風雲児  烈風伝
  ・大荒れの合間の寒グレ釣り 久しぶりに至福の時間が!

2017年2月18〜19日 高知県下川口、灘
・春一番の次の日に
 出発予定日の朝、太平洋側の広い範囲に春一番が吹き荒れて陸も海も大荒れになりました。しかしこの強烈な南風は時をおかずに北西の強風に変わるでしょう。明日はむしろ北西風に強い場所でないと釣りにならないはず。

 当初はリョータさんとの灘釣行を予定していましたが、そのリョータさんから「明日は遅い時間からならやれるかもしれないが、安全な磯は予約で埋まっているそうだ。」という内容の情報をいただき、また、いつも通りの単独行になったので他の場所を急いで探すことになりました。しかし何度も通った名鹿は廃業してしまったというし、数年前の磯釣りスペシャルの記事を頼りにその南の「布」に電話したら「渡船は4年前にやめた。今は他の人が渡しているらしいが・・・。」とどうにもなりません。

 こうなったら前日から寝不足の身には少し辛くはなるけど、北西風さえ吹けば安泰の下川口だな。ダメだったら今回の釣行は中止にしようと覚悟を決めて「まつした渡船」の松っちゃん船長に電話を入れてみました。
 すると、「昼過ぎには吹いてくると思ったけど、今(午後6時)になってもまだ吹かんねえ。今晩中にはなんとか吹いてくれることを信じて予約は受けてるけど・・・。」ということでしたので翌日の乗船をお願いし、高速道路の脇の吹き流しや工場の煙に一喜一憂どころか一喜九憂しながら片道365kmの道を走り抜けました。
 下川口では最近多くの磯で40cmを超える口太が上がった日もあり、14日にはこの周辺エリアでは相当な大物といってもいい44cmの尾長までもが出たとのことですから、渡船が出さえすれば面白いことになりそうなんですがねえ・・・。

・楽しく出港!
 1時間半ほど仮眠してから車外に出ると7人ほどが集結していました。
 風は相変わらず吹いていないのか、それとも地形の関係で感じられないのか。港の最奥のスロープを駆け上がってくる波に感じる一抹の不安。まあどちらにせよ準備に取り掛かる時間だ。

 「もしかして風雲児さんですか?」
 身支度を整え、道具を船の前に運んでいると、このホームページを見てくださっているという2人組の方が声を掛けてくださいました。また、岡山からの単独行の方もお声掛けいただき、そこに松っちゃん船長も加わって話が弾みました。いやあ、いつもながら嬉しいものですねえ。みなさんありがとうございます。
 心配だった海況も、うねりが残って要警戒ではあるものの差し支え無しとのことで、6時30分ごろに出港、和気藹々と磯を目指しました。

 この下川口は磯の予約が可能ですが、1人でも予約可能な波に強い磯はほとんどありませんから今回も何も考えずに船長任せ。とはいえこの人数ですから心配は無用でしょう。さあ、どこに上げてもらえるかな♪

 そして最初に先ほどの2人組の方が実績抜群の大きな磯「シマノハエ」に上がり、次はそれに隣接する「中ユス」へ。するとここで私の名前が呼ばれ、うねりがかけ上がってくる可能性があるので危険を感じたらすぐ電話するようにと忠告されながらの渡礁となりました。
 とはいえ、うねりは落ち着く方向に向かってくれましたし、船長も度々波の様子を見に来てくれたので安心して釣りをすることができました。
 離礁直前の中ユスと、隣接するシマノハエ。この時間帯にはうねりはすっかり落ち着いています。磯の中央部にいっぱいいるのはウミネコ。

・実績磯、中ユス
 中ユスは意外と広く、足場の良い磯でした。
 まずはシマノハエ側の船着きに釣り座を構えて、正面のチョボと磯際の両方から伸びるサラシの交点などを攻めようとしましたが、海面があまりにも混ぜ返されているうえ、きつい当て潮に乗った仕掛けがシマノハエとの間の浅い水道の奥に入ってしまうので断念。右側に隣接するユスの方は穏やかですが、こちらも同じく当て潮で厳しそう。そこで磯の真ん中に陣取って、当て潮の跳ね返りや鏡を利用して釣ることにしました。

 狭い水道を隔てたユス。中ユス同様のんびり
やれそうな感じ。
 水温が高くていい感じだとのことですが、エサトリはトウゴロウイワシ類以外は何も見えませんねえ。それに水深が無いのに潮の引き込みが強く、最初に使っていたG2のウキではオモリを減らしても減らしても沈み過ぎてしまって釣りになりません。

 やがてウキはB、オモリはジンタン3号1つというものになっていました。これでようやく仕掛けが安定するようになってサシエが触られるようになり、7時59分にはこの日初めての魚、サンノジがヒット。直後には手のひらサイズのコッパ尾長が一枚掛かり、底層でのバラシも一度ありました。

 うねりが徐々に落ち着いてきたので他のポイントも探索し、船着きで手のひら尾長と手のひら口太を各一枚、ユスとの水道でサンノジを一枚追加したけど、前半戦はそれだけで終了。10時半ごろに弁当を受け取って、暇つぶしがてら平らげます。
 おっと風雲児、ここで疑惑の行動!魚との対局中にスマホ使用の不正行為か!?
 いえいえ、わたしゃスマホなんて使った覚えはありませんよ。アンドロイドケータイでまつした渡船HPの磯紹介ページを見てカンニングしてただけです^^。なるほど、この磯の「一番右端(沖寄り)からユス方向の沖のシモリ狙いで良型グレが出る」ですか。そのユスの沖のシモリは?ふんふん、15〜20m沖ですか。

 ならば直撃!と、弁当を食べる前から本格的に吹き出した追い風に乗せて仕掛けをマキエを送り込みますが、棒ウキでの深釣りでも0ウキでの浅釣りでも当たらず。そもそもこれまでの逆光&今の風波でシモリの位置がよく分からないのが大問題だ・・・。

・海中に変化が
 下川口の正午の時報はなぜか「めだかの学校」。これが鳴り終わってけっこう経つのにクーラーはまだ空です。
 ダメだ、撃沈だ・・・。そう思い始めたころ、シマノハエの先端で何度も竿が曲がり、その都度タモが伸びるのが見えました。タモの中の魚はグレ?若干茶色く見えるのは尾長かな。いいなあ。(後で聞いたら34cmの尾長が1枚で、残りはサンノジだったそうです。)

 隣の磯を羨望のまなざしで見ている間に足元の海にも変化がありました。マキエの量を一時的に倍にしたのがよかったのかもしれないけど、これまでトウゴロウイワシの群れ以外に何の生き物も見えなかった海中にキバンドウ数匹と30cmは超えていそうなグレが1匹泳ぎ始めたのです。
 私はウキ下を思い切り短くして泳層に送り込みましたが結局そのグレは食わず、姿も見えなくなってしまいました。

 しばらくやってもグレもエサトリも掛らないので、腹いせにキバンドウを狙ってみることにしました。
 極端な引き込み潮はもう無いので、0ウキに潮受けゴム、ジンタン5号1個、拳グレ6号という仕掛けで挑むとユス側の角の磯際のキバンドウがヒット!でも際ギリギリで掛けたのでそのまま切られてしまいました。
 これではどうにもならないので少しだけ沖を狙ってみようかと、ユスと中ユスとの水道の延長線上竿2本程度の所に投入。この時、仕掛けの落ち方に違和感を感じたのでG5のオモリを外し、ハリを速攻グレX7号に変更していました。

 やがてウキは2ヒロの位置に付けたウキ止めにまで達し、潮に噛みこんだ仕掛けがゆっくりゆっくり沈んでいきます。そして1ヒロほど入ったところで突如スピードを上げ、ラインがピンと張って竿に衝撃が走りました。
 本日の下川口最長寸。夕方遅くに中村フィッシングで
再検寸したら結構縮んでました。
 これはなかなか強烈な引きです。それもキバンドウともサンノジとも違う引きです。これはもしかして、という期待を抱きながら角のハエ根を躱し、腰を落として突進を凌いで勝負あり!タモに収まった魚は待望のグレ!それも帰港直後の検寸で43cmというナイスサイズの口太グレです!

・ラスト2投
 43cmのグレが磯に上がったのは13時42分。今日は14時半の迎えなので残り時間はごく僅か。
 いつ迎えの船が見えてもいいように、磯に散らばったマキエを先に流し、必要最小限の荷物以外を片付けてから先ほどと同じポイントを集中攻撃!

 ジリジリした時間が続きます。ウキと時計と港を忙しく往復する視線。ウキが波をくぐるたびに水中に刺され刺されと祈るように念ずる心。まるで警告音とともにBGMが2倍速になったような焦燥感。そして時間だけが空しく流れ、おそらくこれがラスト一投。

 潮を掴んでゆっくりと沈んでいくウキ。それが先ほどのグレのアタリを再現するかのようにスピードを上げました。
 きたっ!私は夢中で竿を引き付けました。そして魚を強引に振り向かせようとしました。しかし竿は充分に曲がらず、リールはカラカラと情けない音を立てて脈打つように道糸を吐き出しているではありませんか。
 私は反射的に半開きのベールを叩いて押さえつけ、大急ぎでハンドルを回すと、逃げずに着いていてくれた魚が先ほどと同じような強烈な引きで反撃してきました。私も先ほどの再現をするように竿を捌いて対応していたのですが、磯の角を躱そうとしたところでテンションが無くなってしまいました。
 何ということだ!ここで痛恨のハリス切れ?いや、ハリ外れだ!まだ船は来ない!もう一投やれるぞ!

 私はすぐにマキエの中のオキアミをハリに刺して同じところに投入。追い打ちのマキエを入れて、ベストに付けた時計を一旦確認。そして視線を海面に戻すとウキが勢いよく沈んでいくではありませんか。
 よっしゃ、また来た!今度こそ!!

 竿が大きく曲がり、土俵際の攻防が続きます。しかし今度も魚に軍配。ハリスを噛み切られてしまいました。
 水中で一瞬見えた魚影は銀白色、竿に伝わっていたのは叩く引き。キツだったとは思いますが、それでも悔しい!

 磯の主役の交替をお知らせします。人間に代わりまして、ウミネコ〜。
・全域で厳しい釣果ながら
 さすがにこれでタイムアップ。急いで竿を片付けて迎えの船に乗りました。 
 「どうでした?」
 「撃沈したかと思ったけど、どうにか一枚。ビッグワンが出ました!あと30分あったらなあ。」
 「最近終わり際に食いが立つんよ。迎えに行くのに通りがかったら竿を曲げてることあるし。」
 「さては船長、悔しがらせてもう一回来てもらおう思て、魚をなんぼか払ろて雇うてるやろ!」
 「あっ、バレた?」
 なんて冗談を言いながら走った帰りの船でも港でも、この日の空のように爽やかに、にこにこと楽しく過ごさせていただいたみなさん、本当にありがとうございました。

 さて、その夜は中村の廃グレードホテル格安の宿で一泊。
 下川口では正午前後以外はほとんど風が無かったのに中村は大風で、特に宵のうちは宿が揺れるほどでした。
 まあ明日も北西風には非常に強いところなので、何の不安もなく横になれましたけどね。(眠れたかどうかは別として。)

 ● 下 川 口 shimokawaguchi
利用渡船 まつした渡船 出港地 高知県土佐清水市・下川口漁港
時間(当日) 6:30〜14:30
(日曜は15:00まで。
それ以外は14:30まで。)
料金 2500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 磯予約制
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)


 実績の高い「長持ち」バエ。
・ベタ凪の灘
 二日目は黒潮町まで戻って、昨日断念した掛川渡船に乗船です。
 今回の出港地は灘。そういえば灘港から出るの久しぶりだなあ。しかも風無し、波無しの最高の日和。明日の仕事の都合で早く帰らなきゃいけないのがもったいなさすぎるぞ。

 11時に満潮とはいえ、小潮&ベタ凪なのでほぼすべての磯が使用可能で、一番人気のイチノハエの他、小さなシモリ磯である長持ち、ミツバエ、それに遠方にあるコカイや、佐賀の業者が磯渡しを止めたことに伴って最近渡し始めたという佐賀公園下の「クロの大バエ」にも上がっていたようです。
 私は前から気になっていた灘港の前にあるテトラ一文字周辺の磯を希望し、船長はその中でも一番テトラに近い小さな磯「マルバエ」に乗せてくれようとしましたが、近くまで行ってみるとウキ代わりのペットボトルが点々と浮かんでいるではありませんか。

 「網が入ってるねえ。やめとこうか。」
 実はこのペットボトルは網ではなく、高知県名産の美味食材・ウツボを獲るためのカゴで、釣りにはあまり影響はなかったことが後で判明するのですが、この時はそんなこと知る由もなくあっさり断念しました。

・井上バエへ
 「井上バエにはまだ上がってなかったな。行ってみるか?今日は食いそうな気がするし。」
 という船長の勘で上がることになったその磯は足場がよくて快適です。波には弱いため、このエリアには珍しい「中空のちゃんとしたチャランボ」を指すための杭が設置されていますが、今日はチャランボなんて不用でした。(ちなみに竿立ての打ち込み場所には困りました。この磯に行くなら楔などを持って行った方がいいですね。)

 船長が撮ってくれていた国道からの井上バエ。  磯は低いけど足場は抜群!

 浅く、シモリの多い井上バエ周辺。まずは磯の北東の角に出た小さなサラシに目を付け、その少しだけ沖をウキ下を1ヒロ半取った0号の仕掛けで狙ってみると、一投目からウキが沈んで22〜3cmのコッパ尾長が連発しました。

 浅いが起伏に富んだ井上バエの周辺。
 狙うポイントはドンドン沖へ延びていき、ウキの浮力も0号からG5、G2と大きくなっていきました。潮はほとんど動かず、魚の食いもそれほどよいわけではないので浮力を殺したいところですが、今日も引き込みの潮が強くてそれでは沈んでしまいますし、とにかく浅いので沈めばすぐに根掛かりしてしまいますからねえ。

 ところが20数m沖に顔を出しているシモリの際や左右を攻めてみても、その中間の溝を攻めてみても、左右に大きく振ってみても、気分転換を兼ねて南西のシモリ回りを攻めてみても、食ってくるのは23cmくらいのコッパ尾長、たまに同サイズのコッパ口太ばかり。頑張って頑張って25.5cmが1枚という状況に思わず心で叫んでしまいました。



・すみません・・・。(室賀久太夫)
 するとどうでしょう。本当に魚が黙りこんでしまいました。
 まあ黙りこんだといっても完全にサシエが落ちなくなってしまったわけではなく、時折反応は出るもののそれが非常に小さくなり、ウキが波をくぐっているだけなのか魚がくわえているのか判別しづらく、待っても誘っても食い込まずに餌だけを吸い取っていくようになりました。
 これはこれで大物の接近かと期待が膨らまないではないですが、どうにか食わせても上がってくるのは23cm程度とこれまでどおりです。

 正午前になると南西風が吹き始めて穏やかだった海面が急に結構ざわつきだし、満潮と相まって足元が時々洗われるようになりました。
 すると、この風のおかげでかえってウキが安定するようになり、G2のウキにジンタン3号までしか打てない状況まで改善していた状況が、表示通りの2号を打てば理想的な馴染みを創出できる状況に変化。
 しばらく前にまとめ打ちした撒き餌が効いてきた可能性もあるけど、海の中の様子も少し変わってきたような・・・。

 波を避けて後退させた釣り座からハエ根の際に投じたウキがスルスルとスピードを上げて沈んだのは、正午を告げるサイレンが鳴った数分後のことでした。
 またコッパかな。そう思って振り上げた竿を魚の重さが押し戻します。違う!これまでとはサイズが違う!と瞬時に認識した体が反射的に掛け出し、波打ち際まで間合いを詰めます。そして私は竿を突き出してハエ根を躱し、港向きの磯際まで引き回してタモの中へ。
 上がってきたのは口太グレ36cm。またも土俵際でのキープサイズ登場です。

 2日目唯一のキープサイズ。
 今日の迎えは13時でお願いしてますから、残り時間は実質30分少々。今日もまたウキと時計を交互に見ながら、最後に訪れたチャンスをものにしようと手に汗握る展開になりました。
 しかし掛ってくる魚はまたコッパに戻り、今日は物にした最後の一投も手のひらサイズでゲームセット。予定通りにやって来た船に乗り込み、途中でマルバエの隣の山バエで4枚キープしていたお客さんを拾って灘港に戻りました。

・寒グレの醍醐味
 苦しみながらも口太グレを何とか一枚ずつキープできた二日間。特に初日のグレをタモに収めた時には幸福を感じましたが、さらなる至福の時が帰宅後に訪れました。

 下川口のグレを捌いていると腹の中から出てきたのは大きな白子!この時期の口太はこれがあるから堪りませんね〜!
 灘のグレの方もあまり期待しないで捌いてみると、こちらからも白子が現われました。何と!このエリアにもオスのグレは存在したのですね。これまで釣っても釣っても真子しか出てこなかったからメスしかいないものだと思ってたのに(笑)

 この嬉しい冬の味、フグの白子に匹敵すると評される最高峰の白子の味は、下川口の港や渡船の上を吹き抜けていったあの爽やかな風の味によく似ていました。

 井上バエからの長持ちと、下長持ち?長持ちのオカ?  左隣はウノハエ。その向こうにはミツバエ。

 ● 灘 nada
利用渡船 掛川渡船 出港地 高知県黒潮町・灘漁港
時間(当日) 6:35〜13:00
(16時頃まで可)
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 磯の予約可
磯替わり 基本的に無し 特記事項 伊田エリアと同一業者
詳細 高知県黒潮町 井ノ岬周辺(灘・伊田)の磯
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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