風雲児  烈風伝
   ・安満地の梅雨グレ シーズン最終戦の最後の最後に・・・。

2019年7月12日〜13日 高知県 安満地
・今シーズンの最終戦も安満地
 久々にいい釣果の出た前回釣行に続き、シーズン最終戦も名鹿2連戦!のつもりだったのですが、丸西渡船によると最近うねりでずっと出られておらず、明日も無理そう。ここのところの大雨で四万十川もすごい増水だし、今週いっぱいは無理だろうとのことでした。北西風の予報なんで多少抑えてくれるかと期待してたんですけどねえ。

 今回はこの時点で中止して、地元のイベント(竹田城主となった名君・赤松広秀公に関する講演会とか、佐用町昆虫館での子どもたちとの虫とりとか)を満喫するという選択肢もあったのですが、かなり悩んだ末にうねりに強い安満地への釣行を決断。雨の中を走って雨上がりの吉田渡船の仮眠所で眠りに就いていました。

・また天邪鬼にもチーのハエ
 チーのハエからの松島。隣の地磯に釣り人が。
 初日は晴れ。予想最高気温30度ほど。私がこの日の舞台に選んだのは湾内にあるチーのハエでした。
 このところずっと出船できず、前日に37cmのイサギ1枚とハタ類が出たという松島以外は情報なしとはいえ、他に磯釣りの客はいないので磯は選び放題にも関わらず、あえてチーのハエを選択したのには「大雨の水潮でグレは厳しいだろう。」「グレはダメでもこの磯ならチヌが期待できるかも?」そして何よりも「前回、昼前まで陰になっていたこの磯なら涼しく釣れるだろう。」という理由を上げることができますが、要するに私が天邪鬼なだけなんですね。そもそも「40cmオーバーのグレが多数釣れている泊浦の隣の安満地」をあえて選択して来てるんだし。

 ただ、今回のチーのハエには誤算がありました。一つは隣接する磯に地磯釣り師が下りてきていたこと。そして何より昼前まで日が当たらないというのは秋の話で、この季節は6時前から直射日光がガンガン当たったということ。ああ、この磯を選んだ最大の理由が一瞬で消し飛んでしまったか。
 さらに磯の中腹のわずかな水平部分に置いていたタックルバッカンが頭の上から降ってくるという誤算もあったけど、食料やら眼鏡やら道具は全て無事で一安心。

 ともかくスタートです。潮は予想に反して澄んでますが湾内に入ってくる流れです。この流れの時は釣れんからなあ・・・と思いながら、正面のシモリ周辺にポイントを作るイメージで沖アミ生+V9徳用+瀬戸内チヌのマキエを投入し、G5の仕掛けを流してみます。
 毎回序盤にヒットするチヌは今回は無し。渡礁前から竿を出していた隣のおっちゃんに釣られてしまったかな?
 そのおっちゃんは時折グレを抜き上げているけど、こっちはコッパグレも寄り付きません。沈めても浅く釣ってもサシエが戻ってくるばかり。それでもミニオヤビッチャやトウゴロウイワシ、キタマクラなどが徐々に見えてきて、開始1時間ちょっと経った7時4分に左のワンド側で初グレ、28.5cmの口太がヒット。キープするかどうか迷ったけど、これは強気にリリース。

 その後食わない時間が続いたけど、8時ごろに潮が5〜6分だけ左側に流れた時間があり、正面のワンドの沖で引きの強いメガネハギ(モンガラカワハギ科)と先ほどと同寸28.5cmの口太グレが連続ヒット。やはりこの磯はこの流れですよ!この流れ!

 しかし左に流れたのはそのわずかな間だけでした。9時半ごろにはおっちゃんが帰って無人になった隣の磯の付近を攻めてみたけど、小型であんまり美味しくないイトフエフキが一つと、小アタリをアワセてアワセてミニオヤビッチャ。それだけでした。

・涼しいけれど、その風が・・・
 チーのハエは朝からそよ風が絶えず、高温と日差し、機械の騒音のような暑苦しいキュウシュウエゾゼミの合唱にも関わらず比較的快適に過ごせていましたが、10時を過ぎたころから北西風が強まってさらに涼しくなりました。その反面、風波が押し寄せてくるようになって釣りにくくなってしまいましたが。
 そこでウキを3Bにして釣ってみますが、コッパ尾長が2枚釣れた以外は全くダメ。そろそろ動いているはずの上げ潮も表層流で相殺されてしまっているようですし・・・。

 時化男的には大した風ではないとはいえ、さらに風速が増した12時半を過ぎ、どうしても食わないのでそれまで攻めていなかった風下、湾奥側のシモリだらけの浅場を狙いを定めてみると数投目でウキが消し込み、銀色の魚が水面を滑ってきました。引き抜いてみると手のひらサイズのシマアジ。さらに次の1投では25cmくらいのグレも食い、「ようやく手掛かりを掴んだかも!さあ、これからだ!」と気合が最高潮に達した時、吉田渡船がやってきました。

 チーのハエの湾内向き。答えはこの浅場にあったのかも?
 渡船はすぐに磯には近づかず、沖の養殖イケスの周りをゆっくり一周した後に接岸してきました。
 「風が吹いてきたから片付けて!」
 船長が発した一言は意外なものでした。何でも低気圧が予想外の挙動を見せ、これからさらに風が強くなるというのです。波高はあまり出てなかったし、チーのハエは高さもあるとはいえ、船長の判断は絶対ですので大急ぎで荷物を片付け、涙の撤収。

 というわけで初日のクーラーの中身は氷と予備餌と飲み物の残りだけという散々な結果でした。涼しく釣れたし、次々飛来しては目の前を飛び回るモンキアゲハの華麗な姿には目を楽しませてもらましたけどね。
 しかしまあ、28.5cmのグレ、強がらずにキープしておくべきだったか・・・。
 観音崎と養殖イケスと吉田渡船。まさか撤収になるとは。

・二日目は急遽予定変更
 帰港後は安満地集落や吉田渡船の宿でダラダラと過ごし、翌日は再び5時半に出港。
 低気圧はすぐに抜けてしまってそよ風に戻り、釣りは安心してできるものの、ピンポイント予報を見ると午前10時から傘マーク、時間雨量1mmとなっており、14時は2mm、15時は3mm、そしてそのまま大雨が予想される夜になだれ込んでいくということになっていました。雨が降っている方が圧倒的に釣れるけど、昨日と同じような状況なら本降りになる前、13時の迎えでいいかもしれないな・・・。

 この日は松島に2人、マワリに1人が上がることになっており、もう1人は安満地湾内のマルバエに渡礁。私はどこでもよかったんですが、昨夜の食事の折に橘浦に近いエリアはエサトリばかりということで、観音崎とマワリの間にあるカメを薦められていました。ところが現地で「もっといい所があるからそっちに行こう。チャランボを持って降りて!」ということになり、その言葉に従いました。

 渡礁直後には行けなかった背後から見た南南西の釣り座。
 上がった磯はカメの少し北にある南南西。休業中の「ペンション南南西」の崖下にある地磯から一直線に点在するシモリ群の一番先にある、凪の低潮時限定の磯でした。
 渡礁直後は道具でぎゅうぎゅう詰めでしたけど、潮は速やかに引いていき、じきに余裕が生まれました。背後のシモリ群にも行くことができるようになりましたし。(特に用事は無いけれど。)

 頭上は雲の隙間にほんの少しだけ青が見えていますが、沖はどんよりと重苦しいねずみ色。正面の鵜来島やその左の二並島がまるで重荷を背負って疲れたように見えています。雨が降ってくるのも時間の問題か。そうなる前に始めるとしましょうか。

・南南西、潮、安定せず
 磯の正面にシモリというかハエ根があり、周りは結構落ち込んでいそうな感じです。潮は若干濁っていて、開始当初はゆっくりと右(北)へ流れていました。ただし潮流は安定せず、数投単位で左に行ったり右に行ったり、ずっとフラフラし続けていました。
 とりあえずG5の仕掛けを作り、ハエ根の左側の際にマキエを打ってから正面を投入してみると2投目でアタリがあり、ガシラが上がってきました。6時37分にブダイがヒット。

 しばらく釣っていると足元にはソラスズメダイ、アマミスズメダイ(シコクスズメダイ?)、ツノダシ、ヒブダイの大きなオスと小さなメス(キバンドウ)、イラ、ブチススキベラなど、沖にはミニオヤビッチャ、トウゴロウイワシ類、カワハギ、メガネハギなどが集結してきましたが、グレはシモリの間から湧いてくるという大きなものどころかコッパグレすら見えません。そしてハリに掛かるようなこともありません。
 釣れないし、8時前には雨が振り出して断続的に降り続くし、やはり13時までで帰ろうか・・・。

 深く入れてもダメ。ゼロウキでスルスルにしても入りすぎてしまって同じこと。なので沈めないことを目的にG2の棒ウキを選択して、1ヒロちょいから2ヒロを釣っていた10時過ぎ、突如として右斜め沖に出ていく速い潮が走りました。
 するとこれまで全く見えなかったグレが姿を現し、マキエに割って入ってくるようになりました。いないわけではなかったのか!これには私の活性も否応なく急上昇です。
 すると間もなく35cmほどのノトイスズミと同じくらいのキバンドウが食い、その直後に沖でウキが消えました。大きい!やった!ところが今回の釣りで初めての、竿が大きく曲がっていく感触に酔いしれたのが悪かった。魚は手前のハエ根に張り付いてしまいました。張らず緩めずの状態で10秒ほど待っていると竿先がグン、グンと動き出し、魚を引きはがすことには成功したものの、締め上げ始めたところでハリが外れたか口が切れてバラしてしまいました。
 そして速い潮もすぐに終息。グレの姿も消え、また何も食わなくなってしまいました。

 そんなことをしているところに吉田渡船がやってきたので弁当を受け取ろうと船に飛び移ると、「潮が上がったらとれんようになるから」と磯替わりを言い渡されました。時刻はすでに10時半過ぎ。クーラーの中に魚の姿は未だ無し。
 南南西の後ろ側。  南南西からのカメ、観音崎方面。

・カメに移動
 磯替わり先は150mほど離れた平らな磯。本来ならここで一日釣るはずだった「カメ」です。
 しとしとと、時には雨脚を少しだけ強めながら降っていた雨は今上がり、背後の山のキュウシュウエゾゼミや海上のモンキアゲハとウスバキトンボも活動を始めています。釣りならいつでもできるが弁当を食べるチャンスは今しかない!なんて思って真っ先に食事を済ませ、第2ラウンド開始です!

 足場は抜群。実績も充分のカメ。左側には大敷網。
イラ47cm
口太グレ30cm

口太グレ36cm
口太グレ30cm

ヒメテングハギ(若魚)35cm
 弁当を受け取った時に「迎えは13時で」と明言したので、残り時間は実質2時間程度。マキエを足元と20〜30m沖にケチらずに撒いてから、南南西から持ってきたG2の棒ウキ、ウキ下2ヒロほどの仕掛けを沖に投入しました。仕掛けを作り替える時間ももったいなくて。

 しばらく撒きながら釣っていると、足元に50cmくらいのイラ(テス)が2匹とチョウチョウウオ、オヤビッチャ、ネズミフグ、コガネスズメダイなどが集まってきました。沖はさっきまでいた南南西の方向、つまり北北西の方向(ややこしいなあ・・・)にかなり速い潮が流れています。
 その沖の速潮を攻めるため、磯の左側に入っている大敷網のロープのこっちがわにマキエをバンバン打ち込んでウキを流し込んでいきますがなかなかアタリが出てくれません。かなり右側の浅い所では派手な波紋が立っているのに、流し込んでも直撃してもタイミングをずらしてもうまくいきません。

 こういう時は気分転換。とりあえず何か魚を掛けてみようと思って足元に仕掛けを投入。するとすぐに開始当初からうろついていたイラの前でサシエが消えたのでアワセを入れ、大して暴れさせずに47cmをキープ。

 これでおかずはできました。さあこれで余裕をもって沖を狙える。
 肩の力が抜けたことがが状況の好転を呼び込んだのでしょうか?それから30分もしない間に足元でもグレが見えはじめ、大敷網のロープから正面まで流れてきた棒ウキのトップが消えました。最初はアワセが早すぎましたが、数投後に同じところで出たアタリにはしっかり対応。12時5分、本日の初グレ30cmの口太が磯の上に上がってきました。

 その5分後、今度はマキエを入れているロープの辺りでウキが消えました。掛かった魚は想像以上によく引きますが、主導権を渡すことなく引きずり回し、磯際への突入も防ぎきってタモの中へ。体の厚みも充分な36cmの口太グレ。これには喜び爆発です。
 「こりゃあかん。この状況で13時に帰れるか!今ならまだ間に合う!」と魚を締めるのもそこそこに船長に電話して、他の皆さんが希望しているという14時の迎えに変更してもらいました。
 ということでアディショナルタイムの目安は1時間です。

 潮が緩んできましたが、12時34分には正面で30cmの口太を追加。さらに12時41分にもウキが消え、穂先が持っていかれるのを待ってアワセるとこれまでとは違う竿を叩く引き。サンノジにしてはよく粘るし、これはアイゴかな?見えてきた魚もそんな感じの色だし・・・。なんて思っているとシルエットが違う。何だこれは?と首をかしげながら引き寄せてくると、違和感を感じるのも当然、角が生えているではありませんか。ニザダイ科のヒメテングハギ、角が短いこの個体はまだまだ若魚だな。やった!この魚で釣獲魚種は通算334種だ!(でもトビウオ類とかタカサゴ類とか、懸案のゴマフエダイとかユゴイとか、未だに全然釣れてないなあ・・・。あと、今日は不在のナンヨウハギも。)

 さらには青物もゲットです。といっても25cmくらいのやつで、ミニヒラマサだったのかミニツバスだったのか、引き抜いた瞬間に磯の上に落下して、そのまま逃げていったのでよく分かりません。
 と、ここにきてこの時期の安満地の最大の魅力である魚種の多さを堪能できました。足元には巨大なナガブダイやハタタテダイもいますしねえ。

 しかし時合いはここまででした。潮が逆転し、さらに再逆転してもヒットには至らず、やはり狙わずにはいられなかった大好物・ハタタテダイをハリに掛けることもできず、14時前に渡船が接近。タイムアップです。

 この日は松島もマワリもダメで、マルバエがよく食っていましたが、みなさん、船が近づいてくるのを見てビックリされていました。全員、迎えの時間は船長の言っていた14時ではなく、15時を希望していたようなのです。それならあと1時間釣らせてほしかったなあ。まあ、背後に迫った本降りの雨のことを考慮してくれたんでしょうけど。
 ちなみにマルバエでのウキ下は1ヒロくらいだったとのこと。カメでも時間をケチらずに仕掛けに手を加えるべきだったなあ。

・安満地の魚を味わう!
 ということで二日目の終盤になってようやく持ち帰ることができたグレ。やはり暑い時期の口太グレは安満地のものが最高です。ほかの場所とは違ってこんな時期でも脂が乗っていますが、かといってギトギトではないちょうどいいバランスですし、身もしっかりしていてきめ細かく、刺身でも塩焼きでも素晴らしい。

 そんなグレが釣れたことで、「キープするのを早まったか。失敗だったか。」という思いがよぎってしまった夏場のイラですが、時期的な臭みの不安は杞憂に終わり、キープしたことは正解だったことが分かりました。
 イラもブダイなどと同じく皮に旨味が集中していますので、これを引いてしまっては価値がありません。生食するなら絶対に湯引きか焼き切りです!
 鱗が取りにくい?鱗落としを使えば簡単です。鱗が飛び散って台所が悲惨なことになる?そりゃ尻尾〜頭方向にばかり動かせば飛び散りますよ。包丁ですき引きするように鱗落としを上下に動かして剥がせばいいんです。ぬめりが酷い?頭やヒレに付いたぬめりは包丁を使ってこそげ落とせばいいんです。エラが取りにくい?こればかりは繊細な包丁の操作と左手の適切な配置、そして経験が必要です。自信が無ければケガする前に頭ごと落としてしまいましょう。

 こうしてイラを3枚におろし、片身は湯引き、もう片身はフライ、アラは煮つけでいただきました。湯引きはわさび醤油で食べるのも当然旨いですが、柚子胡椒との相性も抜群。ネットにはイラは柑橘類と塩と唐辛子で和えたセビチェが旨いと書いてありますが、柚子胡椒にはそのすべてが入ってますもん、そりゃ合いますわ。ちなみに梅肉や塩は試すだけ損ですよ。
 清冽なイラの湯引きがグレの刺身を引き立て、脂ののったグレの刺身がイラの湯引きを引き立てる。このコンビ、最高の取り合わせかも!

 返す返すもキープしといてよかったなあ。今回の釣りも今シーズンの釣りも、終盤に釣れてくれてよかったなあ。
 カメから北方向。一番沖の独立磯がマワリ。その前の磯が南南西。

 ● 安満地 amaji
利用渡船 吉田渡船 出港地 高知県大月町・安満地
時間(当日) 5:30〜12:50
5:40〜14:45
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円(無いことも多い)
宿/仮眠所 宿泊・仮眠所あり。
1泊2食6500円
システム 磯予約可
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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