風雲児  烈風伝
     ・天候の狭間、マニアック磯に賭けた2日間

2018年11月24〜25日 高知県安満地、下川口
・前門の木枯らし、後門の台風
 予想外の出来だった下川口釣行からちょうど3週間後の11月25日、四国釣行二日目の私は再び下川口の漁港に立っていました。昨年1月以来の再会、一緒に釣るのは5年半ぶりとなる宿毛在住の「だいきち」さんとの合流まであと少しです。
 正直、今回ここで合流して二人で竿を出すなんて、とても無理だろうとは思っていたのですが。

 年休取得命令によって降って沸いた今回の釣行、25日は移動性低気圧通過から3日目に当たるため早々に目的地を決めて磯予約も済ませていました。ところがその直後にマリアナ諸島からあり得ない速度で北上してくる台風の存在を知ったものだからてんやわんや。
 釣行予定日の24日、25日には潮岬のはるか南、北緯20度線の手前で停滞。うねりのデッドラインの向こうとはいえ中心気圧940hpaですので、うねりに弱い下川口はアウトじゃないだろうか?計画は北西の強風つまり木枯らし1号の盛衰と、台風のうねりの強大化の狭間で否応なく振り回されました。まあエリアを早々に西と南に二つの海を持つ大月町の周辺に固定しましたから、同時攻撃でも受けない限りは何とでもなるのですが。

 3年前に上がった時のチーのハエの全景。
 今回の釣り座。港は中央の岬の裏側。
 そして結局、初日は安満地で様子見、二日目は予約どおり下川口。うねりで無理そうなら二日目も安満地で釣ることを決定し、だいきちさんにも連絡。勤労感謝の日である23日の昼に兵庫を出発し、岡山市内の釣具屋や二宮忠八飛行館、大歩危などに立ち寄りながらのんびり10時間かけて安満地に到着し、吉田渡船の仮眠所で眠りにつきました。

 残月と松島と鵜来島。うっすらと大分、宮崎の山並み。

・敢えてマニアック磯を選択
 うねりには最強、北西風には最弱の安満地は、22日、23日と暴風で欠航だったそうですが、その風もすっかり落ちて一安心。渡船は予定通り6時20分ごろに岸壁を離れました。

 この日の磯釣り客は私以外に5人。使用した磯は確か観音、マワリ、フタゴ、トクゾウ、タテバエだったかな。大潮のため渡礁不可のチョボやマルバエを除いても実績磯もまだまだ空いています。しかし私が渡った磯は松島でもカメでもナガハエでもなく、安満地湾内にある「チーのハエ」という名前の磯でした。

 船長に「本当にここでええの?」と尋ねられながら選んだチーのハエは、おそらく安満地で最もマニアックな磯で、言うならば荒れた時の最終兵器です。私自身3年前の風雨の日にここしか無くて渡ったことがあるだけです。でもその時に感じたのは面白さと可能性、普通の時化の日か凪の日に渡ってじっくり釣ってみたいという思いでした。その思いを叶えるのは前回釣行の貯金がある今しかない!

・ファーストヒットはいぶし銀
 「このチーのハエは急な坂でした。かなり大きくて高い磯なのに平らな所がほぼありません。ほとんど滑らないけど油断すると転げ落ちそうになるので精神的にも体力的にもジワジワきます。」と3年前の釣行記に書いてあります。ところが今回改めて上がってみると「あれっ?道具を置く場所にも困らないし、それほどしんどい角度でもないし、意外と楽やん!」と少々拍子抜け。まあ今回は風雨にも蒸し暑さにも追われることもないし、覚悟の上での渡礁ですからそう思えるんでしょうけどね。

 前回は松島側の突き当りにあるワンドで最長寸が出たけど、今回は凪でサラシも無いので船着き(観音崎向き)だけで勝負です。
 マイナー磯なのでまずはマキエを入れておいて1.35号相当の竿を取り出し、道糸2号、ハリス1.7号、ウキ下2ヒロ半のG2の仕掛けを組んで6時45分ごろに第1投。湾の出口に浮かぶ松島の方向に流れる潮に乗せて釣っていくと、しばらくの間はサシエが全然帰ってきませんでした。それが何か急に残らなくなったので、ウキ下を2ヒロにして10mほど沖に投入したところ、一瞬目を離した瞬間にウキが無くなっているではありませんか!

 反射的にアワセを入れると掛った!この重々しい引き、ゴンゴンと振られる感触!さほど労せずに浮いてきた魚はやはりいぶし銀のチヌで、磯の中腹の窪みに持って上がってメジャーを当てると49cmありました。そういえば前回も朝一に食ってきたのはチヌだったなあ。底の見える浅場から一気に落ち込む急崖、その沖には養殖イケスが浮かぶこの磯は、時期を選んで徹底したチヌ狙いで上がればとんでもないサイズが竿を絞り込んでくれそうな予感。チヌ釣りの超級磯になれる、それだけの力を持っているはずの磯なので、チヌ専門の人、狙ってみるなら今のうちですぞ!
 さて、このチヌどうしたものか。初日の序盤も序盤、6時59分だし、持って帰るならチヌよりグレだな。そう思ってこのチヌをリリースしたのですが・・・。

 ファーストヒットは49cmのチヌ。
 水槽で泳がせたくなるヨスジフエダイ。
・憧れの魚が手中に
 釣り座に戻って数投、海面の明るさが増してきたことでウキがかえって見えなくなってしまったので、G2の浮力はそのままに円錐ウキを棒ウキに変更し、視認性をアップさせて釣っていくと23cm〜27cmの尾長グレ、口太グレがパラパラと釣れました。もっと沖を狙ってサイズアップを図りたいところですが、視認性と引き換えに飛距離を犠牲にしているし、テイクバックが取りづらくて思うように飛ばせないのがもどかしい。

 そんな中、7時48分に個人的には非常に嬉しい1尾が登場。鮮やかな黄色と縁取りされた4本半の青い縦帯が美しいヨスジフエダイ23cm。四国では決して珍しい種ではありませんが、熱帯魚の本を見るのが好きだった中高生の頃から憧れていた私のハリにはどうしても掛ってくれなかった魚。ようやくの出会いに喜び爆発です。
 この魚はもちろんキープ。こんなサイズなのですが帰宅後に捌いてみると大型のフエダイ(シブダイ、Lufjanus stellatus)と同じオレンジ色の脂肪が内臓を取り巻いており、当然身にも脂が乗っていますが、その刺身と炙りはむしろ脂ではなくてモチモチの心地よい歯ごたえで食べさせる逸品でした。

 続いて掛ってきた魚は鮮やかなブルーに黄色の尾鰭。波間に姿が見えた瞬間に思わず叫び声を上げてしまいましたが、私が安満地に来る目的の一つであるナンヨウハギではなくてオトメベラ、学名Thalassoma lunare (海色の満月)だとわかってガックリ。カラーリングに惑わされるとは・・・。そういえばこのケバケバしさでなぜオトメベラという種名なのかという疑問は未だに解決していませんなあ。
 「乙女には秘密の1つや2つあるものよ。うふふっ」(マクロファージさん)


 さらに数投後、回収しようとした仕掛けに何かが居食いしていました。水中でフワフワしてなかなか浮いてこないこの引きはアイゴだと思うのですが、姿が見えてきたのは茶色の体に黒い大きな斑紋がついた体高のある魚。何だ何だ?確かハタの仲間にこんな感じのやつが居たような気がするけど?
 で結局、タモに収まった魚は、体の一部が痣のように大きく黒く変色している40cmクラスのアイゴでした。もう、紛らわしいなあ〜。

・潮は湾内へ
 V字型の安満地湾の南岸にあるチーのハエはまだ山影の中ですが、ウキを充分目視できる明るさになったので棒ウキはここでお役御免。0号のスルスル仕掛けをしばらく試していると、ジンタン5号を追加した8時半ごろに24cmのヨスジフエダイを追加できました。

 状況が激変したのは9時過ぎでした。沖ではマグロの生簀で餌やりが始まり、磯の周辺では潮が止まってゴミに覆われると一気に食わなくなって、エサトリの姿も消えました。潮はしばらくして動き出したものの、それまでとは逆に湾内に入ってくる流れとなって、魚が戻らないので当然サシエも取られないという状況になってしまいました。近場はもちろん、重い仕掛けで遠投してもサッパリです。
 かなり大きな魚をホースでばらまいていたマグロの生簀まではちょっと離れているので、決定的に響いたのは潮の動きの方でしょうねえ。前回も湾内に潮が流れると極端に食わなくなりましたし。

 お手上げの状況が続く中、10時半ごろに弁当船がやってきました。最近客が少ない日は弁当無しになってしまったので弁当を受け取るのは久しぶりです。ちょうど腹も減っていたので、作りかけだった00ウキ+潮受けゴムの仕掛けを放置してさっそく喰らいつくと、やっぱり旨い♪

・一撃離脱
 さあ、腹ごしらえ完了。仕掛けも完成したので正面のシモリの潮下、少し沖のラインに仕掛けを投入し、潮上、潮下、ウキ上に一発ずつマキエを打ちこんで流していくと、何とウキがスピードを上げて沈んでいくではありませんか!アワセを入れると手ごたえ充分、コッパじゃない!
 ようやくキープサイズ登場。
 久しぶりに釣ってしまいました。
 上がってきたのは口太グレ。クーラーの蓋のメジャーに押し当ててみて30.5cmしかないことに驚いたほどコンディション抜群の1枚です。
 真夏ですら分厚くて、尾長並みに脂が乗っている安満地湾のグレは今回も安定の旨さ。何ともいえない甘みに満ちた刺身が味わえました。脂の乗りだけがグレの旨さではありませんが、やはりこれはこれで素晴らしい!また、焼いたアラの潮汁の旨さは言うまでもないでしょう。

 予想外のキープサイズ登場にテンションの上がる私でしたが、結局よかったのはこの1投だけでした。相変わらずエサトリも見えず、サシエも全く落ちません。それでも諦めずに釣っていると、12時55分に正面のシモリの先でウキがスッと入りました。
 やり取りはシモリの向こう、完全アウェイの位置からのスタート。それでもやっと食わせた1枚ですから何が何でも獲ってやる!と弱気を封印して、ハリスを傷だらけにしながらも無事にタモ入れ成功しました!でも、上がってきた魚は“ジエンドフィッシュ”タカノハダイだったんですよね。久しぶりにえらいもん釣ってしまいました。

 その後もやはり海の中では何も食い付いてきませんでした。正午近くになってようやく太陽の光が差し込み始めた磯の上ではそれまで鳴りを潜めていたトウゴウヤブカが一気に活動を始めて、次々と私に食らい付いてはきたのですが・・・。

・最後に潮が!
 本日の迎えは14時半から15時とのことですが、回収の順番は一番最後だし、先にある程度マキエを流してゴミ等も片付けておけば観音崎に船が見えてから片付けても間に合います。なので最後の最後まで悪あがきしてみました。

 というのも終了間際に潮が松島方向に流れるようになり、大きな魚が一匹、マキエの中をうろつきはじめていたのです。その魚のシルエットは細長く、グレやブダイ類とは明らかに違って、どことなくボラのように見えるのですが、何でもいいから食ってくれ!頼む!そう念じながら釣っていると、魚がサシエに接近し、ウキが凄いスピードで消し込んでいきました。
 アワセると猛烈なパワーで右の磯際に突っ込んできます。こんなの絶対ボラの引きじゃない!何としても浮かせてやる!そう思いながら必死でためているとハリスと道糸の結び目が飛んで万事休す。
 いったい何が食ったんでしょうねえ。せめて正体くらいは見極めたかった。

 この日の安満地、やはり普通の磯は食ってましたね。特にトクゾウでは40オーバーが出ていましたし、好調のフタゴもよかった。マワリはバンドウ祭り開催中だったとか。一方、チーのハエの私は30.5cmの口太とヨスジフエダイ2枚をキープしただけで終了、大半はエサトリすらいない時間だったというのが辛いところ。こんなんだったら最初のチヌをキープしておけばよかったなあ。

 まあ敢えてそういう磯を選んだんだから仕方ありません。また明日頑張りましょう。下川口はうねりも無く、バッチリやれるようですからねえ。ムロアジだらけで釣りにならなかったというのが心配ではありますが・・・。

 ワンドは今回釣りにならず。  この磯の実力はこんなものではないはず。次は上げ潮時に挑戦だ。
 ● 安満地 amaji
利用渡船 吉田渡船 出港地 高知県大月町・安満地
時間(当日) 6:15〜14:40
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円(無いことも多い)
宿/仮眠所 宿泊・仮眠所あり。
1泊2食6500円
システム 磯予約可
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・2日目もマニアック磯を選択
 2日目、下川口漁港で準備万端で待っていると、一番船が出発する直前に到着が遅れていただいきちさんと無事合流。6時45分ごろに戻ってきた船に乗り込んで6人で出発しました。途中、中ユスに1人、ツノキリにムロアジ狙いのおじいさん3人組を降ろし、私たちは大和という磯に渡礁しました。

 大和南東端の私の釣り座。沖はタテバエとオオバエ。
 大きな独立磯「大和」の半分は岩山になっています。
 ペラペラヘダイ(寄生虫付き)
 大和は、まつした渡船HPによると「下川口では一番西寄りに位置する大きな磯。あまり知られてないが、良型グレの釣れるポイント。定員3〜4名。」だそうですが、釣行時点では磯の写真も掲載されておらず、釣果記録も2016年1月27日付けの「グレ35cm級3枚」1件しか存在しないというマイナー磯のようです。

 2日連続のマニアック磯。でも同行者もいるのに酔狂だけでこの磯を予約したわけではありません。実績のオオバエに近いけどマイナーなこの磯なら、大バエで猛威を振るうムロアジの影響を受けずに大きなグレを狙えるのではないか。また、磯が大きいので急な波でも凌げるのではないかと読みました。実績が無い?そんなもの我々が作ってやるさ!

 ちなみに大和は普通に「やまと」と読むそうです。下川口にはシマノハエがあるので、ついついダイワと読みたくなってしまうんですけどね。(シマノハエは誤字の多いマックスマップル(2010年版)では「鳥ノ碆」と書かれていますから、漢字表記は「島ノ碆」なんでしょうね。×鴉ノ岬→○鵜ノ岬(松尾)、×唐人駄馬遺跡→○唐人駄場遺跡、×コモ渕→○蒋淵みたいな感じで。)

・逆光の大和
 大和は東半分の前面は低く、西半分は岩山。東端の船着きは概ね平らなのに、渡礁時の道具の受け取り際に何故か細かい起伏でバランスを崩して転倒してしまいました。釣りをする上で何の影響も受けなかったのですが、帰港後にカッパを脱ぐと、その下に履いていたズボンの膝が血だらけになっていました。
 とまあ、いきなりひと波乱ありましたが、気を取り直して準備を進め、私は船着きの前面、だいきちさんはその右隣に入ってスタートです。

 釣り座の真正面から照りつけてくる強烈な逆光のため、海が黒くなってしまって水中の様子が一切見えません。船長は海中は起伏が激しいといっていたけど、足元の水深すらよく分かりません。少し右の沖には海面直下に大きなシモリが潜んでいることが波の動きから想像できるのですが・・・。
 こんなんだから当然ウキも見えないけど、とりあえず0号を通して斜め方向に投入し、海の中の情報を探っていきます。
 すると3投目で尾長グレがヒットしてきました。サイズは18cm程のミニコッパではありますが。

 見づらいウキやマキエを凝視していると、背後から突然「タモ借ります!」という声がかかって驚きました。振り向くとだいきちさんと海面に浮いたブダイがそこにいるではありませんか。視覚にばかり集中しすぎて全く気が付きませんでしたよ。

 軽い仕掛けで幅広く探りたいけど今はやはり無理だ。今日もまた円錐ウキを諦めて2Bの棒ウキに助けを求め、ウキ下をとりあえず2ヒロ半に設定してしばらく釣っていると、15mほど沖でサンノジがヒットしました。
 さらに右側のシモリがあると思われる場所の少し右で掛け合わせ、元気のいい魚をヒットさせました。この魚は結局噛み切られでバラシ。水中でギラギラと青白く光っていたし、竿も叩いていましたから惜しいということはありませんが。

・単発の大和
 9時にもなるとさすがにハッキリ見えるようになってきました。磯際の海中にはハリにすら掛からないようなミニコッパとギンユゴイの他に何の魚もいないということが。
 当然サシエが盗られることもほとんど無く、二人とも早くも諦めモード。最早下川口の磯で魚が食いだすのは13時以降という経験だけが頼りです。

 とまあ、釣っている本人はそんな精神状態だったのですが、結果だけ見ていると全く魚がいなかったわけではないんですよね。
 9時過ぎにはだいきちさんがバレーボールみたいなイシガキフグを釣って苦笑い。写真を撮っていると飲み込んでいた大量の水を口とエラから噴出し始め、そのあまりの勢いと量に二人とも唖然とさせられる一幕もありましたし、私も沖で大バラシを2回。深く入れ過ぎたのかどうしようもない怪物でした。
 さらに弁当船後の10時57分にはほぼ40cmありなしのヘダイを無抵抗で捕獲。両側の鼻に寄生虫をぶら下げた、よく生きられているなと思うほどペラペラな一枚です。
 また、だいきちさんも2匹目のブダイやらガシラやらを釣っているのですが、釣りをしている最中には「何も釣れない、何も釣れる気がしない」という諦めに支配され続けていました。
 なにしろクーラーは空のままだし、とにかくサシエすら触られない時間が長すぎました。潮が動き出してほぼすべてのマキエが溜まっていく場所が出現した時ですら、魚影も反応も全く見られませんでしたし。

 12時前に松っちゃん船長が見回りに来てくれました。どの磯も全然釣れておらず、グレどころか昨日猛威を振るっていたムロアジまでもがサッパリだそうです。
 このまま粘っていれば好転する時が来るかもしないという思いもありましたが、「波が出てきたし、地の方に替わるか?」と言われて磯替わりを決意。今回は同行者もいますし、大和では気付かなかったけど、バチャバチャしている磯も出始めていましたからねえ。

 だいきちさんの釣り座。背後は廃業した貝ノ川の磯。  獲物はイシガキフグでした。背後はオオバエ。

・最後は人気磯へ
 足場が抜群に良いカゴバエの船着き。
 私の釣り座は段差の向こう。足場が非常に悪く、
根も張り出しているけど、いかにも好ポイントという感じ。
 船長が上げてくれたのは東磯のカゴバエでした。港の目の前にあるこの磯は、下川口ではオオバエと並ぶ大型グレの出る場所だそうです。最後の最後に人気磯に上がることになってしまったけど、まあそれもいいでしょう。

 残り時間は2時間ちょっと。だいきちさんは船着きの平らな所、私は段差の向こう、ワレの右側に陣取って再開。時間が無いのでマキエを集中させて、張り出した根の先を狙っていきますが、南西風が強く、緩やかながら潮も同じ方向に流れているので挨拶代りの0号では馴染みません。そこでウキをBに替えてウキ止めを2ヒロ半にしてみると磯際でアカササノハベラが連発。しからばウキ下を2ヒロにして、狙いも沖に変更しました。

 しばらく釣っていると、沖の撒き餌に何らかの魚が見えました。グレではなさそうですが、大和では見られなかった光景に胸が高鳴ります。
 ヒットに持ち込んだのは12時53分でした。水中、そして空中でギラリと輝きながら抜き上げられ、磯の上でも写真を撮らせないほど大暴れしているのは34cmのホシザヨリ。このサイズだとまだまだ小物らしいのですが、体高、太さともに普通のサヨリとは桁違いです。
 暴れて写せなかったので、少し小さい昨年末の画像。

・ブランド化されている魚に熱狂
 ホシザヨリが回っているのならこっちを本命にしてもいいや。そう思っていると10分後にまたウキが引き込まれました。しかし掛ったのはホシザヨリではなく、やたらに走り回る紡錘形の魚。おっ、ムロアジ!いや、違うな。
 抜き上げた途端にハリが外れて斜面を滑っていく魚。どうにか体で止めて鷲掴みにしたのは33cmのゴマサバでした。
 ここ土佐清水市でゴマサバといえば清水サバとしてブランド化されている高級魚。初夏のサバ子は勘弁願いたいですが、このサイズなら嬉しくなります。それも二日目の終了間際なのでいい状態で持ち帰れます。

 こうなるとしばらくの間サバ釣りに熱中。マキエをガンガン撒いて群れを寄せ、サシエもハリ先が出るようにセットして、アワセもある程度待つようにして掛けていきます。釣れたらすぐに首を折り、指でエラを切って船着き側に置いた水汲みバケツに投入。すでに血の抜けたサバをクーラーに放り込むや、釣り座に駆け戻ってマキエと仕掛けを大急ぎで投入。
 釣れる度に飛び降り、よじ登らなくてはならない段差と足場の悪さがもどかしいですが、35cmも交えて夢中で10数本釣ったような気でいました。(帰港後、8本止まりだったことに驚くことになるのですが・・・)

・今日も最後まで悪あがき
 船着きのだいきちさんもサバを釣っていましたが1本だけで、むしろ磯の裏側のワンドでの釣りに熱中していました。ウキ下3ヒロくらいでワンドの最奥を狙っているとアタリが連発し、乗らなかったり切られたりしているそうです。
 そのだいきちさんから、「餌が無くなったので止めるんで、こっちでやってみませんか?」というお誘いがあり、私もサバは充分釣ったし、いい加減にしておかないと処理に困るぞと思い始めていたので、渡りに船とばかりポイントを移動。

 マキエを入れてみると、ブダイ類つまりバンドウと思われる魚が走り回っているので嫌な予感しかしませんが、とりあえずウキ下を調整した仕掛けを投入してマキエをかぶせると、馴染んだ途端にウキがシューっと入っていきます。

 それからはとことんやられまくりました。2号のハリスでは全く歯が立たず、2.5号に換えて2つ取り込みましたが、どちらも魚種はヒブダイ雌、でっかいキバンドウでした。サバが釣れてなかったらきっとキープしてただろうなあ。
 そんな釣りを回収の2番船出港のギリギリまでやって、14時40分に磯を離れました。

・印象深かったのはここから
 この日の下川口の釣果は、まつした渡船HPの「今日も相変わらず食いが悪くみなさん難儀してました。こんなに釣れない事はないですね。商売始めて以来です。早く潮が直ってくれないと!」という一文が全てを語っています。ただし東の果てのローコー1番では、39.5cmの口太とシマアジが1枚ずつ仕留められていました。

 私たちが2人掛かりで釣ったグレはたったの1枚、それも私が3投目で釣った18cmの尾長のみ。私とだいきちさんのコンビで磯釣りをしたら大概釣れていませんが、それでも前回、平成12年2月の小才角では2人の唯一の釣果が↓だったことを考えれば随分と進歩はしたような・・・。


 前回、だいきちさんと磯に釣行した時の
唯一の釣果。
 今回上がったカゴバエに隣接するコカゴの先は下川口漁港。

 しかし今回はお土産があります。港に帰るや、すぐにバラ氷に閉じ込めて持ち帰った清水のサバです。
 本物の清水サバはトロのような脂の乗りが売りのようですが、さすがにこれは脂控えめ。塩焼きにしても煮付けにしても少々パサつきましたけど、特に煮付けは甘辛い煮汁を絡めれば問題無し。久々の青魚の味を堪能することができました。
 そして脂控えめだからこそシメサバが旨かった!

 二日間の釣果。旨かったから満足です。
ゴマサバ2本はだいきちさんにプレゼント済み。
 でも今回、一番驚かされたのはホシザヨリでした。
 昨年末に松尾で釣った時には今回も泊まった「幡多郷」で調理をお願いしたので、自分で捌くのは今回が初めて。まず鱗を落として腹を開けてみると、現れたのは内臓を取り巻く分厚い脂。腹鰭を切り取ってから三枚におろすと、身自体もサンマでもここまではというくらいに脂ギッシュ。包丁が切れなくなってしまう脂の乗りに度肝を抜かれました。
 でもこれほんまにサヨリか?と呆れながら一切れ食べてみると、やはり香ってくるのはサヨリ独特の芳香なんですよね。
 そんなサヨリの平造りを今回も楽しい違和感を感じながら味わいました。ただ、次は血合い骨は切り取らずに抜いてみよう。芳香が弱ってしまうのが惜しいと思ったから。

 そしてこれに加わる初日の2種、安満地湾の口太グレとヨスジフエダイ。今回は釣りよりも帰宅後の食卓の方がはるかに強く印象に残る釣行になりました。
 次は釣りの方も頑張らなきゃなりませんな。

 ● 下 川 口 shimokawaguchi
利用渡船 まつした渡船 出港地 高知県土佐清水市・下川口漁港
時間(当日) 6:45〜14:40
(日曜は15:00まで。
それ以外は14:30まで。)
料金 2500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 磯予約制
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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