風雲児  烈風伝
      ・シップマン風雲児、梅雨入りの松尾に挑む

2017年 6月9〜10日 高知県松尾
・ボロボロの体なのに
 私の体はボロボロでした。長い付き合いの腰痛、ある角度に捻った時にだけ痛む右手首、そして一週間ほど前から始まった尾てい骨付近やその両側の痛み・・・。最後のものはしばらく座ってから尻を動かしたり立ち上がった時にほんの十数秒だけ続く激しい痛みで、日によって痛む場所が微妙に動くのも気になるところ。
 こんな状態でしたから今回の釣行は中止が濃厚だったのですが、磯釣りの高揚感と前々日からの湿布の効果で結構楽になってきたので出発を決定。数多の湿布と腰痛のツボへのエレキバンを身にまとった「シップマン風雲児」となって愛車の操縦席に乗り込み、370km先の港を目指しました。

・松尾は貸切
 今回は前々日に梅雨入り(=この雨が止んだらしばらく晴れます)宣言が出された足摺の松尾での二日釣り。波と風と気温の情報は当然調べたけど釣果情報は調べてないのでどうなることやら。まあ四国南西部と黒潮を引き離していた冷水塊が衰退し、上向き加減なのではないかというざっくりとした話くらいは聞いてはいますが。
 それよりも心配な尾てい骨周りや腰の状況はまあまあこんなものかという程度。車での約1時間半の仮眠中は尻が痛く、道具の積み下ろしでは腰が痛かったけどまあ釣りは充分可能なレベル。よかったよかった、ホッと胸を撫で下ろして渡船正丸に乗り込み、4時40分に出航しました。

 この日の松尾は私一人で全磯貸し切りでした!
 そういう状況なら潮があろうとなかろうと灯台方面に行きたくなるものですが、船長は「イサギがええよ!グレも出てる!釣れんかったら弁当船で沖に行こう。」と港を出てすぐの所にあるカシラゴを強く勧めるので、とりあえずは空気を読んでそこに上がることにしましょうか。

 カシラゴと松尾漁港。梅雨入り宣言直後なので当然青空!
・イサギどころか
 「真ん中辺りでやってみて」というのが船長のアドバイスでした。しかしちょうど大潮の満潮だし、前日の荒れ模様が少し残って結構しぶいているので船着きの少しだけ南側でやってみますかな。

 まずは00ウキのスルスル仕掛けを選択してしばらく広く探ってみましたが、サシエはそのまま帰ってきますし、目視できるエサトリもシラコダイが数匹という寂しさです。
 原因は何といっても潮が全く動いていないことでしょうなあ。サラシや磯際を集中的に狙ってみても、ウキを色々変えてみてもイサギどころかコッパグレも釣れてきません。

 その潮が不意に左に動き出したのは6時半ごろのことでした。
 おおっ、コッパが見えだした!キープできるサイズも1匹見える!沖にはデッカイ魚の群れもおる!

 その時には潮も引き出して飛沫も収まってきていたので、もう少し先端寄りのポイントに移動して、たまたまセットしていた0号のウキにジンタン5号の仕掛けをサラシの沖に投入すると一投目でウキに変化が出て、31cmの口太グレがヒット!
 しばらく後にはさらに沖で大物がヒット!ウンウン言いながらどうにか浮かせたのは60cmオーバーの白い魚。沖で郡泳していたデッカイやつ、スレ掛かりしたウスバハギでした。

 このウスバハギを取り込んだ時にはすでに潮は止まっており、ウスバハギの姿もコッパグレの姿も消えてしまってサシエがまた落ちなくなってしまいました。
 その後、8時ごろに少しだけ潮が動いてコッパグレがパラパラと釣れたけど、「こんな磯でやってられるか!」とさっさと片付け、後半戦用のマキエを作ってから船着きの近くに腰かけて少し目を閉じました。

・名礁沖ウスへ!
 うつらうつらしていると9時になり、弁当船がやって来たので飛び乗って沖へ。さあ、運命の分かれ道の潮は・・・居った〜!!なかなかの速潮が沖の臼碆(沖ウス)にぶち当たってますがな〜!!この潮を見た私が真っ先に取った行動は、ついさっき船長に向かって告げた「3時に迎えに来て」という言葉を撤回し、「やっぱり4時までやる!」と宣言することでした。

 正丸のフォースヘッドは沖ウスの高場に押し着けられました。「奥からがやりやすいし、低場に降りてやっても面白い。でも一番は船着き!」というアドバイスが船長から飛ぶことからも分かるように、今日はこの名礁・沖ウスを独り占めです。そりゃ松尾の渡船の唯一の客ですからね。
 私が最初に選んだポイントはもちろん底物師の年間指定席「船着き」。フカセ釣りしかも単独行の私がこんな所から出せるというのはまさしく異常事態です(笑)

 船着きのポイントには右にも左にも大きな鏡(湧昇流)ができていて、その狭間を狙うか、鏡の先まで遠投するか・・・。
 とりあえず足元にマキエを入れてシラコダイやコッパグレ、雌雄入り混じったヒブダイの群れを集めておき、色々な仕掛けを投入してみました。ところがウキは複雑な潮にもまれて狙ったようには流れてくれず、深く深く潜っていたかと思えばビックリするような方向に浮き上がってくるなど全くコントロールが効きません。かといって鏡の先の強い潮まで遠投して竿を掲げても鏡から道糸を逃すことができず、やはり沖には行ってくれません。

 底物の指定席・高場の船着き。鏡が凄い。
 仕方がない・・・。いや、仕方なんかいくらでもあるけど、今日は異常事態なのだから場所にこだわる必要はありません。サラシと磯の沖側を通ってくる本流に直接アクセス可能な一番奥のポイント、それもさらに釣りやすい一段下のカメノテエリアに移動して竿を出してみましょう。普段なら通るたびに底物師の大迷惑になるであろう船着き経由の通路が使い放題なので、荷物は通常の釣り場である上の段に置きっぱなしでいいですし。

・贅沢三昧!
 いや〜、やっぱり釣りやすいですねえ。
 船着きでも手のひらサイズから27cmまでのグレがポツポツは出ていたけど、本流の中ではそれらが連発。さすがに00の完全フカセでは食いませんでしたが、G2とかの段シズ誘導仕掛けだとバンバン当たってきて、10時48分には今回のキープリミット29cmの尾長、11時37分には34cmの口太、12時5分には32cmの尾長をキープできました。できればもっともっと沖へ流していきたいのですが、マキエのタイミングを調整しても沖に行く前に食ってきてしまうのが辛いところ。

 ところがそんな私に朗報!磯際近くの本流の中にマキエを入れると同時に浮き上がってくるコッパグレの群れの中に1匹、40cmクラスのグレが混じって、勢いよく波紋を立てるのが見えたのです。
 私は本流の外には出てこないこの魚に狙いを定めましたが、マキエとサシエを同時打ちしても時間差攻撃しても惜しいところでスカばかり。そして意地になっている間にその1匹は姿を消し、気付いた時には本流も相当に緩んできてしまっていました。
 さらに潮が上げに転じ、正午を過ぎると南風が吹き出して飛沫が高く上がるようになり、撒き餌の浸水やバッカンの流失の可能性が出てきたのでまたまた引っ越しすることになりました。

・高場も低場もおれのもの
 この日最後のポイントは船着きの地寄り、低場との境界になっている崖っぷちです。ここは階段状になっているので足場もバッカン置き場も平らで快適だし、バッカンから外したサシエ入れを手を伸ばしやすい高さに置けるのが何よりもありがたい。いや、ほんま疲労が溜まるとともに腰が辛くなってきてましたからねえ。

 ここの潮は沖ウス渡礁直後と変わらずに左へ逆行する引かれ潮で、低場の先端の沖で水道を走ってくる本流とぶつかって潮目を形成しています。
 私はマキエを足元、ウキを少し沖に投入。仕掛けを潮目に流し込み、そのまま本流に乗せて汐崎方向へと流し込んでいきました。何と高場の釣り座から低場の本命ポイントを狙うという、通常なら低場の人にマキエか拳骨をぶつけられてもおかしくないような釣りをしていたのです。ああ、なんという贅沢な釣りなのでしょうか^^

 しばらくやっているとキープサイズ直前、28cmくらいまでのグレがパラパラと食い始め、14時22分には地寄りの本流で33cmの口太がヒット。腰痛を気にしつつ奥の上段に置きっぱなしのクーラーの側まで運んでナイフをブスリ。ところが引き抜いた時にツルッと滑って斜面を落下し、一呼吸おいて波にさらわれてしまいました。ごめんよぉ。奪った命、最も美味しい形で自分や大事な人たちに頂いてもらうことは釣り人の責務なのに。

 気を取り直してポイントに戻り何度も打ち返していると、潮目へと潜っていったウキにつながる道糸がググッと力強く引っ張られていきました。竿を立てると結構な重量感!ところが間もなくポロリとハリが外れてしまいました。
 その数投後、14時53分、同じポイントで同じようなアタリが出て、先ほどよりは少し軽いけど同じような引きが伝わってきました。今回はしっかりとアワセているので難なく寄せて、上がってきた34cmの口太をタモに収めることができました。
 そしてその後もパラパラとは釣れたけどキープサイズは出ず、15時25分に納竿としました。

 前半はともかく、後半戦はこんな磯を独り占めできたのに29〜34cmを5枚キープという釣果は我ながら問題有りだとは思いますが、途中疲れ果てて居眠りしそうになりながらも徹底的に体力の限界まで遊びつくしたのは久しぶりです。

 沖ウス頂上からの臼碆灯台。
 明日はあっちでいい出会いがあればいいのにな。

 本日の釣り場はホンカゲ低場!
・二日目はホンカゲ
 体力の限界まで遊んだといっても、松尾漁港から宿泊地「ペンションつりの里」までは車ですぐなので無事到着。こんなの風呂に入って晩御飯食べたらほっといても気絶するように眠れると高をくくっていたけど、実際にはなぜか1時間半ほどの眠りが3回ほど取れただけ。中村方面や黒潮町方面の格安宿のような騒音も無かったのになあ・・・。やはり夕食で出されたカツオのタタキの薬味のニンニクスライスと緑茶が原因なんだろうなあ。どちらも帰りの運転のドーピング(眠気対策)に使うと、私の体にはかなりの効果を発揮するものだからなあ・・・。
 まあそうはいっても短時間ながら睡眠の質は高かったようだから、運転も含めてどうにかなることでしょう。それに、昨日は辛かった腰の痛みがほとんど無い!!

 さて、二日目の正丸は私と2人組の上物師、2人の底物師が乗り込んでいました。今日はまつき渡船も出るようです。

 正丸はまず底物師にカシラゴと岡のフタツバエに上げ、一路灯台方面へ。
 今日は「3人でホンカゲに上がって」ということで、2人組の内の一人が高場に上がり、私はもう一人の方と一緒に低場に渡礁。同礁の方が少し高場寄りの場所に入ったので私は船着きで竿を出させてもらうことになりました。

 何度も上がって入るけど、どうにも掴み切れていない磯、名礁「ホンカゲ」。でも今日はチャンスです!すぐ横で竿を出す常連さんの釣りを盗むことができるのですから。

・思ったようには
 とは言え港で餌を混ぜていた私の方が早く準備できたのでお先にスタート。00ウキのスルスル、ハリス2号1.5ヒロの仕掛けを磯際周辺に投入して様子を伺います。
 周辺は準備段階からスタンバイ済みのシラコダイ、ヒメジ類、サンノジがマキエを奪い合っており、少し沖ではコッパグレの集団が左右に走り回っている状況。これでは近場狙いは厳しそうですな。潮は斜め左に当ててきているし。おっと、お隣も2ヒロほどのハリスのなるほどウキ止めの仕掛けで遠投からスタートですか。

 先にコッパグレを釣ったのは私でしたが、先に30cmクラスを釣ったのは隣の方でした。
 グレだったら・・・。 
 その後も何度も竿を曲げる隣に対し、私は6時28分に28cmという普段ならキープしていたかもしれない尾長を掛けるのがやっと。そして一時的に潮が速まった6時50分頃には隣の方が悶絶!何度も何度も繰り返される疾走や磯際への突進に耐えに耐え、体感時間で5分を超える息詰まる戦いで60cmはありそうな一枚をタモに収めることに成功しました。
 激闘を終えた常連さんは「これがグレだったら」と疲れた顔で苦笑い。とにかくよく引きよく暴れたキツでした。

 この速い潮はすぐ潮上の私にとっては辛いものでした。なじんだ時にはすでに隣の釣り座の前。投入位置をずっと潮上に移したら光の加減でウキやクリアカラーの道糸が見えなくて制御ができず、これではとても釣れるなんて思えません。
 そこで馴染みの早さと視認性を2Bの棒ウキに求めることになりましたが、オヤビッチャらしき魚の襲撃にも阻まれ、コッパ数匹と29cmの尾長、そしてヒラニザを掛けるのがやっとでした。

 向かいのハナレでは頻繁に竿が曲がってしばしばタモも出ていますが、こちらホンカゲはいつの間にやらアタリが止まってしまいました。そんな状況に見切りを付けた隣の方は9時の弁当船でホンカゲを離脱し、イサギを求めてカシラゴへと移っていかれました。(昨日のカシラゴにはイサギの気配なんてなかったけど大丈夫だったのかな??)

・待ちかねた一枚
 まあ他の磯の心配をしている状況ではありませんな。広々と気兼ねなく流せるようになったホンカゲ低場は相変わらずアタリなし。潮も緩んできたし、気分転換に弁当食べて、後半戦のマキエを作って、ついでにハリスも張り替えておこう。

 休憩を終えて釣りを再開したのは10時半の少し前。日が差してきて見やすくなった20mほど沖に00号スルスル、ハリス2号2ヒロ、ジンタン7号1つの仕掛けを投入すると、ゆっくり左斜めに寄せられてくるウキが少し波立ってきた海面の直下からさらに深いところへと急激に移動するのが見えました。私は反射的にフッキング。

 「!」
 私の「コッパが食ったかな?」という直感は大きく外れていました。パワーもスピードも想像以上!これには一瞬怯みはしたものの、周辺には厄介なシモリもないし、竿は1.85号相当、ハリスも新品の2号ですからすぐに体勢を立て直し、やり取りを楽しんで無事にネットイン。
 その魚、尾長グレをクーラーの蓋に貼ってあるメジャーに押し当てると、尾鰭の先端は四国ではすでに3年以上、南九州の離島を含めても2年以上遠ざかっていた35cmを超え、37cmの位置に達していました。しかもこの魚の体の厚さ!内臓に分厚い脂肪を巻いたメタボグレですがな。魚の旨みは脂質だけじゃないけど、この前購入したバーナーで炙って食べるのが今から楽しみですわ〜♪




 体の厚みに
驚かされた尾長
グレ。長きにわたり
ご無沙汰でした。

 朝とは一変したホンカゲの光景。向かいの磯はハナレ。

 それから30分ほどが経過した10時58分にも流れの中でウキが消え、35cmの口太グレをゲット!
 この頃には南西の風が左斜め前からの強い風となって吹き付けるようになり、波も危険を感じるほどではないにしろ高さを増してザバザバと畳みかけてくるようになっていきました。そんな中でのヒットだったのでチャンス到来!と心が昂ったのですが、すぐに風&表層流と底潮との大きなギャップとなり、少なくとも現行の仕掛けでは全く歯が立たない状況になってしまいました。

 それから2時間余り、2Bのツインフロートや00の高負荷の沈め釣り、4Bの単体ウキなど色々やってみたけどどうにもしっくりこず、ヒットも一回きりという有様でした。そのヒットというのも、ツインフロートが浮くウキと沈むウキの組み合わせだということをうっかり忘れて2Bのガン玉を打ってしまい、何かおかしいなと思っている間に食い付いて、気が付いた時には飲み込まれていて噛み切られたというもの。数秒間感じたパワーは強烈なものだっただけにまさに不覚!また、このミスをヒントにすれば答えにたどり着けていたかもしれないのに、それも重ねて見落としていた自分にも今になって腹が立ちます。

・うねりはあるが
 風が少し弱まり、不安定化していた潮も左流れに戻ってビシッと安定したのは13時近くになってからでした。エサトリの動きもよくなったし、マキエに集まったキビナゴの群れをめがけて一抱えもありそうなカンパチが魚雷のように襲い掛かってきて、思わず後ずさりしてしまうという出来事もありました。
 迷走していたウキも元通りの00号にハリス2ヒロ、ジンタン7号に落ち着き、13時24分には尾長の31cm、14時ちょうどには口太31cmの追加に成功。

 好転したのはこのホンカゲ低場だけではなく、ホンカゲ高場も向かいのハナレも次々と竿が曲がり、次々とタモが伸びています。でも一時間早く迎えを頼んでいる私はそろそろ納竿しなけりゃなりません。4時までやっていればそこそこ釣れたと思いますが、昨日と違って帰りのことがあるので仕方ないでしょう。
 そして14時40分ごろに正丸に乗り込み、底物師の方々とともに帰港しました。

 29cmキープで合計11枚。この一日半の贅沢な釣りの釣果としてはやはり物足りなく見えるかもしれませんが、私としては力不足、腕不足に歯噛みこそすれ、もどかしい思いをとりあえず一つ解消できた釣行でした。尾長の炙りや塩焼きは美味しかったし。

 帰宅してシップマンから普通の風雲児に戻った私はまた不調に逆戻りです。梅雨の間にもう一度くらい行きたいけど、仕事が落ち着いたら釣りよりもまず病院ですな。
 2日間の釣果。旨かった!けど、捌く作業でまた腰が・・・(涙)  岡のフタツバエでは50cmのイシダイが2枚出ていました。

 ● 松尾 matsuo
利用渡船 正丸 出港地 高知県土佐清水市・松尾漁港
時間(当日) 4:40〜15:40
5:00〜14:40
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 近隣に民宿あり システム 一部の磯は磯割り制
磯替わり 可能 特記事項
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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