風雲児  烈風伝
   ・磯釣りデビュー戦をサポート。2年半ぶりの大海原へ!

2023年 2月8〜9日 高知県 古満目&柏島
・磯釣りデビューをエスコート
 中国で発生した新型コロナウイルスが日本に上陸してはや3年余り。2020年は流行の波の合間合間に瀬戸内の磯に立ち、四国の秋磯にも行きましたが、絶えず打ち寄せるその波と波高の更なる高まりにいつしか竿をも持たず、釣具屋にすら行かないようになっていました。そして21年、22年は近所の川に各1回行ったきりという状況になり、私の生態はコロナ前には想像もできないほどに変わっていました。
 その間に始めた蛾類の生息調査が楽しすぎ、出かけるたびに新しい種との出会いと新しい知識がドンドン増えていく充実感に徹底的にのめり込んでしまったのが一番の原因ではありますが、釣り、特に磯釣りに見向きもしなくなったのは、無視できない道中や渡船での感染リスク、餌・道具の高騰、悪化する一方だった高速道路運転恐怖症といったものが挙げられます。でも結局のところコロナ前に貧果をあまりにも繰り返し過ぎたことが磯釣りへの情熱を消し去る決め手になっていたんだと思います。

 そんな私を再び四国の磯に連れていってくれたのは公私ともにお世話になっている昆虫の専門家、某博物館のY先生からのお誘いでした。
 Y先生は釣り好きで、神戸付近の波止でチヌやコッパグレを釣ったり、昆虫のイベントや調査のついでに現地でイカやアジを釣ったりされていて、前から仕事のオフシーズンである冬場に四国の磯を案内してほしいと頼まれていたのがここにきて急に具体化したのです。私も散々ためた代休やら年休やらを消化しないと怒られる時期でもありましたし。

 行くことが決まったので久々にリサーチを開始したところ、この3年で色々なことが大きく変わっていることに衝撃を受けてしまいました。
 コロナ前まで愛読していた「磯釣りスペシャル」「月刊釣り画報」は廃刊、大月町の「つり工房正よし」や宇和島の上州屋は閉店、釣行の帰りのリフレッシュ&仮眠場所として欠かせなかった中村の「平和な湯」に加えて「土佐佐賀温泉こぶしのさと」も閉店、蒋淵や由良半島などの渡船料が6000円にまで上がり、ずっと利用していた某釣具店のオキアミはこれまで高くて買う気になれないと言っていた地元の店よりも高くなり、道具も高くなり、おまけに愛想の欠片すら無くなっていました(最後のはコロナ前からか・・・)

 磯初体験のY先生からは自己ベストとなる35cmのグレが釣れる場所というのと、魚種の多い場所という希望が出されました。いや〜、やはり虫好きが釣りをすると色々な魚に会うのが目的になりますね。
 ということで行き先は柏島に決定!それぞれのスケジュールと制約から別々に兵庫県を出発、現地で合流して8日(水)は大堂海岸で練習がてらお土産をキープ、9日(木)は食いは渋いが釣れたらデカいという蒲葵島で風景と魚種の多さを楽しみながら勝負の予定です。
 10日前の予報では8日の天気はなんとこの時期に見たこともない「暴風雨」でしたが、翌日の天気すらまともに当たらない〇enki.jpの予報なので心配は不要。案の定予報は日ごとに変わり、各社とも7日に雨ながら南風にはならず、8日は晴れて北西の強風、9日は北東〜東の風という磯割りとベストマッチなものが出揃いましたので、何の心配もなく出発!・・・できるはずでした。
 この時、世界は、そして私自身も忘れていたのです。私の持つ特殊な能力のことを。

・フル充電!風雲児まじっく発動!
 7日の昼に井上渡船に確認の電話を入れると「明日は出られるかどうかわからない。15時まで様子を見たい。」という予想外の回答がありました。
 私はとりあえず出発して瀬戸大橋の手前まで進み、穏やかな瀬戸内海を眺めながら再度電話すると「明後日は分からないが明日は確実に無理」という宣告が・・・。
 北西風が強すぎるのか?と思って下川口のまつした渡船に確認すると、開口一番「無理無理。すごい大波。」とのことで、金曜日にまた低気圧が来るから北西風も大して吹かず波は治まらないだろうとの予測でした。ならば安満地は?と吉田渡船に電話するとなかなか繋がらず、波止釣りを覚悟しかけたものの猪ノ鼻峠の手前で連絡が付きました。結果は出船不可でしたが古満目なら出るのではないかという情報をいただき、早速連絡してみると出船可能ということでひと安心。既に出発されているY先生にも連絡して22時過ぎに道の駅大月で合流できました。

・古満目 松バエ
 8日5時前、車内でゆっくり眠ったY先生と、寝転んでいただけでほぼ眠っていない私は道の駅を出発し安岡渡船の駐車場に移動しました。外に出ると北西風がそこそこ吹いていたのでひと安心。道の駅ではほぼ無風だったのでドキドキしてたんですよ。
 
 3組4人を乗せた安岡渡船は6時半ごろに岸壁を離れ、港の入り口の古満目崎にある黒ハエに常連さんを降ろしました。次いで私たちがその後ろにある松バエに渡礁。この松バエは船着きから背後に至るルートの足場が微妙に悪く、寝不足&ブランク明けの私は足を取られてしまいましたが、ポーターさんがいてくれたので頼りない2人でも問題なく渡礁完了。背後の広い斜面に道具を移動させ、Y先生はとりあえずそこに、私は船着きのすぐ東隣に釣り座を構えました。

 私の入ったポイントはサラシが出ていたのでG2でスタート。何投目かでサシエが盗られたけど、反応があったのはウキ止めがストッパーまで落ちてフリーになってしまっていたその1投だけ。ウキ止めを修正しても、サラシやうねりの力がそれほどでもなかったのでウキを0号に替えてゆっくり落としてみてもサシエを触られることはありませんでした。

 8時17分ごろ、船着きの後ろ側で釣っているY先生の竿が大きく曲がりました。上がってきたのはこの時期定番のヘダイ。磯で初めての獲物の力強い引きにY先生、ご満悦です。
 これで調子を掴んだY先生は間を置かずに2〜3回ヒット。全て足元に張り出した棚の餌食になってしまいましたが、これに懲りて船着きへの引っ越しを決めて9時12分に35cmくらいのアイゴを仕留め、その後同サイズのアイゴを連発させていました。
 対岸の黒ハエとの水道は船の通り道になっています。  Y先生の磯での初の獲物はヘダイでした。

 一方の私はこの時点でもアタリどころかサシエすらほとんど触られていませんでした。ここまで私はこの時期に深く釣ろう釣ろうとして墓穴を掘り続けた経験から、ウキ下に制限を設けた上で極力沈めないようにしてグレが浮いてくるまで待つという戦略を取っていましたが、Y先生につられてG5のウキに潮受けゴムとジンタン5号の組み合わせでウキ下2ヒロ半から沈めていく仕掛けに変更してしまいました。

 仕掛け変更の結果が出たのは弁当を食べてリフレッシュし、さらに時間が経過した11時24分のことでした。潮を掴んで沈み始めたウキが波の下をくぐる時の小さな違和感にアワセを入れると竿が曲がり、中層でフワフワと竿を叩く引きが伝わってきました。ここにきてようやく本日初の魚、アイゴがヒットしてくれたのです。

 しばらくすると流れが左向きになって、アイゴが連発するようになり、11時47分には40cmのサンノジも上がってきました。最初の一のし、こんなに強烈だったかなあ。久々の強い引きにテンションが上がりますねえ。傍らでY先生はヤマブキベラをヒットさせ、その派手さに興奮しておられました。(私も高知に通い始めた頃は釣れるたびに興奮してたなあ。)
 私のポイントではその後もアイゴが当たり、足元にはキバンドウや20cmくらいのグレも見えはじめました。アタリが止まっていたY先生に潮が引いて釣りやすくなった左隣のポイントへの移動をお勧めしたのですが、何と移動した途端に潮が止まってしまいました。

 それでも13時ごろからはアタリが復活し、アイゴの合間に強烈なやつもヒット。Y先生は何度も何度もブチ切られ、私も2号ハリスを何度か切られてタイムアップ。14時半にやってきた船で帰港しました。
 結局松バエはコッパすらヒットせず。実は目的地が古満目になった時点で負け試合の気分でしたが何やかんやと竿が曲がり、終わってみればかなり楽しい1日になっていました。特にヒット数が多かったY先生は大興奮、大満足のうちに時間が過ぎていったようで、案内役としてはそれが一番嬉しかったですね。

 さあ、ウォーミングアップは終わりました。あとは明日グレを釣るだけです。
 絶好調のY先生に次々ヒット!アイゴが多かったけどバラシも連発。  足場の悪い松バエ船着き。グレはどこへ?
 ● 古満目 komame
利用渡船 安岡渡船 出港地 高知県大月町・浦尻の岸壁
時間(当日) 6:30〜14:40
料金 A.Bコース 3500円
Cコース  4000円
駐車場 無料 弁当 600円
宿/仮眠所 民宿を運営 システム 磯割り制(Aコース、Bコース)
 +フリー区(Cコース)
磯替わり 可能 特記事項
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・幡多郷、そして柏島へ

 その夜は久しぶりに幡多郷に宿泊。相変わらず美味しい魚料理に舌鼓を打ち、時間を忘れて昆虫や魚の話をし、眠りに就いたのは22時頃だったか・・・。いや〜、Y先生の暴れっぷりはなかなか大変でしたよ。いびきはともかく、体を90度折り曲げて顔を蹴ってくるし(汗)

 翌朝は凍り付いた車を解凍して本来の目的地である柏島へ。港に到着すると平日とは思えない車と人の数に圧倒されました。沖は渋いという話だからか、私たちが利用した蒲葵島
(びろうじま)廻りの井上渡船のお客さんは3組だけでしたが。
 一時はよく通った柏島も井上渡船も本当に久しぶりです。その間にお世話になった先代船長が亡くなり、赤バエの高場の一番上から飛び降りた私を無事に帰還させてくれた息子さんが跡を継がれていたとは。

・蒲葵島 高場の奥
 井上渡船は6時半過ぎに港内に居付いているイルカに見送られながら出港。私にとっては久々の、Y先生にとっては初めての絶景の中を進んで、目的の蒲葵島にたどり着きました。始めに3人組を池田バエに降ろすと、次に私たちに声が掛かりました。「高場の奥と高場、どっちに行く?」と。
 どうやら両方とも尾長が当たっているようです。何なら一人ずつ分かれて上がるという贅沢使いをしてもいいと言われましたが、磯釣り2日目の先生を一人にするわけにもいきませんからねえ。結局一度は上がってみたいと願っていた一級磯高場に気持ちを揺さぶられながらも、何度か上がってある程度状況が分かっている高場の奥を選択しました。私の勘がこっちに行けとも言ってたもので。

 Y先生には船着きに留まってもらい、私は崖をよじ登って高場側の平らな所まで移動して準備開始。
 ワンド内にマキエを打ち込むとすぐにハコフグ、キツ、キバンドウなど様々なエサトリが集まってきました。小さいけどグレも混じっています。今日は釣れるぞ!とワクワクしながらG5のウキ、ハリス2.5号、ウキ下2ヒロの仕掛けを投入。足元の半円形のハエ根の周辺と、その沖のワンド中央部を攻めていると5投目くらいでウキが勢いよく消し込みましたが、アワセを入れる前にハリスが噛み切られていました。

 そのしばらく後、7時42分には磯際の一番凹んだ部分に入っていったサシエに何か食いつきました。ほとんど無抵抗で上がってきたそれはなんとジエンドフィッシュことタカノハダイ。とはいえ、これはたまたまサシエが変な所に入ってしまったことによる事故だろうと全く不安には思わなかったんですが・・・。
 しかしそれ以降アタリは見事に遠のきました。開始直後からそうでしたがエサトリはたくさん集まっているのにサシエを全く触りません。ハリスを落とし、ウキを0号に換え、エサトリの棚に合わせて1ヒロを釣ってもダメ、深く入れてもダメでした。
 一方、Y先生の方は今日もアタリに恵まれて強烈な引きにハリス切れを連発する中、7時53分に人生初のミドルサイズのイスズミを取り込んでおられました。
 昨日も今日もなぜこんなにもアタリの数が違うんだろう?もしかして3年ほど外の小屋にほったらかしだった集魚剤と、同じく冷凍庫でほったらかしていた加工オキアミをマキエに混ぜ込んでしまったからなのだろうか?
 この日もY先生は好調!  Y先生、人生初のイスズミ。  タカノハダイとリュウグウベラ。私は午前中これだけ。

 9時ごろにもう1軒の「いのうえ渡船」が持ってきてくれた美味しい弁当を楽しんだ後もY先生はたびたびラインブレイク、私は8時48分に磯際でリュウグウベラが食い付いた他はほぼエサを触られずという状況が続いていました。しかし12時を回るとようやく状況が変わり、12時10分に43cmのサンノジがヒット、ハリ外れとハリス切れも数回発生しました。
 この時のハリス切れはグレではなさそうな感じでしたが、特筆すべきは半円の棚の少し沖から凄いスピードでウキを消し込んだ一撃でした。掛った魚はその勢いのまま磯際に突進し、ドラグを絶叫させ続けました。その強烈な一のしを凌ぎ切り、取られた糸を少し取り返したところで2撃目。今度は沖へ沖へと一直線に走り出し、ドラグは再度絶叫しっぱなし。私にベールオープンという手を思い出させる暇も与えずハリスを分断していきました。仕掛けを回収するとハリスも道糸も奇麗なままで、ハリスの下部が奇麗に断ち切られていただけ。巨大なマダイでも食い付いたのかと思いましたが、船長の話ではこの磯にはマダイはいないとのことでした。何にせよ1.75号の竿とハリス2号ではどうにもならんかったでしょう。

 13時を過ぎると風が南西に変わり、海がざわつきはじめました。再三の磯替わりの誘いを蹴って待ち続けていたのはこの時です。しかも状況は確実に良くなっているので期待はさらに高まります。
 ところがどうしたことか、13時37分に42cmのサンノジが来ただけで14時過ぎにタイムアップ。Y先生も14時12分に尾柄にハリを掛けるという形で初のサンノジを取り込んだところで納竿となり、迎えに来た「いのうえ渡船」に乗り込んで帰還しました。

 結局この2日間、2人掛かりで1枚のコッパグレさえ手にすることはできませんでした。クーラーの中身もY先生のヘダイ1匹のみ。昨日の古満目では目の前の黒ハエで41cmと36cmの口太、今日の柏島では2つ隣の低場で50cmオーバーと40cmの尾長が仕留められていたというのに。

 美しい風景と多様な魚たち、そして瀬戸内ではなかなか味わえない強烈な引き。デビュー戦のY先生は磯釣りの魅力にすっかり魅了されてしまったようです。一方で私はコロナ前よりもさらに酷い貧果を突き付けられ、これで何の未練もなく磯釣りを止められると思って帰路に就くことになりました。
 でも、思い返すと磯に立っていた時は楽しかったんですよね。それにやっぱり悔しいし。止めるのはあと一回惨敗してからにしようかな・・・。チャンスがあったら来月あたりまた行こうかな・・・。
 
 高場の奥と、隣にある憧れの磯・高場。
再三磯替わりを勧められたけど・・・。
 終盤になってようやくヒット。サンノジでしたが。

 ● 柏 島 kashiwajima
利用渡船 井上渡船(甥) 出港地 高知県大月町・柏島
時間(当日) 6:30〜14:45
料金 5500円
駐車場 港:500円 弁当 700円
宿/仮眠所 民宿を経営 システム 磯割り制(5交替)
泊まり優先
磯替わり 数回
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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