。
もちろん船を係留して戻ってきた和竜の船長も交えてあれやこれやと情報交換を行い、和気藹々と雑談する楽しい時間を過ごしました。
ちなみにこの日はチヌが不調だったようです。4時ごろで切り上げた正木名人はそれでも最後に52cmを1枚釣って帰られたとのことでした。

この日の釣果。干物にして堪能しました♪
その後、船長たちの間でプロジェクトの展開についての打ち合わせが始まりました。
力を合わせ、自分たちのみならず釣り人のことを思いながら、地域振興のために取り組んでいく男たち。
私も以前、観光振興関係の仕事をさせてもらっていた事もあるだけに、親近感と羨ましさを抱いてしまうんですよね。

これから様々な試みが行われるであろう「宿毛だるま夕日フィッシングクラブ」、そして、この藻津という釣り場。
今後の動きが楽しみです。

 ● 藻 津 mukuzu
利用渡船 フィッシング和竜 出港地 高知県宿毛市・藻津港
時間(当日) 6:00過ぎ〜16:30
(日の出から日没まで可。
時間自由。)
料金 2500円
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 特に無し
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
 釣行記TOPへ