風雲児  烈風伝
 ・雨だからこそ?? 真昼のルアー&ちょっと遅めの梅雨グレ釣り

2015年7月19〜20日 高知県南西部の漁港等&安満地の沖磯
・高知はまだ梅雨の中
 室戸、倉敷、米子を突き抜け、中心からは遠い近畿や関東の交通を大混乱に陥れた台風は東日本に梅雨明けと酷暑をもたらしたようですが、連休の高知は未だに雨の中。雨の釣りというのはうっとおしいけど、酷暑の釣りに比べれば遥かに楽ですし、雨だからこそ試してみたい釣りもあります。波高も予報値でもうねり付き3m、目的地の小才角は全磯が海の中ですし、大概の渡船屋は長期休業中。しかしこれを逃すとしばらく行けなくなる可能性もありますから、安全な範囲でできるだけのことを楽しむとしましょうか。

・初日はルアーで漁港めぐり。
 出発時間は目が覚めた時というアバウトさ。19日朝5時に家を出て、ボチボチ走って10時前に四万十川のほとりに到着。早速釣り場へ・・・は向かわず、「トンボ王国(四万十川学遊館)」の学芸員さんを訪ねてマイナー魚種の情報収集と汽水魚&トンボの勉強を。釣りたい魚は今は一応時期外れのようですが、この秋こそは仕留めてやるぞぉ!

 何だかんだで今回はじめて釣り場に立ったのは正午過ぎだったかな。この日は9cmくらいまでのルアーを引っさげての漁港・河口めぐりです。本命は憧れのゴマフエダイ幼魚を想定していますが食って来れば何でもOK。本来なら夜の釣りがいいのでしょうが、降ったり止んだりの雨で光量少な目&漁港の外には出られそうにないほどの波という条件ですから、これは何とかなるかも!

 で、何ともなりませんでした。
 ミニワームで鉛筆ほどの細さのヤマトカマスが一本とクサフグ少々、バイブレーションの壁際リフト&フォールで手のひらサイズのクロホシフエダイ(紋付イサギ)を取り込んだのと、シンキングペンシルで小型のヒラスズキをバラシたくらい。実はあまり期待してなかった釣りですから、完全ボーズじゃなかっただけ儲けもの。

 初日は夕まず目をも待たずに5時で納竿。大月町西海岸・安満地の吉田渡船の宿に入って三毛猫と遊び、最高のキビナゴの刺身や寿司、山盛りの貝やカメノテなどの海の御馳走を「もう食えん!」と降参するほど堪能しておりました。

 ヤマトカマスとクロホシフエダイ

・出航したものの
 チーのハエ。大きなハエですが、釣り座に水平な所はありません。
 時々雨音、たまにフォルティッシシモ。忘れたころに窓を揺らす突風の音。執拗に繰り返すスコールの一夜は明けて、午前5時15分、吉田渡船は乗客2人を乗せて岸壁を離れました。

 九州の西には熱帯低気圧、小笠原南方の硫黄島付近にはハリケーンから変わった台風から変わった熱帯低気圧からよみがえった台風12号。南〜南東の強風、そして雨。波高6mの時でも出船していた沖の島などは別として、この日の四国南西部で船を出した渡船屋は何軒あったのでしょうか・・・。

 「安満地はこの風向きなら大丈夫!」という船長は真っ直ぐに松島を目指します。が、やはり観音崎から先は波が高い。それは比較的大きい松島の湾内向きのポイントにも回り込んできていて、安全な釣りができるような状態ではありませんでした。同乗の底物師が予約していたカンノンなんかはさらに危険です。
 「フカセは松バエに行こうか。底物はマワリでやってみる?」と、渡船は針路を北に取りますが、足場の高いマワリ、アウト〜!高望の湾内にある松バエ、アウト〜!!
 まあ宿毛湾の一番奥の松田川河口でさえもサーフィンができそうな波が立っているような状況でしたからねえ。そりゃ無理ですよ。

 底物の方はこの時点で帰宅することを決意しておられました。
 私もこうなることは想定済み。「帰港したら御荘の大島海産に湾内への渡礁をお願いする。無理ならば候補地数か所から港一つを選択して、その港内で竿を出そう。」という予備プランを実行に移すつもりでした。

・船長の切り札
 「安満地の湾内の磯でやってみる?コッパグレなら釣れるはず。」
 「どうしようかな・・・。とりあえず磯を見てから決めてもええかな?」

 船長が切り札として持ってきたのは松島の手前、カンノンの対岸にある「チーのハエ」という名の半独立磯でした。
 近づいてみると水深もありますしシモリも点在しています。カンノン向きは釣りやすそうだし、松島向きには複雑な地形のワンドがあり、いい感じのサラシも出ています。そして磯が高いうえに波も立たないので安心して釣りをすることができます。
 これは想像以上に面白そう!私はこの磯への渡礁を即決しました。
 コッパグレならというのが気になりますが、今日の海況じゃどこに行っても30cmが出ればラッキーという感覚でしょうからねえ。

・カンノン向きでスタート
 このチーのハエは急な坂でした。かなり大きくて高い磯なのに平らな所がほぼありません。ほとんど滑らないけど油断すると転げ落ちそうになるので精神的にも体力的にもジワジワきます。またハリスをよく食う岩質なのも厄介です。

 まずはゼロサムX4のタイプT(1.35号)をセットし、船着き(カンノン向き)で様子見。足元にコッパグレやカワハギなどを集めておいて、ちょっと沖のラインの広層を軽い仕掛けで探ります。
 手のひらサイズの尾長コッパをいくつか掛けながら今日の潮に馴染むウキと仕掛けを探していると、開始から30分ほど経った6時30分頃に、2ヒロ半の位置にウキ止めを取り付けたG5のウキがツツツーと沈んでいきました。
 掛った魚は横へ横へと走ります。スピードはありませんがトルクのある重厚な走り。釣り座の左側はシモリとサラシでごちゃごちゃしているので、私の方からも力をかけて強引に対処します。するとあっさり方向転換して右へ向かい、ゴンゴンと首を振りはじめました。その後の攻防戦を経て上がってきたのは45cmのチヌ。焦るほどではなかったけど、やはり瀬戸内のよりも引きますなあ。
 まさかのチヌ。45cm。
 最初に攻めた船着き。対岸の先端が「観音」。

 グレ釣りでチヌが釣れてしまった時、それに引っ張られてしまうのが私の弱いところ。今回もポイントは遠く、深くなっていってしまいました。ウキもいつの間にやらBの棒ウキに変わっていたし・・・。とはいえ釣っている最中にはこの磯の20m沖の水深が25mもあるとは思っていなかったため、実は“浅ダナ”を釣っているにすぎなかったんですけどね・・・。

 でもこの棒ウキの釣りでは、ゆっくりと松島方向に流れていく潮の中から28cmの口太グレを1枚キープした他に、安満地名物30cm級キバンドウ、ミツボシクロスズメダイ、その他コッパ少々という釣果が出ました。しかし降り始めた小雨と風でコントロールが定まらなくなったし、グレのタナとの乖離が大きくなってしまったので30〜40分で終了。

・雨の中の浅釣り
 突風で帽子が飛んで行ってしまいました。キャップストラップを2本も付けていたのに・・・。
 まあ6mのタモ網の届く範囲に落ちたので当然回収しましたけど、海水が滴り落ちる帽子を洗わずに被る気にはなりませんわなあ。風雨の釣り場で素頭にフード、なかなかうっとおしいものですねえ。

 この時に私が使っていたのは0ウキ、オモリ無し、矢引きスタートのスルスル仕掛け。2ヒロの直結のハリスにウキを入れているので厳密にいえば誘導仕掛けなんですが、大抵はそこまで入らずに反応が出ますからね。
 ますます安定しないマキエと仕掛けの投入に歯ぎしりしながらも、この方針転換でグレが連発。コッパグレが中心で目標の30cmには遠いですが、26cmと27cmを1枚ずつと、お土産には最高の丸ハギ、ナイスサイズのオヤビッチャをキープすることができました。

 最初から小型グレ狙いと割り切ればかなり楽しかった船着きでの浅ダナ釣りは、残念なことに短時間で鎮静化。ゆっくりと動いていた潮が止まって、大量の泡の溜まり場になってしまいましたからねえ。
 この船着きはそもそも、“とりあえず”試してみるつもりが長居してしまったポイントなのですから、一旦上がってまた降ってきた雨が止み次第、本命ポイントに移動すればいいだけのこと。

・サラシ狙い
 船着きの左側にある段差を登った突き当り、松島向きの釣り座に移動したのは9時ごろだったでしょうか。
 乱雑に入った大きなシモリと地との間の細長いワンドが織りなすそのポイントは、普段ならエサトリの巣窟にしか見えなかったかもしれませんが、大きなサラシが絡み付く今日は実に魅力的なグレポイント・・・に違いない。
 
 水面に頭を出した大きなシモリ数個を隔てた船着きにマキエを入れてエサトリを集めた上で、ワンドにマキエ少々と、G2のウキにG3のオモリ2個を打った過負荷の仕掛けを投入。サラシが小さくなっていく瞬間から一発波で問答無用に押し流されるまでの間、白泡の中やシモリの際を探っていきます。

 36cmの口太。この時期でも最盛期のイサギ並みに
脂が乗っているのは、養殖マグロのおこぼれを
食べているから?
 磯のどん詰まりはワンドの出口。足場は結構
高いです。正面は当初上がる予定だった松島。
 そのサイクルを数回繰り返したところでウキがスルスルと海底へ!アワセと同時に「これは!」と唸れる待望の一枚がヒットです!
 しかしヒットしたのはワンドを囲む大きなシモリのオーバーハング。磯の突き当りのポイントなのでフットワークでの対処は不可能。これでは引っ張り出すのは骨が折れるぞ・・・と思わざるを得ない状況ですが、意外にもすんなりと浮かせることができました。しかしタモは船着きに置いたまま・・・。
 抜き上げは無理なのでワンドと船着きの間の、竿の長さよりも少し遠くまで張り出したシモリの向こうを通しながら急斜面を移動して、段差の下の斜面に飛び降りて、うねりでアップダウンするグレをめがけてタモを伸ばして・・・「ふう、やれやれ」と取り込んだ青灰色の口太グレは36cm。本日の目標は30cmだっただけに、これは予想を遥かに超える最高の一枚です。

 10時ごろに渡船がやってきたので弁当を受け取ってすぐに平らげ、後半戦に備えて追加のマキエを作っていると、安満地湾を囲む山々が一面の白に塗りつぶされていきました。これはヤバいなとタックルバッカンに駆け寄って、その中に片付けていたカッパを着込むのも待たずに磯を叩きはじめる大粒の雨。その勢いは薄日と雨が忙しく交替するこの日における最強のものです。それに加えて時折、バランスを崩しそうになるほどの突風がランダムな方向から舞い込んでくるので大変です。
 ただ今回の雨は長続きしないのが救いです。この時の激しい雨も20分もしないうちに霧雨となり、やがて上がってくれました。まあその後も雨脚を強めたり弱めたり止んだりを繰り返すのですが・・・。

・後半戦は大苦戦
 さらなる大物を夢見たサラシ狙いでしたが、その後はコッパ尾長とアカササノハベラ、ニシキベラがパラパラと出るくらい。やり方が間違っているのかもしれませんが完全に期待はずれ。型のいいグレはむしろ船着きの足元に入れているエサトリ用のマキエの方に反応しているので、12時前には船着きへ出戻っていました。

 朝のうちは松島の方向に流れていた潮は逆転して湾内に入ってきています。この潮が原因なのかどうかは分かりませんが、水面直下のグレにサシエを食わせることができません。当然タイミングを変えたり仕掛けを変えたりしますがやはり見向きもされません。
 ハリスに00のウキを通して張り張りにして31cmの口太をヒットさせたときには「もらった!」と思ったんですけどねえ。これも完全に単発で終わり。魚はいっぱい居るのに歯がゆいなあ。

 というわけで、後半戦は目標サイズを一枚追加した以外はいいところ無しで終了。14時にお願いしていた迎えの船で撤収となりました。
 やむを得ず渡礁したエスケープ釣り場のチーのハエ。疲れても休むこともままならないしんどい足場でしたが、釣り場としてはかなり面白い場所でした。ちょっと覚悟と体力が要りますが、やり残したことも多いので雨の降っていない普通の時化の時や、寒の時期にぜひ再挑戦してみたいですね。

・エピローグ?
 港に戻って道具を洗い、吉田渡船の三毛猫やピンシャー(?)と再度遊んでからゆっくりと出発。中村の「平和な湯」で一風呂浴びて一寝入りしていたら辺りはすでに夕まず目。折角なので河口に寄り道してルアーを投げてみたけれど、寝ている間に激しい雨が降ったのか泥濁りで如何ともできず、また降り出した雨に追われるようにして帰途につきました。

 「雨だからこそできる釣りもある!」と意気込んで出発した今回の釣行の結果は、「雨でやり切ることができなかった」というある意味予想通りの結果となりました。
 しんどいことも多かったけど、危険も無く、意外と面白い磯を知ることもできたし、予定外のサイズも出てくれましたので、とりあえずは心静かにシーズンオフを過ごすことができそうです。
 チーのハエ頂上付近からの安満地湾。
港は中央の岬の更に奥。
 景色は何度も何度もこうなりました。
早々に帽子を飛ばされたのが辛い・・・。

 ● 安満地 amaji
利用渡船 吉田渡船 出港地 高知県大月町・安満地
時間(当日) 5:15〜14:00
(15:00まで可)
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 宿泊・仮眠所あり。
1泊2食6500円
(渡船利用で500円引)
システム 磯予約可
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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