風雲児  烈風伝
  ・予定外の初釣り 未体験釣り場のハシゴ釣行

2016年1月10〜11日 高知県樫ノ浦、下川口
・急遽四国へ!初釣りへ!
 いや、行く予定は無かったんですよ、この連休には。
 年末の遠征から時間も経ってないし、職場の健康診断でバリウムを飲んだ影響で腹の調子もすこぶる悪いし。

 でもこの凪と、私がネットを始めた14年ほど前からお世話になっている方が数か月前に開業した、下川口の渡船の好調情報を逃す手はないよなあ・・・。
 決断したのは土曜日の夕方で、その数時間後には片道約6時間の道のりを走っていました。全域で食ってないという情報と、今年は口太の当たり年でとにかくサイズがデカいという両極端な噂が飛び交う高知県への道を。

 もっとも決めるのが急すぎた(遅すぎた)ため、初日の下川口の渡船は満船だし、他の渡船や宿も満員で行程がなかなか決まりませんでした。いつもの灘は不調らしいし、今回の腹具合では地獄を見そうなのでパス。
 で、初日=初釣りの舞台は結局「樫ノ浦」というところになりました。未経験の場所だし、北西風の影響もましだろうし、上物ではマイナーな場所というのも人の多い日にはありがたい。しかも予約後に聞いたら「ここのところ40cmの尾長が釣れている」なんて言うではありませんか!これは面白い展開になってきたぞ!

 樫西海岸を彩る島々。左の2つは西泊の渡船区。
・目標は尾長!樫ノ浦の磯。
 樫ノ浦漁港に下りてすぐの未舗装の広場に車を停めて、数時間の眠りの中へ。
 目覚めて準備を終えたころにはすべてのお客さんと船長が勢揃いしたので、船の方へと移動します。この樫ノ浦唯一の渡船・横山渡船は一般車進入禁止の大きな波止の先端付近に係留されていますが、重いバッカンも、かさばるクーラーも全部軽トラに乗せて船長が運んでくれるので楽ちんです。
 さあ準備は完了だ。予定通りの6時40分、10人ほどを乗せた船は港を離れました。

 樫ノ浦は大月町の南海岸、大浦の朴崎と柏島を頂点とする湾のやや奥まった所にあり、助ヶ島や弁天島、東隣の西泊渡船区にある沖の大島や岡の大島などの大小の島々と、それらを取り巻く美しい海岸線が織りなすその風景は、「樫ノ浦」と「西泊」から一字ずつ取った景勝地「樫西海岸」として知られているようです。
 磯釣りのポイントとなるのは助ヶ島とその周辺に密集する岩礁など15か所あまり。海上・海中ともにたいへん起伏が激しく、航空写真で見るとドン深の溝やシモリを釣るような磯が多そうです。実際にここは底物の方で有名で、弩級のものも数多く仕留められているんだとか。
 それと実際に行ってみて初めて気づきましたが、航空写真では細かく寄り添っているように見えた磯の一つ一つは結構でかかったんですね。

 ここは磯の予約ができるのですが、予備知識もない場所だし、電話した時にはほとんど埋まっていたので、この日は船長との話で沖に行ってから空いている場所を選ぶことになっていました。そして磯の密集地帯の北端にあるクロハエか、さらに周防形側の地よりにポツリと浮かぶ孤礁・岡のマルバエかという選択肢から後者を選んで渡礁しました。

 海鳥によって白く着色され、置いた道具も白くなる磯「岡のマルバエ」は周囲を張り出したハエ根に取り巻かれており、狙い場所はそれが切れていて竿下からドン深になっている南端、あるいは磯中央部の船着きからのハエ根の際攻めだそうです。
 まずは南端に入って、0ウキにG5を打った仕掛けを近距離に入れて、縦をゆっくり探ってみるとしますかな。

 岡のマルバエの船着きと、古満目、柏島、沖の島。


 今年のファースト
フィッシュ


ヘダイの
季節が
やって
きました。

 岡のマルバエからの助ヶ島。面白そうな磯ぞろい!
 おっとっと、いきなりハエ根への根掛かりでスタートですか。ではBのウキで一本くらい入れて探ってみましょうか・・・って、エサトリも全然見えないし、サシエも全く取られませんね。

 平成28年のファーストヒットは8時前、南端ではなく船着きの前から上がってきたアカササノハベラでした。まあよくあるパターンですな。

 しばらく船着から周防形港方向に流れる緩い潮に乗せてハエ根の際を釣ってみましたが、ベラの追加すらできなかったので南端までUターン。
 「こうなったら今日はここに腰を据えて釣ろう。」その覚悟が魚に伝わったのか、徐々にサシエが触られるようになってきました。
 魚からのシグナルはウキが波の下をくぐるリズムの狂いや、一瞬の数センチの沈下として表れるだけ。それに合わせてテンションをかけてみても効果無し。待ってみても第2第3のアタリはありません。こうなったら相手の動きの兆しを捉えてロッド一閃、後の先を取っていく居合のような釣り方をするしかありませんな。(居合の極意は鞘の内にあり。抜かずして勝つを最上とする。こんな釣り方をするよりも、仕掛けやアプローチをどうにかして自然に食い込ませる方がいいような気がするけど・・・)

 何度かの挑戦でハリを立てることに成功した魚は独特な引きでおなじみの35cmくらいのアイゴでした。
 その30分ほど後には意外なほど執拗に突っ込む魚がヒット。青白くキラキラと輝きながら浮上してきた魚は38cmありました。真子や白子は持っておらず充実した体型で、かつてないほどよく引いたヘダイ。これはありがたくキープさせてもらいましょうか。

 10時ごろになると潮がよくなったのか表層にはトウゴロウイワシ類らしき群れ、ハエ根の際にも少量のエサトリが見えるようになってきました。そこで一本半の位置に付けていたウキ止めを2ヒロまで移動させて釣ってみるとハッキリとしたアタリでカワハギを仕留めることができました。
 さらに10時46分には微妙なアタリを掛け合わせて今年初の本命魚、31cmの口太グレを取り込むことに成功!腹回りは太くないけど贅沢言わずにキープしておきましょう。

 この磯もようやくエンジンがかかってきたか!と期待が膨らみますが、魚たちの反応がよくなったのはほんの一瞬だけでした。
 エサトリの姿は間もなく消え、潮は停止し、さらには体の芯まで冷えそうな冷たい横風が強さを増してウキを押し流し、技術的にも精神的にも厳しい状況になってしまいました。
 しかしながら沖の方の磯以外はどこもパッとしないようなので、弁当船での磯替わりはパスして寒さに耐えて頑張ることにします。

 それから15時までの4時間、グレはコッパすら釣れてくることはありませんでした。
 それでも3Bのウキ、一本半のタナで30cmと25cmのハマフエフキ、40cmくらいのブダイ(赤)、39cmのヘダイ、それにサンノジやミニキバンドウと、何だかんだと五目釣りができ、意外と楽しい1日だったなと思いつつ納竿することができました。

 ちなみにこの日の樫ノ浦は1枚2枚という釣果だった所が多かったようですが、しっかりと2ケタ釣っているところもあったとのこと。まあ、明日に期待ですな。
 この日唯一のグレ  磯のダンプカー予備軍。ハマフエフキの子

 15時半過ぎ、私は樫ノ浦を出発して宿を取っている竜串へ。
 その道中、歯朶ノ浦辺りで沖磯の釣り人を回収する渡船を発見したので、下川口の港に寄って明日の餌を作りながら待っているとまつした渡船が帰ってきました。
 このまつした渡船の船長であり、下川口のまつした鮮魚店の店長でもある「松っちゃん」とは何年ぶりの再会だったかな。挨拶もそこそこに釣ってきた魚と検寸の様子を見学。一時の食いは落ちたそうですが、それでも40オーバーの口太が出てますね〜。
 その後みなさんを見送ってから、船長と近況報告をし合ったり、かつて営業していた酒井渡船の時代も含めて未経験の下川口の情報を集めたりしながら過ごしていました。「明日は巨大なキバンドウが釣れるで〜!」とかね。

 明日は今日の分まで釣らねばなるまい!

 ● 樫 ノ 浦 kashinoura
利用渡船 横山渡船 出港地 高知県大月町・樫ノ浦漁港
時間(当日) 6:40〜15:00
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 システム 磯予約制
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・目標は口太の数釣り!下川口の磯。
 翌朝7時40分、私が乗り込んだまつした渡船の1番船は下川口港を出発しました。この日のお客さんは12〜3人。幾人かは2番船での渡礁です。
 磯はお任せでお願いしていた私が乗せてもらったのは、下川口港を出てすぐの城ノ岬の先端にある独立磯。ここが「ラクダ」という場所で、4日前にネット仲間の「親方」さんがブチブチ切られて2号竿まで折られる中、33〜40cmを3枚仕留められたのと同じ磯だということが判明したのは帰宅してからのことでした。(親方さんからは直前に情報をいただいただけではなく、磯の上から電話までしていたのになあ・・・(汗))

 松っちゃん船長によると「この南北に細長い磯のポイントはその両端、特に北端のサラシがお勧め!」ということだったので、そちらに釣り座を設営。尾長やら特大口太やらを想定する必要は無いでしょうが、シモリと溝が縦横に走る地形だし、特大のキバンドウに一方的にやられるのは悔しいので、いつも通りに1.85号相当のゼロサムX4を引っ張り出して、道糸2.5号、ハリス2号、ハリは6号までしか落とさずに勝負!

 ラクダから北東向き。「ヒラバエ」やら「お銀」やら「老公」といった磯があります。その向こうは竜串の千尋岬。
 さて北端からのサラシ狙いですが、普通に考えれば釣り座の前方に連なる岩の沖向きを狙うべきでしょう。
 でも隣の西隣のシロナガ(城鼻ナガハエ)との水道側も意外と面白そうなので、ちょっとだけ試してみるか・・・と、サラシの際からウキ下2ヒロの軽い仕掛けを潜り込ませてみます。すると3投目にウキが引き込まれて35cmほどのサンノジ、その直後には27.5cmの尾長グレまで上がってくるというなかなか幸先のいいスタートです。
 ただこの27.5cmの尾長、普通なら27cmキープということでクーラーに収める所ですが、今日は30オーバーの数釣りができるはずだということでリリースです。

 「おお〜い!反対!反対!」
 磯の裏側を攻める私の背中に大きな声が飛びます。振り向くと二番船を操って東に向かう松っちゃん船長の姿が。
 まあそりゃ普通に考えれば反対でしょうな・・・と、これ以降は前方に伸びる磯の沖側を釣ることにしました。

 沖向きは竿下くらいの位置に長細いシモリがあって、磯と平行に延びています。磯際とそのシモリの間に撒き餌を打っていると3匹のキバンドウが現れたので、それを沖に出さないように注意しつつ、シモリの沖側にタナ1本のG2のウキを投入。すると数度のアカササノハベラのヒットの後、吸い込み潮にウキが引き込まれ、その後ラインが走って元気な魚が竿を曲げました。少し竿を叩く感じがしたけど、上げてみれば32cmのまあまあ肥えた口太グレ。それは7時55分のことでした。






口太グレ32cm
 隣の磯、シロナガ。釣果は30〜35cm3枚とのこと。
 それからはローペースでサンノジが食ったり、コッパキツが食ったり、ミニキバンドウが食ったりし、シモリに突入されてのハリス切れなんかもありました。サラシの周辺のゴチャゴチャした地形の中から地味なスズメダイを釣った時は嬉しかったけど、このセダカスズメダイ、家に帰って調べたら残念、18年前に釣獲済みだったか・・・。

 そんな状況ですがメインで当たってくるのはやはりアカササノハベラ。ハリをガッチリと飲み込んで上がってくるし、ハリ外しを使う手間をかけても回収率が悪くて消耗が激しくなってうんざりです。中には喉の奥に掛っていたハリを自力で唇まで吐き出した状態で、また次の新しいハリを喉に食い込ませて上がってくる個体まで・・・。
 ウキ下を深くしないとめったにサシエが無くならないとはいえ、こんな盛大なベラ祭りは勘弁してもらいたいものですよ。(近場で釣ったキュウセンならまとめて白焼きか南蛮漬けにしてしまうのですが・・・)

 こんな調子で時間が流れ、いつの間にやら10時過ぎとなって弁当船がやってきました。
 今日も冬型でしかも曇り空の寒い一日。腹も減っていたので受け取った美味しい弁当を早速平らげて熱源補給です。
 おおっ、食べ終わってもバランやらアルミカップやらが全部残っているぞ。昨日は強風に煽られて全部飛んでいってしまったのに。さすがは北西風にめちゃくちゃ強いのが魅力の下川口の磯です♪

 腹が膨れたところでマキエを追加し、竿下のシモリの沖を攻めていくと、2時間ほどの間にこの辺りでチャブクロと呼ばれるカワハギ(丸ハギ)が一つと、気の毒なくらいにペラペラのアイゴが一つ釣れました。それにベラが3つほどと、首を振りながらシモリに突っ込むでっかいバラシが2つ。
 肝心のグレはというと、表層だけ横滑りする潮への対応を兼ねた0ウキにG5と潮受けゴムの組み合わせで15〜20mほど沖の一角を攻めた時だけ、23cmくらいの尾長や口太が食ってきました。地形の関係か、コッパグレは不思議なほどピンスポットに固まっているようでした。

 時計を見るともう12時半ではありませんか。
 ここ下川口の回収時間は松っちゃん船長のもう一つの稼業の関係もあって日曜日は16時まで、それ以外の日は14時半となっており、今日は月曜の祝日ですから残り時間は実質1時間半。こんな調子で終わってしもたら、またいつも以上に長い帰り道を味わうことになってしまいますがな!

 私はここに及んでようやく南端に釣り座を移しました。
 こちらも磯の延長線上に大きなシモリが並んでいて、沖向きのハエ根の切れ目を小さなサラシが彩っています。

 ここでも磯際にマキエを入れ、サラシとハエ根の際でサシエと合流させていきました。
 仕掛けは引き続き0号のウキにG5のガン玉を一つ打ち、一本の深さにウキ止めを噛ませたもの。そのウキがさらに一本近く潜っていたところでアタリが出ます。まあオモリの位置が高い上に軽いので、竿2本と言ってもそれほど深くは入っていないとは思いますが、どちらにせよそれでいくつかのコッパグレが掛ってきてくれました。

 ラクダ南側の釣り座と、下川口西磯。


残念。
これがグレ
だったら・・・。
 そして出ましたキバンドウ。13時6分、強烈な引きに耐えて耐えてハエ根を躱してタモに収めてホッと一息です。しかし、50cm弱のこの魚はほんの前座。引き続いて竿を絞り込んだ魚のパワーに比べればまだ可愛らしいものだったのです。
 
 その魚の走りは強烈でした。序盤にベールの回転不足というミスで大幅なアドバンテージを与えてしまったとはいえ、突進力はとてつもないものでした。
 海底の地形に沿って沖へ沖へ。数回軽く首を振って突っ走るその魚に対し、ロッドはリールシートの直前から大きく曲がり込み、リールのドラグが発し続けるうめき声によってようやく粉砕を免れています。
 やがて魚は動きを緩めたように見えました。それはほんの一瞬の出来事。
 私はそれを逃さずに反撃を試み、魚は怒りを爆発させました。
 次の瞬間に残っていたものは、切断されたハリスと懐深くまで傷を負った道糸、そして危機から解放されて息をつくロッドとリール、そしてヘナヘナと腰をつく私だけ。

 13時44分にも50cmほどの魚が上がってきました。
 力は入ったけど、さっきのものとは比べ物にならない勝負。水面で最後の抵抗をするその魚は、光の加減によって尾長グレの幻を浮かび上がらせたキツでした。

 14時を過ぎたころには上潮の滑り方が変ってアタリが無くなりましたが、それまではグレも食っていました。といってもやはりコッパグレばかりで、最後にはその中の一番大きい26cmのものを2匹目の本命としてキープする始末。ああ、最初の27.5cm。なんでリリースしてしまったんだぁ・・・。

 こうして下川口での初めての磯釣りは終了しました。
 松っちゃん船長によるとやはり水温が少し下がったようで苦戦されていた方が多かったです。それでも43cmを筆頭に40cm台は何枚も釣れていましたし、30cm以上を7枚という方もおられました。
 釣っていた方から得た「魚は全く見えなかったけど釣れたのは全部2ヒロ」という情報を鑑みるに、この二日間得意ではない深釣りにこだわりすぎて自滅したのかもしれないという思いがわいてきます。

 またしても好調の波に乗り損ねたのも無念ですし、むしろこちらが本命だったかもしれない怪物の攻勢を凌げなかったのもまた無念。
 懐に優しく、冬型にも優しく、意外と熱い下川口の磯。これでは再挑戦の大義名分がありすぎて困ってしまいますなあ。



 2日間のクーラーの中身。口太グレ3、ヘダイ2
チャブクロ2、ハマフエフキ、セダカスズメダイ。
 北西風の季節の心強い味方!まつした渡船の松っちゃん船長。

 ● 下 川 口 shimokawaguchi
利用渡船 まつした渡船 出港地 高知県土佐清水市・下川口漁港
時間(当日) 6:40〜14:30
(日曜は16:00まで。
それ以外は14:30まで。)
※現在は異なります。
料金 2500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 磯予約制
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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