風雲児  烈風伝
・久々のホームグラウンドで、狙うはまさかのあの魚。

2016年 11月1〜2日 高知県 伊田
・早春以来の井ノ岬
 待ち焦がれていた木枯らしが吹き、夏以降ずっとうねりに閉ざされていた磯にグレの季節が訪れようとしていました。

 夜明け前には上がるはずの雨の中を一人、高知県黒潮町の掛川渡船へと車を走らせていました。
 吹きはじめてから数日の木枯らしはまだ慣れていないのか、北東とか東北東の風ばかり。東向きの灘は引き続き大波の中なのであまり釣れていない伊田からの出港ではありますが、3月を最後に何度も何度も振られ続けてきたホームグラウンドでようやく釣りができるということだけで期待が高まり、家でもサービスエリアでも伊田漁港の駐車場でもどうしても寝付くことができませんでした。

 予定通り雨が上がり、明るくなってきたので車外に出てみると激しい波音。あらら、防波堤の切れ目から見える上川口漁港と待王坂の海岸には大波が絶え間なく押し寄せているではありませんか。
 これは無理かも。今日はどこの港で遊ぼうか・・・。なんて思っていると船長がやってきて、「今日は地の方から風が吹くからセイダバエ、三角、沖八なら大丈夫だろう。」ということでしたので、そのまま乗船して沖へ向かいました。
 ただ波間の磯の様子があまりにも頼りなかった上に、大潮の満潮まで残り1時間ある中、無理はしたくなかったのでセイダバエはパス。磯が高くてすこぶる足場がよく、たとえ釣れなくてものんびり寝られる沖八(沖八郎)へチャレンジしてみることになりました。

・収まってくる・・・はずですが。
 激しく上下する海面、船外機の小さな渡船。沖八への渡礁は一進一退の危険なもの。どうにか無事に道具を運び上げ、一息ついて周囲を見渡せばデンジャラスとしか言いようのない光景が広がっていました。

 南東から押し寄せるうねりは三角やセトの大バエの近くで盛り上がり、20mほど沖のミノコシやその向こうのシモリを乗り越えながら見上げる高さに漲って、その後ろの高い磯を丸呑みにしています。西の磯も東の磯もとどろに寄せて割れて砕けて裂けて散る波の向こう。なのにそれ程の波が嫌うかのように背後に通り抜けていくこの沖八の盤石さ、不思議さに驚きつつも、もし予測と違う風が吹きはじめて波の向きが変わったら・・・という不安を抱えながらの釣りとなりました。

 ちゃんと狙っていればとんでもない恐怖写真が撮れたのに・・・。

・リベンジマッチ
 いい感じにシモリが点在する沖八。
 今回は使えなかったけど、船着きからの
沖狙いも楽しそう!
 実はこの沖八は今年2月に乗った磯。しかし前回ごく僅かな時間以外はコッパもおらず、28cmの口太グレを1枚キープするのがやっとという散々な結果に終わっていますので、今回はせめて釣行記くらいは書けるような釣りをしなければなりません。

 一段低い船着きは危険につき、溝を隔てた左側先端でスタート。まずはG2のウキで足元から少し前のシモリまでの間を攻めていきますか。

 足元では小さなオヤビッチャとチョウチョウウオ少々がマキエを追い、コッパグレの姿も見えます。アタってくるのはアカササノハベラとニシキベラ。続々とヒットしてはハリを飲み込んで回収不能にしていきます。
 開始早々のハリの浪費は避けたいので速攻X8号にチェンジ。2ヒロ半のウキ下はさすがにやり過ぎなのでウキ止めを少しずつ詰めてヒットゾーンを探していきましょう。このうねりで0ウキに替えても馴染みませんし。

 キープサイズのファーストヒットは7時12分、29cmの口太グレでした。ミノコシの少し沖で右方向への潮が効いているのを発見したので、ウキ下1ヒロ矢引きで流していくと潮の中でガツンと食ってきてくれました。

 すぐに潮が緩んだので潮の中でのヒットは1回のみでした。その代りに少し沖に点在するシモリの間や沖で連発するようになり、7時33分には29cmの尾長、8時16分には口太30cmが出ました。本日のキープサイズは29cm。いつもならキープしている27cmくらいのもバンバン当たってくるけど、今日は迷わずリリースです。

 またしばらく食いが遠のき、仕掛けを色々といじっている時間なんかもありましたが、この日は結局G2の仕掛けが一番だったようで、9時35分には32cmの口太が潮位が下がって露出範囲が増えてきたミノコシの際のサラシで、47分には丸々として旨そうな30cmの口太がシモリの沖でウキを引き込んでくれました。

・強風来たる
 「風とボウズは10時から始まる」という釣りの格言を載せていたのは何の本だったか・・・。潮が下げに入ってからさらに高さを増したうねり、それを押さえてくれるかもしれない北西の強風が吹き始めたのは格言通りに10時前のことでした。
 まあ横からの強風といっても、道具が飛んでいくほどのものでもありません。背後に刺しているパイプ型の竿立てが風を受けてブォ〜〜〜という大きな音を延々と鳴らし続けてうるさくて仕方ないのと、これまで機能してきた仕掛けが全く馴染まなくなって、いい感じだった釣りが完全に崩壊してしまいってアタリも無くなってしまったという程度のことです。
 それでうねりが収まったのかというと何とも微妙。まあ特大の波が来る回数は減ってはいますが、来た時の大きさは全く変わってないような・・・。とはいえさすがに5時間後の納竿の頃には大分収まってきていましたが。

 まあ風には慣れていますから何とか打開していきましょう。
 と言ったものの、仕掛けをうんと重くしてみてもダメ。沈めてみてもダメ。風下となっているミノコシの裏側の洗濯機状態のエリアを狙ってもダメ。足元狙いに徹してみてもコッパ少々とベラのみ。やはり船長が言うように、伊田は北西の風が吹けば途端に釣れなくなるのか・・・。
 ああ、ルアーかキビナゴがあればとっくの昔にグレなんて諦めてるで、これ。

・馴染ませるべからず
 ようやく正解にたどり着いた時、時計の針は13時を指していました。
 00号のウキ、フカセウキゴム、ハリス1ヒロ、ハリ上3cmにジンタン7号を一つ打ったスルスル仕掛け。これをピンピンに張ってみたら27cmくらいまでのグレが入れ食いになり、14時6分には久々のキープサイズ、29cmの尾長をゲット。
 スルスル仕掛けだからと言って風の隙をついて馴染ませても全然ダメで、せっせとやってみてもベラと40cmくらいのアイゴがヒットしただけ。グレを釣るなら風下のとにかく一直線に張れる場所を狙えるようにポイントを作って、ルアーでいうところのカーブフォールで攻めるのが必須でした。

 29cm〜32cmを6枚。崩れている時間も多かったけど、結構楽しかった一日は予定通り15時前に終了。
 少しは小さくなったとはいえまだまだ激しい東うねりに北西の風が加勢する中、迎えに来た小舟に乗り移るのは骨が折れました。そして船中で大失態!狭いフォースヘッドから甲板に荷物を運んでいる時にバランスを崩し、足をもつらせて転倒。フォースヘッドの板の間に膝からおちてしまったのです。
 道具も船も無事、再び磯に飛び移って残りの道具の回収にも成功したものの、私の右ひざは左ひざの倍ほどに腫れ上がることになってしまいました。(翌日は問題なく釣りができたけど、家に帰ってから痛みが・・・。)
 撤収間際の沖八とミノコシ。少しましになったとはいえ、うねりはまだまだ健在。  沖八からの八郎と大ブト。北西風がさざ波となって押し寄せています。 

・セイダバエを独り占め
 いつものセイダバエ。
 暗いうちは40cmくらいのネイゴ(カンパチの子)やワカナ(関西でツバス、愛媛でヤズ)が釣れるかも。ということで2日目は6時前の出港となりました。乗客は今日も私一人、上がる磯は昨日は断念した伊田の代表磯「セイダバエ」です。

 うねりは昨日に比べて随分と落ち着いてくれましたが、満潮前ということもあってバッカンとタモを安心して置ける場所が無く、満潮までの2時間あまり、釣り座をなかなか固定することができませんでした。
 もちろんその間も釣りはしています。でもサシエが盗られるばかりで小魚一匹掛かりません。

 沖向きのポイントはハリに掛からない程度の大きさのオヤビッチャの大群が湧き、そのスピードとどこまでも沖に出ていく突破力、餌の種類を選ばないサバイバル力、そしてどうにもならない数の暴力の前に、海中でのサシエの存在限界時間は生でもボイルでも2〜3秒。
 しかもどんなに目を凝らしても、マキエの周辺には1匹のグレの姿も見えません。こんな時期にまさかと思うでしょうが、たった1匹のコッパグレさえ見えないのです。オヤビッチャ以外に見えるのは数匹のキバンドウとキツ、それにアイゴが1匹という有様でした。

 一方、船着きのポイントには絶望的なほどのオヤビッチャはいませんが、やはりこちらでも1匹のコッパグレも確認できず、さらにキツの姿すら見えないというダメダメぶり。

 この日は潮が完全に死んでました。
 さしもの伊田の代表磯セイダバエといえども、潮が動かないとこんな状況になってしまうんですねえ。

・発想の転換?で
 磯替わりという選択肢も無いし、いっそ迎えに来てもらおうか。
 そう思わないでもなかったですが、この状況から逃げるは恥だし役にも立たない。グレがいないんだったらせめて数匹見えているキツを掛けることにチャレンジして今後の力に変えるべきでしょう。(後で考えたら、磯に付いている貝類やカメノテを落とし込んでガッキーを狙うという手もあったな・・・)

 にわかに本命の座に躍り出たキツ。でもこれが見事に釣れません。いつも九州遠征でお世話になっている「かまちゃん」がこの魚のことを歩兵軍団だと再三書かれていますが、キツが歩兵ならばここのオヤビッチャは騎兵、それもポエニ戦争の勝敗を左右したヌミディア騎兵だといってもいいでしょう。この快速のエサトリは撒き餌で遠くに引き離したところで、普通の仕掛けだったらサシエは包囲殲滅されるという結末を迎えてしまいます。

 コッパギツが釣れ始めたのは10時ごろ。00号のウキに3Bの口ナマリという仕掛けと、スペースを広く使ったダイヤ型のマキエワークを併用し始めてからです。
 さらに11時過ぎには奇跡が!なんと25cmくらいのコッパ尾長グレが食ってきたではありませんか!まさか釣れるとは!
 嬉しい誤算♪
 何でもかんでも手を上げて飛ぶ人。
 2日間の釣果。初日に釣れててよかった〜。
 そして11時34分には26cmのシマアジがヒット!これは嬉しい誤算です。

 その間、本命のキツの方もポロポロと釣れましたが、さすがに釣ったところであんまり面白くなく、12時半ごろに場所移動。これまでサヨリのような大きさのダツしか釣れていなかった船着きでじっくりと腰を据えてやってみることにしました。

 船着きでもなかなか結果は出ませんでしたが、やはり少しだけ潮がよくなっているのかこちらでもコッパグレが数枚ヒットし、14時ごろには夢にも思っていなかった29cmの尾長グレが遠投でヒットしてくれました。

 と、まあ、シマアジと尾長を1枚ずつ、ついでにチョウチョウウオも1枚キープすることはできたものの、あっちでお手上げ、こっちでお手上げ、まるでロシアのフィギュアスケーターみたいな一日になってしまいました。8時ごろに一瞬だけ出た浮きグレも、コツコツッという反応を2回逃しただけで終わってしまいましたしねえ。

 今回はこんな釣果でしたが四国のグレはいよいよ本格的なシーズンイン。ということで今年の四国のグレ釣りは終了です。なんとも因果なことに、大遠征の唯一のチャンスに南九州の離島で開幕前の尾長を狙った数時間の釣りをするためには、最盛期の四国で釣りなんかしているわけにはいきませんからねえ。
 とはいえ、心残りだなあ・・・。

 ● 伊田 ida
利用渡船 掛川渡船 出港地 高知県黒潮町・伊田漁港
時間(当日) 6:25〜14:50
5:50〜14:50
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 磯の予約可
磯替わり 基本的に無し 特記事項 灘エリアと同一業者
詳細 高知県黒潮町 井ノ岬周辺(灘・伊田)の磯
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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