風雲児  烈風伝
 ・秋口の安満地2days 厄介な客は来たものの・・・。

2016年10月10〜11日 高知県安満地
・「釣りができる」という幸せ
 今年も9月の連休に、地元で子ども達のために活動しているボランティア団体と東北へ行ってきました。そしてそれは、いつまでも心に残る大切な宝物がいっぱい手に入った旅となりました。

 みんなで手作りの遊具などを設置して作り上げた「可能な限りルールを無くした、子ども達が自分たちの責任で自由に遊ぶことができる場所」で思い切り楽しんでくれた石巻の子どもたちの笑顔。一緒に大笑いし、一緒に歌い、時には涙ぐみ、別れの際にはいつまでも手を振って見送ってくださった仮設住宅にお住いの方々との交流。東日本大震災のはるか前から気仙沼に設置されている津波体験館での体験と「生き抜いてほしい」という館長さんの貴重なお話。この訪問を成功させるために奮闘した高校生、大学生から人生の大先輩まで、いつも尊敬し、誇りに思っている素晴らしい仲間たちとの時間・・・。
 その際の自由時間には、とある岸壁で小サバを釣っていた方と、ただの釣り好き同士として話すことができました。

 「あれから5年半、ようやく釣りを楽しめるようになった。」

 ご自身も被災され、友人の一家が全滅するなど、しばらくはとても釣りに行けるような気持ちになんてなれなかったそうですし、震災後しばらくは釣り人への反感が激しく、駐車中の車が破壊されるといったトラブルなども起こっていたそうです。ですが、町の復興とともに穏やかな心が戻ってきて、いまではこうやって笑顔で竿を出せるようになったこと、漁師や港周辺の人々も「ドンドン釣りに来てほしい」と歓迎ムードになっていることなどを教えてくださいました。

 「釣りができる」という当たり前のように思っていたことは、実はとてつもなく幸せなことだったんですね。

・うねっているので安満地へ
 東北訪問も含めた多忙な仕事が少し落ち着き、幸せを満喫するチャンスが私にも巡ってきました。さあ行こう、今年は振られまくりのホームグラウンドへ。今回こそは!

 ところが今月唯一のチャンスも絶賛大量発生中の台風のうねりを避けられず、磯の低い井ノ岬は欠航でした。
 太平洋側の他の渡船は後から見てみると出ていた所も結構あったようですが、私は無理せず安満地(あまじ)での二日釣りを選択しました。磯の釣果はよくない・・・というか、人がいないので分からないとのことですが魚は居る場所なのでどうにでもなるはず。20年近くやっていても釣りに行くたびにますます楽しくなっていくグレ釣りに打ち込むことが最大の目的、35cm辺りのグレが一枚でも出るようなことがあれば大成功という感じでのんびりとやるとしましょうか。

 そういえば先日の東北訪問は現地1泊、行きも帰りも片道12時間の夜行バスという日程でしたが、兵庫から四国に渡って磯釣りやって帰ってくるのとは比較にもならないほど楽々でしたわ。
 ほんま、磯釣りはしんどいなあ。なんでこんなことをやり続けとるんやろなあ・・・。そんなことをぼやきつつ大月町の道の駅で数時間寝て、渡船出航間際にヤブ蚊の巣窟・安満地集落に入りました。

・初日はタテバエ
 タテバエの高台の上から。釣り座は右端。画面右端は泊浦の白鼻と白鼻小島。
 3連休最終日の吉田渡船のお客さんは、伝馬船が2組?、磯釣りが3人(3組)でした。磯の方は松島に上物、観音崎に底物、私は安満地渡船区の北端近くにある堅調磯、タテバエに渡礁しました。
 う〜ん、潮の色が悪いですなあ。松島も観音もそうでしたが透明度が低く緑色です。

 釣り座は船着き。近距離に2つ、中距離に1つ入っている大きなシモリの周辺と急激に落ち込んでいるはずのブレイクラインが狙いですな。
 とりあえず00号にガン玉を一つ打ったスルスル仕掛けをシモリの間にそっと忍ばせておいてから、最初のマキエをパラリ。すると何の間も溜めもなくコッパギツの群れが一斉に浮上してきて、20cmくらいのが十数秒でヒットです。

 しばらく釣っていても、左にゆっくり流れる撒き餌に群れるのはコッパギツとミニオヤビッチャとミツボシクロスズメダイとギンイソイワシ(トウゴロウイワシ科)のかたまりばかりでグレはコッパも見えません。近距離で次々ヒットするのはコッパギツ、少し沖でヒットするのは40cmくらいのキツという状況に、初期設定の2号ハリスはギザギザにされてみるみる短くなっていきました。

・たった一匹に惑わされ・・・。
 もっと沖を攻めたいけど光量が少なくてウキが見えないので、それまで使っていたタイドマスターを飛距離の出る小型棒ウキ「T−J」の2B、ウキ下を2ヒロ半に変更。それを何投かしたところで潮が反転し、泊浦向きに流れ始めました。
 すると、足元のマキエにこれまで全く見えなかったコッパグレが登場し、沖のシモリの向こうやブレイクラインと思われる辺りを流れる棒ウキも好ペースで引き込まれるようになりました。やはりキツのヒットは多いですが、25cmくらいまでのコッパ尾長やコッパ口太も混じり始め、8時2分には初のキープサイズ、32cmの口太グレをクーラーに収めることができました。

 そのうち、足元のマキエにたった一匹、40cm近いグレが見えるようになりました。常時いるわけではなく、時々撒き餌の中心近くに突入しては磯際に戻っていくという気まぐれな動きをしています。
 私は当然、仕掛けを切ってウキを00号に戻して食わせにかかりますが、タイミングが合わずに空振りばかり。ならばと他のナイスサイズを探してみても見当たらないし、沖に誘導しようにもコッパグレもエサトリも走ってくれません。
 こうなってくるとたった一匹の気まぐれなグレのおかげで混乱をきたし、上を狙ったらいいのか下を狙ったらいいのか分からなくなって、仕掛けは2Bと0と00を行ったり来たり。しかもそんなことをしている間に潮がまた反転し、気まぐれグレもコッパグレも消えて、エサトリの動きもますます悪くなってしまいました。

 それからは静かな時間が続きました。
 ヒメフエダイ
 時には相当深く遠く釣ってみたりもしましたが餌が残ることも多く、ヒットしてきたのはヒメフエダイやイトフエフキ、ヤマブキベラにオトメベラ、ギンイソイワシにハマダツにオキザヨリくらいのもので、クーラーの中身が全然増えてくれません。

・潮次第
 残り実質1時間となった13時半ごろ、潮がまた泊浦向きに流れ始めました。
 するとまたコッパグレが見え始め、例のナイスサイズ一枚もまた動きはじめたので、00ウキのスルスルで攻略を目指します。
 そして辿り着いたのは、マキエの固め打ちで集めたギンイソイワシとミツボシクロスズメダイの幕を生オキアミ2〜3匹を刺した7号のハリとハリ上2cmのガン玉7号とで突き破る方法。これで25cm止まりとはいえ尾長グレ、口太グレを連発できるようになり、13時50分に27cmの口太を辛うじてキープして14時40分に離礁。

 この日の安満地は散々な一日でした。
 観音崎の底物はアタリ無し。松島の上物もエサトリとダイバーに悩まされて小さいのが2枚ほど。最近はブリが大爆釣しているという伝馬船も不発で、いつも100kg単位の釣果を上げてくるという常連の名人が史上初のボウズで帰ってくるという椿事まで出来してしまおうとは。

 「明日は潮が変わってればええのにね・・・。」
 この日は帰港後の2回戦もせずにひたすら渡船屋の宿でゴロゴロしてました。女将さんの言葉が真実になることを願いながら。
 タテバエから南方向を望む。
 一番沖は沖の島と姫島。
 その手前の岬の先端は
名礁・マワリ。

・二日目の朝はマルバエで
 二日目は上物2人での出航でした。そして私はマルバエ、もう一人の方は松島に渡礁しました。
 安満地湾内、観音崎の手前にあるシモリ風の「マルバエ」は、昨夜の夕食時に船長が猛プッシュしてくれた磯。足元こそ浅いですが、10mほど沖から急激に落ち込んでいくこの磯で、とりあえず弁当船までやってみる予定です。

 ラッキーなことに潮は昨日よりもいい色で、透明度も上がってくれてます。足元のマキエに集まっているのはキツ、ギンイソイワシ、オヤビッチャ、ミツボシクロスズメダイといった昨日と同じメンバーですが、その動きは活発だし、掛ってほしくは無いけどキツもなかなかのサイズが結構な数集まっています。

 安満地湾口のマルバエ。常設のチャランボあり。左は松島、右は観音崎。中央には鵜来島。
 本日のパイロット仕掛けは久々に登場のDXRメガチューン1.65号に道糸2号、ハリス1.7号、00ウキにG7を打った仕掛けでしたが、切り立った湾内という立地条件のせいでなかなか日が差さず、ウキがどこにあるのかも分からないし、観音崎先端に向かって流れる速い潮に対応もできないので、早々に昨日と同じ棒ウキに変更しました。

 しかしアタリはありませんねえ・・・。2Bの棒ウキでも、日が照ってきたので戻した00ウキでも。足元でもド遠投でも。

 魚は結構見えてます。撒き餌投入点の周りにはアオリイカも相当数湧いてきて、ギンイソイワシの団子の中に次々突入してきます。(私はイカ釣りが好きではないのと、フカセに集中するために餌木も掛けバリも磯には持ち込まないけど、今回ばかりはそれが惜しまれる状況でしたね。)
 そしてグレも見えはじめました。それも沖へと走ってくれている様子なのですが・・・。それでもホシササノハベラが1匹とオトメベラ数匹以外には何も釣れない・・・。

 そこで仕掛けはそのまま竿をチェンジ。右も左も鈴なり状態の波止のサビキ釣りですらボウズを呼び込んでしまう呪われし竿「ボウズXR 1.65号」から、ここで使うには役不足な気がする「ゼロサム磯弾X4 1.85号相当」に替えると、これまでの苦戦が嘘のようにアタリが連発。キツやコッパグレがほとんどですが、7時46分には25mほど沖で口太グレ32cmがヒット!待望の初キープとなりました。

 そして8時半、松島向きの20mほど沖に投じたウキが鵜来島の方向に差し掛かるころ、ラインがスルスルと走ってロッドが曲がり込んでいきました。
 おおっ、これまでには無いパワフルな引き!ブレイクラインや磯際への突入を何度か企てた末にタモに収まったのは、この時期にしてはかなり身の厚い口太グレ38cmでした。やったぞ!!

 よっしゃ〜!38cmゲット!
 よっしゃ〜!さすがは船長一押しの磯、この調子でドンドン釣ってやる!と息巻く私の側を、一隻の錆びで汚れた船が通っていきました。それは安満地湾内のダイビング専門業者の船のようで、観音崎向きのシモリの向こう側に停泊すると、大勢のダイバーが海中に沈んでいきました。
 それ以降マルバエでのアタリの数は激減し、オトメベラやハマダツ、メガネハギ、グレは釣れてもコッパが数枚という状況に陥ってしまいました。まあダイバーだけが状況悪化の原因の全てでは無いとは思いますが、やはりテンションは下がりますわなあ。

・絶不調の名礁へ
 9時半過ぎ、女将さんの手作り弁当を積んだ吉田渡船が松島に向かっているのを見つけたので、私は道具を片付け移動の準備。そして戻ってきた渡船に乗り込んで後半戦の舞台「マワリ」を目指しました。

 マワリといえばその沖にあるチョボとともに安満地を代表する名礁。とりわけ尾長に関しては安満地では最も魚影が濃いんだとか。
 ところがどうしたことか、このマワリ周辺は昨年からずっと絶不調で、船長もずっと渡礁を見合わせてきたそうです。当然、昨夜私がこの磯を希望した時も「行くのはかまん(構わない)けど、食わんで。」と止められました。
 まあ今はマルバエの方がいい釣りができる確率は高いでしょうけど、だからといってそのまま留まるわけにはいきませんからねえ。なにしろマルバエは15時の迎えを待たずに波の下に沈んでしまう運命にありますから(爆)

 さて、到着したマワリは予想以上に高くてギザギザの険しい磯でした。これは寝不足だったら危険そうだ・・・。釣り座に設定した沖向き中央部は平らではあるものの、狭いし油断したら落ちそうです。
 しかし、地形を見ているだけで釣れそうな匂いがプンプンしてきますね♪

 道具を落とさないように各所に設置して、とりあえず弁当を平らげてから本格始動。まずは浅い足元に撒き餌を入れて、その近くにある駆け上がりを0号で攻めていきます。
 しかしさすがは長い間敬遠されてきた磯、出勤の早い安満地のエサトリ達がなかなか出てきませんし、出てきてもコッパギツとスズメダイ系が少々と、「掛けた瞬間サヨウナラ」サイズのナガブダイと青緑のブダイ類が1匹ずつ。

 マワリの頂上付近からの展望。釣り座はこの下ですが
見えません。正面はチョボ。
 11時過ぎには私のウキはG2、ウキ下は竿一本強になっていました。
 それを少し沖に投入して、少量のマキエとともに松島向き(南向き)に流れる緩い潮に乗せていたところ、そのウキが勢いよく海中に突き刺さっていきました。
 強烈な引きに1.85号竿がひん曲がります。そして次の瞬間痛恨の出来事。リールのベールが弾き返され、フリーになった道糸が勢いよく吐き出されてしまったのです。
 私はすぐにベールを戻して戦闘続行。相変わらず魚は強烈に引いているが、ビビビビ・・・と何か変な動きをしていると感じた直後、ロッドは曲がり込んだまま動きを止めてしまいました。魚は根に入ってしまったようで、しばらくテンションを緩めたり張ったりして抵抗を試みるもどうにもならず、糸を掴んで強制終了。
 ああ無念。まあグレじゃなかったとは思いますが、またしてもやらかしてしまうとは。

・待望のグレに続いて
 同じ釣り方でコガネスズメダイとオヤビッチャを釣ったところで潮が止まり、すぐに反転して泊浦方向に流れ始めました。
 釣り座の正面からすぐ右にはチョボに向かって浅いハエ根が長く伸びていて、仕掛けがそこに乗り上げてしまうのますが、その乗り上げる瞬間にロッドが曲がり込んで魚がヒット。おおっ、32cmの口太グレではありませんか!
 時計を見ると11時45分。残り時間もまだまだ充分。マキエの下にグレの姿も見えだしたし、これは面白い釣りができるかも!

 すると先ほどと同じ錆びた汚い船が釣れるのを見計らったかのようにやってきて、釣り座のすぐ沖にあるブイに係留し、大勢のダイバーを潜らせ始めました。
 そしてアタリが消え、グレの姿も消えました。
 潮はスピードを上げ、角度を変えて流れていきます。左手の船着きの角から入ってきて右側の長いハエ根の駆け上がりに寄り添うようにして進み、沖のシモリを越えてチョボの磯際を直撃するという、絶対に釣れそうなポイント全てを経由する素晴らしい流れです。
 それなのに釣れてくるのはハマダツくらいという辛すぎる状況。

 折角の潮を釣りこなせていなかった面もあったはずで、どこまで影響が出ているのかははっきりしないとはいえ、せっせと撒いているマキエの向こうでダイバーが乱舞しているであろう状況はどうにも嫌なものですねえ。
 ダイビングも手掛けている吉田渡船の船長の話によると、この安満地には「渡船の客が上がっている磯の周りではダイビングは行わない」という申し合わせ(ただし徒歩釣行も可能な観音崎のポイントは対象外)があるそうなのです。その申し合わせを二日連続で無視し、「雇われ船長がルールを理解していなかった」と言い張る業者に、帰港後、吉田船長は激しく抗議してくれていました。

・名礁復活??
 上がっていた「マワリ」とその先の「チョボ」。
 その間に見えているブイにダイビング船を係留され、潜られました。
 ダイバーたちは13時を過ぎたころに船上に上がってきました。するとそれまでが嘘だったかのように魚の動きが活発化し、アタリが出始めたではありませんか!

 船着きの角の随分左に投入したBウキの竿一本の仕掛けを正面辺りで馴染ませ、マキエと合わせると、教科書通りといった感じで駆け上がりとのファーストコンタクト時や沖のシモリで連続ヒット。
 始まりは40cmほどのキバンドウや25cmくらいの尾長や口太でしたが、13時32分には28cmながら実に旨そうな尾長グレ、48分には35cmの口太グレ、14時ちょうどにも35cmの口太グレが磯の上で踊りました。また、その間もキバンドウやキープサイズギリギリのグレは釣れ続いてますし、獲れない場所で掛ってしまったグレのバラシもあって、心地よい早潮の中でずっと竿が曲がり続けているという夢のような時間が続きました。

 14時を過ぎるとグレのアタリが急に途絶えました。
 ここから色々と推理しながら試行錯誤して立て直していくのはグレ釣りの大きな楽しみの一つです。でも今日はそれをするだけの残り時間はありませんでしたのでキープサイズを追加できぬまま14時20分に納竿。道具を片付け、こぼれマキエを洗い流して15時15分に離礁しました。(昨日と対照的にえらくのんびりした迎えだったので片付けてから寝てました。もうちょっと竿を出してたらよかったかも・・・)

 「どう?全然釣れんかったでしょ?」
 「4枚キープしましたよ。ダイビングが来んかったらもっと釣れたやろけど、いや〜、面白い釣りでしたわ〜!」」
 この回答に船長も女将さんも驚き、そしてえらく感謝されました。「ありがとう。これで明日からまたお客さんをマワリに上げることができる!」と^^

 今回も色々とありましたが、目標以上の釣果も出たし、濃密で楽しい時間を味わうこともできたかなり素晴らしい釣行になりました。こうなってくると次回の釣行もますます楽しみになってきますねえ。

 今シーズンも皆さんがそれぞれの思う楽しい釣り実現できますように!
 そして、誰もが釣りを楽しめるいうこの幸せが、災害等に阻まれることなくいつまでも続きますように!
 
 2日間の釣果。磯によって
グレのコンディションはバラバラです。
 なお、クサヤモロは2日目に
マルバエで釣りました。

 ● 安満地 amaji
利用渡船 吉田渡船 出港地 高知県大月町・安満地
時間(当日) 5:50〜14:50
5:50〜15:15
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 宿泊・仮眠所あり。
1泊2食6500円
システム 磯予約可
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

釣行記TOPへ