風雲児  烈風伝
   ・まさに神懸り!
        奇跡連発 笑撃の鵜来島釣行記

2006年 11月16〜17日  高知県鵜来島
・プロローグ
長期の出張の仕事を終えて久々の暇な時間を得た従弟から「四国へ釣りに行こう」という話を持ちかけられたのは15日の午後4時過ぎでした。
高知の天気予報を見ると翌日・翌々日は波の予報は1,5mというベタ凪で、その後の週間予報を見ても行くなら今しかない!とのこと。
物凄く急な話にも程がありますが、最近は鵜来島の水島界隈から巨グレの情報が度々届いていたこともあって僕もついついそれに飛びついてしまいました。

大急ぎで鵜来島、カメ&グンカン廻りの予約を入れ、家の中を走り回って道具を準備し、そして最新の天気予報をチェック。
むむむ!高知は高知でも鵜来島のある西部だけが2.5のち2mの予報に変わってる!!でも17日は1.5mのままだからいいか♪それにしても出発に合わせるように千島で地震発生、北海道などに津波警報とは・・・。

従弟の運転する車は9時に相生を出発。順調に四国を目指すかに思われましたが、瀬戸大橋では風速13mの風と50キロの速度規制が待っていました。隙を見てハンドルを引っ手繰ろうとする横風はこれからのとんでもない釣行の前触れだったのかもしれません。

・トロピカルパラダイス、ポートNo.2
とは言え他には特に何もなく、予定通りに宿毛・片島港に到着。
眠り込む間もなく、乗り込んだ宮本渡船は他に香川から来られている3人組だけを乗せて5時に出航。
横になって着くまで寝てしまおうという考えは片島港を出るや否や背中を突き上げてくる激しい波によって阻まれました。

結構時化ています。3人組が上がったミツバエも風がビュンビュン。当然その先の磯は釣りになりそうにもありません。
僕ら二人は港の2番に上げてもらえたので風は時折舞い込んでくる程度。
荷物を移動したり釣りの準備をしているとワレ辺りに着けていると思われる他の渡船のマイクから「急に水温が下がったから・・・」という声が流れてきました。その後がよく聞き取れませんでしたが、「ええかもしれん」で終わってました。
まあせっかくだからいい方に強引に解釈しよう。

  姫島と水島群礁を背景に竿を出す従弟。
この磯に上がるのは3度目なのでポイントも釣り方もはっきりしてます。元旦にたくぼんさんがやっていた通り沖の島向きに陣取ってパラパラと少しずつ撒き餌をしながら際を攻めていきます。
しかし一投目からグレではなくカゴカキダイ。実は美味しい魚ですし、丸々太って型もいいので〆てキープ。しばらくしてシラコダイ。これも煮付けにしてみようかとクーラーへ。お次は角の生えたハコフグ、ウミスズメがヒット。毒は無いですからそのまま焼くことで甲羅にヒビを入れ、醤油を垂らしながら食べればいいのですが、ちょっとでかすぎて家の魚焼き機に入りそうも無いのでリリース。
む!今度は少しは手応えのある魚が来た!と思えば真っ青な尾長でした。ただし大きさは30cm。
ですがまあ何という痩せっぷり。気の毒になるくらいペラペラでとても食べる気になどなれませんのでリリース。

その後はまた餌取りパラダイスです。どこに投げてもサシエは残りません。サシエどころか針もすぐに跡形も無く取られてしまいます。原因を証明するがごとく従弟はキタマクラを連発。その合間にコッパギツ(リリース)、ギンユゴイ(リリース)、コガネスズメダイ(とりあえずキープ)。

そのうち潮が変わったようで、魚も少し変わってきました。撒き餌に対して青白い魚の群れが一気に競り上がってきます。
それもグレではなくてオヤビッチャ。まあせっかくだからお土産に何匹か確保するかと群れの中にウキを放り込むとなぜか27cmの尾長が釣れてしまいました。
今度のは丸々して美味しそう!と思ったのですが、磯に抜き上げるや針が外れてコロコロ、ポチャン。小さな腐った水溜りに一瞬にして転がり込んでしまいました。残念・・・。

こんな状況でしたが、北の岬の向こうでも南の岬の向こうでも、頭を潰された無数の白波が流れていく様を見ると磯を替わる気にもなれず、我慢して釣ってみても、11時を過ぎてもコッパグレ1枚と、従弟が黄色が鮮やかなヨスジフエダイを釣ったくらい。
その頃になるとスロープ側から風がドンドン当たるようになってきたので従弟は釣れないのを承知で裏側のワンドを攻め始め、僕の方はウキを外して丸玉オモリを通し、磯際の探り釣りへと乗り換えてしまいました。

浅い所はフカセと同じく餌取りばかりでしたが、船着きの深い所を攻めてみると重々しいアタリ!すぐに根を切り、重量感を楽しみながら上げてくると30cmオーバーのアカハタ!
味の差が激しいとは言いますがこれは刺身が楽しみです!よっしゃ!いいものが釣れた♪

従兄弟の方はと言うと深く釣っているのにも関わらず何故かダツが連発して苦しんでいます。が、サンノジにヒイヒイ言わされたり、さらに力持ちのテングハギと思しき魚にブチ切られたりと、それなりに楽しんでいる様子です。
その従弟がミツボシクロスズメダイを釣ってこちらに投げてくれたので早速三枚におろして切り身を作り、探り釣りの餌として使ってみました。

カゴカキダイ、シラコダイ、コガネスズメダイ
ヨスジフエダイ、メガネハギ、アカハタ、
オヤビッチャ。クーラーを開けた人は笑うか
はたまた呆れるか・・・。
一旦底まで沈めてハリス分+20cm上で竿先をキープ。待つほども無くコツコツと重々しいアタリが届き始めました。
それが間もなくグングンと振幅が大きくなり、スローモーションのように竿が舞い込みました。発止!とばかりにアワセ!そこそこ引きますが構わずごり撒き!
1,5号の磯竿ですがちょっとした底物気分。獲物は鎧のような皮を纏ったモンガラカワハギの一種、メガネハギでしたが(笑)

それからはアタリも無かったので納竿して迎えが来るまで磯の上で体を休めました。ミツバエの3人もスマだけだったそうです。ただ白岩では50cmくらいのグレらしきものが上がっているのが見えた模様。
沖縄の市場か熱帯魚屋の水槽かと言うような中身が入ったクーラーを船着場に置いてみんなで宿に向かいました。
収まっていくはずの波も風も朝とほとんど変わらないままなのが気になりますが、本命の明日に期待しましょう。
この日は高知でも地震によるものなのか、僅か5分で数十センチ潮が上下するという異常潮位が観測されていたようです。
新たに胸に貼り付けた悪天強暴組合のワッペンはそんなものまで呼んでしまっていたのか・・・(汗)

・窃盗、器物損壊事件勃発!朝一の惨状!
晩御飯が4時、朝御飯が5時前。その間にすることと言ったらこの島では建物を揺らす風を感じながら寝ることくらいしかありません。携帯(FOMA)も完全に圏外でしたし。
17日朝、午前5時半頃、総勢5人が身支度を整えて港へと階段を降りていきました。
泊り客の特権である優先権を使って香川の3人はグンカン高場、僕ら2人は5日前に60cmの尾長が出た水島1番への渡礁が確定しているのでウキウキと足取りも軽く。

荷物を置いている船着場が見えてきました。熱帯魚のにおいに誘われたのか(笑)今朝はやたらに猫が集まっています。別段気にせずさらに数歩荷物の群れに近づいた所で顔色が変わってしまいました。そして目をパチクリさせている従弟と顔を見合わせました。

整然と置いてあったはずのバッカンがひっくり返ってあちこちに転がり、オキアミと魚の骨や内臓が盛大に散乱しています。
3人組のクーラーは大きく蓋を開けたままになっていて中身は氷だけ、さらにクールバックに至っては穴を開けられ割られていました。
一見無事に見えた僕らのクーラーも蓋を開けてみれば魚も予備のオキアミも、飲み物も食糧も、もちろんあの色とりどりの魚たちも跡形も無く消え失せてしまっています。残っているのはやはり氷とパッケージをビリビリに破られてへちゃげたペットボトルが一本だけ。
全員茫然自失です。いや、この状態では笑うしかありませんでした。

しかし猫がここまでのことをするでしょうか。その疑問はたまたま港に戻ってきた漁師の方が解いてくれました。
「これはイノシシやな。ワンタッチのクーラーも鼻で押して開けたな。」
何でも最近はこの島でイノシシが暴れており被害が続発しているそうです。元々はこんな小さな島にはイノシシなどいなかったのに、つい最近になって海を泳いで渡ってきたやつが住み着いてしまったそうなのです。
イノシシが泳ぎが上手く、沖磯で釣りをしていると突然上陸してきて海に突き落とされたと言う話も聞いたことはあるのですが、まさかこんな島まで・・・。深浦方面からはるばる来たのか、柏島から島伝いにやってきたのか・・・。動物というのは凄いものですね。
今後鵜来に泊まられる方はクーラーやバッカンも小屋の中に入れてくださいね。
調べてみたところ、やはり潮流も関係なく、柏島から沖の島を経て渡ってきたそうです。
連絡連の船員もイノシシが泳いでいるのを時々見かけるとか。
イノシシなんて全く居なかったはずの沖の島では現在100頭以上生息していると考えられ、
鵜来でも繁殖してかなりの数になっているようです。
そのうち人の上がっている磯にまで食糧や魚を奪いに来るようになったりして(汗)

・白の乱舞!風の飛礫!これぞ鵜来!水島1番
幸いバッカンも中身のオキアミも無事だったので気を取り直してやってきた船に乗り込みました。
平日だからそんなに人はいないだろうという予想でしたが、さすがに情報が出ると凄い。道具を積み込もうにも船首は足の踏み場も無いような状態。
船長に希望の磯を告げ、船尾にたどり着くと早速片島からの客に周りを取り囲まれました。一緒の磯に乗せてくれと。
幾ら泊まりであろうとも、まさか水島1番に2人で上がるなんてことが通るはずもないことなんて百も承知ですし、断る理由も無いので承知しましたが、一度でもあの磯に上がったことがあったなら三人組ではなくて同礁者は二人にしてもらったでしょう。

船は港を離れ、いつものように本島の白岩&スベリから降ろしていきました。しかし皆が沖狙いらしくスベリへ上がろうとする人はなかなか出てきませんでした。
その間辺りを見渡せば、この白岩周辺は風も無くベタ凪。昨日とはまるっきり別世界です。だが、それはその辺りが単に風裏だっただけと言うことを思い知るのは数分後だったのです。

予定通り香川の3人は風の吹き荒れるグンカンへ。そしてついに船は我が水島1番。
僕ら二人は悠然と船首に向かいますが、たどり着いた船首では何人もが波を被りながら殺気立っていました。
先ほどの3人と他の2人の間で一悶着あったようですが3人組が結局磯に下りてきました。
向かいの2番方面も人が鈴なりです。2人上がれば狭いはずの2番のチョボなど3人がまさに肩を寄せ合って固まっています。
まあ正月はあそこに4人上がってたけど・・・。

宿で教えてもらった「1番は何と言っても鵜来向き!船着きは波を被ってどうしても出られない時に攻める程度の釣り座。」という自信満々の言葉を信じて我々は鵜来向きに釣り座を構えました。
そちら側の海面は真っ白。押し寄せてくる白波は足元で砕けて高々と12〜3mは舞い上がり、風の塊と一緒になって上から下から横から容赦なく叩きつけてきます。
風に耐えると言うことだけはどんな名人にも負けない自信のある僕にとってはいつもの鵜来だという程度の感覚しかありませんでしたし、この波こそが「来たら取る」の5号通しで掛けるためのパスポートと信じて挑みかかりました。
いくらそんな我慢大会しても本命ポイントは実は3人が陣取っている船着きだと言うことはこの時は知る由も無く・・・(以前「先生」にも教えてもらっていたのに何で忘れてたのだろう)

とはいえ最初はどうにもなりませんでした。撒き餌もままならず、足元の磯の上に落として波にさらっていってもらうのにも苦労する有様でしたが、潮が引いて一歩前に出られるようになったことで大幅に状況は改善されました。
G2負荷のウキに3B+3B+B+G2のオモリを段打ちにしてどうにか少しは馴染ませてひたすら攻めていきます。
しかし結果は全く出ませんでした。横を見ると従弟が竿を2度曲げたのですが掛かっていたのはグレじゃなくてサバ。
他はカスリもしませんでした。

昼にかけて潮が下がって行きますが被る波は変わりません。むしろ輪をかけて強烈になっていきました。風もまた同じ。
それにしてもこの時化っぷり、これが高知での最小波高、1.5mというあの天気予報の海なのでしょうか。
この日、土佐湾中部などではこれ以上無いようなベタ凪で、普段乗ることもできないようなチョボにまでも上がることができたそうで、まさか鵜来がここまで荒れているなどほんの少しも想像することだにできなかったそうです。帰りの瀬戸大橋の風速表示もわずか3mでしたし。

これでもし潮位が高ければ正月のあの惨状とほとんど同じになっていたことでしょう。しかし、今日はあのグンカンに人が乗っています。
これまで6度、グンカン廻りで鵜来に来て、グンカンに人が上がれる状態だったのは自身が上がったものの9時で撤収してきたこの正月のただ一回きりです。だから今回は実はこれでも随分とマシなんですね。

僕よりもさらに厳しい釣り座で竿を出してひたすらに潮を浴び続けてきた従弟はさすがに昼前になって断念。グレ釣りを諦めて内向きのポイントを1号のウキで底を釣って遊んでいましたが、待つほども無く2連続で1m弱のウツボがヒットして完全に戦意喪失。
僕もさすがに飛沫と強風で体が冷えて震えが止まらなくなったので最後の1時間は内向きをやってみましたが同礁者の邪魔をするわけにはいかないとなると満足な釣りは望むべくもなく完全ボーズ、アタリも無しで納竿しました。
船着きの人たちは朝に40cmくらいのグレを3人がかりで一枚だけ上げてました。グレは見えたけどやる気は全然なさそうだったとのこと。
ちなみにグンカン高場に上がった三人も予想通りサバくらいで、しかもそのサバを3mくらいのサメが群れをなして奪いに来るのでどうしようもなかったそうです。

今回もやってしまいました。まさかの大時化にイノシシに遠くでは津波まで。
本人もビックリしましたが、従弟は恐れおののいてしまっています。もしかしたらこれが彼との最後の磯釣りになるのだろうか・・・。
怖いもの見たさでまた誘ってくれないかな(爆)



       -名礁、水島群礁!-
・1番を楯にしてとにかく風に強い水島2番&
 2番のチョボ&チョボ裏(写真 左上)
・今回は潮が低かったためか沈没を免れた
 グンカン(左下)
・エボシ、そして鵜来島の本島。(右)
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