風雲児  烈風伝
   ・時化男の奇妙な釣行 〜楽しみも苦しみも芋づる式に〜
2017年 10月8〜9日 高知県泊浦、安満地
・3B ザ ギャンブラー
 10月の四国は魚種豊富でワクワクしてきます。
 大きめの口太グレは個人的には一年で最も釣り難く、ほとんどいい思いをしていない時期ではあるけど、青物はもちろん、刺身で美味しいヒラソウダ(地方名:スマ)やスマ(地方名:モンズマ)の回遊に一度くらいは当たってみたいし、未だ釣れないトビウオやグルクンに遭遇する可能性もまだあります、そろそろシマアジも釣れてくれるかもしれません。
 それに今年は小才角が何か面白いことになっているようで、この時期になぜか40cm近いイサギが釣れ盛ったり、84cmのオニヒラアジが出たりしているそうですから、10月最初の金・土の二日間、代休と磯の予約を入れておきました。
 ただ小才角は予測不能な上り潮が運命を支配するギャンブル釣り場だし、それ以前に船が出るかどうかがまずギャンブル。私なんて2年前の10月に行ったきりずっと嫌われ続け、船にすら乗せてもらってないからなあ。柏原渡船はまさに“幻の渡船”です。

 日が近づいてきたので天気予報を見ると、低気圧と前線の直撃で金曜は大雨。波高4m。こんなの船長の心を読むまでもなく、出船?NO!NO!NO!NO!NO!!です。
 そこで予定と予約を日・月(祝)に変更し、空いていた西磯の大バエを押さえました。波予報は二日とも1.5m。これは行けるのか??いや、雨が上がってから全然風が吹いてないんじゃーないか?実際船長に電話してみても「来てくださいと自信を持って言える状況ではないですね。」とのことでだし。

 まあ出られなくても逃げ場はあるし、日程の再変更もできないのでとりあえず土曜の夕方に相生を出発。道中の汽水域でミノーを投げつつ、深夜1時ごろ小才角新港に到着し、車内で横になりました。
 ちなみに道中の釣りではセイゴだかアカメの子だか、何度もジャンプする魚を一つ掛けたけど船のロープに巻かれてバラシたうえ、その直後にヒットルアーを電線に取られてリタイヤ。釣果は夜明け後ということで、
←ーTo Be Continued

・判定は?
 朝、身支度をして岸壁に向かうと、2人組のお客さんに声を掛けられ、意気投合して出港予定時間までしゃべっていました。お二人は姫路と加古川の方で、前日は波止からグレやメジカ(マルソウダ)を釣り、私が今夜泊まる「幡多郷」で一泊されてたそうです。

 6時15分ごろ、柏原渡船が17人の客が待つ新港の前を通り過ぎ、沖に走っていきました。さあ、偵察の結果は?判定は??

 東磯を予約しているグループの携帯が次々鳴り、一組一組と客がいなくなっていきます。西磯を見終えた渡船が入港してきたのはそれから結構経ってからのことでしたが、状況はやはり最悪のようです。姫路のNさんたちのスベリもアウト。ということは大バエもダメですか?YES!YES!YES!YES!!
 「無理ですね。いつも電話してくれるのに申し訳ないです。明日も止めといたほうがいいですね。」

 全滅ではなく、磯によってはOKの所もあるようですがこればっかりはどうにもなりません。でもここは高知県幡多郡大月町。南向きの場所も北向きの場所もある心強すぎる釣りの楽園です。
 最初はNさん達を別にホームグラウンドにする気はないのにホームグラウンドになっている「安満地」に案内するつもりだったのですが、たまたまNさんが少し前にグレ釣り大会でお世話になったという大月町役場のKさんが港に居られ、さらにKさんの同行者に大月町観光協会会長にして町会議員、タバコ農家にして釣具店「釣り工房正よし」の社長であるTさんが居られたことで急展開。5人で「泊浦」に行こうという話になり、私ももちろんご一緒させてもらいました。
 泊浦湾口北側の地磯、アカサキ

・泊浦、アカサキ
 7時過ぎ、2か月連続で利用するとは思いもしなかった大月遊漁センターの船に乗り込んで出発。Nさんたち2人は泊浦湾口南側のゲンバ1番へ、TさんとKさんは対岸(北側)のツリサンへ、私はその隣のアカサキへ渡礁しました。

 泊浦の渡船業の仕掛け人でもあるTさんによるとアカサキは泊浦でも屈指のグレの魚影の濃いところだそうで、その言葉を裏付けるように一投目からコッパグレがヒットしてきました。
 そこで渡礁時に受け取ったアドバイスのとおり沖狙いに徹しマキエとサシエを同調させないようにしてサイズアップを図っていきますが、8時17分に27cmの口太グレ、9時9分に28cmの尾長グレをヒットさせるのが精いっぱい。あとは00でも3Bでもコッパがパラパラとしか釣れず、そのうちそれすら遠のいていってしまいました。

 すると10時半過ぎにTさんから電話で「この潮じゃそっちもあかんでしょ。引き潮の時にしか上がれないいい磯があるけど、一緒に行きませんか?」というお誘いがありました。
 一時間くらいしたら船長が来てくれるということなので、私はさっさと道具を片付けてこぼれたマキエを流し、すぐ沖で餌木を投げているボートを眺めたり、横になってしばらく目を閉じたりしていました。
 季節を間違えたかのような猛暑とあんまり眠れなかった昨夜の疲れが応えていましたし、腰やら足やらがなぜか痛くなって参ってしまっていましたからねえ。

・小島のハナレに上陸
 11時半ごろにやって来た渡船で、先月の台風の残骸だというゴミだらけの海を渡り、白鼻の北西、白鼻小島のさらに北西に寄り添う大きなシモリ磯「小島のハナレ」にTさん、Kさんとともに降り立ちました。
 まずはTさんからこの磯の道具の安全な置き場所やポイント、釣り方などを教えていただき、私は北端沖向き、Tさんは南端近くの沖向きに釣り座を構えました。Kさんは磯の窪みという窪みを片っ端から探り歩いておられました。その手に竿ではなくてアワビ起こしを握って。

 白鼻小島と、小島のハナレ

 沖の島から宿毛の町へ、潮は磯に沿うように流れていきます。そして磯の裏側から回り込んできた引かれ潮とぶつかって、ハッキリした潮目が足元から長く伸びています。
 沖側の潮は浮遊ゴミで釣りづらいので引かれ潮に仕掛けを入れると、それは潮目の中をグングンと流れていきます。ドキドキするシチュエーションです。送り出すラインが、適度なテンションのかかった竿先が、今にもズギュウウゥン!と引っ手繰られそうです。
 小島のハナレの南端周辺。
 北端方向と宿毛湾奥部。今回は不発。
 しかしその瞬間は訪れませんでした。グレや巨チヌはもちろんエサトリの姿も見えないし。瞬く間に大量のイボアナゴ(トコブシに似た旨い貝)を採取して釣りを始めたKさんの竿も曲がる気配はありません。

 そんな時、磯の南端から声が聞こえてきました。南端に陣取った釣り師が掲げるタモ網には45cmの口太グレが収まっているではありませんか!さすがTさん!おれたちに釣れないものを平然と釣ってのけるッ!!
 そのTさんが「こっちに来て横で釣ってみたら?」と言ってくださったので、北端にはシビレるような魚も、あこがれるような魚も居なさそうだと感じていた私はすぐに移動を決めました。

 場所を替わった途端にポイントがゴミ潮になったので流れていくまで待機してから再開。
 すると緩やかな潮が作り出す潮目でウキが入り、磯替わり後初めての魚がヒット。即座に前方の低い足場に飛び移って張り出した棚の向こうで左右に動き回る魚をコントロールしようとしますが、姿が見えたところでハリ外れ。別にいいんですけどね。キツだったから。

 片島港の干潮は13時47分。私にアタリが集中したのはその前後でした。13時27分に背中を何かに齧り盗られた痕跡があるイラ(テス)、13時38分にはブダイ、直後にヒブダイ雌(キバンドウ)、その後もキバンドウ2枚にブダイ1枚と、本命ではないのが辛いところですが・・・。
 まあ、Tさんが仰るにはこれからの上げ潮が最大のチャンス!その言葉どおり、Tさんは次から次へと竿を曲げ、ハリ外れなどのバラシも多発する中、口太グレを3〜4枚追加されていました。
 でもその間私もKさんも沈黙。この滅多に上がれない磯での撃沈を覚悟しましたが、納竿の2投前、15時40分になってようやく30cmの口太グレがヒット。やれやれだぜ。

・楽しく熱い夜は更けて
 私たちが離礁したのは16時。港で谷さんとKさんと一旦別れて荷物の整理や明日のマキエの解凍準備などをしながら17時まで釣っていたゲンバ1番のNさんを待ち、再開を約してからいつもの「幡多郷」にチェックインしました。ゲンバ1番も厳しかったようで、クーラーの中にはグレは無し。その代りに50cmくらいのハマチと結構美味しいキバンドウ、バラフエダイの若魚(大物はシガテラ毒の危険あり)などが収まっていました。

 その夜は反省会という名の宴会のお誘いがありました。参加するもしないも会場は幡多郷の食堂ですからねえ。私とたまたま泊まっていたツーリングの2人組は幡多郷の定食をつつきながら、Tさん、Kさん、それにアカサキの沖でエギングをされていたボート販売・整備業者の若き2代目はビールをグビグビやりながら、さっき釣れたTさんの口太グレとガシラの焼き切り(脂控えめのサッパリした焼き切りにはスダチ?ぶしゅかん?がめちゃくちゃ合いますなあ!)、アオリイカの刺身、イボアナゴの塩茹でを肴に釣りの話や魚の話、バイクの話や大月町の話などで盛り上がり、笑い転げました。そして大月町の魅力をいかにして強化し発信していくか、いかにして人を呼び込むかなど観光振興についても熱く語り合い、楽しい夜は22時ごろまで続きました。

 「とにかく遠い大月町。わざわざ行きたい大月町。」
 これからの3人の取り組みを心から楽しみにしています!
 撤収時の小島のハナレと白鼻小島。

 ● 泊 浦 tomariura
利用渡船 大月遊漁センター 出港地 高知県大月町・泊浦の浮き桟橋
時間(当日) 7:10〜16:00
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 磯予約制
磯替わり 基本的に無し
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・今回も貸し切りの安満地
 足場の悪くない磯に上がっていたにもかかわらず車のアクセルの踏むのが辛いほど痛くなっていた足は眠る前にはもうよくなっていました。これなら二日目も問題なく磯に上がれます。

 松島の船着き。(掃除後)対岸は観音崎。
 その二日目は安全策をとって安満地です。昨日の泊浦の潮を考えると隣接する安満地の具合も非常に心配ですし、祝日にもかかわらず一人で貸切というのは外海からこちらに回り込む必要はなかったとことを示しているような気も・・・。
 まあ貸切ですので磯は選びたい放題。名礁マワリと悩んだ挙句、昨年いい思いをした松島に向かいました。

・最初は松島
 松島にグッと押し付けられた渡船のフォースヘッド。その先の第一歩を置くべきところにはキタマクラの死骸が鎮座していました。
 すぐ近くの隙間には種類を判別できなくなっているサンノジ系の死骸も打ち捨てられてハエが飛び交い、周囲には前日のマキエとハリスが当然のように散乱しています。
 ここ最近、磯釣り師のマナーというか、レベルが下がっていませんか?ゴミだらけの磯、エサトリの死骸が転がる磯、救命具も着けずに磯に上がる人、それを許す渡船・・・。偶然かもしれないけど去年からそんなのによく当たります。オーノーだズラ。かける言葉もねえ。・・・とても哀れで、何も言えねえ。

 今回も磯を洗い流してからスタートしたので仕掛けの投入前からエサトリが闊歩しています。コガネスズメダイとチョウチョウウオ、オヤビッチャ、ミツボシクロスズメダイというメインキャストにシテンヤッコ、ソラスズメダイ、モンガラカワハギ科の魚が混ざり、サイズが小さくて対象にはならないであろうナンヨウハギもやはりマキエを追っています。かつての大月名物、素揚げで美味しいトウゴロウイワシ科の魚の大群も回遊しています。そしてマキエに突入してくる黒い魚はキツ類、サンノジ類。やはり松島の魚種の多さは凄すぎる!

 しかし今日の松島には2種だけ足りない魚がいます。メジナ(口太グレ)とクロメジナ(尾長グレ)です。
 ターゲットとなる30〜40cmクラスはもちろん、手を焼かされるはずのコッパサイズすらなぜか一匹も見当たりません。
 とりあえずエサトリを手前に集めて沖を狙ったり潮上、潮下を狙ったりしてみますが、そこで待っているのはキツが少々とチョウチョウウオの別動隊、それにソウシハギが一匹というところです。
 結局10時過ぎまでの間にグレは姿も見えず、掛ったのはヒラニザが3匹とキツ少々、ダツが1匹。キープしたのはチョウチョウウオ1匹のみとは・・・。う〜、うぅぅ、あんまりだ・・・。(略)あァァァんまりだァァアァ。

 出港前に女将さんから「お客さん一人の時は弁当の取り扱いを止めたけど、釣れなかったら電話してきてくださいね。磯替えしますから。」と言われていたけどそれは悪いし、天候でも急変しない限り電話することはないだろうと思っていたけど、今回のような状況ではさすがにどうしようもありませんでした。引っ切り無しに頭上を飛び交うオオスズメバチも気色悪いですし・・・。(一応このシーズンはスズメバチ対策として瞬間氷結スプレーをタックルバッカンに常備してるんですけどね。殺虫剤と違ってその後使うマキエへの影響も出ないでしょうし。)

・カメに磯替わり
 マキエを流して渡船を待ち、11時前に観音崎とマワリの中間の足場のいい独立磯「カメ」に再上陸しました。
 シモリが点在する浅い磯の竿下付近にマキエを投入すると、オヤビッチャやチョウチョウウオに混じって今日初めてのコッパグレが見えました。急いで仕掛けを再構築して振り込むと一投目から手のひらに満たない尾長グレがヒット。やれやれだぜ。

 しばらく近距離を攻めてサイズアップが望めない事を確認したので、いよいよ本格的にシモリや、カケアガリと呼ぶにはなだらかすぎる沖合に狙いを定めました。そしてグレが何匹もヒット。とはいえ、オヤビッチャがどうしても沖へ走ってしまうせいもあって連発とはいかないし、おっ!これはデカいかも!と身構えても上がってくるのは最大25cm。40cm近いのも釣れるには釣れたけどそれは一見尾長グレのように見えてしまうノトイスズミだし、70cmくらいのも掛ったけどそれはサケ科のパーマークのような模様を身にまとった緑のハマダツでした。

 足場の良いカメからの観音崎。
 そのハマダツがテールウオークしながら水面上を一目散に逃げていきます。少し先の磯の沖には何か巨大な魚が入ってきているようです。そのしばらく後には錆びた汚い船に乗ったダイバーもやってきて300mくらい離れた所で潜りはじめました。
 まあ少なくともダイバーの方はこの磯のグレの食いには影響ないのでしょう。G2のウキ、ウキ下1本の仕掛けが2日間で最も大きなグレ、31cmの口太を右側の細長いシモリの先から連れてきたのは13時22分、ダイバー潜行の最中でしたから。

 このグレで少し精神的に回復できたけど、それもリタイヤが迫るのを少し遅らせただけでした。
 何せこの二日間は暑かった。気温は30度程度とはいえ、ほんの数日前に毛布から離れられなくなるような寒さを経験した後ですから体の調整機能がついていきませんし、日差しの凶悪なほどの強烈さは少し白くなっていた体を焦げ付かせ、体力と水分を奪っていきます。だめだ、アクエリ!飲まずにはいられないッ!

 結局、特に見せ場もないまま14時20分となり、納竿してバッカンを洗い、焦げ焦げになりながら港へ戻りました。
 出迎えてくれたのは暑さで軒並みダウンして、影という影で正体なく伸びている猫たち。野良猫だったのか、近づいて頭を撫でると目を覚ますや否やマンガのように飛び上がってパニックを起こしながら一目散に逃げていきました。でも一番驚いて心臓バクバクだったのは私です。ビックリしますわ、あの勢いには。

・今回の釣りはこれからだ!
 長居することなく安満地を離れた私は、真夏の釣りと同じように大月の道の駅のかき氷でクールダウンしてから321号線を南下しました。目指すは今回の釣りの本命ポイントである川の下流。狙いは前回サイズの問題でハリに掛けられなかったユゴイです。

 しかし前回のポイントは増水で違う表情を見せているうえ、潮がまだ入ってきていませんでした。そしてユゴイの姿も全く確認できません。当初の日程であればここに到達する頃にいい感じの潮位になるはずだったけど、4日もずれればどうしようもありませんなあ。
 仕方がないので川の対岸に移り、もう少し下流のポイントに入ってみましたがやはりユゴイの魚影は見えず、しかも強烈な夕日による焼けるような暑さが襲い掛かってきました。
 しかも2日間の磯の上での暑さと足腰への疲労の蓄積がのしかかってきます。
 腰痛がする。ふ、太腿もだ・・・。な・・・なんてことだ・・・この私が・・・動けないだと?この私が本命のポイントでしゃがみ込んで・・・立つことが・・・立つことができないだと!?

 2日間の釣果。
 体力自体は残っているけどこれじゃ釣りどころではありません。潮が満ちつつある護岸でしばらくしゃがんだままやってみてもクサフグにハリを噛み折られただけだし、本命魚の姿は相変わらず見えませんので、竿を畳んで釣り場を後にしました。

 その後、下川口のカルロス・ガーンさん宅に寄って雑談しながら力を回復し、中村の平和な湯で横になってしばらく眠り、ラーメン屋の揚げニンニクでドーピングして意外と順調に帰宅したのですが・・・
 ふう、よれよれだぜ・・・。

 ● 安満地 amaji
利用渡船 吉田渡船 出港地 高知県大月町・安満地
時間(当日) 6:00〜14:50
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
客1人の場合は無し
宿/仮眠所 宿泊・仮眠所あり。
1泊2食6500円
システム 磯予約可
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

 
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