風雲児  烈風伝
・船かかり釣り & 磯釣り
          釣果の代償は、危機一髪・恐怖体験


2013年5月31日〜6月1日 高知県橘浦(かかり釣り)&柏島(磯釣り)
・初日は穏やかな湾内で、かかり釣り
 「もう随分、いい釣りをしてないでしょう?面白い釣りがあるので、今度一緒に行って状況を変えてみませんか?」という、一本の電話によって、今回の釣りの幕が開きました。いつも以上に波乱万丈の釣りの幕が。

 播州に初夏を告げるはずの「相生ペーロン祭」が終わって、初夏というより梅雨へと突入してしまった5月31日、私は瀬戸大橋を渡り、電話の主・宿毛の「だいきち」さんとの合流地点である、高知県大月町の橘浦へ向かっていました。
 初日はだいきちさんと、その釣り仲間のMさんと3人で、橘浦湾内の小割り(養殖イケス)のロープに船を繋いでの「かかり釣り」をするのです。当初予定していた磯釣りとは全く違うものになりましたが、これも「面白い釣り」であることには変わりません。

 午前7時、橘屋の船頭さんが、イサギ狙いの常連のお爺さん2人の船をポイントに係留して、別船で桟橋に戻ってきたので、私たちも戻ってきた船に道具を積み込んで出発。小割りのロープにフックを2本引っかけて、船頭さんは迎えに来たもう一つの船で港に戻っていきました。

 今回のポイントは、リールのカウンターで水深22mの場所。マダイ、イサギ、シマアジが狙いです。
 私はいつものテンビンズボ釣りで、タックルもいつも通りのもの。竿はHX剣崎30−270、デジタナ小船にPE4号。テンビン+3mmクッションゴム、ラークカゴL寸にオモリ40号。ハリスは長く取りたいところですが、船頭さんのアドバイスを受けて3号を2ヒロ、エダス無し。ハリはとりあえず閂マダイ10号、のちに速攻グレX8号を使ってみました。だいきちさんも、Mさんも、カゴの形状や枝針の有無こそ違いますが、概ね同じような仕掛けを準備しています。

・一投目から
 さて、カゴにオキアミ生と赤アミを詰め、ハリにボイルを刺して第一投。
 撒き餌を振り出し、底からハリス分だけ巻き上げて、ロッドホルダーに竿を預けると、その穂先がコツンと動いたような気がしました。目の錯覚かと思ってしばらく様子を見てみますが、船の揺れと穂先のお辞儀が明らかに同期していません。おおっ、小さいのが食うとる!
 サイズは33cmですが、一投目から鰭ピン・鼻孔正常の天然種苗のマダイが釣れてしまったのです。嬉しさよりも驚きの方が大きい私をMさんがからかいます。「一投目から釣れる日は、良くないことが多いぞ」と。

 ちょっと不安な気持ちになりましたが、その数投目に再びアタリ!今度もそれほど大きいわけでもなさそう・・・と思っていると、3号ハリスが突然、中途半端な部分から飛んでしまいました。な、何で?少し後には、Mさんのハリスも同じように飛んでしまったようですし・・・。

ネイリゴをタモに収めただいきちさんと、
完全フカセに挑戦中のMさん。海は穏やかそのもの。
 ここからは、だいきちさんの時間でした。
 本命魚の一角、イサギを立て続けにヒットさせています。それは25〜30cm少々の、まだ縞模様の残るイサギで、この魚の日本記録・70.2cmの実績を持つ橘浦らしからぬ?サイズですが、だいきちさんはそのアタリを独占し、たちまち生簀の中に6尾の群れを作り上げてしまいました。
 9時35分にはさらに、50cmくらいのネイリゴ(カンパチ)もゲットです。

 その間、私は38cmのマダイを追加することができましたが、ズボと完全フカセの二刀流のMさんは未だボウズという状況が続いています。

 やがて、本命魚のアタリが途絶え、海底付近はエサ取り天国になってしまいました。生とボイルはすぐに無くなり、海エビは皮だけが戻ってきます。
 エサ取りの正体はでっかいコモンフグとウスバハギ。なるほど、謎のハリス切れはこいつらが原因か・・・。

 そのコモンフグをズボ釣りで釣って、完全ボウズを脱したMさんは、勢いに乗って完全フカセの竿でマダイをゲット。
 
 今日は二刀流も有りかも!
 横目で見ていた私も、テンビンズボの「HX剣崎」に撒き餌を詰めて棚まで落とし、ロッドキーパーに預けた上で、予備竿として積み込んでいたルアーロッド「コルトスナイパー」を手に取りました。こちらの竿で試みるのは、オモリ3号の落とし込み釣り。秋にタマメさん達と来た時に船頭さんが成果を上げていた、あの釣りです。

・パターン発見?
 ルアーロッド一本分ずつ糸を出しながらタナを探っていくと、底に着くか着かないかの所で竿が大きく舞い込んでいきました。コルトスナイパーじゃなくて、ロッドホルダーに預けている剣崎の方が!
 私は慌ててルアーロッドを放り出し、それを足で押さえながら、剣崎に飛びついてファイト開始です。
 グイグイと強烈に突っ込む魚にドラグが滑ります。私も負けずに竿を立て、魚の体力を奪おうとしますが、尻手ロープが突っ張るのと、ルアーロッドがあるために自分の体勢が作れない。
 それを見ただいきちさんがすかさず駆けつけ、ルアーロッドの方を掴んでくれたので、私は立膝の体勢で魚と渡り合うことができるようになりました。そして魚が浮上を始めます。

やりました!40cmのシマアジ!味はもちろん最高でした!
 カンパチか?ハマチか?固唾を飲んで海中を見つめる私たちの目に、体高のある銀色の魚影が飛び込んできました。
 「シマアジやっ!」
 私の喜びが爆発します。同時に、ハリスを手繰り寄せる動きが慎重になります。ハリはこの魚の代名詞、ガラスの唇に掛っているだけ。水面で首を振られたら一巻の終わり。
 魚が水面を割ったのと、Mさんが手ダモを差し出してくれたのが同時でした。だいきちさんとMさんの見事なアシストのおかげで、40cmの見るからに旨そうな高級魚が船内へやってきたのです。

 この一枚で3人の眼の色が変わりました。群れで回遊するはずのシマアジはこの船の下にまだいるはずだ!三者三様、思い思いに仕掛けを打ち返しますが、待望のアタリは出てくれません。
 30分後に姿を現したのはシマアジではなく、表層に群れるアジ子やサバ子に寄ってきたアオリイカでした。Mさんは、船内に転がっていた餌木を拝借して早速キャスト。アオリの一挙手一投足にエキサイトして声を上げるMさんと、だいきちさんの声が聞こえてきます。

 私はその声を聞きながら、ルアーロッドでの落とし込みに再挑戦していました。すると、またしてもロッドホルダーの剣崎が荒っぽく舞い込んでいきました!今日はどうやら、サブロッドの仕掛けを落とすことによって、メインロッドが舞い込むというシステムになっているようです(笑)
 私はコルトスナイパーを股に挟んで剣崎に飛び付き、魚との格闘を開始。と同時に、Mさんの声がアオリのヒットを告げました。
 
 今度もだいきちさんがコルトスナイパーを引き受けてくれたので、眼下の敵にだけ集中することができました。
 しかし、水面下に見えてきた魚は予想外のもの。磯で見慣れた黄色と水色のストライプ、キバンドウ(ヒブダイ雌)だったのです。
アオリイカをゲットしたMさんと、イカの
逆襲の犠牲になっただいきちさん。
 この魚を船内に引きずり上げたのを見届けただいきちさんは、Mさんのもとへ急行、墨をかけられながらもアオリイカの取り込みをアシストしておられました。

・最後の砦
 約1時間後の11時53分、私の剣崎に30cmのイギス(オオモンハタ)が食ってきました。その口からは途中で切れたハリスが出ていますが、それはどうやら、私が朝一番に使っていたもののようです。せっかくフグかウスバに助けてもらったのに、紅炉上一点の雪、わずか4時間ほどで命が失われてしまうとは。

 橘浦集落に正午を告げるサイレンが鳴り響きました。
 ただでさえ良かったとは言い難い魚の食いは、これを合図にしたかのように止まってしまい、サシエも取られないという状況も頻発しました。

 夜通し走って寝不足の私は、舟の上で竿先を見つめながら舟をこいでいましたし、Mさんは「夜の『おきゃく』(宴会)に備えると言って、本格的に寝てしまいました。真面目に頑張っているのは、すでにだいきちさんただ一人です。

 納竿と決めていた15時直前、久しぶりにヒットした魚は37cmのネイリゴ(カンパチ)。釣り上げたのはもちろん、だいきちさんです。釣りはやはり最後まで諦めてはいけませんね。

 食わない時間も長かったけど、港で、生け間&クーラーを覗くと、しっかり美味い魚ばかり色々揃っているではないですか。
 ただ、昼までに引き上げた地元の常連さんは、1キロ級のイサギでクーラー満タンだったとか。そのポイントにも行ってみたかったなあ・・・。

利用業者 橘屋
時間(目安) 5:00〜16:00(5月〜9月)
6:00〜16:00(10月〜4月)
料金 1隻(4人まで)12000円
駐車場 無料
宿/仮眠所 無し
*データは釣行日のものです。
間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
・明日のために
 橘浦での釣りを終えた私は、だいきちさんと別行動を取ることになりました。

 まずは車内の整理をして船の道具と磯の道具を入れ替え、立ち寄り湯に入って汗を流します。
 一息ついたら、明日の渡船の手配をしなきゃなりません。

 出発前に見てきた天気予報では、翌日土曜日は朝から豪雨の予報で、うねりの心配もあり、小才角・柏島・武者泊など、南岸の磯への渡礁は無理だろうから、北西向きの安満地の磯に行こうか、由良半島まで走って地方磯に乗せてもらおうか・・・と迷い続けていました。
 しかし、最新の予報を確認すると、波は1.5mのち3mですが、風は北東、雨の降り始めは遅くなり、雨量もかなり少なくなっていましたので、物は試しで柏島の井上(弟)渡船に電話するとOKの返事です。やった!安満地も由良の地も40cmの尾長の可能性はありますが、やはり悲願達成に一番近いのは柏島・・・のはず。明日こそは、ええ加減に・・・。

 その後、エサを買ったり、食料を買ったり、大好物のビワの実を道端の林で野生化している木から穫ったりしながら、宿毛を目指しました。

 そうそう、修理したイグローに詰める氷も買っておかなきゃ・・・と、宿毛・田ノ浦漁港に向かい、バラ氷の自販機を発見。早速ホースの下にクーラーを置いて、操作パネルの方へ歩み寄ります。港で買ったら10キロ150円とかでお得ですもんね〜♪と手を伸ばしかけてビックリ仰天。並んでいたボタンは順に「50キロ」「100キロ」「1トン」!!要らん〜!こんなにも要らん〜〜!!
 私は逃げるようにして自販機を離れ、たまたま歩いていた「すくも湾漁協」の職員さんに「他に氷の自販機はありませんか?10キロほどしか出ない、大人しいやつ。」と聞いてみましたが、「あれしかない」との回答。しかし、「10キロくらいなら、これ残りをあげようか?」と、魚の出荷に使った残りのものを、イグローの中に注ぎ込んでくれたのです。これには本当に助かりました。

 こうして、5時半ごろ、宿毛のだいきちさんのご自宅に到着し、今回も子どもたちとの楽しい時間を過ごしてから、失神するように眠りに落ちました。

・2日目は柏島で磯釣り!
 翌日は3時起床。
 だいきちさんは所用ということで、そっと一人家を出て、柏島へと車を走らせました。

 雨はまだ降っていませんが、確実に本降りになることが分かっている日の釣行というものは何となく憂鬱なもの。眠気と、低迷する最近の柏島での戦績が増幅させるその気持ちを、"鬼才"カルロス・クライバーのベト7で盛り上げながらやってきた渡船乗り場は、土曜日とは思えないほど閑散としたものでした。
 私が到着した時点で停まっていた車は、姫路ナンバーが2台、香川ナンバーが2台。で、その香川ナンバーのうちの1台に、タマメさんと、その友人で井上渡船の常連でもあるHさんが乗っていました。
 タマメさん達はこの日の夜釣りでシブダイ(フエダイ)を狙うつもりだったのが、悪天候が予想されるため急遽朝釣りに変更したとのこと。そのタマメさんの「3人で一緒に上がろう!」という提案に反対する理由なんてありません。

・蒲葵マニア、出陣
 午前5時に出発です。磯割は当然?蒲葵島(びろうしま)・・・好きやねえ〜、あんたも。
 上物2人と底物1人ということは、今日はカジヤノキリに上げてもらえるのかな?と思ってたら、常連のHさんも見たことがないような速い潮が走っているらしく、「今日は底物は無理だろう」と船長が判断。結局3人バラバラになって釣ることになってしまいました。

 今回は東系のうねりで、スベリ、池田、高場、低場等が使えません。
 そんな中、底物のタマメさんは、道具を一刻も早く高い所に移すように指示されながら、グンカン(赤バエ)高場に渡っていきました。まあ、ここは釣り座が非常に高いので、いくらうねったところで大丈夫ですな。

 続いて、蒲葵島の「高場の奥(高場の横)」に私が、コシカケの近くの無名磯にHさんが渡礁したのです。

・高場の奥
 さて、3度目の挑戦となった高場の奥は、ムラは激しいが 高級ロッドの実績 良型尾長の実績のある磯だそうです。しかしながらグレはコッパのヒットも未経験。これまでにクーラーに入った「魚」といえば31.5cmまでのイサギが2枚だけ。早急に手を打たなければ、赤バエや中泊同様の相性の悪い場所になってしまいそうです。

 前回は船着きから釣りましたが、今回は船長の勧めに従って、さらに奥まった場所にある平らな釣り座を選択。ゼロサム磯弾X4タイプV(2号弱)に道糸3号、ハリス2.5号のラインナップで、高場との間のワンドを攻めることにします。ここはワンドと言っても結構潮が抜ける場所。
 何年ぶりになるのかは忘れましたが、予備クーラーの中に充分な貯金のある状態からのスタートというのは本当に久しぶり。今日はターゲットを本命だけに絞って戦うことができます。さあ来い! 磯リミテッドorトーナメント磯! 尾長グレ!

6時17分。穏やかだが、魚の食いはもう一つだった、高場との間のワンド。
 スタート直後のワンド内はかなり穏やかで、撒き餌に群がるのは小ぶりのオヤビッチャとシラコダイ、カゴカキダイなど。しばらく撒き続けてもグレの姿は全く見えませんし、ゼロ系の仕掛けで探ってみても本命からの反応はありません。そこで、ウキをG2に変更し、ウキ下を3ヒロ半に設定。沖に投入して、ワンドから払い出していく撒き餌を待たせます。
 6時17分、35cmのイサギがヒット。こうすればとりあえずイサギが食うという推理は、わずか一投で実証されたのです。

 しかし、次の一投では早くも誤答と化したのか、以後本命はもちろんイサギの追加も無く、サシエまでもが落ちなくなってしまいました。ウキ下をドンドン深くして、やっと食ったと思っても、それはなぜだかコッパギツ。
 ウキをいじり、仕掛けをいじり、ウキ止めを上げたり下げたりと、迷いの森を3時間半ほども彷徨った私の心には、いつしか「ダメなのか、今日もまた・・・」という分厚く暗い雨雲が垂れ込めていました。

 そんな心の雨雲を吹き払ってくれたのは皮肉にも、時折小雨を吐き出す本物の雨雲と、釣り座まで舞い込み始めた風と、うねりでした。
 沖は上潮が横へ横へと滑り、ワンド内ではうねりが四方八方へ反射して、開始直後とは全く違う表情を見せています。すでに高場の磯際のサラシは常設のものとなり、ワンドの奥の方から伸びてきたサラシも同様になりつつありました。
 ざわつきの中で身を翻す、正体不明の良型の魚影がチラリと見えた時、私の心に広がったのは一種の安堵。「馴染みもしない深釣りから、これで解放されるんだ」と。

・00号
 00号のウキを道糸に通し、2ヒロのハリスにG7を一つだけ打ってサラシの中に沈め、目視できる位置でサスペンドさせて釣ることにしました。ウキ止めは2ヒロ半の位置にあり、さらにウキは半ピロばかり沈んでいますが、サシエはごく浅い位置を漂っているはず。
 しばらくやってG4を一つ追加し、気持ち沖目に投入。10時7分、間髪を容れずに反応が出て、33cmの腹パンパンのイサギをゲットすることができました。

 それから30分ほど経ったころ、高場の際でウキが消え、X4の胴が大きく曲がりました。
 これはいい型だ!引きはまさしくイサギ。しかし、重量感がこれまで釣ってきたものと全然違う!
 この竿には、今流行の守備を固めて魚の体力を奪っていく方法より、こちらからガンガン攻めていくスタイルの方が合っている。使い込む中で見えてきた仮説を信じ、強引なくらいに竿で引き寄せて、リールのハンドルを必死で回します。
 しかし、序盤にもたついたことが足を引っ張り、磯際に突っ込まれてラインブレイク。ああ、もう少しだけラインを巻き取れていれば・・・。

・悲願
 その間にも風と波は激しさを増しています。沖狙いは厳しくなり、ウキが流れに呑まれて吹き寄せられワンドの中も、ポイントが足元にほぼ限定されるようになりました。しかしそのポイントは、サラシ二つの先端と、船着きとの間の小さなワレが交錯する絶好のスポット。
 今ここで釣れないなら、この磯は一体いつ釣れるというのか?

 11時、水面下のウキが音を立てるようにして磯際に消え、竿の穂先が海面に突き刺さりました。掛った魚は結構型がよさそうですが、常に竿で引きずり回すよう心がけ、絶え間なくプレッシャーをかけていきます。
 たまりかねた魚が深いところで反転、その時一瞬見えたのはこげ茶色の魚体でした。竿を叩かないので気付かなかったけど、前回何度も掛けたサンノジ・・・ いや、違うぞ!
 その魚が水面でヒラを打った時、私の鼓動は一瞬止まりそうになりました。

 尾長グレだ!

ようやく釣れた40cmの尾長グレ。惚れ惚れするようなプロポーション!
 ようやく姿を見せた本命は、棚の下、そして棚の上でもダッシュを試み、激しく抵抗しますが、私は難なくいなしてタモの中へ。
 その丸々と太った美しい魚を安全で平らな場所まで運んでメジャーに乗せると、尾鰭はちょうど40の目盛りの位置にありました。
 メジャーを魚体の丸みに沿わす、いわゆる「松田測り」ではない、正真正銘の40cm。人によってはこれを「小長」と称するでしょうが、私にとっては悲願だった魚です。2002年1月3日の58cm、2004年4月22日の40cmに続く、9年ぶり3枚目の四国での40cmオーバーの尾長グレ。こんなにも四国に通っているというのに、このサイズを釣るまでにこれほどの時間を要するとは・・・。

 肩の荷が降りました。やっと。
 この次の40オーバーまでにまた10年近い時を必要とするのか、この1枚で停滞が打破され、止まっていた時が動き出すのかは分かりません。ただ、今後しばらくは昔のように自由かつ柔軟に、釣り場の選択や釣りができるようになることだけは確かです。

 悲願の40cmをキープした直後に、強烈なパワーを持つ1尾に襲撃され、成す術なく高切れ。実はその日のうちに大躍進を始められた可能性があったのですが・・・。
 
 その後は尾長と思われるアタリは無く、意外と美味しいカゴカキダイや、ガシラみたいなイソゴンベが釣れただけ。

12時40分、離脱直前の「高場の奥」。
ビローの高場側も池田バエ側もえらいことに。
写真下、沖の大きな磯がグンカン(赤バエ)で、その右端が、
タマメさんのいる「高場」。
・まるでシャチのように
 12時前になると、奥側のポイントは制御不能の大サラシとなり、仕掛け運用は困難を極めるようになりました。危険度も上がってきたので道具を高所に運び上げ、船着き上段から釣ることにしたのですが、そこも非常に釣りづらく、また、じきに飛沫が叩き付けるようになって、頭から何発も被るようになってしまいました。
 風が問題になるにせよ、池田バエ寄りの場所に行けばやれないことはありません。しかし、私は12時半に竿を畳み、撤収を告げに来るであろう船を待つことにしたのです。

 しばらくすると、「グンカンの船着き」のお客さんを回収しにきた「いのうえ(兄)渡船」が通りかかり、声をかけてくれました。
 磯替わりや回収の時にお互いの客を乗せあうことも珍しくない、ここの兄弟渡船ならではのサービスに、ありがたく便乗させてもらいました。

 ただ、その回収が凄かった。
 うねりで使えない本来の船着きでも、上段西側の斜面でもなく、船着き上段の高い所から直接の回収。
 船の舳先というものは、こんな高い所まで持ち上げられるものなのか・・・。うねりに乗ってフォースヘッドを磯に乗りかからせ、船の前半部を空中に突き出す渡船の姿は、砂浜や流氷にその身を乗り上げてアザラシを襲うシャチのように見えました。

 「お客さん、一人で来たん?」
 「グンカンの高場に友達がおるんやけど、あっちも撤収ですかねえ?」
 「聞いてあげようか?」

 私はこのまま港に帰り、タマメさん達の帰りをのんびり待つのもいいかな?と思っていたのですが、折角なので「いのうえ渡船」のご好意に甘えてみることにしました。
 船はグンカン高場の沖へ到達し、船長がマイクでタマメさんに声をかけます。
 「まだやれるか〜?」
 「やれる〜!」

 船長がこちらを見て「上がるか?」と尋ね、私は頷きました。

・恐怖の渡礁
 上がると言っても、朝の渡礁時ですら時折波を被っていた南側(海に向かって左側)の船着きが使えるはずがないので、最北の角に着けるようです。
 
 再びうねりに乗せて船首を磯にぶつける「いのうえ渡船」。そのフォースヘッドはとんでもない高さにありましたが、それでもタマメさんのいる足場はまだまだ上。船の前面の壁は滑落必至の急傾斜、右側の壁は垂直に落下する絶壁で、その絶壁の上の平らな所にタマメさんがいます。

 私は背伸びをして道具を掲げて道具を受け取ってもらい、船長の「上がって!」の声にせかされるように、私も急斜面と絶壁が直角に交差する磯の角へと飛び付きました。
 思い切り伸ばした右手で垂直に切れ落ちた方のエッジを掴み、斜面に足をかけて必死によじ登ろうとしますが、砂岩質のこの磯には足がかりとなるような場所がありません。両足は空しく岩肌を掻きむしるだけ。

 「落ちる・・・。」

 滑落しながら渡船の手すりに飛び付くべきか?フローティングベストと股紐を頼りに反動をつけて眼下の海に飛び込むべきか?渡船と磯に挟まれて死ぬリスクと、体を強打するか、サラシに呑まれて死ぬリスクのどちらを取るか?
 なぜか私はパニックにならず、驚くほど冷静に状況を分析していました。

 その時、辛うじて磯を掴んでいた右手が、強い力で引っ張られました。上にいたタマメさんが助けてくださったのです。そのまま引っ張り上げられるような形で、どうにか無事に上陸することができました。こんな渡礁は初めてです。本当に怖かった・・・。

グンカン高場の底物場で竿を振るタマメさん。この日は不調。
・風とサラシとギンユゴイ
 タマメさんのクーラーには、オニカサゴが一つ入っているだけでした。本命竿にはイシダイやイシガキダイの反応は無く、巨大なキバンドウが当たってきただけ。予備ロッドのキビナゴ餌には、サラシの王者・ヒラスズキすら食ってこなかったそうです。
 そんなタマメさんの釣りを見たり、あれやこれやと話をしたりしながら、回収時間まで竿を出さずにゆっくりと過ごそうと考えていた私ですが、上がった以上はやはり釣りがしたくなってしまいます。

 タマメさんの左隣にバッカンを置いて、巨大なサラシを攻撃開始。足場の高さと横風、激しい混ぜ返しに対応するため、00号のウキにBのオモリを打ったサスペンド釣法で挑みます。

 巨大サラシの中はギンユゴイ天国でした。
 白泡の中で撒き餌とサシエを合わせると、20cm程のこの魚が次々とヒットしてくるだけなので、サラシの真ん中に撒き餌を集中させてギンユゴイを集めておき、糸ふけを利用しながら磯際を静かに流していくと、いかにも釣れそうな予感がします。

 しかし結果が出る前に、井上(弟)渡船が近づいてきたのです。

・恐怖を振り払って、ダイブ!
 「波が太ってきたけん、釣りをやめよか。」
 船長の声に従って大急ぎで片付けた道具を、磯の右奥の角付近に並べようとすると、渡船から耳を疑うような指示が飛びました。

 「底物しよった所から取るけん、道具を運んで!」
 事もあろうに、水面まで7mはある底物場に船を着けるというのです。

 渡船はうねりに乗って、舳先を高々と押し付けます。私は並べた荷物を順々にタマメさんに手渡します。タマメさんは底物場から身を乗り出し、荷物ごとに「重い」「軽い」と声を掛けながら、フォースヘッドに立つポーターさんに、投げ落とすようにして渡していきました。

 荷物の回収が無事に終わりました。あとは私たち2人が船に乗り込むだけ。

 さすがに離礁はここからではなく、私がこの磯に上がってきた奥の角に船を着け直して、斜面を滑り降りるようにして飛び移る形になるのだろうと予測した二人に、船長からの声が飛びました。

高場の奥から見たグンカン高場と、タマメさん。
この出っ張りの付け根から渡礁し、
先端から飛び降りました。
 「早く飛べ!飛び降りろ!」
 「・・・・・えっ?」

 思わぬ展開に息を呑むタマメさん。
 そりゃ当然です。船は相当上の方まで乗り上げてきているとはいえ、それでもうねりに揺れる船首までは優に3mはあります。一つ間違えばただでは済まないことは明白です。

 「絶対に受け止めちゃるけん、安心して飛んだらええ!」
 船長の息子で、昔、力士だったポーターさんが叫びます。そして意を決したタマメさんが底物場から飛び降ります。
 その瞬間、船長が「あ〜〜!」と大きな声を上げました。磯に押し寄せていたうねりが突如大きな引き波となり、船首が落下と呼べるほどの勢いで一気に2〜3m下がってしまったのです。
 バランスを大きく崩してフォースヘッドに転がる二人。
 しかし、船首の落下より、ポーターさんに抱きかかえられたタマメさんの着地の方が若干早かったため、怪我することなく済んでくれました。

 次は私の番です。
 船長が、「声をかけるまでは絶対に飛ぶな!」と警告し、うねりを見計らいます。
 ポーターさんが両手を高く上げ、飛びながらこの手を握れと指示します。

 うねりに乗って船がドンドン上がってきます。そして、頂点で静止した瞬間、船長の鋭い声が響きました。
 「行けっ!」

 私は恐怖を振り払い、ポーターさんの手のひらだけを見て飛び降りました。
 そして私がポーターさんの左手を必死で掴んだ瞬間、ポーターさんの右腕は、回しを取るように私の腰の辺りをがっしりと掴み、体のバネを使って落下エネルギーを受け止め、怪我どころか、衝撃すら感じないほどの着地に導いてくださったのです。

 タマメさんがつぶやきました。
 「これまで、いろんな渡船で、いろんな磯に上がってきたけど、こんな怖い回収は初めてや。」と。

 しかし、元力士のポーターさんのいる渡船ならではの、この最も迅速な回収がなければ、もっともっと恐ろしい目に遭っていたことでしょう。
 以前、お客さんが手間取っている間に、一気に巨大化した波がグンカン高場の上まで洗うようになり、お客さんは回収できたものの、道具は全て流失したという事件があったそうなのです。つまり、あの高さをもってしても、何ら安全なことは無かったのです。

 蒲葵島に向かい、無名磯でサメに奪われながらもイサギとグレを大釣りしていたHさんや、コウロウバエ、カジヤノキリ、カジヤの裏のさらに裏のお客さんを回収した渡船が、グンカンの前を再び横切ったとき、私を含めた大半の乗客から驚愕の叫びが漏れました。
 窓の外のグンカンは、恐ろしいまでの高さの波に襲われて、今まさに沈没しつつある艦艇の様相を呈していたのだから。

 地磯と違って、沖磯ではプロ中のプロである船長が海況を読み、進退を判断してくれることも多いもの。しかし、決して甘えることなく、自分の身は自分で守るということを片時も忘れてはいけない。
 強風と横殴りの激しい雨となった帰り道、私は改めて思い知らされることになった磯釣りの一番大切な事柄を噛みしめながら、車を走らせることになりました。
 ● 柏 島 kashiwajima
利用渡船 井上渡船(弟) 出港地 高知県大月町・柏島
時間(当日) 5:10〜15:00
料金 5000円
駐車場 港:500円 弁当 700円
宿/仮眠所 民宿を経営 システム 磯割り制(5交替)
泊まり優先
磯替わり 数回
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
 釣行記TOPへ