瀬戸内の長い長い冬がやっと終わりを告げました。
一年中何かしら魚が竿を曲げてくれる太平洋側などと違って、瀬戸内のどん詰まり、播磨灘の西部は冬場の海水温は6〜7度、今シーズンなどは酷いときには4度にまで落ちました。塩分濃度の低い静かな湾奥では海面が凍りつくことも数度に及びます。
当然、魚は姿を消します。12月後半から4月半ばまでの4ヶ月間は沈黙の世界となります。(メバルなども無理をすれば釣れないことはないですが、乱獲がたたって他の地域より2回りも3回りも小さく数も少ないし・・・)
そんな恨めしいほど長い時間に別れを告げ、待ち焦がれたチヌの便りが届くとき、浜辺は一気に色めき立ちます。
それも当然、長物を除けば普通に40cmを越えるような魚なんて、チヌ・スズキ・コブダイ・ボラの4種類しか存在しないこの海域において、そんなチヌという魚は外海の方々にはまず理解できないようなありがたさがありますから。(何しろ36cmという「超大型」グレを釣ったら料金が一年間無料になる渡船があるような世界ですもので・・・)
例年通りのノッコミを期待して4月中旬以降、何度もホームグラウンドの相生湾に挑んだのですが、やはり今期の冬場の冷え込みは深刻で水温上昇も遅れ、エサトリも釣れない撃沈の連続でした。
転機は5月2日。この日は朝のうちに雨が降り多少風もあって、昼を過ぎてもはっきりしない天気が続いてました。
こういう天気の悪いときこそがチヌのチャンス!喜び勇んで午後1時前に出撃していきました。
目的地、坪根の波止に到着すると多少波気もあっていい感じです。チヌ釣りですので真っ先に、生のオキアミとチヌパワームギ(チョコレートのような匂いが好きという理由で愛用しています^^)の撒き餌を何杯も投入してから道具の準備。5.3〜6.0mのズームの1号竿に道糸2号、ハリス1.5号、チヌ針3号。ウキはとりあえずG2を固定にしてやってみるかな。
先客に挨拶がてら状況を聞いてみると、すでに3枚上げられているとのこと。ついにノッコミが始まったのですね!!
まずはよく茂っているガラ藻のやや沖に第一投!左へとゆっくり流れる潮に乗せて流していくとウキがジワジワ沈ってしまいました。これはウキ下を取り過ぎて底を掻いてしまったかなと苦笑いしながら回収しようとすると竿先がゴンゴンと脈打ってます。
なんといきなり30cm後半の銀ピカのチヌではありませんか!難なく取り込んだもののビックリ。隣の先客と顔を見合わせました。
とりあえずストリンガーに掛けて泳がしておいて釣り座に戻ると、それから5分もしないうちに今度は隣の方がヒット。
そしてこちらもウキがまたジワジワ沈んで行って35cm。
ざわつく海面。15年近くこの釣り場に通った経験から言うとまさにベストの潮の向き、速さ。それを裏付けるボラの動き。
これは凄いことになるかもしれないと思って携帯で従弟に「すぐ来い!」と伝え、ドンドン投入を繰り返していきますが、程なく天気が回復し辺りはベタ凪になってしまいました。
潮も見る間に悪くなり、隣の方が何とか1枚追加したのを最後にエサトリも沈黙。
タナを変えたり流れの筋を変えたりして探っていくのですがどうにもこうにも。
まずお隣さんが諦めて帰り、突然呼び出された従弟もあわれアブラメを一つ掛けただけで寒風に耐えかねて帰って行きました。従弟よ、済まぬ・・・。
釣れないままに時間が流れてもう日は山の端に隠れ、一気に気温が下がっていきます。
2枚目を上げてからもう5時間以上。ウキも見えにくくなったしさすがにもう帰ろうと思っていたその時、波の下をくぐって流れていたウキが視界から消た!
竿を立てると一気に魚は沖へ向かってダッシュです。しかし竿尻を魚に向けて動きを止め、独特の首振りの感触を楽しんでいるうちに魚が浮いてきました。
本日最長寸の43cmです。万歳!
それからは怒涛の入れ食い!を期待したのですが、ライントラブル、ウキトラブル、回復したと思った途端に根掛かりでの高切れ。さらに一人で足を縺れさせてテトラの上で転倒とか、漆黒の闇が刻々と迫りくる中で情けないくらいのトラブル連発で結局40cm弱のを1枚追加しただけ合計4枚(久しぶりに食べたかったので2枚だけ〆て持って帰りました。時期が時期だけに味の期待はしていなかったけど、なぜか脂が乗って薄造りにしたら美味しかったな〜)で終わってしまいました。
自業自得ですな。皆さんも焦りから来るトラブルの連鎖にはお気をつけて。ゴミ等の放置による近隣住民とのトラブルにもね。波止や地磯だからということじゃないですけど。
その2日後、4日の憲法記念日には混雑を避けるためと大物を期待して2年前から開拓中の地磯に行ってきました。
車を停めて、バッカンを抱えて大汗かきながら徒歩25分。心臓のことがあるので実際は休み休みもっと時間をかけてゆっくり歩いていったのですが。
以前に50cmに少し足らないサイズを出したことのあるポイントですが、2年間かけて釣れたのがその1枚だけという釣り場です。
今回もアタリは遠く、20cmほどのアブラメと手のひらサイズのムラソイやガシラが上がる程度。
4時ごろになってようやく38cmのチヌを一枚ゲットです。ノッコミ期なので竿を立てるだけで上がってくるのが悲しいですが・・・。
しかし、これから!と思った矢先、海が豹変しました。
それまでのベタ凪が嘘のように一瞬にして波が高くなってきて手の付けられないことに。
頭からバシャバシャ何発も飛沫を被り、バッカンも危うし。
原因は沖を行く船です。底曳き漁船が網を曳きながら一斉に港へ戻ってきたのです。
ベタ凪で恐ろしいほど出漁していたらしく、1時間の間ほんの少しもその隊列が途切れることはありませんでした。
その曳き波が増幅に増幅され、ビックリするような高波になるのです。しかもそれぞれのエンジンが立てる低い唸り声も一瞬も途切れることなく響き続け、耳を、体を、磯を振動させ続けます。
なんと言っても「小さくても大きくても獲れるだけとにかく獲りまくれ!獲り尽したら淡路でも岡山でも四国でも行って獲りまくれ!」というのがここらの漁師の美学。
そして1時間後、船の隊列が途切れると、夢でも見ていたかのようにそれまでの穏やかな海が帰ってくるのです。
まさに1時間限定の時化。凪げば凪ぐだけ波が高くなるここらの海って・・・。
家島などの磯で朝夕のこの現象を知らないでバッカンなどを流され、泣いている人を見かけることがありますのでご注意のこと。
えらい脱線してしまいました。
で、暗くなるまでやって結局のところの釣果はあの一枚だけ。ポイントまでの労力に比べてこの実績じゃ他の磯を開拓しなおす方がよさそうですな(涙)
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相生名物の牡蠣の
筏と蔓島(通称、
おわん島)
その沖は家島諸島
の西島です。 |
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