風雲児  烈風伝
   ・南国の汽水魚ついでに磯釣り 
        〜湯立った世界の魚に会いたくて〜


2016年 9月9〜10日 高知県南西部の河川&松尾の磯
・「幻の普通種」を探す旅
 今回の四国釣行は河川での小物釣りがメイン。
 ターゲットはもちろん、汽水域や淡水域の流れ込みなどでカワムツと一緒に流下昆虫を狙っているという、これといって特徴の無い銀色の素早い魚。高知南西部ではすでに普通種になっているというユゴイです。狙い始めて早5年というのにいまだ手掛かり無しの状態ですから、いいかげん形にしなきゃ次の目的に進めませんからねえ・・・。

 とはいえ、仕事のジャングルの中にぽっかり空いたワンチャンスと本当に久しぶりの凪が重なった稀有の機会、ついでなので2日目は磯でも遊んで帰る気満々ですけどね。

 コトヒキ(シマイサキ科)

 20年以上前の熱帯魚の本より。
えっ?成魚が銀色で20cm??
・あこがれの魚が足元に
 さて、重陽の節句である初日は午前11時過ぎに中村に到着。四万十川水系から宗呂川までの間の数々の小河川を、渓流竿とキツネ鈎とオキアミの欠片を手にしらみつぶしに探り歩いてきました。

 カワムツと大量のボウズハゼしか見られなかった川、オイカワとチヌとウグイとシマイサキとクロサギ類が入れ代わり立ち代わり回遊してきた川、見慣れない稚魚が群れていた川、グーグルマップで見たようには進入できなかった川など色々ありましたが、肝心のユゴイは全く視認できず(居たのに認識できなかった可能性もあるなあ・・・)。当たったものといえばオイカワ、ウグイ、ウロハゼ、クサフグ、ゴクラクハゼ、チヌ、コトヒキといういつもの面々と、カルロス・ガ〜ンさん宅にお邪魔しておごってもらったガリガリ君の「当たり」くらいのもので、ユゴイは今回も“幻の普通種”のままで終了です。

 しかしながら、今回はユゴイよりも長く追い続けているもう1種の魚に肉薄することができました。
 その魚はルアーの世界では「マングローブジャック」と呼ばれ、ペットショップでは「レッドフィン・ナンダス」という名で売られている魚。南の国々では1.2mにまでも達するという怪力フィッシュイーター「ゴマフエダイ」の幼魚です。

 レッドフィン・・・という流通名のとおり赤い腹鰭がよく目立つこの魚には3か所で遭遇。サイズも今回のタックルなら対決可能な5〜7cm程度のサイズ!
 1か所目では仕掛けをセットする前にいなくなったものの、2か所目では邪魔者無しの1対1の勝負を挑むことができ、サシエのオキアミのわずか2〜3cmまで何度も近づけることができましたが、どうしてもその距離で見切られてしまって敗北。
 無数のコトヒキとクサフグが闊歩していた最後のポイントでは複数の魚影を確認。しかもこれまでで最も積極的にサシエを追ってきました。
 ところが、やはり数cmのところでスピードダウンし、その間にコトヒキやクサフグに横取りされてしまうというやるせない結末になってしまいました。
 今年はもしかするとゴマフエダイ幼魚の当たり年?これほどチャンスに恵まれたのは初めてだというのに、ああ、あと一歩が・・・。

・今年も季節外れグレに逢うために
 2日目は予定通り磯釣りです。
 9月の頭といえば水温は年間最高。いわゆる秋グレには程遠く、普通のグレ釣り師には避けられる季節ですが、場所によっては意外と面白い釣りが可能であることを私は知っています。というのもこの時期は昨年は伊田で40cm、一昨年は名鹿(なしし)で42cmを仕留めているという私にとっては縁起のいい時期ですからねえ。

 ところが名鹿の勝丸渡船は船長が重病で営業を止めてしまったと聞いたし、伊田&灘の掛川渡船は「今週末は大会で俺がいないからダメだ。」という返事。・・・ん?なんで大会で船長が留守??・・・ああ、社交ダンスの大会に出られるのか。

 そんなこんなで10日午前5時50分、私が乗り込んでいたのは足摺岬の西、松尾の「正丸」でした。
 乗客は上物の私と底物の2人組のみ。もう一軒の「まつき渡船」は今回もまたお休みらしく、底物の方が上がる沖ウスの高場以外は上がりたい放題、選り取り見取りの状況です。

 そんな中、船長は「カシラゴはどう?例年あそこから食い始めるし・・・」と港のすぐ近くの磯を盛んに勧めてくれましたが、私は味わってみたかったんです、水温28度の沖磯の世界を。賭けてみたかったんです、青物やシイラ、まだ出会えぬトビウオが遊んでくれるかもしれないことや、ミドル尾長の可能性はゼロに近くても決してゼロではないこと、それに人が入っていないのならサメを気にしなくてもいいかもしれないことに。

 で、結局私が上がったのはまたしても「ホンカゲ低場」でした。
 いや、「沖ウスに一緒に上がって沖向きの本流を釣らせてもらったら?」という船長の次案にも惹かれたんですよ。でも、ホンカゲ、昼前まで日陰になって涼しいし・・・(笑)
 
 手前の水面はシラコダイ、その下と周囲のすべてはオヤビッチャ。
さらに遊撃隊のハタタテダイや単品のクロモンガラ等もウロウロと。
・ひと月ぶりの海の色
 昨夜泊まった「ペンションつりの里」の女将さんの話では台風続きでひと月ぶりぐらいの出船とのことでしたが、ホンカゲの磯際ではマキエを入れる前からシラコダイの群れが待機中。入れた直後からは凄まじい数のオヤビッチャが寄ってきて際から沖まで縞々の海ができあがりました。

 そしてオヤビッチャの圧倒的物量に、抜群の機動力を生かして縦横無尽に走り回る少数精鋭のハタタテダイが助勢するので00にしようが3Bしようがサシエなんて一切通る状態ではありません。
 また、それ以前にグレなんてコッパの姿すら一切見られませんから、今回はグレ釣りを諦めるのに30分という時間すら必要としませんでした。(といいながら開始直後に手のひら尾長を1枚ゲット。まさに奇跡の1枚でした。)

 ということで、本日のターゲットはグレから宿敵ハタタテダイに替わりました。
 早速仕掛けを00ウキと視認性重視のMatch棒に変更、ウキ下を矢引きにして小バリで狙っていきます。

 ハタタテダイ自体は非常に貪欲なので、ハエ(オイカワ)釣りの競技会レベルのスピードで掛ってくるオヤビッチャの洪水の中にあっても分離は容易。ところが口が小さい上に数cm以内に近づいたサシエを消すという特殊能力を持つ魚ですから、どうしても口にハリを立てることができませんでした。

 でもさすがにハタタテばかり2時間も狙っていたら弘法も筆を誤るものですね。8時24分になって20cmほどのがようやくヒット!やった!昨年末の竹島遠征に続いて念願が叶ったぞ!最高に旨い煮魚がまた食べられる!しかもこの魚、初ゲットのムレハタタテダイではありませんか!!

 9時15分ごろ、想定していた時間よりも早い弁当船がやってきました。
 緑や赤の巨大なブダイは見えだしたものの、グレはやはり見えないし、ハタタテダイは姿を消したし、オヤビッチャは相変わらずですから、私は磯替わりを決意し、大急ぎで道具を片付けて渡船に飛び乗りました。
 今回陣取った高場側の出っ張り。そしてそこで仕留めたムレハタタテダイ!

 カシラゴ南端から。今日は落雷の心配なし。
 32cmの口太グレ。
 これさえいなければ・・・。
・2度目の渡礁で初めて竿を出す磯
 替わった先は船長お勧めのカシラゴです。
 この磯に上がったのは2回目ですが、釣りをするのは今回が初めて。6月の釣行の際には竿を伸ばす前に至近距離に落雷、命からがら逃げ帰ってますからね。

 さて、腹ごしらえと後半のマキエ作りをしてから、磯の西向きの真ん中付近の船長お勧めのポイントに入って再スタート。
 シラコダイ、チョウチョウウオなどのエサトリは居るには居るけどホンカゲとは違って問題にならないようなレベルです。しかもしばらくマキエを入れていると35cmくらいありそうな丸々としたグレが1枚、水面近くまで餌を追ってきているではありませんか!

 0号のウキにG5を一つ打った仕掛けにまず掛かったのはコッパキツ。さらにコッパ尾長が続き、10時44分には潮下のハエ根の際で足摺サイズ、32cmの口太グレがヒット。
 さらに56分には少し沖で31.5cmを追加。こちらは先ほどのものよりわずかに小さいのに重量も体の厚さも数段上の個体でした。

 さすがに同じ渡船区でも世界が違うなあ。大きなキツも集まってその動きもいい感じだし、今シーズンの開幕戦は数釣りで飾れるんじゃないか。前半戦とは一転、私の眼前には希望に満ちた光景が広がっていたのです。この時はまだ。

 2枚目のキープサイズを取り込んでから10分。マキエを打ち込んで煙幕を張るたびに巨大な魚が1匹、ゆっくりと突っ込んでくるようになりました。
 そのサイズ、60cm・・・くらいならまだよかったのですが、そんなケチな大きさじゃなくて3mくらいはありました。そうです、長い間誰も上がっていないはずの磯に絶望が回遊してきたのです。開始から1時間足らずで。

 ゆっくりと左に引かれていく磯際の潮と、磯の南端から入ってくる潮の合流点や、その潮が作る長い潮目の中を00ウキにG7を打った1.5ヒロの仕掛けをゆっくり入れていくと何度も何度もアタリが出ました。竿引きのアタリも多く、十中八九グレだなと思える魚、色と引き方から確実に大ギツと判断できる魚、イサギを思わせる引きをした魚、何らかのエサトリ魚などが次々と竿を曲げていくのですが、それらはことごとくヤツに横取りされ、餌にされてしまいました。

 サメの出現以降、磯の上に上がった魚はムロアジの一種のクサヤモロが2匹とコッパギツが2匹、コッパ尾長が1匹。
 そんな状況だったから迎えの船が来る2時間前には道具を片付け、バッカンまで洗って僅かな日陰にもたれてまどろんでました。どっと出た夏の疲れと3日連続の寝不足、体力はもう限界近く、帰りの運転の力すら残っていませんでしたからねえ。

 予定通り15時帰港。
 船長の「どうだった?」という問いに30cmちょいを2枚と答えると、クーラーの中を覗き込んだ船長、「おお〜、ええの釣れたなあ。絶対ボウズで帰ってくると思ったのに!」
 ・・・えっ?ボウズ前提の磯渡しだったんですか?(爆)

 「これからの時期はドンドンよくなる一方なんで、来月か再来月にまた来てよ。」
 そんな船長の声に送られて帰路についた私。
 ただ10月も動けるのは前半のワンチャンスのみ。凪に恵まれるようならどこをどう攻めようかな・・・。
 まあそれは夜行バス2泊で行く石巻・南三陸出張から帰った後、よりによってこんな過酷な釣行の翌々日に受けることになった「24時間心電図」の、おそらくボロボロな検査結果を見てからボチボチ考えるとしますかな。




 今回のキープ魚。水気の多いクサヤモロと痩せている方の
口太はキズシ(酢締め)で美味しく味わいました。太った口太
は刺身、オヤビッチャは煮付け。ムレハタタテダイは刺身と
煮付けで食べたけど、全部煮付けにするべきだったなあ。
何せ絶品としか言いようのない煮魚に化けますからねえ。

 ● 松尾 matsuo
利用渡船 正丸 出港地 高知県土佐清水市・松尾漁港
時間(当日) 5:50〜15:00
(16:00まで可)
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 近隣に民宿あり システム 一部の磯は磯割り制
磯替わり 可能 特記事項
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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