風雲児  烈風伝
  ・Opal-eye × Platina-silver 2
           コラボ遠征! in 柏島 & 竜串

2012年 10月20日〜21日 高知県柏島、竜串
・コラボ遠征ふたたび
  『次は10月ごろにやりましょう!磯では様々な種類のフィッシュイーターと、必ず居るはずの尾長グレ、下船後の港では秋の元気者・メッキたちの群れがきっと私たちの挑戦を待っているはずだ!』
 今年4月にこんな約束を交わした二人の釣り師が同じ磯で別々のターゲットを追いかけ、別々の釣りを繰り広げています。
 グレに魅了されたフカセ釣り師の私と、ヒラスズキに憧れるルアーマン・Shioさん(ブログ「ヒラスズキにあこがれて」管理人)によるコラボ遠征が再び実現したのです。

 Shioさんにとっては今回が2度目の外海でのルアーフィッシングですがその意気込みは前回以上。それもそのはず4月の柏島ではずっと夢だったヒラスズキを3度もヒットさせながら全てフックアウトさせてしまうという、大きな大きな忘れ物をしているのだから。

・初日は柏島渡船区、幸島に挑む
 今、私たちが居るのは四国におけるヒラスズキの聖地的存在にして、有数のグレ釣り場でもある柏島。その幸島(こうしま)の「ナダレ西の船着き」というポイントです。

 普段は強風の名所とも言える柏島ではありますがこの日の風は心底穏やか。波は高さは無いけど適度にうねっており、磯の各所にサラシが踊っているという、安全でかつ釣りやすい状況です。ヒラスズキは言わずもがな、早期のグレ釣りにとっても絶好の条件としか言いようがありません。
 さらに、釣り場はガラガラです。

 この日の柏島には、台風の影響が色濃く残っていました。
 強力な台風が10月も半ばだというのに沖縄近海で一週間以上も停滞していたため、ほんの2〜3日前には週末の高知南西部で磯釣りが出来ようなどと私たちを含めた多くの釣り師は想像することもできなかったでしょう。
 が、台風は一たび動き出すや驚異的なスピードで列島南岸を疾走し、みるみる勢力を衰えさせていきました。

 突如道は開かれた。しかし人間の方がこの急速な展開に追いつけなかったのか、土曜日早朝の渡船乗り場に姿を現した釣り客は僅かでした。そろそろ上物狙いも増えてくる時期だというのに渡船5軒合わせて15人程度という有様で、そのうち2隻は欠航しています。幸島廻りの黒潮渡船なんて私たち2人と、上物の方が1人だけ!
(港には移動販売のうどん屋「みっちゃん」すらも居なかった。ああ、朝飯がぁ・・・。)

ナダレ西の船着きにて。沖の島や鵜来島、美しい
柏島の風景をバックにキャストするShioさん。
私はこの左側で、フカセに熱中!
・それぞれの戦いへ
 幸島は島の半分以上、つまりナダレ東から西の船着き、ヒナダン(北のトビワタリ)を経てヒラバエの丘に至る広大な範囲を比較的容易に移動することができますので、前回の「蒲葵島の水道(スベリ)」のような(ルアーマンにとっては)余りにも狭い磯には上がりたくないというShioさんも大満足。 しかもそんな広大なエリアで現在竿を出しているのは私と、「ナダレ東」に上がった良栄渡船のお客さんが1名のみ!
 Shioさんは早速新調した11.6フィートMHのロッドと6mのタモを手に、サラシ狙いのラン&ガンの旅に出かけていきました。

 私の方はナダレ西の船着きに腰をすえ、5.3m2号のロッドと釣研マック65Sを手に、サラシの周辺や沖の潮目を狙っていました。
 足元にはシラコダイやチョウチョウウオ、トゲチョウチョウウオが群れ、サシエが溶けるように無くなっていきます。沖には40〜50cmのダツが沸いており、ハリとハリスが食い尽くされるように無くなっていきます。

 沖攻めを避け、撒き餌と仕掛けをずらし、ウキをG2に替えてウキ止めの位置を細かく調整し、本日最初の本命である30cmの尾長グレに到達したのは釣り開始の1時間40分後、午前8時前のことでした。その8分後には31cmのイサギを追加。
 その後も相変わらずダツに苦しみ、リュウグウベラなどが釣れるものの今回のキープサイズ(27cm)のグレにはなかなか手が届かない状況が続きました。それでも本命&嬉しい外道が登場したおかげでようやく時間が動き始めました。

・70cmオーバーがヒット!
 そんな折、幸島半周徒歩の旅に出かけていたShioさんが西の船着きまで戻ってきました。
 その顔は興奮しつつも悔しそうで、さらには疲れをたたえています。

 それは午前7時ごろのこと。
 幸島を時計回りに歩きながら点在するポイントを叩いていたShioさんは、ヒナダンとの狭い水道に一目で「これは!」と思えるサラシを発見しました。早速ミノーを投入してみると一投目からルアーを追いすがる魚影を目視することができたそうです。
 この時のShioさんが興奮の渦の中にあったことは容易に想像できます。心を支配する期待と、ロッドを掴む手、リールのハンドルを回す手に満ち溢れている緊張という種類の興奮は、次の一投で受けた大きな衝撃とともに別種の興奮へとその姿を変えたのです。
 
 夢にまで見たヒラスズキ、その顎を12cmフローティングミノー、シマノ「MDアサシン」ハデイワシカラーのフックがガッチリと捉えています。その掛かり具合を見たShioさんは余裕を持ってファイト。魚が弱るのを確認した上でタモに手を掛けました。
 水面までは5m以上、タモの柄は6m。ですが、うねりがあって海面が大きく上下するうえ、海面で最後の抵抗を試みるヒラスズキはShioさんの持つ60cmのタモ枠を大きくはみだしています。

 うねりの中でのタモ入れは困難を極めます。35cm程度の魚を掬うにしても非常に難儀するというのにこれほどのサイズともなると・・・。
 果たして、試行錯誤するうち、魚の口元のルアーフックは網の中、魚自体は網の外という、最も忌むべき事態に陥ってしまいました。最後の手段で無理やり引き上げたところ、ルアーは魚の口元を離れ、壁に激突して破損、フカセ釣り師には計り知れないほどの価値を持つ白銀の魚は、足元の白い世界へと帰っていってしまったということです。

こんなサイズのオキザヨリ(ダツ科)が次々ヒット・・・。
 その10〜15分後には、先ほどより一回り小さいヒラスズキと1メートルクラスのダツが、ほぼ同時にミノーに襲い掛かりました。しかし、タッチの差でミノーをくわえ込んだのはダツの方。そしてそれは、那須与一とか佐用範家といった弓の達人が放つ矢のような勢いで沖に向かって飛んでいき、ラインをぶち切って消えていったのです。

 その後はダツやオキザヨリのオンパレード。それも西の船着きのような40〜50cmではなく、ことごとくメーターサイズだったとのこと。
 幸島がダツの名所であることは前々から知っていましたが、この日の北向きがそんな状態になっていようとは私も全く想像していませんでした。

・西の船着で大興奮!
 最近、テレビのタレントアナウンサーやキャスター等が使う言葉に、「潮目が変わる」というおかしな表現があります。磯釣りや、オフショアのシイラフィッシング等をする人ならばそのおかしさに気付いていることでしょう。変わるのは潮。その潮の変わり目こそが潮目なのですから。
 しかしこの日は本当に潮目が変わりました。
 射程範囲に入ったり外れたりしながらも、朝からずっと沖に出続けていた潮目。ダツの巣窟でしかなかったその潮目から突然ダツが消えました。そして、撒き餌に反応する特徴的な強い波紋が上がり始めるようになったのです。

 さて、どうやってあれを食わせるか?
 私がたどり着いた答えは、ウキを00号から0号にチェンジし、手前に3〜4発撒き餌を打ち込んでからゆっくりとサシエを付け、さらに一呼吸、二呼吸置いてから沖目へ撒き餌と仕掛けを少しバラケさせての同時撃ちというものでした。
 11時37分にはようやく2枚目のキープサイズ29cm、52分には33cmの尾長がHIT!

 そのうち水面直下に大きな魚が見え始めました。水面ギリギリまで湧き上がって撒き餌を食い漁る、50cm或いはそれ以上のサイズの魚の群れです!
 その大部分は冷静に観察すれば尾鰭の黒いキツのようですが、明らかに毛色の違う魚も多数同じ行動をとっていることが見受けられます。
 そんな状況で全身のアドレナリンを燃え上がらせないグレ釣り師なんて居るでしょうか?

 早速、ウキの落ち止めにしているフカセウキゴムをハリ上矢引き程度にずらし、0ウキをハリスの中に入れて狙っていきますが、サシエはほぼ落ちてくれません。時折何の兆しもなしにサシエが消えている程度。これには心身ともにさらにヒートアップ!

・異類異形の悪党釣法?
 が、ここで熱くなりすぎても釣れますまい。
 私はハリスを2.5号に上げた上で仕掛けから0ウキを外して、その代わりに長さ1.5cm程度のブランコ付きのハリスウキ0号をハリ上2ヒロほどの位置に装着し、その下に飛ばすための重しとして潮受けウキゴムを一つセットしてみました。そして魚の群れをできうる限り引き付けた上で、身を低くし、弓を引き絞るようにしてその仕掛けを振り込んでいきます。
 
 この日は恐ろしいほど稀有なことに、魚、風、潮流という全ての条件が私に味方してくれました。すなわち撒き餌によって魚の群れをごく近くまで誘引することができましたし、風は穏やか、磯際には払い出しがあって、軽い軽い仕掛けをカモフラージュしながら、サシエを沖の魚の群れの中に流し込んでくれるのです。

 この滅多に使えない紀州長竿釣法テイストの仕掛けが的中し、一旦遠のいていた尾長グレのアタリが復活。33cmまでではありますが、ハイペースで仕掛けを引っ手繰っていくようになりました。
 そして午後1時20分ごろ、一際強烈なパワーが私を襲います。間違いなくこの日一番の引き。
 一進一退の攻防を繰り広げ、ようやくタモに収めた魚は45cm。この魚の種類がキツであることは、それが水面に姿を現すのを待つことなく、心に余裕を残した私のやり取りが示しておりました。

 それからは、アタリウキや潮受けゴムの微妙な位置調整でガラッと食いが変わってしまうことなどのデータを集めながら魚たちを食わせていき、一人エキサイティングな釣りで盛り上がっておりました。
 道中と釣りの疲れと、季節はずれの暑さにダウンして背後でスヤスヤと眠りについているShioさんとは対照的に。

 ● 柏 島 kashiwajima
利用渡船 黒潮渡船 出港地 高知県大月町・柏島
時間(当日) 6:00〜15:00
料金 5000円
駐車場 港:500円 弁当 700円
宿/仮眠所 民宿を経営 システム 磯割り制(5交替)
泊まり優先
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
 やがて魚の群れが食い盛る水深が深くなっていき、グレも脱落して、キツだけの群れになってしまいました。
 私は元の円錐ウキ仕掛けに戻し、遠近深浅幅広く探っていきましたがアタリは遠くなってしまいました。
 そして14時35分に磯際で尾長グレ、この日8枚目のキープサイズを拾ったのを機に納竿とし、バッカンを洗って迎えの船に乗り込みました。

 時期的要因もあってグレのサイズが小さかったとはいえ、今シーズンの開幕戦からこれほど熱い釣りができるとは大満足です!
 一方、Shioさんの方は夢にまた一歩近づく熱い瞬間を体感できたとはいえ、やはり心残りは大きいことでしょう。背鰭を出してキビナゴを追っていた青物のボイルにも居合わすことができませんでしたし・・・。

・初日第二ラウンド!漁港エバ&ゴロタ浜のヒラスズキ
 この日の釣りはまだ終わりません。
 翌日は港を回ってエバ(メッキ)を釣りながら帰ろうという話でしたので、その下見も兼ねて清水方面に向かい、ゴールデンタイムの漁港めぐりを敢行します。しかしながら、エバは数も少なく、サイズもまだまだ小さくて、まともな釣りにはなりそうも無い様子。
 気分を変えてゴロタ浜も攻めてみますが、ウエーダーでも無ければしんどそうだし、そもそもヒラスズキを狙うには厳しい凪模様です。
 困った・・・。明日の釣りはどうしよう。

足摺岬から昇る朝日が、穏やかな海と
竜串の沖磯・オムロ群礁(大村碆)を
赤く染めます。

・二日目も沖磯へ
 その朝、私たちは定宿・幡多郷(はたご)を出発し、国道321号線を南東方向に飛ばしていました。
 目的地は竜串の沖磯。いつもお世話になっている西本渡船に昨夜のうちに電話して、ベタ凪なので沖磯「オムロ群礁」にアタックできることを聞き出しておいたのです。そして、「体が痛いから勘弁〜」と拒否するShioさんを半ば強引に連行したのです。(お前は鬼か〜!)
 だって、この日にヒラスズキを狙う上で竜串を越える場所なんて無いことは目に見えていましたから。
 
 幸いなことにShioさんの体は夜のうちに回復しており、心配だった出船時間にも間に合いました。
 そして午前6時過ぎ、総勢6人で港を出発、途中象の鼻を経由して6時半前には余程の凪でないと上がれない「オムロ群礁」に到着、竜串屈指の名礁「カジ」にフカセのお客さんを降ろします。

  とっておきの磯「オガ」の西向き。先端には大小のワンドが並び、いかにも釣れそう!
  こちらは北〜東向き。北隣の名礁「カジ」との水道は釣れそう。東もよさそうですが、浅い・・・。
 最後に残った私たちに、船長はとっておきの場所「オガ」という磯を用意してくれていました。

 そこは竜串特有の漣痕というのか、洗濯板のような地形の極めて低い磯で、満潮時に潮に沈む「通路」さえ覚えておけば広く歩けるというルアーにはもってこいの場所。過去にはとあるメーカーのヒラスズキのテスターが腕を磨き、商品のテストを繰り返した実績場なんだとか。

 私たちは船長から詳細なレクチャーを受けたあと、ベタ凪だからこそヒラスズキが狙えるその磯へと渡礁したのです。

・初体験
 この日は私もルアー一本で挑戦です。
 そういえば四国の沖磯へルアーのみで渡礁したことなんて一度も無かったなあ・・・。四国へ通い始めた頃には、磯にルアーも持ち込んで投げてみたりはしたけれど、磯竿とレバーブレーキにミノーを結んだだけの、まさに即席スタイルだったしなあ・・・。
(Shioさんの話によると、実は磯竿&レバーブレーキリールは、現在のスズキ狙いでのトレンドなんだとか。)

オガ中央部、西向き先端。
サラシ、シモリ、潮目・・・。条件は最高!
 今回のロッドはコルトスナイパーM10ft、リールはやはり有り合せのプレイソ+インパルト2500ドラグスプール。ラインはナイロン3号で、ビミニツイスト&オルブライトノットでフロロハリス6号を結節したものです。「ショアラインシャイナーR50」の、おそらくサヨリカラーだったはずの剥げたやつを、音速スナップで接続して準備完了。
 そして西向きのサラシへ入ってShioさんの準備を待ちます。まだ〜?まだですか〜?
 
・いきなり!
 東西に走る何本もの溝が海に落ち込んで細長いワンドとなり、進入した海水が常時泡だってサラシを形成し、その先のシモリに向かって伸びている。そのさらに沖には潮目が長々と横たわっている。「オガ」という磯の西向き中央はそういうポイントでした。
 
 「今日こそShioさんにヒラスズキを釣ってもらいたい。」そんな思いでやってきたこの場所だったのですが、やはり、岩の裂け目の中の白濁した魅惑の世界を眼前にすると体が自然に動いてしまっていました。
 気がついたときにはすでに強靭さと柔らかさを併せ持った竿を振りぬき、生涯初めての一投を投じていたのです。

 サラシのはるか沖に着水したミノー。私は波のざわつき、蠢動を感じながらリールのハンドルを回してます。
 我が分身たるミノーが、波に覆われた岩の突起の側を通過した時に伝わった、「ゴリッ!」という感触に、私は思わず声を上げてしまいました。
 期待を込めてさらにハンドルを回すと、分身はいよいよ核心の部分へと入っていきます。

 「うっ!?」
 それは突然のことでした。ミノーが何者によってくわえ込まれ、きゅ〜〜と締め上げられたロッドにはグリグリという感触が伝えられます。この上なく甘美な時間がやってきます。しかしそれを堪能するいとまもなく、Shioさんの差し出すタモ網であっという間にフィニッシュ。
 何が起こったか分からないような風情で横たわり、荒い息をついているのは、本命魚、ヒラスズキです。

   帰りの渡船にて。西本船長撮影。
 「えっ・・・、嘘・・・、こんなにも早く・・・。」
 私はあまりのことに呆然としていましたし、これにはミノーを受け入れた岩の裂け目のポイントすらも唖然?Shioさんももちろん眼を丸くしています。
 私のファーストヒットがあっという間の体感時間で終わってしまったのは、初めての経験に心の余裕が持てていなかったため・・・というわけでもなく、本来ジギングロッドであるコルトスナイパーは53cmのヒラスズキを相手にするには役不足だったということでしょうか。

・皇室献上魚がヒット?
 やってしまった。あろうことか、私が先に釣ってしまった・・・。
 キャストを始めたShioさんを申し訳ない気持ちで見守っていると、数投を経ずしてそのロッドが弧を描きました。
 
 「やった!」
 私は、先ほどのお返しとばかりにタモを拾い上げShioさんに駆け寄ります。が・・・、魚は50cm枠のタモなどには収まるはずも無いほどに巨大。 ・・・というより、長かった。
 リーダーを掴んで引きずり上げた獲物は1mを20〜30cmは上回ろうかという、淡いピンクのヤガラでした。
 ピンクということはもしやアカヤガラ?高級料亭でしか供されないあの魚??天皇陛下に献上されるというあの魚なのか?
ついにやった!と思ったのに・・・。
(魚の体色は、この後、淡いピンクに変化。)
?と、興奮したのですが、手ごろなタイドプールに放り込んで泳がしているうちに色が変わり、もっともっと庶民的な・・・というか、マイナーなアオヤガラであることが判明してしまいました(汗)

・ヒラスズキが次々に!
 私はあちこちの溝にミノーを通していました。すると、最初にヒラスズキを掛けた場所の隣の溝で黒い影が追尾してきました。サイズは大きくありませんが、紛れも無くヒラスズキです。
 「Shioさん!おるおる!こっちで投げてみてください!」私はそう声をかけた上で移動し、次のポイントを探っていきます。
 すると、北向きのポイントでもヒラスズキがチェイス!ヒットには至りませんでしたが、この磯、魚影は相当濃いようです。
 もちろん、Shioさんの「ショアラインシャイナー・ランカーハンター」も黒い影に追われるのですが、やはりどうしてもヒットに持ち込むことができずにいました。

・これ程とは!
 この「オガ」の一番のポイントは南向きにあります。
 船着き側のポイントとは深い溝で隔てられており、狭くて長い痩せ尾根のような岩の先端まで行って、そこから既に水没しかかっている飛び石のような通路を通って行くしかなさそうです。

 その痩せ尾根の先端はShioさんがアオヤガラを釣った大きなワンドの最奥に当たっていて、シモリの点在する「いかにも」というポイントになっています。そんな場所をただの通過点として素通りできるルアーマンが居るなんてとても思えません。

 まず、脇の足場のよい所からShioさんがキャスト。が、何投しても異常なし。
 続いて痩せ尾根の先端付近の波を被らない位置から私がキャストを開始します。
 
 大きなワンドに放たれた「ショアラインシャイナーR50」が痩せ尾根最先端の磯際に到達、私はそろそろピックアップ体勢に入ろうとしていました。
 その時、順調にラインを巻き取っていたリールが強いショックとともに停止。そして逆転しはじめたのです。ドラグが高らかに歌い続けています。
 その刹那、私とShioさんの眼ははっきりと捉えていました。水面を切り裂き、沖に向かって真一文字に疾駆し始めた瞬間のヒラスズキの背中。70cm、いや、80cmにも達しているように見えた大きな背中を。

 ドラグの歌が止まりません。そろそろ体勢を立て直さねば、やられる!
 私は滑り過ぎるドラグを締め込み、強引な反撃に出ました。
 しかし曲がりっぱなしだったロッドはその瞬間に跳ね上がり、テンションを失った道糸が宙を漂いました。それは根ズレによって見るも無残、ザラザラに傷ついています。

 私は正直、ヒラスズキがここまでのパワーで疾走するとは思ってもいませんでした。敗因は甘さ。そしてそれが招いたドラグ調整等の適当さであることは痛いほど分かっています。
 
 衝撃のバラシ一つで私たちはこのポイントから撤退し、今度は北向きや東向きに転進です。
 南向きのポイントですか? 今回はやめておきました。
 通路は今でさえ、ワンドからスピードを上げて入り込んでくる波に洗われているのです。潮はこれからドンドン上がってきますし、帰れなくなるのが怖くて断念。
 ヒラスズキのフィールドテスターにとってはこんな溝などただの道。ウエットスーツを着て荒れ狂う波の中へ飛び込み、沖の離れ磯まで泳いでいったりするそうなのですが・・・。

・カラフル!
 日が高くなってくると、ルアーを追ってくる魚の色が赤や茶色に変わりました。
 興味津々という感じで、群れになって追ってくる赤い魚はオジサンの類。本気で襲い掛かろうとまではいかないのか、なかなかフックアップに持ち込むことはできませんでしたが、船着きに移動していたShioさんが「エクスセンスサルベージ70ES」という20gのバイブレーションでゲット。それはホウライヒメジという四国では最もスタンダードな種でした。

    メガネハギ30cm
 一方たまに追ってくる茶色い魚の正体はなかなか分かりませんでしたが、10時28分に私がランディングに成功し、モンガラカワハギ科のメガネハギであることが判明しました。ヒットルアーはマリアオフィス(ヤマシタ漁具)の「プリンセスマリア」という懐かしいミノーでした。

(12cmクラス&重いルアーを収めた私のタックルボックスは、播州赤穂・千種川河口の本スズキ釣りにのめりこんでいた1998年ごろで時間が止まっています。中身はマリア「ザ・ファーストXJ」とか、ザウルス「ソルティーレックス」とか、デュエル「アイルマグネットダイエット」とか、メガバス「リップレスベイト」コトヒキカラーとか・・・)


・さて、ヤガラでも捌きますか。 
 遠のくヒラスズキの気配。回ってきそうもない青物。連日の季節はずれの暑さ。こうなってくるとルアーフィッシングではどっと疲れが出てくるものですね。体力を消耗するルアー、気力を消耗するフカセ。楽しさは同じでも疲れ方は全然違うようです。
 「多くのルアーマンは磯の上で休んでばかり。あれじゃ釣れるはずが無い」とフカセ釣り師から磯からのマグロ釣り師に転職した従弟に怒られそうですが、あまり無理をせずに休み休みやっている二人でした。

 休んでばかりも何ですのでそろそろタイドプールに泳がしたままの魚の処理をしましょうか。
 随分潮も上がってきました。多くのポイントでは足元を波が洗いはじめ、時折、足をすくわれそうな一発波が襲い掛かってきます。このままではせっかくの海の幸に逃げられてしまいますから。

 まずはヒラスズキ。これはごく普通にナイフをエラに突っ込んで血管を切り、返す刀で背骨の関節に刃を入れて一丁上がり。問題は1m2〜30cmに達するアオヤガラです。

 ヤガラというのは妙な魚で、ほとんど身の無い長い長い口吻と骨質の部分が胸鰭のまだ後方まで続いており、調理をするにも、今回の場合はクーラーに収めるためにもこの頭部を切り離す必要があります。(ちなみに、頭部は漢方薬として利用されるとか。また、口吻のゼラチン質の部分が旨いという記事もありました。)

 家でやるならまな板に乗せて出刃包丁の付け根の刃を押し当て、掌の一番厚い部分で峰を叩いてテコの原理で押し切れば、まるで白ネギの青い部分を切ったような音を立てて切れてくれます。しかし磯の上で、しかも刃の薄いナイフを使って切るのは大変です。洗っても洗ってもダマになって手に残る体表の粘液もかなり厄介。
 どうしても太い背骨が断てずに困り果てておりましたが、私のダイワの魚バサミで尻尾を、Shioさんのフィッシュホルダーで頭を引っ張り、空中でゴンゴンと刃を叩きつけてようやく切断。切れた瞬間にShioさんが後ろに吹っ飛んで行きそうになりましたが、とにかくこれようやくでクーラーに入れることができます。あ〜、しんどかった。

    ルアーもやっぱり面白いですね!
    またやってみなければ。
・忘れ物がまた増えた
 この日はShioさんの体力と帰りのことを考えて12時で終了。
 やってきた迎えの渡船に乗り込もうとしますが、船着きへの通路は水没しており、時折危険水位である膝を超える波が押し寄せてきます。
 波を読んで往復し、どうにか道具と体を船に駆け込ませて無事離礁。

 途中、カジに上がっていたお客さんをシーバエやMバエに降ろしたり、象の鼻のお客さんを回収したりしながら和気藹々と港へ戻りました。

 ちなみに午後のシーバエではヒラマサの回遊があったらしく、フカセ仕掛けで2回飛ばされたとのこと。午前中にオガの潮目に回ってきていてくれたらなあ(涙)

 そして、多種多様な雑多な道具を積み込み、忘れ物をチェックし、帰路ついたのですが、やはりありましたねえ。大きな大きな忘れ物が。
 今回もまた、取り込み寸前まで至りながら手のひらからこぼれていったShioさんのヒラスズキ。そして私の、「釣ってもらえた!」「完璧なプロデュースだった!」という(自己)満足感という忘れ物。回収どころか、またまた増えてしまいましたがな。

 それぞれの願望・欲望が満たされるまで、二人の南西部コラボ遠征という企ては終わりそうにありません。

 ● 竜 串 tatsukushi
利用渡船 西本渡船 出港地 高知県土佐清水市・竜串港
時間(当日) 6:00〜12:00
(16:00まで可。
 融通ききます)
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 船長にお任せ
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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