風雲児  烈風伝
   ・宇和海に麦わらイサギを追って。 正反対の2日釣り。

2017年 7月2〜3日  愛媛県 武者泊(福浦)、須下
・予報は酷暑、ベタ凪
 四国の南岸を弱い熱低が駆け抜け、梅雨前線が一時的に押し上げられました。波の予報は1.5m。真夏並みの高温に強烈な湿気というのは辛いけど、代休使って釣りに行くには今しかありません!

 ということで今回はどこでもやれそうな気がしたけど、小才角はうねりが取れずに無理そうだという返事でしたから、2日(日)は武者泊(福浦)の朝釣り、3日(月)は前日釣り終わってから考えるという計画を立てました。
 そして兵庫県知事選挙の期日前投票を済ませてから出発し、深夜1時前に福浦の山洋渡船仮眠所に到着。良さそうな部屋なのでしばらく休めると思ったけど、夜通し続いた隣室からの話し声と高笑いに阻まれ、擦りガラス越しの衾の開閉のたびに真っ白に染まる視界に何度も飛び起きることになったけど、1時間ほどは眠ることができたかな。

・地の磯、本バエ高場
 愛南町名物、早朝のジャンケン。2番勝ちでした。
 「今日は4時35分に出航して本バエを狙います。弁当船は9時ごろ、夕釣りとの交替が12時半なので迎えは12時過ぎです。潮は小潮、9時過ぎに干潮です。うねりがあるので波に強い磯中心に上げていきます。」
 まるで観光バスや遊覧船のような船長の説明を聞く乗客は5組。イサギの絶好調が続いているだけに相当な混雑を覚悟していただけにこれは本当に意外です。これならいい所に上がれるかな?

 おっと、そろそろ出船時間のようです。福浦の岸壁を離れた山洋渡船はゆっくりゆっくり海上を進み、約30分かけて半島の裏側・鼻面岬の沖に浮かぶ岩礁の群れ、地の磯(じのそう)に到着。

 本日の地の磯は3船競合となり、しばらくうねる海上で待機してから日の出時刻の5時5分まで各船の代表者によるジャイケン!山洋渡船は2番勝ちで本バエの東のハナを確保し、3人組が上がりました。続いて2人が同じ本バエの三角への渡礁を完了した直後、船長から「隣の高場でやってみる?」という声が飛んできました。

 そもそもここで「行かない」という選択肢なんてあるんでしょうかねえ?私はもちろん2つ返事で渡礁し、船着きの一段上に釣り座を構えました。

・いきなり連発だが
 集魚剤は使用禁止ですが、パン粉が使えるようになったことで釣りが楽になった武者泊。パン粉3kg、オキアミ生3kg、ボイル3kg、赤アミ4kg(高っ!値段見てビックリです!)からなる撒き餌はすでに準備済みなので、足元のサラシがしぼんでいくタイミングを見計らってパラリと撒き、ウキ下2ヒロの3Bの仕掛けをサラシの切れ目に投入してみます。すると数投目にはウキと道糸が引っ手繰られていき、明らかにイサギとわかる引き方をしましたが、口が切れたか僅かな時間でハリ外れ。
 気を取り直して同じところに投入すると、5時41分にまた食いました!今度は慎重に慎重に足元へ。最後はタモ入れして確実にいきたいところですが、うねり、足場の高さ、魚のサイズを考えると抜き上げる方が安全か・・・。それっ!・・・うわあ、外れて三角との間に落ちた!・・・けど、30cm程の旨そうなイサギ、なんとか無事に回収です。
 5時51分にも今度は飛ばし過ぎて場外ホームランになりかけたイサギを回収。何だかんだあるけど、素晴らしい出足です!

 最初は船着き上段でやったけどずぶ濡れで、タモの右側に移動。
 水道側の景色。沖にあるのがマスカネ。
 この頃には隣の三角の二人組も準備完了。向こうには素晴らしい潮目と潮が出ているし、フカセカゴ釣りだし、これは全部持って行かれるなと思ったけど、私の方にも結構アタリがあります。しかしイサギだと思って遅アワセにすると全部ハリスを噛み切られるし、尾長かと思って早アワセすると口切れで全部外れてしまうし・・・。そして何よりも厄介なのがシャークアタック。1.5mから3mくらいのが入れ代わり立ち代わり現われては高場と三角で掛けた魚を片っ端からかっさらっていきます。三角の背鰭を出して足元を闊歩するわ、激しく回転しながら高く飛び上がるわと、まさに傍若無人の振舞いです。掛けても掛けても上がってきません。強引にいかざるをえなくなったことでさらに口切れが頻発するし。

 うねりも相変わらずで、高場の船着き隣の足場など、かなり高いのに飛沫はもっともっと高く上がっては頭上から容赦なく降りかかってきます。今回は場所によっては35度予報だったのでカッパはズボンのみ着用、上半身は職人の店の500円長袖メッシュシャツ(釣具屋で買えば5000円?)だったのでブーツの中までずぶ濡れだあ。涼しいことは涼しいけどそれ以上に不快なので、船着き付近は諦めて水道側に少しだけ移動しました。

・束の間
 7時56分、24cmと小ぶりながらやっと3枚目となるイサギの取り込みに成功。サラシの勢いが弱まったのを見てウキを3BからG2に換えたのがよかったのでしょう、8時ちょうどと8時3分にもイサギを追加できました。これなら目標の2ケタを達成できるかもしれないぞ!

 しかし鼻息を荒げたのも束の間、それ以降はまたサメの猛攻が始まって取り込み不能となりました。さらに干潮潮止まりの時間を迎え、アタリどころかサシエすら取られない状況となり、潮の動き始めの9時46分に1枚取り込んで以降はイサギの追加はありませんでした。

・巨グレ?が連発!
 アタリの遠のいた沖に代わって後半にヒートアップしたのは磯際でした。カワハギやコガネスズメダイの下を泳ぎ回るでっかいキツ、サンノジ、ヒブダイ、そしてグレ!開始当初はサシエに見向きもしなかったこれらの魚がバンバン当たってくるようになったのです。
 引きはいずれも激烈なものでした。アタリと同時に底へ、磯際へと一直線!私もアワセと同時に魚を押さえ込める必勝のロッドポジションからの勝負なのですが、それでも魚たちのパワーを止めることはできませんでした。どうにか止められても次の瞬間に待っているのは魚たちの巨大化。一瞬にして2m、3mの魚に入れ替わり、ハリスを、道糸を、ウキをむしり取っていきました。

 切られて切られて熱くなっている間に時はすでに11時半。いつもの高知の磯なら後半戦が始まったばかりの時間帯ですが、ここは宇和海ですから周囲の方はみんな片付けに取りかかっています。それを見て私も納竿。バンバン当たっている状態だし、竿出し時間も短すぎて物足りないけど、これじゃいくらやってもサメの腹が膨れるだけですしね。それに暑くなってきたし。

 今日の釣果はヒット数の3分の1もいきませんでした。
 クーラーの中身は34〜24cmのイサギを6枚と丸ハゲ2枚。グレは巨グレもコッパも一枚も取れず。実はこれが釣れているという情報があったのが武者泊選択の最大の理由だったグルクン(タカサゴ類)の初ゲットも果たせずだし、その他の魚種も一切釣れなかったのが何よりも残念です。

 この状況では明日の武者は無しですな。さて、どこでやるか・・・。とりあえず冷たいうどんでも食べに行って、高切れで短くなった道糸を巻き替えて、お気に入りの山出温泉(やまいだしおんせん)で一眠りしてからゆっくり決めるとしますかな。
 地の磯(じのそう)の磯群と、かつて敵潜水艦から宇和海を守っていた高茂岬(こうもみさき)。その向こうには中泊の磯。
 ●武者泊 (福浦) musyadomari (fuku-ura)
利用渡船 山洋渡船 出港地 愛媛県愛南町・福浦
時間(当日) 4:35(ただし、日の出時刻 5:05
まで海上待機)〜12:00回収
料金 6000円
駐車場 無料 弁当 (500円)
宿/仮眠所 無料仮眠所のみ システム 一組目はジャンケン。
その後は他船と競争。
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・まさかの台風
 2日目はかつてのホームグラウンド、由良半島で釣ってみたくなって、昔よく通っていた中田渡船に電話を入れてみました。ところが帰ってきた返事はは「明日は他にお客さんがいないし、今日、沖縄でできた台風がこっちに来るようなのでしばらく船は出せません。」というものでした。

 えっ、台風??こっちに来る??
 出発前に見た予想天気図ではフィリピン付近に弱い熱低ができる予想ではあったけど、あれって大陸に向かうんじゃなかったのか?
 寝耳に水、緊急事態発生です。まあ由良半島には船を出しそうな渡船はあるし、実際に翌日は出ていたけど、無理をする意味なんて全くないので予定変更。由良半島の北側にあってうねりに強い須下(すげ)の坂本渡船に予約の電話を入れて、雑魚寝の無料仮眠所で常連さんと一緒に眠りにつきました。

 アカハゲの釣り座。朝は斜め左沖に快速の潮が流れていました。
・時化裏のアカハゲ
 昨日は30人のお客さんがいたというカゴ釣りの人気スポット・須下。さすがに今日は月曜日、猛暑予報、台風発生とあって4組5人での出港です。
 
 海上は昨夜から強く吹いていた風でかなり波立っており、50オーバーの尾長の可能性のあるムロバエ、ウスバエ、ナガハエなどは波の中。しかしそれも黒崎を過ぎると嘘のように静まったので、ツタ?、シリブト、シリブトの角と回って、私は最後に由良半島の先端近くのアカハゲに渡礁しました。

 アカハゲは地磯ながら素晴らしい本流が走る人気磯。渡礁直後も北北西の御五神島に向かって速い潮が流れていました。しかもそれは30mほど沖で反対から流れてきた潮とぶつかって、ポイント図によくある×印が実際に見えるかのようなエリアを形成しています。
 大急ぎで準備してドンドン流し込んでいきたいところですが、この磯、釣り座周辺がが酷い状態です。そこらじゅうに散らばる撒き餌の痕。磯のそこかしこに長々と置き捨てられているハリスや道糸。撒き餌の方は水汲みバケツで洗い流す頃には強烈な日差しでどうしても流れない状態になっていることも多い時期ですから仕方ない面はあるにせよ、なによりハリスや道糸をここまで散らかし放題にできる先客の神経が分からない。もしかして上がっていたのは「恥」という文化の無い国から来た人だったのか?
 とりあえずラインの束を港に持ち帰りやすいように1か所に集め、釣り座を流してからスタートするしかありませんでした。

・絶叫したくなるほど
 始めの数投は00、その後はG2の仕掛けで速い潮の中をドンドン流し込んでいきましたがサシエはそのまま。あまり遠くまで流さず、潮の合流する場所を重点的に攻めてみてもサシエはそのまま帰ってきました。
 やはり本流の中に魚がいるような時代ではないんでしょうねえ。潮流がかすめる磯の角の内側の緩やかな所に入れているエサトリ用の撒き餌にはコガネスズメダイが群れ、その下にヒブダイの雄雌、アオブダイ、ブダイ、キツのほか、40cmくらいありそうなグレの姿も一つ二つ見えているというのに。
 ならばと足元の緩流帯に狙いを絞るとさすがにサシエは盗られます。でもグレが動いてくれないのでコガネスズメダイを躱しようがなく、他の魚も一切ハリに掛かりません。
 あかハゲ〜〜〜〜〜!ち、が、う、だろ〜〜!違うだろ〜!!お前はこんなに釣れない磯じゃないだろ〜!魚も見えているのに〜、何が悪いのかな〜↑♪こう見えて潮が死んでいるのかな〜↓♪

 今回最長寸、腹ボテのイサギ。
 おっと、取り乱してしまいました。何にせよこの日初めてのヒットまでは1時間半ほど待たねばなりませんでした。
 6時半過ぎ、ジンタン7号を一つ打った00号のウキが竿下でスパっと消し込んで、強くはないけど重たい引き。慎重にタモ入れしたその魚は35cmの腹ボテイサギでした。まさか竿下、1ヒロ半アタってくるとは。

 これでやっと釣り方が分かった・・・ような気になったけど、その後は20cmちょっとというこの日唯一の尾長グレが釣れた他には何もハリ掛かりせず、そのうち潮も止まってしまいました。

・チャンスは一瞬
 潮は基本的には止まっているとはいえ、数分間だけ急に動き出すことが数回ありました。8時ごろには一瞬左からの潮が強まって、25mほど沖の流れの脇でウキが沈んでいきました。と同時に竿が大きく曲がり込み、猛スピードで手前に突っ込んできたのです。
 これは明らかにイサギではありません。良くてグレ、悪くてヒブダイ・アオブダイ、もしくはキツか?魚種は何にせよ結構なサイズであることには変わりありません。しかし次の瞬間、結構なサイズの魚はビックリするサイズの魚に変貌し、道糸を軽々とぶち切って去っていきました。
 去り際に見せたその魚体はおよそ2m半。船長はサメは居ないと言っていたけど、昨日の武者泊からついてきてしまったのか・・・。沖に漂うウキに向かってウキ取りネット(パラソルではない)を必死になって投げながら、心のダメージを振り払うしかない私でした。

 次に潮が動いたのは9時過ぎで、この時も少しだけ沖でG5のウキが消し込みました。この時はサメの襲撃も無かったので普通に引き寄せ、磯際での攻防を制して45cmの魚を魚をタモに収めることができました。
 45cmのノトイスズミ。尾長だったらなあ。
 茶色い体に黒く塗られたような鰓蓋は尾長グレを思わせたけど、どう見たってこの魚はノトイスズミ。キツの中では最も美味とされ、実際、冬場のものは少しのクセがむしろいい感じに味を引き立てており、万人向けではないとは思うけどかなり美味しい魚でした。今回は海に帰したけど、冬だったら絶対持って帰ってたな。

・いきなり本流!
 10時前に坂本渡船がやってきました。弁当を受け取って釣り座に戻る、その僅かな間に海の様子が一変していました。左から右へ、足元を本流が音を立てて流れているのです。渡船が来る前には想像もできなかった景色に唖然としてしまいましたよ。

 ただでさえ時間の無い宇和海の釣り、受け取った弁当なんて食べている暇はありませんからタックルバッカンの中にサッとしまって、船長のアドバイス通りウキ下を竿一本に設定した仕掛けを大急ぎで組み上げ、斜め前に3つ4つ点在しているシモリの下流に投入。コガネスズメダイとアオブダイ、潮が変わってから急に海の色が変わるくらい出てきたネンブツダイ(もしくはクロホシイシモチ)を足止めするべくシモリの上流に打ち込んだマキエの残骸と、少し沖の潮筋経由で流し込む撒き餌と合流させながら、シリブトの沖へと流れていく本流をドンドン流していきました。
 ところがやはり本流の中では食いません。たまに餌は落ちているのですが、これはマキエを打った水面に大挙して押し寄せて、ブツブツブツブツと集団で念仏を唱えるような音を出しているネンブツダイや、その下に群れるコガネスズメダイの攻撃を受けてのことと推測できます。また、ウキが3Bというのも上手くいかない原因かもしれません。

 そこでウキをG2に換えてみたところ、25mほど先でナイスサイズの魚が掛かりましたが、磯の高い所から釣っていたことが災いしてシモリを躱すことができずにハリス切れ。
 これではダメだと角の最前線に釣り座を移し、近〜中距離に狙いを絞ると先ほどよりは小ぶりのノトイスズミがヒット。そして残り時間が僅かとなった11時40分、下流側の沖にあるシモリの沖をかすめるように流れ、それを通り過ぎたところでマキエと合流したサシエに魚が食い付きました。
 シモリへの突入をいなして水面に浮かせたのは今の宇和海ではよぉ釣らんと思っていたグレ。時期を間違えたかのようなナイスプロポーション、34cmの口太グレでした。
 まさか釣れるとは思わなかった。
2日間の釣果。(2日目は下の2枚のみ。)
旬のイサギはともかく、口太グレもビックリするほど
脂が乗っていました。
 まさかこのタイミングで釣れてくるとは!完全に諦めていただけに、クーラーに収めてもまだ信じられない心地です。

 本日の納竿は13時となっていますが、常連さんに聞いてみると実際の迎えは12時半頃かなと言うことだったので、12時10分に納竿。もちろんギリギリまで追加の一枚を狙い続けていたけど、何の魚もヒットせずに終了。できる範囲で撒き餌を流し、ゴミを回収し、それでもまだ時間があったので弁当をかき込み、バッカンも洗って12時50分ごろに撤収しました。(これならもうちょっと釣っててもよかったか・・・。)

 久々の宇和海の磯は対照的な2日間でした。掛けても掛けても獲れないのもどうしようもないけど、グレの宝庫ともいわれる宇和海でキープ1枚、コッパ1枚、グレが走る以前に数匹泳いでいるだけというのも寂しすぎますね。イサギかグレか、目的がはっきりしていた初日に対し、二日目はそれがブレブレだったのもこの結果の原因でしょう。

 それでもフカセシーズン最終戦を磯の上で終えられたのは幸いなことでした。釣りの1日目に発生した台風は翌々日の昼には宇和島市を直撃。もしこれが半日ずれていたら、磯釣りどころか家に帰ることも難しくなっていたかもしれません。
 さらにはその後、対岸の北部九州が豪雨災害を蒙り、釣りどころではない状況になってしまったし・・・。

 被害に遭われた方々にお見舞い申し上げるとともに、これからの夏は穏やかな日々として過ぎ、秋磯が開幕する頃には復興への確かな足音が聞こえていることを心から願っております。

 アカハゲの西向き、シリブト方向。

 ●須 下 suge
利用渡船 坂本渡船 出港地 愛媛県愛南町・須下
時間(当日) 4:30〜12:50(回収)
料金 5500円
駐車場 無料 弁当 600円
宿/仮眠所 宿&無料仮眠所 システム
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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