・悲願達成!
  夢にまで見た魚をついにこの手に!

2005年 10月25〜26日 高知県四万十川河口域大方町入野漁港

地球上でも高知、宮崎、種子島といった極めて限られた地域にしか生息しない巨大魚、アカメ。Lates japonicusこの魚を本気で釣ってやろうと考え始めたのは今から6年ほど前になります。

メーターオーバーを夢見て夜通し巨大なルアーを投げ続ける釣り、アカメ釣りといえばそんなイメージがあるし、実際それがスタンダードでもあります。しかし僕の場合は当初から餌での釣りのほうに関心を持ちました。

大物をやるにはタックルの問題もありましたし、それまでに何度となく多彩な魚種との出会いを経験させてくれた和歌山県日高川河口の活きエビでのメッキ釣りと同じ感覚で、アカメの若魚をメインターゲットとしながら汽水域に住む様々な魚たちも合わせて狙えたらいいなと夢を膨らませ、奈半利川や赤岡、夜須などに何度も行きました。播磨灘や大阪湾ではスズキ・チヌ・メバルなどの代表的な釣り方でもある「エビ撒き釣り」の道具を持って。

しかし結果は全くといっていいほど出ませんでした。多彩な魚種どころかフグが数匹とか、一晩がかりでスズキ1尾だけとか。
あまりの貧果の連続にルアー釣りに転向したりもしましたが毎年夏が来るたびに懲りもせずに高知へと出かけていきました。

そのうち、釣りの記事はもとより、アカメや汽水魚、また植生に関する研究論文、河川開発に関する資料などを調べていったり、実際にフィールドで経験を積んでいくうちに少しずつ分かってきました。いかに的外れなことばかりを繰り返していたかということも。

成魚の実績は十分でも繁殖が確認されていない東部でやるのには無理があったのです。行くべきは中部・西部。
その中でも特に四万十川を攻め続けようということを決意したのですが、以前書いたようになかなか釣りをさせてもらうことができず、小型のアカメが生息する条件を満たしたポイントを発見して自信満々で挑戦したこの春の釣行でも激しい引き潮に阻まれてどうすることもできませんでした。

そして巡ってきた今回のチャンス。春の失敗を踏まえて潮の研究から始めました。
釣りの途中に潮位が前回の8時のレベルを下回らない日。そして長時間釣りが続行できる日。ということで26日を選択。
4:58(潮位65cm)→13:13(141)→18:24(130)と、朝から毎時約9.5cmずつ潮が上がってきてからは暗くなるまで安定して釣りが続けられます。

4日の大潮とも迷いに迷ったのですが、その日はよく考えたら職安の日(汗)それに急な下げがなく、高いレベルで推移していくほうがポイントに寄った魚が離れないかななどと都合よく解釈して当日を待ちました。


今回は拡張型心筋症を患って以来、初めての単独行です。無理をしないように十分余裕を持ったプランで行きます。
前日の夕方に兵庫を出発して、道中なり現地でゆっくり睡眠をとってから釣りに臨み、その日は四万十市に宿泊したあとまた一日かけてゆっくり帰ってくるというのが概要です。


ということで相生を17時に出発。気楽な一人旅ゆえにSAなど寄り道もし放題。通いなれた道を運転しながら、カーステレオに合わせてご機嫌で歌っているうちに、あっという間に大方町に到着。(最近国道2号線と56号線を走っているときの感覚が同じなんです 笑)ここの道の駅に車を停めて一夜を明かすことにしました。

しかし10月の高知とは思えないほどの寒さ。頭から爪先までジンジンと冷え切って眠れません。車に乗っていたあらゆるものを被り、最後には暖房まで入れたけどそれでもほとんど眠れないまま夜明けが近づいてきてしまいました。そういえば道中の温度計は22時ごろに8度だったなぁ・・・

仕方がないので移動を開始。ジョイフルでゆっくり朝食と薬をとり、コンビニで買い物を済ませ、ポイントの下見をしながら狙いの場所に着いたのは6時半。予定時刻より早いけど釣りながら潮が上げてくるのを待つとしますか。


いつものように挨拶代わりの撒き餌を入れておいてから前回と同じ仕掛けをセット。肌を刺す冷たい空気の中で水中に点在する障害物をポイントと定めて打ち返ししていきましたが反応なし。まあ釣れはじめるのはもっと潮が上がり、また気温も上がってきてからだろうと思っているからそれでも気軽にやってました。

今回はアカメ以外にもう一つ目標がありまして、それは15種類の魚を釣りあげることでした。最も魚種の多い秋、さらに四万十川ということで頑張ってクリアしたいものです。

その1種類目が掛かってきたのはやはりポカポカと太陽の光が差し始めてからでした。コトヒキ7cm。まあ、1種は1種です(笑)
直後からいよいよアタリが連発。ジワジワと沈んだあとウキが横方向にキュン!と走るメッキ(ロウニンアジ&ギンガメアジ)のアタリ。
10cmから20cmとかなりバラつきがありますが、群れで入ってきているので次々アタリが出ます。
針をエビ撒き専用9号から速攻グレ5号へ、エビを尻掛けから頬掛けに替えてからヒット率アップ!


潮のほうも予定通り上がってきて、棚を替えて障害物の上を釣ったり際を釣ったり中に突っ込ませたりと選択肢が広がってきました。

アタリはやはり磯でのシモリ狙いと同じように刺し餌がそれを掠めて流れるときに多く出るのですが、なにせ汽水域のことなので流れが1投ごとにめまぐるしく変わり、右に行ったり左に行ったり前後に行ったりUターンしたりと予測不能、すべて運任せです。


9時10分ごろ、思い通りの方向、思い通りの速さで仕掛けが流れました。そしてウキのトップが少し入ってから一呼吸置いて斜め横にスーッと入っていきました。メッキのアタリよりゆっくり、重々しい感じで。
メッキなどより一回り大きい魚が掛かったようです。突っ込みはありますがそう強引なものでもありません。
余裕を持って竿を起こしていくと魚の背が見えてきました。茶色っぽい体色、黒い尾びれ。ん?セイゴかな?まさかブラックバス??と思った瞬間、魚が平を打って体側を見せました。
その刹那、一気に顔色が変わりました。隆々とした体高、その割に小さな頭。鋭く太い背鰭の棘!間違いない!アカメや!!
大切に大切にタモに入れました。やったぁ〜〜!!苦節6年、ついにこの瞬間を迎えることができました!

大きさは30cmでしたが、ついに仕留めた嬉しさに体長なんて関係ありません。小躍りしながら写真を撮りまくったりあちこちにメールを送ったり、一人で大騒ぎでした。傍目には怪しい人物に見えたんだろうなぁ(笑)


興奮状態のまま釣りに戻りましたがその後は退屈しない程度にメッキやキビレが竿を曲げてくれ、マハゼも釣れて5種類ですが、正午を過ぎると満潮の潮止まりが近づいたためかアタリがなくなりました。
アカメという最大の目標を達成したので、次はより海水性の魚を釣ってみようと思って移動。車を飛ばして四万十川の西の最下流、初崎漁港に向かいました。


波止を回ってみると面白そうなポイントは多々あったのですが、とりあえず本流に面した大きな石畳の切れ目の駆け上がりを攻めてみることにします。

底を撫でるように流せばハゼやギンポ仲間などもいろいろと釣れてくるかも!と期待したのですが、出迎えてくれたのは快速を活かしてキラキラと輝きながら撒き餌を拾うメッキの群れでした。そして、25cmほどのヒラスズキ、スズキ。次々と当たってきてくれました。
そこに海から小さなウルメイワシの群れが入ってきたからさあ大変。辺りはボイル!ボイル!えらい喧騒です!
ただ、ウルメの群れが去るとともにメッキもセイゴも後を追っていってしまい、な〜んにも居なくなってしまいました。


あまりにも釣れないので見切りをつけて移動とは言ったもののどこで再開しようかなと考えながらあちこちポイントを走り回ってみましたが、結局は朝にアカメを釣ったポイントに舞い戻ってしまいました。
再び準備を整え、釣りを再開したところへこの釣行のほんの数日前にネットで知り合うことのできた四万十市の「だいきち」さんが遊びに来てくれたのです。またワイワイと楽しく様々な話をすることができて、本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。
ただポイントを離れて時間が経っていたのでまた撒き餌を最初から始めねばならず、居られる間に竿を曲げるところをあまりお目にかけることができませんでした。ようやくアタリが連発し始めた頃にお別れの挨拶をしなければいけなかったのが残念でした。


すっかり太陽も傾き、いよいよ夕マズメの最後の勝負!打ち返しにも気合が入ります。
潮は当然ながら変幻自在。おっと、またいいところへ流れていきました。当たれ、アタレ、あたれ、当った〜〜!
前触れも何もなく一気にウキが凄いスピードで走りました。間髪いれずその反対方向に合わせ!!
ギュイーン!今度のはパワー全開で右へ左へと突っ込んでいきます。これは今までのと全然違います。竿を持っていかれそうになるのを腰を落として何とか凌いでいきます。このときに頭の中にあったのは春にバラシたスズキ。これはきっと70〜80cmはあるはず!!
悶絶しながらどうにか水面直下に引きずり出すことに成功しました。むむむっ!違う!またアカメや!!
朝の30cm1歳魚とは迫力が違います。さらに精悍な魚体、銀色の体には何本もの横縞を浮かび上がらせ、夕方の光を浴びた唯でさえ赤い目は燃えるように輝いています。
スズキとは迫力の違う豪快な鰓洗い、足元に来ても尾長グレのように何度も何度も底へ向かって突っ込んでいきます。
それでもどうにか一発でタモに収まり、安堵と喜びの中で引き上げました。

47cmと縞模様の残るアカメの子供(このサイズで3歳魚とか。)ですが、実に堂々たる迫力。
このあたりのサイズで食性が変わることを考えれば、これくらいがエビ撒きで狙える最大級のサイズなのかもしれません。
何度も何度も懲りることなく挑戦した甲斐がありました。長く釣りをしていてもこれほどの満足感はそう何度も味わったことはありませんでした。



この後はメッキが数尾釣れてきただけで餌もなくなり終了。大満足で宿に向かい、翌日はさらに種類を稼ぐべく、室戸仕様の紀州釣りの道具を持って大方町入野漁港に寄ってみたのですが、残念ながら目ぼしい釣果はなく、それでもタカノハダイやヨメヒメジなど5種類を追加して二日間で合計13種類で釣りを終えました。
2種類足りませんでしたが、なんといってもその中には夢にまで見たアカメという名前が入っています。

この魚にとっても他の多くの魚たちにとっても絶対に欠かすことのできない藻場の消失、驚くほどの成長、食欲、特大水槽&ほぼ海水での飼育など一般家庭での飼育には全く向かないにも関わらず希少種というだけで高値で取引されることによる稚魚獲りの脅威など、取り巻く環境は厳しいものですが、多くの釣り人に夢を与えてくれるこの魚がいつまでも悠々と泳ぐ土佐の海であり続けていてほしいと願いながら帰路につきました。

            1尾目のアカメ、30cm。 角度によって真っ赤に輝きます。
           2尾目のアカメ、47cm。 初崎港ではこれらが大騒ぎ
今回の釣獲魚種
・アカメ ・コトヒキ ・キチヌ
・スズキ ・ヒラスズキ ・マハゼ
・ロウニンアジ ・ギンガメアジ

・タカノハダイ ・ヨメヒメジ
・オオスジイシモチ
・ホシササノハベラ
・オハグロベラ
四万十川最下流の初崎港から上流方向。
この対岸では魚種豊富な支流、竹島川を本流から切り離す
工事が進められているようで、非常に大きな影響が心配されます。
(その後、工事は中止されたそうです)


今回初めて釣ることのできたアカメ2尾はしっかり血抜き等の処理をして持ち帰り、きれいに残さず食させていただきました。
かなり美味しい魚ですが、骨などが非常に硬く、下ごしらえは元魚屋の僕にとっても物凄く大変でした。
調理する道具や自信の無い方はリリースされたほうが無難かと思われます。また必要以上のキープは絶対に避けるべきでしょうね。(そんなに釣れる魚ではありませんが・・・)

このエビ撒き釣り、関西地方では一般的に行われている釣りですが、本州から持ち込んだエビを撒くことで、四万十川にも生息するスジエビの遺伝子を汚染してしまう危険があるのかもしれません。
知らず知らず恐ろしい釣りをしてしまったのでしょうか。
スジエビにどれだけの地域固有性があるのか恐らく誰もはっきりとは知りませんが・・・
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