・風に吹かれて憂さ晴らし?
         春の足摺・小才角旅日記

2006年 3月30日〜31日 高知県足摺岬(伊佐)、小才角
・いざ、土佐清水へ!
ちょっと色々とあって疲れていたので、気持ちのバランスを保つために釣りを・・・と言っても桜の蕾もまだまだ固く、海水温も未だに9度しかない瀬戸内に居ては何もできないので思い切って橋を渡り、土佐路をゆっくりと旅してきました。


今回は小さいのは要らない。一発大物、尾長が出る所へ!そうだ、小才角に行ってみよう!
2年前の夏、土佐清水での紀州釣りの時にカルロス・ガ〜ンさんから聞いた秘境・小才角の魅力。いつかは確かめたいと何度も計画を立てるも、入院やら大寒波やらでどうしても行けなかったあの場所に今度こそ。
天気予報を見て日を決めると、何とその日は時間があるというガ〜ンさんがご一緒してくださることになりました。
しかも前日は自宅に泊めて頂けるとのこと。こんな嬉しいことはありません。


時間に縛られない気楽な旅。寄り道して色々美味しいものでも探しながら高知の春をゆっくり味わおうということで、29日は昼を待たずに出発しました。
山陽自動車道に上がりアクセルを踏み込み一路西へ!今日はいつになく順調な滑り出しです。しかし何か釈然としないものというか、変な胸騒ぎがします。忘れ物??運転しながら積み込んだ荷物を思い浮かべていきました。
うわっ!フローティングベストを積んでない!!当然ポケットにはあらゆる道具が詰まりに詰まっています。あれが無いことには釣りをすることなんてほとんど不可能です。一瞬にして顔が青ざめました。
幸い早い段階で気が付いたのと、ちょうどインターチェンジの手前だったのですぐに高速から離脱。Uターンして家路に・・・。

気を取り直して再スタートしたとき、相生では小雪が舞っていました。
南のうねりには弱い小才角に行くために、わざわざ北西風が吹きそうな雨の後を狙って日程を組んだ今回でしたが、度が過ぎるもいいところ、あまりにも酷い冬型になってしまいました。こんな時期に雪なんて・・・。

トンネルを抜けるごとに雪、晴れ間、横殴りの土砂降りが激しく交錯する山陽路を越え、風の中をハンドルにしがみつきながらどうにか瀬戸大橋を渡って豊浜のサービスエリアに入っても眼下に広がる海は俄かには瀬戸内とは信じられない波しぶき。


しかし長い長いトンネルを越えて高知に入ると風景は一変しました。
瀬戸内の光景が嘘のようなかなり穏やかな青い海。満開、いや今や盛りを過ぎて葉桜になりつつある桜並木。咲き乱れる山吹の花。芝桜。道端にはカラスノエンドウの小さな紫の花。
田んぼにはすでに水が入り、田植えの終わっている所すらあります。さらに夜になるとあちらこちらから聞こえるカエルの合唱。
瀬戸内に居ては想像もできなかった光景でした。数時間にして冬から春、初夏の時間を旅してきたような・・・。これじゃ時差ボケならぬ季節ボケをしてしまいますがなっ!^^

別段急ぐこともないのでノロノロ運転の車に先導されて高速で60キロ、下道で40キロでパレードさせられても、いつも程にはムカムカすることもなく須崎で丼に舌鼓を打ち、中村を過ぎるとガ〜ンさんの待つ下川口まであと一歩。おっとその前にスーパーで食料の買出しを。
折角だから鮮魚コーナーも覗いてみよう。何々、30cm弱の口太が350円、生簀で泳いでいる銀ワサが一尾4000円、このでっかい「ひだりまき」が300円??タカノハダイなんて売れるのかな?

そんなこんなで下川口のガ〜ンさん邸に到着したのは夜の8時前になっていました。
にこやかに迎えてくださったガ〜ンさん。そして突然の来客者に警戒半分、興味半分で微妙な距離を保ちながらこちらを見つめてくるガ〜ンさんの「愛娘」猫のブ〜ちゃん^^
運転の疲れもすっかり忘れて遅くまで楽しい時間が続きました。
日本海?太平洋?
いえいえ、これは
瀬戸内海。
香川県豊浜の海です。

・足摺でガ〜ンさんと勝負!
30日はいよいよ小才角、セリツケでガ〜ンさんと対決!のはずでしたが、昨夜到着早々に「船が出ません!」ガクッ。とりあえず足摺岬の伊佐に釣り場を変更し渡船に乗り込みました。
海は一見穏やかそうですが、やがて風が吹き荒れそうな気配。とりあえず磯が大きく底物も上物も両方できる、足摺岬灯台の真下の「カジヤバエ」に渡礁。ガ〜ンさんは東の底物場、僕は西側の低い所に陣取ります。

足摺は8年ぶり2度目の挑戦です。前回は近所の釣具屋の店長と一緒に来て、上がった磯はこのカジヤバエ。釣果は木っ端1枚でしたがその時の釣行は忘れることもできません。

南西の高い場所で竿を出していた店長が突如として襲ってきたドカ波に飲まれ、僕の足元を転がりながら眼下の海に消えていったのです。
しっかりベストの股紐も締めており、幸い払い出しに乗って一気に沖に流されたため大きな怪我もなく自力で磯に戻ってくることができましたが、「自然は人間を容赦なく本気で殺そうとする」という厳しい一面を2人して体に叩き込まれた貴重な釣行でした。


慎重に足場を選んでいよいよ紺碧の海にウキを投げ込みます。アタリを求めて2投3投・・・。すると程なく押し寄せてきました。カジヤバエの刺客が。
今回は大波ではなく予想通りの西風でした。こんな風くらいいつものことなのでドンと構えて釣っていきますが、ドンドン強烈になって行きしぶきを被り始めました。道具が飛んで行きそうです。しかもアタリどころか餌すら齧られない状況。
「風が吹き出したらこっちに来なさいよ〜」と言ってくださってましたし、折角なので東側のガ〜ンさんの隣のポイントに早めの引越し。

ガ〜ンさんと二人でヒイヒイ言いながら岩山を登って道具を運び終えた頃にはすでに西向きは立っていることもしんどいような状態に変わっていました。
しぶきは高い岩山を軽々と越え、底物場にも次々と降り注いできました。風も回り込んできます。
慣れている僕はともかく、ガ〜ンさんはすっかり参ってしまっていました。
相変わらずアタリもないし、弁当船で岬を回って東に逃亡することにしました。


西でも東でもどちらにも回りこめるのが伊佐の強み。東の果てから2つ目のキッタテは先ほどの荒れ模様が嘘のようにベタ凪でした。気を取り直してそれぞれ再スタート。

撒き餌を撒くと10cmくらいの魚の群れが走り回ります。トンゴロ(トウゴロウイワシ)です。
他の場所では見向きもされない魚ですが、この辺りでは大変に珍重されている魚だとか。しかし集団できっちりサシエを掠めていくフカセにとってはなかなかの厄介者です。
と言ってもそう困り果てるような相手でもないので気にせず釣っていきますがなかなかアタリがありません。
やっとの思いで竿が曲がったと思ったらサンノジでしたし。

そもそも底物ができるような磯ではないですし、小さな写真立に入ったあさちゃんの遺影と一緒に竿を出しているガ〜ンさんにも反応は全く無し。


しかしそんな状況も短時間で変わっていきました。
巨グレがイナバウアーを始めたわけでもなく、石鯛が磯際であくびしたわけでもなく、ヤツがやってきたのです。

東から一陣の風が舞い込んできたと思ったら先ほどの再現。あっという間に風の塊が叩きつけるようになり、辺りの海は白兎で埋め尽くされました。
まさか刺客がここまで追ってくるとは。風向きまで一変してしまうとは・・・。
これにはさすがに挫けました。2人とも戦意喪失。12時で白旗を掲げて全面降伏(涙)
ガ〜ンさんの案内で足摺岬の観光を楽しんだ後に大月町の宿に向かいました。

穏やかな日の出に期待も膨らんだのですが・・・ キッタテにて。穏やかな時間は束の間の夢。
風雲児まじっくの威力に、さすがのガ〜ンさんも
お手上げっ!
帰りの渡船より。右の磯がカジヤバエ。

・いよいよ初の小才角へ!
宿に入って一息ついてから一階の居酒屋兼食堂で腹ごしらえです。メニューに載っている「トンゴロのから揚げ」を食べてみようと思ったのですが生憎欠品。「最近全然捕れなくてねえ・・・」その代わりトンゴロの美味しさについて宿のご夫婦とたまたま呑みに来ていた漁師さんが熱く語ってくれました。話だけじゃ腹が減るばかり。今はトンゴロ、足摺に行かなきゃ居ないのかな・・・。

そうこうしていると他のお客さんも食事に降りてこられました。翌日は中泊で青物を狙うという高砂からのルアーマンと、これで3回目の巡礼をされているというご夫婦。毎日荷物を担いで20〜30キロは歩いておられるそうですが、年を聞いてビックリ、なんと77歳!!二人揃ってまさに健康の塊でした。凄い!
話が盛り上がりましたよ。


さて、31日は5度目の挑戦でついに小才角の磯に上がることができました。しかも名礁一ヶハエ!
3組4人での渡礁ですのでポイント割をしなければいけませんが、ここは男らしく拳と拳で雌雄を決することになりました。アタァ!!
壮絶な殴り合い・・・じゃなくてジャンケンの結果、僕は南の先端に入ることになりました。尾長グレ、覚悟っ!

しかし潮は動きません。しかも撒き餌を撒くと海の色が一瞬にして青や緑に染まります。
キビナゴの大群。青物狙いならともかくこんな大群が居るときにグレが見えたり釣れたというようなことはこれまで一切無いだけにこの時点で諦め半分。
案の定反応はほとんど無く、ウキを持ち込みきれず放されてしまったアタリが2回と木っ端のみ。弁当船を機に磯の裏側のデベソという場所に荷物をまとめて歩いて引越ししました。

しばらく釣っていると他の人たちも「釣りにならん!」といって東向きに替わって来ました。岩の壁に遮られているので気づかなかったのですが、西向きは穏やかだった朝が嘘のように風が吹き荒れていました。今日もまじっく発動ですがな。

でもさすがに一ヶハエ。東向きは何の苦も無く釣りを続けられました。が、海は相変わらずキビナゴだらけ。しかもトンゴロの大群も登場。もしかしてトンゴロがいないのはあの宿だけなんじゃ・・・。
しかしグレが居るのも中村のスーパーだけなのかもしれません。結局一ヶハエでは木っ端が3枚とウスバハギ1枚だけで終了してしまいました。


やはり沖の島などと比べてこの小才角や大浦はバクチの要素が大きいようですね。一度は真の力を味わってみたいなあ・・・。
釣果はさっぱりでしたが今回も楽しい旅になったので、帰途に着いたときには憂さはスッキリ晴れ渡り、目的はいつの間にか達せられておりました。

↑年に何枚も60cm級が出るという
小才角の磯群でも一番の人気を誇る
名礁一ヶハエの先端付近より西方向。
向かいもこれまた大人気のツナカケ。
風雲児まじっく発動前と発動後の様子。




 ←海は一面この有様。
イワシ網があったらクーラー一杯くらい
軽かったのになあ(笑)
今度から持ってこようかな^^
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