風雲児  烈風伝
    ・限界まで連戦!ついでにグレ釣り!過酷、高知ちょうこう記
2020年 9月27日 高知県 名鹿
・釣りから離れてしまった日々に
 乗っ込みチヌとマダイの本格シーズンを前に発令された新型コロナウイルスの緊急事態宣言。それによって県外への釣行は自粛、地元も7月末まで感染者ゼロだったせいか、普段はそれほど見かけない神戸や大阪ナンバーの車であふれかえる事態になり、竿を持つ機会はなかなか巡ってきませんでした。
 やがて県外へ出られるようになり、地元にあふれた都会人も嘘のように消えたのですが、そうなっても信じられないほど気分が乗らなくて釣行に二の足を踏み続けており、結局8月まで続いた長い梅雨が明けるまでに竿を出したのは、地元の昆虫館の淡水魚水槽のオイカワ・カワムツ・アブラボテ・タカハヤを辛うじて補充できた2回のみ。それ以降も暑くなった8月8日に牛窓から小豆島の磯に渡って伊達と酔狂でフカセ釣りをしただけ。釣果?いつものあれですよ。貧果の歴史が、また1ページ。

 その間、私は昆虫少年に戻っていました。いわゆる「虫屋」ではなく「大きくなった昆虫少年」。私のスタイルは「”程々に小さい甲虫”を中心に色々な種を実際に見てみたい。」というもので、採った昆虫は自分で触って感心したらそれでOK。あとは子どもたちにも見たり触ったりしてもらえればなお良しで(ボランティアスタッフとして関わっている地元の昆虫館は、国内外の生きた昆虫に実際に触ったり、周辺にいる生き物を採って観察できるのが売り!)、あとはペットのシュレーゲルアオガエル(日本固有種)の口と腹に収まるものや逃がせないもの以外は基本的にリリースしています。
 ヒメカマキリモドキ 6.28 宍粟市  シラホシキクスイカミキリ 6.28 宍粟市  ゴマダラオトシブミ 7.12 宍粟市
 ヨツボシケシキスイ 7.23 佐用町昆虫館の庭  フェモラータオオモモブトハムシ 
7.18 たつの市
 ムネアカオオクロテントウ
7.18 たつの市
 ただやっているうちにぜひとも飼ってみたい甲虫が1種、標本にしてじっくり観察したいジャンルが一つ出てきました。自然豊かな砂浜の地面や地中に潜み、夜になると獲物を求めて歩き回るクワガタみたいな形のオオヒョウタンゴミムシと、昼間に飛び回るバラエティ豊かな蛾たち、いわゆる昼蛾です。

 すっかり過ごしやすくなった9月末、夏季休暇の処理も兼ねてこれらの昆虫に出会うために7か月ぶりに瀬戸大橋を渡ることになりました。折しも土佐湾は良型のグレが狙える絶好のシーズンで風も北西!
 ということで、今回はマスクとエタノールジェルで防御を固めつつ高知県の奥深くまで侵攻し、昼も夜も昆虫を求めて走り回ったうえ、ついでに名鹿の磯でのフカセ釣りまで楽しんでしまおうという、盛りだくさんというか、むちゃくちゃというか、頭おかしいんかという1泊3日の遠征です。3日目なんて虫になるのか魚になるのかいきあたりばったり。高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになるかと思います。(ちなみに昆虫のキープはそれぞれ2頭まで・・・のはずでした。)

・初日・昼の部 VS 日本一美しいガ
 9月26日の早朝に播州を出発し、寒風山トンネルを越えて高知県いの町に到着。昼の部のターゲットは「日本一美しい蛾」と言われることの多いサツマニシキの第2化(秋型)!とにかくこの蛾を見てみたい!一般人発信のネット情報は10月中旬に集中しているけどこの時期にはもう羽化してくれているはず・・・。
 ベニイカリモンガ。やり方を教えて
もらったばかりとはいえ、酷い展翅だ。
 この蛾、昼間にフジバカマとかセイタカアワダチソウとかの蜜を吸いに来るそうですけど、この時期にはまだ咲いていないし、花自体が少ない少ない。とりあえず道端にイタドリやらヒガンバナやら咲き残りのクサギやらと駐車スペースがあればひたすら探索。そのやり方が正解なのか、正解だったとして本当にこれらの花に飛来するのか何もかも分からないけど、他に手段も無いのでやり続けるしかありません。食草のヤマモガシなんて見たこともないし・・・。

 で、結局この方法でいの町から黒潮町まで捜し歩いたけどサツマニシキの姿は無し。イシガケチョウや各種アゲハ、とある公園のオミナエシやオトコエシに乱舞するボロボロになったヒョウモン類やミスジチョウ各種、川口春奈キタキチョウ様、美しく青きルリモンハナバチなどの姿は堪能できたけど、キープしたのはランタナの花に来ていた昼蛾、シジミチョウと言われれば大概の人が信じるであろう、ベニイカリモンガ1頭だけでした。

・初日・夜の部 VS 沖縄瑠璃散&砂浜の王者
 6時前、道の駅なぶら土佐佐賀で腹ごしらえをし、セイダバエで夜釣りをする人を見ながら伊田漁港でバラ氷を仕入れた後、海辺の林縁のチェックをしながら道の駅大方に到着。夜の部のターゲットは砂浜を徘徊しているであろうオオヒョウタンゴミムシと、サツマニシキやホタルガと同じマダラガ科の昼行性の蛾でありながら、オスはよく灯火に飛来するというオキナワルリチラシ本土亜種。前者は高知県では不自然なくらいに情報の少ない種、後者は高知県ではライトトラップに何十頭も飛来することがあるという普通種とのことです。この2種を求めて砂浜と灯火巡りです。

 まずはオオヒョウタンゴミムシ。広大な入野海岸の砂浜や松林を懐中電灯で照らしながら何キロも何キロも歩き回り、さらに土佐清水市まで捜索範囲を広げてみたけど、見られたのはコオロギ類やカニが少々、それにあの弘法大師すら音を上げたという爆音昆虫・タイワンクツワムシ(在来種)くらいのものでした。

 それと並行して灯火巡りも実行。各地の自動販売機、ローソン6店舗、土産物屋、中村フィッシング、公衆トイレ、公衆電話などを巡りに巡ったけど、高知でも明かりはほとんどLED。これじゃ寄ってくるのはカメムシとクモくらい。オキナワルリチラシどころか蛾自体ほとんど見かけることもありませんでした。最後の希望・古い公衆トイレや公衆電話も不発です。ただ入野海岸の自販機で奇跡が!何と明かりに照らされた地面に立派な大あごを持った2cmほどの黒い虫!これはもしかしてヒョウタンゴミムシ科の中型種では!?
・・・残念。クロカミキリでした。

 6年前に撮影していた離礁直後のカメ。
 釣り座は中央の絶壁の下。
・二日目・昼の部 名鹿のグレ釣り
 丸西渡船が係留された川港、下田港に到着したのは27日午前1時ごろでした。変な夢に何度も起こされつつ車内でしばし眠りつつ、外灯チェックなどにも行ったりしているうちにもう出港時刻の目前だ。ああ眠い・・・。
 でも眠気は着替えを始めたら吹き飛んでしまいました。久しぶりの遠征で何かやらかすとは思っていたけど、ウエアのズボンを忘れてきてるやん!ジーパンの着替えも無いし、仕方ない、下半身はパジャマ代わりのジャージで釣るか。

 5時半に出港した渡船の乗客は私と地元の常連さんの2人だけで、その常連さんはフタツバエ、私はこの時期に上がるならここ!前回上がった6年前(そんなに経っていたとは・・・)の9月中旬にも42cmの口太を釣っているお気に入りの磯「カメ」に渡礁させてもらいました。
 
 最近誰も上がっていなかったというカメ。油断禁物の第1投でのアタリは無かったので、通常通りのやり方で近距離にマキエを打ちながら釣っていくと程なく大きなキツの群れが姿を現しました。気にせずに00のウキにジンタン5号のオモリを付けたスルスル仕掛けを入れていくと、今シーズンの初の魚・アカササノハベラが上がってきました。次いで40cmくらいのキツが食ってきましたが予想通りバラシ。アワセが遅かったので噛み切られです。高確率でバラすブランク明け一発目がグレじゃなくてよかった。

 さて、この時のカメの状況はというと、釣り座の左右にサラシがあり、特に左側のものが強くてなかなかにやりにくい。でも右は結構強い北西風が邪魔をするうえに潮も逆なので釣りにくく、正面は太陽の光の帯でウキも海中も見えません。そこでウキをBに換えてみて、足元をメインに左のサラシの攻略の可能性を探っていました。
 すると7時3分に足元でアタリ!結構強い引きに身構えていたら黄色いヒレの赤銅色の魚が姿を現しました。ここ数年で急激に四国での認知度が上がり、狙う人も一気に増えたシブダイ(フエダイ)ではありませんか!サイズは27cmではあるけど、身の厚みは立派なものだし、脂も乗り過ぎていないサイズなのでありがたくキープしておきましょう♪ちなみに名鹿ではシブダイは昼間に釣る魚だそうで、なかなかいいサイズが上がっているとのことです。
 フエダイ(シブダイ、ナベワリ、アカイサギ)

 釣り座の左(北)側。潮がこちら側に流れていたら面白かったかも。
 右側。このサラシが敵にも味方にもなりました。沖の磯はゴデン。
 これに気をよくしてしばらく同じような釣りをしていたけど、掛かってくるのはアカササノハベラやニシキベラばかり。そこで試しにウキをG5に換えてみたところ、その1投目、7時28分に左のサラシの外縁部でラインが走り、少しの間のストレートな引きで尾鰭の白い魚が引き寄せられてきました。足場が結構高くて狭く、丸みを帯びているため抜き上げは避け、うねりで海面が大きく上がるのを待ってタモに収めたのは32cmの口太グレ!

 しかし後が続きませんでした。ウキを3Bに換えてウキ下も4ヒロくらいまで探ってみると、際ではサシエが残らず沖ではサンノジのみ。やはり軽いのでやらないとダメなのか?と0号のウキと潮受けゴムだけの仕掛けを投入してみると、23cmくらいの尾長数枚と10時3分には25cmの口太がヒットしてきたけどどうもパッとしないなあ。
 そしてこの頃から当て潮になって漫然とした釣りはできなくなり、眠気と暑さと戦いながら手を変え品を変えてもがいていました。

 久々のヒットは11時10分ごろ。ウキは0号で潮受けゴムをフカセウキゴムに換え、ジンタン5号を2段打ちにした仕掛けを左沖に投入し、足元近くまで戻ってきたウキが右にスライドして大きなサラシに吸い込ませていると、チラチラ見えていたウキがゆっくりと加速していきました。
 アワセを入れると結構強い引き。しかし竿を突き出すようにしてひとのしを凌ぎ、磯際から引き離すと嘘みたいに脱力して浮上を始めました。引きからしてイラ(テス)でも食ったのか?と思っていると見えてきたのは口太グレ。しかも厚みも充分な37cm!これは納得サイズ、小躍りするような一枚です!

 その後、当て潮がさらにきつくなりました。北西風はいつの間にか北西風が止み、ストッパーの外れたうねりが大きくなっていました。
 どこに打ってもあっという間に足元に集合するマキエ。パワーがみなぎるサラシと気まぐれな大波で制御不能のウキ。12時を過ぎた頃には手の打ちようがなくなり、仕方がないのでウキを外して脈釣りをしていました。ところが壁掛かり連発で、魚が掛かってもアカササノハベラばかり。そしてそこに付け込む前日の早朝からの疲れと寝不足。竿を持ったまま何度眠りに引きずり込まれそうになったことか。このままでは渦巻く海に竿を落とすか、自分が落ちるかだ。
 この状態で釣り続けるのはあまりにも危険すぎます。迎えまで2時間近くあるけど13時にギブアップしてクーラーと背後の絶壁にもたれていました。暑さの中、フナムシに齧られたり、小さなハエにこそばされて眠りの入り口を完全にはくぐれないまま。しかもうねりが駆け上がってきそうになってしまって安心して眠れません。見ろよ、時化男(アングラー・デア・シュトゥルム)が泣いてるぜ。

 回収は予定どおり15時前。最後までやり切れずに途中で投げてしまったけど、今シーズンはなかなかいいスタートを切れたのではないでしょうか。
撤収寸前の様子。風向きが少し違っていたら被っていました。

 ● 名 鹿 nashishi
利用渡船 丸西渡船 出港地 高知県四万十市 下田漁協前
時間(当日) 5:30〜14:40
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 なし システム 今のところ特に無し
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・二日目・夕方〜夜の部 今夜もサーフと公衆電話通い
 磯釣りは終わりました。しかし今回の旅はここからが本番!
 名鹿の港を後にした私は、農道沿いの花や林縁をチェックしながら3.5kmほど離れた所にある今回の宿、「ペンションひらの」にチェックインしました。以前はアカメの泳ぐ四万十川へのアクセスのよさを目当てにこの宿を選んでいましたが、今回の目当ては宿から歩いて行ける平野サーフビーチです。当然、この各地から人が集まってくるビーチでサーフィンをやろうというのではありません。

 宿に入って汗を洗い流したらすぐに海岸へ出発。海上に列をなす大量のサーファーや浜辺でいちゃつくカップルを背に山際に向かい、草付きの辺りに紙コップを埋めて回りました。砂浜を歩き回る昆虫を対象とした「落とし穴トラップ」です。本当はコップの中に残りの集魚剤を入れて埋めるつもりだったけど、うっかり全部混ぜてしまったから仕方ない。

 セットができたところで宿に戻って腹ごしらえし、ひと眠りしてから明かりを求めて外へ。おっ、公衆電話や宿の街路灯など有望そうな明かりが意外とありますやん。少ないながら小さい蛾も何種も来てるし、部屋の明かりには3cmほどにしかならないヒメカマキリとかもいるし。

 この夜は砂浜まで行ったり外灯だけ見たりと外回りを数回行い、午前3時半ごろ、ちょっと早めの紙コップ回収。結局ルッキングでは昆虫は全く確認できず、紙コップにもカニが2匹落ちているだけでした。外灯の方も収穫ゼロで終わってしまいました。

・三日目・昼の部 VS 日本一美しいガ、リベンジ
 一旦宿に戻って少し寝てから7時過ぎに出発。早朝に飛翔するというウスバツバメガが宿の周辺にいないことをチェックしてから高知県中部、東部へと一気に移動。花の多い公園の遊歩道を上ったり下りたりしてサツマニシキの姿を探し回りました。そしてヒガンバナやヒヨドリバナ、オミナエシ、キバナコスモスなどを訪れるアゲハ、カラスアゲハ、ナガサキアゲハ、モンキアゲハ、アオスジアゲハ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、キタキチョウ、アカタテハ、ミドリヒョウモン、イシガケチョウ、ヒメウラナミジャノメ、ヒカゲチョウ、イチモンジセセリ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、ムラサキシジミ、クロマダラソテツシジミといった蝶たちの姿を網も振らずに眺め、高い空を飛ぶミカドアゲハらしきものも見られたけど、蛾は黒地に白の水玉模様を散らした小さなシロモンノメイガと、高速で飛び交いホバリングしながら蜜を吸うホウジャクの仲間しか見ることができませんでした。最後は動き回るのに疲れ果ててフジバカマの前で待ちに徹してみましたが、まだポツリポツリとしか開花していない状況ではサツマニシキはもちろん、アサギマダラすらやってくることはありませんでした。(アサギマダラは夕暮れの大豊町で1頭見かけたけど。)

・三日目・夜の部 灯火で最後の悪あがき
 17時ごろ、私は大豊町の道の駅にいました。通過経験上そこそこ期待の持てそうなこの場所で灯火採集を行って、あとは大歩危とかの灯火を数か所回って終了の予定です。さあ、暗くなるまで少し眠ろう。

 眼を開けると闇が深まりつつありました。灯りを見ては車内で微睡み、また灯りを見ては車内で微睡みというサイクルを数回繰り返し、ホソバ、アツバなどの小さな蛾と、ヒゲナガカワトビケラやカワゲラといったペットのカエルへのお土産をキープしました。見事なヤママユなども観察できましたが、結局オキナワルリチラシが飛来するという奇跡は起こらず、四国を後にすることとなりました。

 3日間の歩数の合計4万3千歩。網を振ること数回。その名前を知っている人にすら出会えなかったターゲットの3種は姿も見られず、情報も得られず。これは釣りのボウズよりも応えるものですねえ。

 3種のクロスする時期を狙ったつもりだったのですが、オオヒョウタンゴミムシとオキナワルリチラシには遅く、サツマニシキにはやはり早かったということなのだろうか?(オオヒョウタンゴミムシに関しては帰宅した翌日、釣巧会のリョータさんからの「見かけた」という情報が・・・)まあ何にせよ碌な情報も無しの運任せではどうにもなりませんわな。よく考えたら地元でホタルガを採ってこいと言われて確実に採ってくる自信すら無いのに。(四国の沖磯に行けばよく飛んでいるけど)

 ということで、今回は魚はともかく昆虫に関しては大撃沈です。これは最盛期と思われる10月末にどうにかして行くしかなさそうですね、10月はグレのサイズも小さくなることもあってサツマニシキ一本で。憧れの蛾の姿をせめて一目でも見られぬ限り、グレ釣りの計画すらできそうにありませんから。



・再び土佐路へ! 十月場所 対 薩摩錦 (10月20日〜21日)
 で、イベント開催の仕事が終わった10月20日、その代休を使って1泊2日のリベンジマッチにやってきました。
 フジバカマ、セイタカアワダチソウ、コスモス、サザンカ、アザミ、リンドウ・・・。3週間前とは比べ物にならないほど花の数と種類が増えて、一気に鮮やかになった土佐路を走り抜け、午前8時半、香南市で探索開始。

 再訪した公園はフジバカマの花盛り。一面の薄桃色とほのかに漂う桜餅(クマリン)の香りの中を前回はいなかったアサギマダラがふわりふわりと飛び回り、あちらこちらで夢中になって蜜を吸っています。それは日の差す場所が増えるとともに数を増し、まるで夢の中にいるかのような光景になっていきました。さらにはツマグロヒョウモン、メスグロヒョウモン、モンシロチョウ、イシガケチョウ、アカタテハ、オオスズメバチなども彩りを添えています。
 しかしサツマニシキの姿だけは歩き回り、待ち続けても全く見られませんでした。切り札ポイントで撃沈とは、今回もまたダメなのか・・・。

 まあまた夕方に戻ってくればいいやと移動を開始。11時頃に次のポイントに入りました。
 ここでもフジバカマの植栽をチェックしたけど浅葱色のだんだら羽織が乱舞するばかり。サザンカやコスモスにも目指す蛾は来ていませんでした。

 こうなったら方針変更。幼虫の食樹であるヤマモガシが確実に生えていることが分かっている丘を調べてみるとしましょう。
 登山道沿いの木の葉を網で叩きながら登っていくと、削平地の林縁から金属光沢のある青黒い翅の昆虫が飛び出しました。あっ!居ったあ!サツマニシキや!!
 私はそれを必死になって追いかけましたが森の奥へと逃げ去ってしまいました。その後、他の木から何頭かのサツマニシキが飛び出しては逃げ去っていきました。思った以上に大きかったその蛾は、思った以上に素早く、切り返しも複雑でした。その飛び方は想像していたホタルガのようなものではなく、ルリタテハとかアオスジアゲハのような感じ。鈍重で制御が効かず、中距離戦に向かない5mの磯タモではなかなか対応できません。
 それでも意地で網に収めたのは何度目のチャレンジだったことか。その美しさは写真では表現しきれず、嬉しさは言葉では表現しきれるものではありません。とはいっても嬉しさはしばらく置いといてまずは無心に。獲物を網の中から逃がさぬよう、翅を痛めぬよう、網に収めた時点でもう分泌している青臭いような独特の臭気を持った黄色い泡を極力まとわりつかせぬよう気を使いながら、チャック付きの小袋に虫体を収めるのに必死でしたから。

 近くの木に止まってくれたサツマニシキ。
帰宅後に撮影した腹側も見事!いや、腹側の方がさらに美しい!
 袋詰めを終えて興奮が蘇る中、一頭のサツマニシキがどこからか飛んできて近くの木に止まりました。これはチャンス!とばかりにカメラで撮り、直後に網で撮りました。

 とりあえずの目標は達成したので一旦下山して昼食を取り、昼からもう一度登り直してみました。
 午後の部も枝叩きでは蛾のスピードと、意図せず伸び、回転するタモ網に振り回されてばかりでしたが、吹き上げ採集が成立することと、蝶道ならぬ蛾道が存在する可能性に気付いたことで、逃走モードじゃないサツマニシキを体力を消耗せずに網に収められるようになりました。白い捕虫網は分泌する泡で黄色いシミだらけになってしまいましたが。

 まさに予想外の展開です。しかし乱獲をする理由はありませんから最小限だけキープして下山。次の目的地に向かうとしましょう。
 そして16時前に市内のコンビニに到着し、ネット仲間の「親方さん」と9年ぶりの再会。お歳のせいで釣りに行くのはなかなか難しいということでしたが、積もる話も多く、懐かしく穏やかな時間を過ごさせていただきました。いつまでもお元気で、ぜひまたお会いしましょう!

 で、その日は浦戸湾沿いの宿に宿泊し、翌日は仁淀川河口を経由して佐川へ向かい、牧野公園や牧野富太郎ふるさと館、横倉山の博物館や越知のコスモス畑などを覗いて寒風山トンネルで高知を脱出、丸亀で骨付き鳥を食べて兵庫に帰りました。
 虫採りは佐川町やいの町など数か所でやって、初日に逃がしたイカリモンガと、昼蛾に分類していいのかどうか分からないシャクガ数種に出会えました。サツマニシキは佐川町の神社の狭い境内で2頭見られたけど、かなり高い所の枝叩きで出た高速逃走モードでしたからどうすることもできず。まあ本気で追ったわけでもないですが。

 ・・・あれっ、確かここ、釣りのホームページでしたよね。釣行記がいつの間にやらチョウ目マダラガ科狙いのチョウ行記に変わってますがな!

 いやいや、今回はサツマニシキ一本のリベンジマッチなんて言ってますが、車にはしっかり竿や道具を積んでいるし、実際に釣りもしてたんですよ。磯釣りは方向のミスマッチと東風の予報で不可能でしたが、初日の夜に宿の前の浦戸湾で中型ルアーでの釣りと電気ウキでのチヌ釣りの名を借りた五目釣り、二日目の日の出前後に仁淀川河口付近でもルアーを投げてました。
 まあ釣行記らしくないのは全然釣れなかったせいなんですよ。電気ウキ釣りに至っては青虫が手に入らずに加工オキアミ単品で釣らざるを得ず、食いきれないアタリが2回のみ。40m先の対岸ではフカセ釣りで1投目からチヌがガンガン当たってたんですけどね。竿をたたんでからその波止を探して釣り方を聞きに行き、話に花を咲かせてきました(笑)

 こんな感じで今年の高知での虫採りは終了。次からはグレ釣りに復帰の予定なんですが、11月は日程的に厳しいので瀬戸内の磯で秋チヌを狙ってみようかな?
 ではまたその時に。
 只今サツマニシキの標本作成中。表展翅の途中(仮止め→気に入らなくてやり直し)と、
裏展翅の準備中の一コマ。サツマニシキ本土亜種の神髄は裏面にあり!
あまり語られることはありませんし、写真ではほとんど伝わらないけど、
あの青のきらめきに心を奪われない人はいないでしょう。乾燥完了の日が待ち遠しいです。
 
 そして完成!上が表、下が裏。
 展翅経験10頭程度の初心者のものとはいえ、
もう少しどうにかならなかったものか・・・。


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