風雲児  烈風伝
    ・困難な分だけ面白い!初釣り、寒グレ、初の磯。

2015年 1月16日 高知県 伊田
・平成27年の初釣りへ
 今年の初釣りもまた、安くて近くて日帰りできる場所・井ノ岬周辺の磯が舞台です。ただし今回はいつもと違って二人旅。
 夜中12時半ごろに自宅を出て県境をまたぎ、1時半ごろに岡山市南部の駐車場で「岡山のお手軽波止釣り」の管理人・ツリキチオーさんを拾って、途中運転を替わりながら5時半前に黒潮町伊田漁港に到着。
 掛川船長によると「最近は伊田もよく食っている。灘はもっと食っている。」という状況で、どちらにも渡礁できそうな海況でしたが、この日は7人全員伊田の磯。前日にすぐ沖を通った低気圧の影響で、灘の渡船も伊田に係留されてましたからねえ。

 干潮時の鵜のハエと伊田漁港。
 6時半過ぎ、船を係留場所から取ってきた船長が問いかけます。「大ブトにする?それとも行ったことない所にする?」と。
 大ブトは一度上がってみたい面白そうな磯だし、ここのところ好調とのことなので一瞬悩みましたが、釣果よりも好奇心を優先してしまうのが私の弱点。当然ながら未知のエリアに向かう一番船に飛び乗って、薄明の海に出発!

 伊田漁港を出た船は針路を西にとり、有井川の河口のさらに西、上川口漁港の手前までやってきました。
 このエリアの磯は、掛川渡船が人を渡して好釣果を得た去年春まで10年近く空白地帯だった場所。

 現在渡している磯は2か所。干潮の間しかやれないが、今日の潮なら食うはずだという「鵜のハエ」と、高くはないが一日でき、数日前には夫婦釣り師が上がって数釣りをしたという「平バエ」です。
 まず、11時ごろに帰らなくてはならないというお客さんが鵜のハエに渡り、続いて私とツリキチオーさんが平バエに上陸しました。

・スタートダッシュ?
 掛川船長が平バエと名付けたこの磯は、名が示す通り足場の良い磯でした。西側100mほど先には上川口漁港のテトラが横たわり、北側には有井川集落と上川口集落を隔てる坂が鎮座しています。
 今から680年ほど前、この地の豪族・有井庄司(ありい の しょうじ)がこの坂で一人の貴人の到着を待っていました。貴人とは、笠置山(京都府)での討幕の挙兵に失敗した後醍醐天皇の皇子・尊良親王(たかよししんのう)です。鎌倉幕府によって土佐国幡多郡への流刑に処された親王は上川口の「戻る浜」に上陸され、大平弾正に迎えられました。有井庄司も浜に駆けつけますが一足遅かった。浜には親王の御姿すでに無し。これ以降、平バエの背後の坂は「待王坂」、戻る浜は「王無浜」と呼ばれるようになりました。王無浜の近くには土佐くろしお鉄道「海の王迎駅(うみのおむかええき)」もあります。(尊良親王はその後、京に帰還されますが、建武の新政が崩壊すると北陸に派遣され、越前の金ヶ崎城の壮絶な籠城戦で北朝方の斯波高経に敗れて自刃されました。)

 日の出とともにスタート!
 一周どこでも竿出し可能な平バエの本命ポイントは南端で、その両脇を狙えばいいそうです。でも、数日前に結果が出たのは西向きの船着き周辺とのことなので、とりあえず両方探ってみようという話になり、私は南端、ツリキチオーさんは足場抜群の船着きから竿を出すことになりました。

 7時10分、極限の遅さから1分だけ早くなった朝日が、井ノ岬の先端の水平線に姿を現しました。私の方も準備完了。さあ、釣りを始めましょうか!

 底が見えるほどの水深だし、半ピロくらいでやってみて!と船長に言われてもいたので、1投目はオモリなしの00号ウキを足元へ。東へとゆっくり流していると、水面下に噛みこんだウキが一瞬押さえ込まれたような・・・。少し様子を見てから軽くアワセてみますがハリ掛かりしませんでした。
 2投目も同じところに投入して馴染ませたところで再びチョコンと動きました。今度はじっくり待って待って待って・・・あらら、オキアミが殻だけにされてますがな。
 3投目もまたまた小さくチョコン!今度は仕掛けを張り張りにして待ち構えていたので、その瞬間にフッキング!3度目にしてついに口太グレの唇の皮1枚をどうにか貫くことに成功です。サイズは26cm。キープサイズまであと1cm。どうしようかなあ・・・まあ、リリースでいいか。

 8分後、ちょっとウキが潜りすぎたかな・・・と思ったところで穂先がグイッ。すかさずアワセると竿を細かく叩く強力な魚がヒットしました。姿は見えないけど正体はバレバレだし、この時点ではオーバースペックなゼロサム磯X4のタイプVを使ってましたので、慌てず騒がず40cmオーバーのバリをキャッチ&リリース。

・激渋!

 とにかく渋い!生のオキアミはアタリ無しでいつの間にか殻だけになっているし、アタリが出てもほんの僅かで積極的に掛けていってもすっぽ抜けが多発。ボイルじゃさすがに当たりませんしねえ。
 昔、従弟から聞いた「厳寒期には時々、薬漬けオキアミでないと釣れん時がある。」という言葉どおり、九州遠征の使い残しのV9サシエとか生イキ君シリーズのナントカなどは多少反応がいいのですが、それだけでは不十分です。

 平バエ全景(西側から)
 ということで、浮き過ぎぬよう沈み過ぎぬようにウキの種類や号数を変え、オモリを変え、ウキ下を変え・・・と、1時間ほど試行錯誤して仕掛けを合わせ、魚にサシエをくわえ直させるロッドワークを可能にしました。小さなアタリの瞬間に僅かに張って僅かに緩める、太刀魚のウキ釣りで多用するロッドワークを。
 これによって8時22分に31.5cm、8時52分にはさらにサイズアップして34cmの口太をクーラーへ。
 この時、ウキは0号、オモリはジンタン5号、ハリスはハードトップ磯プレミアムハリス1.7号、ハリは速手グレ6号、竿もタイプT(1.35号)に変わっていました。ウキ下はどれくらいだったかなあ??

 やっとエンジンがかかってきたかな?と思ったところで干潮の潮止まり。残念ながら食いも止まってしまいました。

・兆し
 太陽から伸びる光の帯を避ける形で西向き狙いにシフトした後もしばらく沈黙と試行錯誤の時間が続いていました。仕掛けを重くしてサラシ狙いに徹してみたり、スルスルでゆっくりゆっくり落としてみたりと色んなことをやってみたのですが・・・。
 西向きの船着きで釣っているツリキチオーさんも悩んでますねえ。瀬戸内の波止釣りに精通し、釣り雑誌に連載を持つほどの釣り師も外海のグレ釣りは勝手が違うようです。得意のスーパーボールの沈め釣りやトビコンという棒ウキが合っていないのか、なかなか食わせることができず、どうにか掛けても3連続ですっぽ抜けという大苦戦。

 11時ごろ、私の竿が大きく曲がり、この日一番の長期戦が始まりました。その強大なパワーとなかなか弱らないタフさに、ツリキチオーさんは「どんな大物を掛けたのか?」と目を丸くしていますが、当の本人は「しんどい!この引きはしんどい!」と悲鳴を上げながらも気楽そのもの。その正体は掛けた直後に分かってましたからねえ。
 何度も何度もしつこく反撃されながら、ようやくタモに収めた旬の寒ボラ50cmちょい。ここのボラはこのサイズでも恐ろしいほど引くので大変ですが、汚濁のほとんどない海域ならではの美味しい刺身が手に入りました。
 そして伊田でボラが回ってきたということは・・・

 今回もよく曲がったX4タイプT相性抜群!。
・ボラの下には
 やはり上げ潮が動き出したのでしょう。磯際にはマイクロコッパ、南端から差し込んでくる潮が作り出した小さな潮目の周辺では薄茶色の魚と、底が見える浅さにも関わらずこれまで全然見えなかった魚の姿が捉えられるようになったのです。
 予約していた散髪を終えた掛川船長が船に乗ってやってきて、鵜のハエのお客さんを回収しているちょうどその時、私はその薄茶色の魚とファイト中。もうすっかりお馴染みのフワフワとした引きを見せて水面を割ったのはバリでした。今シーズンは久しぶりに湧いてるなあ〜。

 バリが食ったタナを参考に、ウキ下を10cm刻みで調整していくと、11時29分、G5のウキがジワジワと引き込まれていきました。
 穂先に充分重みを乗せてからアワセると、足元めがけて一直線の猛ダッシュ。竿でいなしてポイントの反対側まで誘導して取り込んだのは36cmの口太グレ。

 その5分後には29cmを追加。それに加えてハリ外れも数回。
 やはり普通にアワセただけではハリ外れ連発です。それでもアタリだけは、引き潮の時とは別の魚が当たっているのかと思ってしまうほど明確になっていました。
 正午すぎに掛けたグレなんて、竿をひったくっていきましたからね。
 10mほど沖の撒き餌に集まったボラの群れの下に良型のグレが数匹混じっているのが見えたので、その時使っていた0号ウキ+潮受けゴム仕掛けのハリス直結部に打っていたジンタン7号をハリ上3cmに移動させて投入したらガツーン!周囲に居たボラが一斉に散ったものだからてっきりボラを掛けたと思いましたが、魚は底へ底へと突っ込んでいくではありませんか。このボラの下狙いのパターンで36cmと29.5cmのキープに成功です♪

 船着きのツリキチオーさんもBBXでバリをゲット。背後は上川口漁港のテトラ。
 今日一番の時合ですので、苦戦中のツリキチオーさんにも「こっちでやってみては?」と声を掛けますが、あくまでも船着きにこだわられる模様。というのも船着きでも状況が好転してきたようで、ついにこの日初めての獲物、27cmのグレをゲット。続いて良型のバリと30cmのグレを追加してから東向きのポイントに移ってこられました。

・西風の中で
 東向き中央部のサラシのポイントに入ったツリキチオーさんは、足元から伸びた棚の先でアカササノハベラ数匹とすっぽ抜けのバラシを3発。沖への遠投でもすっぽ抜けでしたが、26cmの肝パンパンのカワハギと、瀬戸内では釣れないサンノジをゲットされてニッコリ。一方、私の方は何か知らないけどよく引いたブダイとアイゴを取り込んだくらいです。

 伊田の磯は西系の風が強まると食わなくなるそうです。この日も西風が強まるにつれてアタリが遠のいてしまいました。
 前日の朝から一睡もしていないのだからこの辺で竿を置いて体力を回復してもよかったのですが、磯に立っている以上は打開策を追及してしまうのが困ったところ。
 で、納竿の3投前に見つけてしまいました。Bのウキに2号と4号の段シズ、ウキ下2ヒロと40cmの固定ウキ仕掛けという答えを。
 掛かってきたのはこれまでで最も黒っぽい口太グレ。低い磯に長いウキ下という取り回しの悪さに多少手こずりましたが、程なく無事にネットイン。メジャーを当てると40cmありますがな!最後の最後にやりました!

 15時15分、急いで道具を片付けて、迎えに来た渡船に飛び乗りました。











今回の釣果。
オール口太。

鍋と干物で楽しみました。
 「釣れたか?」という船長の問いに「ええサイズが10枚くらい釣れたと思う!」と答えたのですが、港に帰って並べてみると29〜40cmがあれっ?7枚しかいない??船長にも「釣れてないなあ・・・」と言われてしまうし(汗)
 記憶というのはあいまいなものです。どうやら頻発したすっぽ抜けのバラシの記憶が数枚分のグレに化けていたみたい(笑)

 土佐湾にしては割と魚影が濃いにも関わらず、シビアな釣りを強いられることも多いのが私の井ノ岬釣行ですが、とりわけ今回は難しかったです。その分楽しかったとも言えるんですけどね〜。
 ただ、ツリキチオーさんにいい釣りをしてもらえなかったのが心残り。またリベンジ釣行に付き合いますので、行くときには声をかけてくださいね!


 ● 伊田 ida
利用渡船 掛川渡船 出港地 高知県黒潮町・伊田漁港
時間(当日) 640〜15:15
料金 3500円(一部4000円)
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 磯予約可
磯替わり 基本的に無し
特記事項 灘エリアと同一業者
詳細 高知県黒潮町 井ノ岬周辺(灘・伊田)の磯
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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