風雲児  烈風伝
 ・久々の御荘。コッパグレと遊ぶだけのつもりが・・・

2013年10月14日 愛媛県御荘の磯
 巨大台風が伊豆大島に大きな被害をもたらす2日前の朝、私は小舟に乗って鏡のように穏やかな海上を進んでいました。
 船の名は八栄丸。愛媛県愛南町御荘にある、民宿・山本屋の渡船です。

 宇和海南部で最も奥まったこの御荘にやってきたのは台風接近時でも確実に出られるという理由ばかりではありません。「春は沖から、秋は地から」というグレ釣りのセオリー通りの展開を期待し、スタートが少し早そうな気がするこの場所を選択したつもりなのですが・・・。

御荘湾の入り口に位置する小貝バエ。上がったのは確か今回で4度目。
 午前6時5分、ベタ凪の「小貝バエ」に渡礁。
 『小貝バエは御荘湾の入り口にあって、磯の上に灯台が設置されているので、足場はフラットになっている。磯釣りとしての趣は多少そがれるが、潮の動きはよく、その周辺ではピカ一のグレ釣りの特級ポイントだ。梅雨グレのシーズンから初冬までグレの釣れる時期も長く、25センチから30センチクラスまでの口太の数釣り場として人気が高い。』と、立石宗之さんの著作で紹介されており、船長も「お客さんの少ないこの時期に釣れるのはここしかない。」と強く勧める場所です。

 まずは撒き餌をセッティング。長丁場の釣りだし、エサ取りの猛攻が明白だということでオキアミは12kgを用意しましたが、ここのところオキアミが高騰していてボイルなんてもう買えませんし、生オキアミもビックリの価格になっていたので撒き餌専用のものを使用。空前の好景気は同じ国の遠い遠い世界の話。集魚剤もできるだけ安く上げようと増量系を多用し、グレパワーV9徳用、磯グレスーパー浮かせ、グレZ、4倍こませグレを各一袋、残量に応じて適宜投入。

 タックルの方は朝のうちは青物が回ってくるかもしれないということで、序盤戦は1.85号相当のゼロサム磯弾X4タイプV、道糸3号、ハリス2号を選択。足元から伸びる棚から走り出てくるクロホシイシモチ、ソラスズメダイ、横手から湧いてくるミニコッパとコガネスズメダイ、トウゴロウイワシ類を撒き餌で足止めし、0号やG2のウキで、沖や潮下をメインに攻めていきました。

 食わせない釣りですので何も掛らない時間が続きましたが、6時52分に初ヒット。G2の仕掛けで沖の2ヒロ半から引きずり出した30cmの尾長グレです♪

 その後はグレがポツポツと釣れるようになりましたが23cmくらいばかりです。期待した青物は沖で数度ボイルしたものの、オキアミにもクロホシイシモチの泳がせにも無反応でしたから竿をトーナメント制覇1.5号、ハリスも1.5号に下げて、水面付近に食い上がってくるコッパやエサ取りの中から少しでもサイズのいいものを狙う釣りにシフトし、キープサイズと決めていた25cmを辛うじて超えるくらいの尾長グレ・口太グレを数枚と、同サイズのチヌ2枚というのが、昼までの釣果でした。

 この日は午前8時過ぎに干潮を迎え、潮は上げに転じたというのに相変わらず柏崎方向にばかり流れ続けていました。
 その潮が正午ごろに逆転。撒き餌に集まるグレが明らかに大きくなり、30cmの口太グレをゲット。しかしほんの数投の間に元の流れに戻ってしまい、見えるグレも釣れるグレもあっという間にサイズダウン。

 それでも辛抱して釣っていると2時前になって潮が変わり、今度こそ湾内向きに安定して流れ始めました。
 するとたちまち大きめのサイズが見え始め、いかに浅ダナで食わせるかという攻防が俄然熱を帯びてきます。そして、一瞬キープしようかと迷うサイズから30cmに迫るサイズまでのグレが竿を曲げていきます。

 ウキをハリス部分にずらして80cmの位置で固定にし、足元の撒き餌にクロホシイシモチが集まるのを見届けてから10m沖に2〜3発。その10秒後に投入モーションを起こすと着水した仕掛けが小グレの群れに取り巻かれ、その群れはスルスルと引き込まれていくウキによって追い散らされました。

 今度は25cmに達していたらいいな。軽い気持ちで手首を返した途端に奇襲攻撃。1.5号のトーナメント制覇は予想に数倍する力によって引っ手繰られ、使い手の体勢もまた大きく崩れてしまいました。
 それでもどうにか踏ん張って沖で浮かせると、次の瞬間、茶色い魚が水面を切り裂くように猛スピードで足元に走り込んできました。尾長だ!それも45cmくらいあるぞ!
 この周辺ではUMA(未確認生物)だと思っていたサイズに唖然としてリールのハンドルを回すのを忘れてしまった私を尻目に、魚は灯台の足場から伸びる磯根の間に飛び込み、逃げていきました。水中への突進の勢いでウキとフカセウキゴムを大きくずらし、その摩擦によって1.5号のハリスを分断したのです。

 直後、私は船長に電話を掛けました。4時にお願いしている迎えの時間をもう少し遅くしてもらえないかと。
 この日はたまたま私の他に釣り客はおらず、台風接近の影響か泊り客も無しということで、「5時半ごろに迎えに行くわ〜」と、時間変更を快諾してくれました。

 残り時間が実質2時間に増えたので集魚剤を追加し、ロッドも制覇からX4に持ち替えて続行です。
 先ほどのようなサイズは見えていませんが、相変わらずキープサイズのグレが撒き餌に浮上しています。当然ながら全力で勝負です。
 しかしながらグレという魚は、見えているからといって容易く釣れてくる魚ではないんですよね・・・。

        帰りの船中から。
 5時30分、離礁。穏やかな海と秋の空気を桃色に染めながら澄み切った太陽が沈んでいきます。形よく並んだ三ッ畑田島(みつはたんだじま)のその後ろ、青みを帯びて静かにたたずむ九州の山並みに。

 傍らのクーラーの中には口太グレが5枚、尾長グレが4枚。30cmが3枚と、24〜29cmが6枚。あとはカワハギやら小チヌやら、結構美味しいコガネスズメダイが数枚。
 あの状況ならもっともっとキープサイズ(本当にキープするかどうかは別として)のグレを釣っておかなければいけないけど、それでも十分に楽しめた一日だったので良しとしましょう。コッパグレとゆっくり遊ぶだけのつもりだったのに意外なサイズに遊ばれるなんてこともありましたしねえ。

 その代り、ほとんど休みも取らずに釣り続けた約12時間は激しい疲労となって私にのしかかってきていました。
 これまでの私ならこのまま問題なく兵庫まで走れたでしょうが、衰えが急速に顕在化したこの夏以降、そのような芸当はできなくなってしまっています。あまり眠れなかったとは言いながら、前夜に山本屋で宿泊している今回でさえも。

 どうしようかと考え込んでいると船長が一泊500円の仮眠所とシャワーを使わせてくれました。私は翌日も休みなのをいいことに大広間で一人毛布にくるまってウトウト・・・。でも疲れ果てているのに寝付けません。どうやら眠るための体力までも使い果たしてしまっているようです。
 それでも合計3時間半ほどは眠ることができましたが、深夜2時ごろにKO。それもそのはず、この日は当てにしていた宿の朝食が用意できないとのことで、車に積んでいたポテトチップス1袋を午前5時ごろに食べたのと、船上で受け取った具材無し、塩味無しのおにぎりと、卵焼き2切れを11時頃に食べただけですからねえ。それで延々と釣りを続け、何も食べずにそのまま寝ようとするのはさすがに無茶ですな。
 そんな状態で対岸のファミレス・ジョイフルに駆け込み、深夜2時半に食べた「4種類のチーズインハンバーグ」はむしろ重たすぎ、随分と体にこたえました。

 その後は最近苦手な高速道路を可能な限り避け、道中で眠ったり休憩を多く取ったりしながら、午前10時ごろまでかかって自宅に帰還。
 こうしてのんびりと引き上げたものだから、家に着いたころには体力も随分と回復しておりました。
 やれやれ・・・。

 ● 御 荘 misyo
利用渡船 八栄丸(民宿山本屋) 出港地 愛媛県愛南町高畑(宿の前の護岸)
時間(当日) 5:50〜17:30
料金 湾内〜小貝バエ 3500円
三ッ畑田島、テボ礁 4500円
その他沖磯 5000円
駐車場 無料 弁当 あり
宿/仮眠所 宿泊 6500円
仮眠所 500円
システム 特に無し
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)


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