風雲児  烈風伝
 ・エーゲ海?にチヌ・マダイ釣り遠征。近場を楽しみつくす! 

2014年 4月8日&13日  岡山県牛窓諸島
・グレはお預け
 尾長の一発大物か?エサも取られない沈黙の一日か?あるいは産休前の口太の固め釣りか?
 高知南西部で意外と熱い釣りができる瞬間が桜の開花とともにやってきました。

 待ち焦がれたこの季節に私は動けません。今季は仕事数倍増、給料驚異の減、体力も大幅減、議会で寝ている政治家にあげる小遣い(税金とも言う)いろいろ増、特に消費税は3%増で物の売値はなぜか8%以上増というクワッドパンチに見舞われて四国釣行どころではなくなってしまったから。
 半ばライフワークと化していたグレ釣りを無くした私は、冷たい冷たい瀬戸内でくすぶって・・・いるはずがありません!遠征が遠のいた今は、手の届く範囲の釣りを徹底的に楽しみつくすチャンス。今季はしばらく遠ざかっていたチヌ釣りに燃えるつもりです。(グレ遠征のチャンスがあれば逃しませんけどね。)

 チヌなら相生湾の岸壁でも釣れますし、家島諸島に渡す渡船屋までは家から15分強。でも折角の機会なので自宅から片道一時間の未体験エリア、前から興味のあった牛窓の沖磯に挑戦しようと思います!

・エーゲ海?
 日本のエーゲ海を自称する、岡山県瀬戸内市牛窓。
 伝説によるとここは元々「牛転(うしまろび)」といい、三韓征伐に向かわれた神功皇后の一行を襲撃した「牛鬼」という怪物を、翁に姿を変えた住吉明神が投げ飛ばしたことに由来するそうです。牛鬼はバラバラになって海に落ち、頭は黄島、胴体は前島と青島、尻は黒島になったそうな。

 それらの島々は年中チヌが釣れる人気釣り場となっています。ポイントの数も多く、西播磨や家島諸島のように網やカゴに埋め尽くされていたり雲霞の如く押し寄せる底引き漁師に荒らされたりしてているようなこともありません。チヌに混じってマダイが釣れるというのも私にとってはこの上ない魅力!
 黄島南西部の独立磯・ハトバナ。黄島は山桜が満開です♪

 地元の釣具屋でたまたま出会った渡船の常連客や「岡山のお手軽波止釣り」の管理人・ツリキチオーさんに話を聞いたり、雑誌やネットから釣行記を拾ってポイント名や釣り方を地図に投影したりしながら指折り数えた釣行日がやってきました。

 4月8日。快晴ベタ凪。
 「まこと渡船」には平日にも関わらず20人近いチヌ釣り師が押しかけ、若い船長を囲んで賑やかに冗談を言い合い笑い合っています。
 そして午前6時、和やかな雰囲気のまま出航です。

・黄島の早崎
 牛窓海遊文化館前の岸壁を離れたまこと渡船は、本土とフェリーで結ばれた前島の南西側の小磯に着けた後、その南にある黄島の独立磯・ハトバナ、続いて地磯・ワレに一人ずつ渡していきます。
 渡船の2階席から初めての場所を興味津々で眺め写真を撮っていると不意に私の名前が呼ばれました。

 わざわざ操舵室を出てきてくれた船長から詳細なアドバイスをいただき、渡船の常連さんの助けによって磯に降り立つことになったのは、黄島の南西の「早崎」という岬の先端でした。
 私がしきりに釣りたいと言ったマダイはまだ本格化していないけど、この磯ならばチャンスはあるとのこと。もしマダイがダメでも水温が11.2度にまで上昇してきていますのでチヌは面白くなってきているはずです!

 この日は小潮で納竿直前までほぼ下げ潮で、そこそこの速さで磯の西半分をかすめた本流が磯の先端で沖に出、東へ向かって流れています。しかし船長はそれを攻めるのはやめておいた方がいいとアドバイスしてくれたし、そもそも密生したガラ藻(ホンダワラ類)の森の中を突き進む本流なんて攻めたところで結果は見えているので先端東向きに釣り座を設けることとし、撒き餌を打ち込みながらゼロサム磯弾X4タイプT、道糸2号、ハリス1.7号をセットアップしました。

 早崎から中崎方向。周辺はガラ藻の森。
 早朝の東向きのポイントなので必然的に逆光となりますし、潮が高くて藻際まで距離がありますから見やすさを重視して宗ウキ速攻Lというどっしりした短い棒ウキを投入。しかしこれがあろうことか一投目で根掛かりして高切れ。店の不良在庫となっていたのを値札の半額以下、900円で買ったウキ、こんな状況では頼りになると思ったのに・・・。
 道糸を付けたまま沈んでいたこのウキは昼前になって起こった二重遭難で浮上。その時使っていた仕掛けの方は戻ってきましたが、一投目で無くしたウキが回収不能のまま沖合を漂い続けるという何とももどかしい状態になってしまいました。

 仕方ないのでBのタイドマスターに交換して投入。逆光で全く見えません。おかげでウキ下が深すぎて底を引きずっていることに気づくのに時間がかかってしまいました。・・・というより、その前に何もわからないままチヌが一枚釣れていたのです。
 銀ピカの36cm、やり取りの間に藻に入られてしまいましたが比較的楽に藻抜きでき、余裕でゲットできてしまいました。でもこんな釣れ方は嬉しくないぞ(汗)

 折角釣れたのに贅沢なことを言ったせいでしょうか、その後はサシエを取られることすら稀ですし、ポイントでの潮の動きもサッパリです。棒ウキを使っていた10時ごろに一回だけアタリが出て見事に空振りしただけ。

 11時頃になると潮筋が少し変わり、早崎先端部を本流がかすめるようになりました。
 東向きでも引かれ潮が活性化し、散々撒き餌を撒いてきたポイントで巻き返しが発生するという生唾物のシチュエーションとなりましたが、これでも釣れてきたのはガシラが一枚のみ。
 おまけに本流の中を流していたプレジャーボートが釣り座に接近してきて、目を離そうものなら撒き餌の上をウキではなくて船が流れていくといううっとおしい事になっています。釣り座に戻って撒き餌をぶつける前に移動してはいきますが・・・。
 
 さらに本流が先端をかすめる時間はすぐに終わってしまいました。潮筋が再び変わったからではなく、潮流自体がすぐに止まってしまったから。

・静から動へ
 釣り開始から約6時間が経過。その間めげずに撒き餌を打ち続けたことが報われる時がやってきました。

 止まっていた潮が不意にフラフラとし始めた12時10分、潮が引いたことで随分と近くなったガラ藻の切れ目を漂っていた3Bのタイドマスターがジワジワと沈み始めました。その沈降速度は根掛かりより幾分か早い!アタリだ!!十分に待って、呼吸を整えてからアワセ!
 弧を描くロッドを左右に切り替えして藻をかわすと、柔らかに光る海面の下、力強いしろがねの閃光が眼を射ました。私はその魚、35cmのチヌを一気に浮かせ、ハリスを掴んでガラ藻のベッドの上に横たえます。

 次の一投を投じるとウキは西へと流れていきました。そして先ほどと同じ場所でジワジワと沈み始めます。
 アワセるとこれまでのチヌとは比べ物にならない力で応戦されました。これは相当デカいぞ!と奮い立ち、負けじと力勝負に持ち込みます!藻をかすめているけどロッドのトルクを使って隙間を抜いて・・・と、強引にいったのが失敗でした。ふと我に返った時には魚は藻の中奥深く。慌ててテンションを緩め、撒き餌を打ちながら魚が自ら藻を離れるのを待ちますが、5分10分と経つうちに魚が藻の中でゴンゴンと頭を振る感覚も無くなり、もうほとんど動かない状態にまで状況が悪化。最後は1.7号のハリスが飛んでジ・エンドです。

 時間をかけてここまで荒らしてしまったらさすがに終了だろうと思ってウキを打ち込んだ12時40分、またもアタリが出て33cmのチヌを楽々キープ。

 この30分間の時合は本流の転流と重なっていました。しかしながら折角しっかりと西に流れ出した本流も、ポイントの引かれ潮もしばらくするとまた止まってしまい、時合も完全に終了。釣りの時間もそろそろ終了です。

 8日の釣果。
 36cm、35cm、33cm。
 午後2時に迎えの渡船がやってきました。潮が大きく引いているので押し付けができないので、荷物を他のお客さんに受け取ってもらってからフォースヘッドのタイヤに足をかけてよじ登りました。

 それでも渡船は磯の前を離れようとはしません。不思議に思って周りを見てみると鉤付きの棒を構えた常連さんと船長が連携して、一投目で高切れして釣り場の沖に浮いたままになっている宗ウキを船長と常連さん達が回収しようとしてくれていたのです。
 ウキはすんなりとは取れず、私は何度も「もういいですよ」と言ったのですが、みんなニコニコしながらウキの回収とラインの除去を成し遂げてしまいました。

 その後の黄島、前島の回収でも、港に着いてからの荷揚げでも、この日偶然にも乗り合わせた乗客全員が見事なチームワークを発揮し安全かつ楽しく帰還することができました。
 上陸してからもみなさん、なかなか帰りません。若い船長やその奥さん、それに、常連さんが活かしてキープしていたチヌに水を掛けられて大泣きしているよちよち歩きの子どもを囲んで雑談を楽しんでいるのです。
 釣行前にツリキチオーさんから聞いた「あそこのお客さんは船長についている。」という話に納得。このどこの渡船にもない和やかな雰囲気も、船長の人柄が生み出しているんですね。

 かく言う私も船長とこの渡船、そして牛窓と言う釣り場の魅力に一発ではまってしまいました。
黄島の早崎の東半分

沖に見える小豆島北岸にも
人数が揃えば行くそうです。
チャンスがあればチャレンジ
してみたいなあ。


・五日後に再挑戦!
 「近いうちにまた来ます。」
 前回の帰り際に船長に告げた言葉はその五日後の日曜日、4月13日に実現しました。

 青島のゴロタ浜。正面の前島との海峡を本流が
 駆け抜けていきます。左は黄島。
 5時半前に10人ほどで出航したまこと渡船は、牛窓と前島を隔てる唐琴の瀬戸(牛窓瀬戸)を抜け、前島の背後に控える青島へまっしぐら。
 最初に着けた南東端の地磯「豪洞」、次の北岸の波止「青波止」への渡礁を手伝っていると、船長から「操舵室に入るように」と声が掛かりました。
 そして操舵室の魚探を見ながら詳細な説明を受け、フォースヘッドからポイントへダイブ!

・青島のゴロタ浜
 飛び降りたのは磯ではなく、青島の北西部にある「ゴロタ浜(ゴロ石の浜)」。
 波打ち際の10mほど先から急激に落ち込むこの浜は潮通しがよく、チヌのみならずマダイの実績が高い人気ポイントです。かつてシマノのホームページに上がっていた釣り番組「大ちゃんの釣りに行こう!」で紹介されてたのもここだったような記憶が・・・。

 この日は大潮。9時26分に満潮で、潮の転流は8時ごろだそうです。満ち潮は左(西)への本流、引き潮は右への本流ですが、釣り座では引かれ潮が効くためそれぞれ本流とは反対の方向に流れます。

 船長からのアドバイスに従ってガラ藻の切れている浜の中央に陣取り、挨拶代りの撒き餌を投入しつつ道具をセット。浜の両側にはブレイクラインを示すようにガラ藻が密生しているのでウキ下4ヒロで15mほど沖に投入したT-HOPEを潮に乗せ、その際まで流し込んでいきました。

 しばらてくすると撒き餌が効いてきたのか時折サシエがつつかれるようになり、7時10分ごろ気持ちいいスピードで右に流れていたウキのトップが消え、リールのスプールエッジからラインがパラパラパラと弾き出されていきます。
 本日の一枚目、40cm。
 グングンと首を振りながら走る魚は途中、釣り座からは見えない藻の中に逃げ込みましたが、前回の失敗を糧に焦らずじっくりと藻抜きして、私も負けじと波打ち際を左右に走り回って有利な位置をキープしつづけ、巌流島の決闘のようなやり取りを制しました。
 汀線上に引きずり上げたチヌは紫がかった銀色の40cm!美しい!!

 その30分後、7時50分前にもスッとウキが入り、36cmを追加。このポイントのチヌはよく走るので堪りません♪

 いい感じになってきたところでそろそろ転流の時間です。
 引かれ潮が沖に流れて本流との合流点とかを攻められるようにならないかな!なんて期待に胸を高鳴らせながらその時を待ちます。

 ところが、転流を境に射程範囲内の潮は非常に不安定なものとなってしまいました。一投ごとに右に当てたり左に当てたり、ウキがどちらに流れるかは投入してみなければ分からないような状況です。はっきりしていることは沖に払い出す潮だけは決して流れないということだけ。これではマダイは厳しいなあ。

・もう一つのお楽しみ
 危惧した通りそれから4時間半ほどの間にマダイのアタリはもちろん、チヌのアタリも一切ありませんでした。釣れたものといえば10cmほどのアカオビシマハゼが一匹だけ。こうなったらもう一つの楽しみに期待するとしようか。

 青島名物のタヌキ。
 物欲しそうな顔でこっちを見てましたが、エサ取りも
 釣れんのじゃわ〜。
 この青島には所有者である関西学院のキャンプ場がありますが、井戸水も湧かないとのことで普段は無人島です。でも何故か人間の代りにタヌキが多数生息していて、釣りをしていると群れになって出てくるそうで、ポイントガイドなどにも魚や弁当、エサなどを盗られないように注意が必要と書いてあります。といっても相手はタヌキですし、四国は中泊・鹿島の猿のように牙をむいて襲い掛かってきたりバッグやクーラーを開けたりするようなことは無いのでかわいいものです。
 そんなタヌキの群れの出没を釣りと同じくらい楽しみにしていたのですが出てきたのは一頭だけ。それもこぼれたオキアミを少し食べるとすぐ山に帰ってしまい、二度と現れませんでしたし。

・ついに潮が!
 長いこと不安定だった引かれ潮は、12時半ごろになってようやく左流れで安定しました。
 沖目、深ダナで勝負するための飛距離を稼ぐためにウキを前回みんなに回収してもらった宗ウキ速攻Lの4Bに変更。大きな円錐ウキに頭と足を付けたようなずんぐりしたウキなので消し込んでくれるのか心配でしたが、ジワジワと沈んでいくチヌのアタリを見事に表現し、12時33分、38cmのチヌを引きずり上げることに成功しました。一時はあきらめていただけに本当に嬉しい一枚です!

 その後チヌのアタリは続きませんでしたが、浜の出っ張りの沖に繁茂したガラ藻の先から波立って流れる沖の本流へ合流する強い流れが発生しました。まるでポイント図を見ているかのようにハッキリしたポイントはいかにもマダイの巣窟と言ってもいいような佇まいです。
 それなのに私にはこのポイントの攻略は許されませんでした。攻める前にタイムアップとなってしまったのです。何ということだ、あと一時間あったなら・・・。

 14時ごろ、予定通りまこと渡船がやってきました。浜からの回収ですのでフォースヘッドは遥か上。船首の一番下のタイヤに無理やりぶら下がり、他のお客さんに引っ張り上げてもらうという、かなり大変な離礁?となりました。

・チヌ料理を満喫
 船長が「今年はチヌの数が少ない」とぼやき、常連さんが「寒の時期の方がよく釣れた」とぼやく今年の牛窓沖。果たしてこの日もみなさん揃って1枚とか2枚とかという釣果でした。そんな中、なんと私が竿頭。今日も全て船長に釣らせてもらったようなものですね。

 キープしたチヌは全て美味しく味わいました。
 チヌは寝かすよりもその日に食べた方が美味しいので帰ってすぐに薄造りに。さらに和風カルパッチョ、塩焼き、潮汁、子の煮物、そして漬け丼も堪能。子の煮付けといってもそれは一部を除いてまだまだ小さく、その分、身がしっかりとして臭みもない寒チヌの延長のような味が楽しめました。
13日の釣果。40cm、38cm、36cm。

 これらの中で特に評判がよかったのが和風カルパッチョでした。薄くそぎ切りにした刺身に塩を手でたたき込み、胡麻油と胡椒、刻みネギで調味したもので、これを本当にカルパッチョと呼んでいいのか疑問が残りますが、食材が泳いでいた場所を本当にエーゲ海と呼んでいいのかという疑問よりはマシですからまあいいことにしましょう。
 ともかく名前は何にせよこの時期のチヌにはバッチリの料理ですね。この魚にはオリーブオイルよりごま油の方が断然合います!
 ちなみにこの料理をグレでやるのはお勧めしません。くどくなりすぎますから。

 薄造りは自家製の「煎り酒」で食べてみました。これは醤油が発明される前に多用されており、赤松氏が1555年に行った宴会でも使われた古典的な調味料で、梅干の香りと濃縮された出汁の旨みと甘みがチヌの味を優しく引き立てる、非常に繊細な料理が楽しめます。
 ただし、チヌに臭みや雑味が混じる時期には使い物にならないでしょうね。

 さて、いよいよ次回はツリキチオーさんとの釣行の予定です。
 そろそろマダイが釣れてくれるといいのですが・・・。
 青島のゴロタ浜先端からのパノラマ写真。正面が前島、左は前回乗った黄島。もう一つの島、黒島は隠れて見えません。

 ● 牛 窓 沖(牛窓諸島) uhimado-oki
利用渡船 まこと渡船 出港地 岡山県瀬戸内市・牛窓港
時間(当日) 6:00〜14:00
5:30〜14:00
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム
磯替わり 無し?
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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