風雲児  烈風伝
・疲労困憊、前後不覚
              高知県西部、パンドラ釣行記

2007年 9月3日〜6日  高知県四万十川・土佐清水市など
・第一戦 四万十川河口にて金魚を泳がせ、青虫を流す事
今年も夢を追わずには居られませんでした。
あるいは不可能になっているかと思われたアカメ釣り。
高知県の希少動植物保護条例へのリストアップは一先ず見送られたので恒例の四万十川へ!

私のアカメ釣行はいつもの通り、汽水の魚達の五目釣りをしつつの小アカメ狙い。
どうせなら大物を狙わんかい!と言われそうですが、やはり今の私はこのスタイルが好きだから。
「強制された歓喜」よりも「釣技の代わりの荒唐無稽」で行かせてもらいます。(なんじゃそりゃ)

9月3日、この日は夜釣りをやるつもりですので昼に兵庫を出発。久しぶりの瀬戸大橋を渡り、須崎東で高速を降りるとまずは56号線沿いのホームセンターやペットショップを探しました。

今回の釣行では大量の生きエビを使わなければならないエビ撒き釣りを封印。それに替わる餌として肉食熱帯魚の餌としてどこででも売られている「小赤」や「姉金」といった金魚を使うことを思いついていたのです。
川の小魚の現地調達は遠征では不安を感じます。その点、以前に熱帯魚を飼っていた時に慣れ親しんだこれらの金魚は最も安価で最も手に入れやすい活魚のはずでした。

思い通り須崎のホームセンターには3〜4cmの小赤が居ました。でも一尾50円は高いなあ〜。他で買うか〜。
次の店は一尾40円。もう何年も熱帯魚屋には来てなかったけど小赤ってこんなに高かったかな?次行こか〜〜。
これが失敗でした。窪川を過ぎると店から小赤の姿が消えました。中村の街中で何軒か回ってもどこにも見当たりません。
水槽はあるんです。ガラスには「小赤1匹35円」と書かれてあるんです。
なのに店員は口を揃えて「あと2〜3日は入荷しません」と。いきなり計画が崩れて途方に暮れるばかり。

しかしこういう時に身にしみて感じるのがネット仲間の有り難さ。
地元の「だいきち」さんに相談させてもらったところ、突然の電話にも関わらず八方手を尽くして情報を集めてくださり、中村・宿毛の全てで在庫切れの中で「見つかりました。後で釣り場に届けます!」との連絡をしてくださいました。
本当に感謝の言葉が見つかりません。


夕方6時半頃、四万十川の汽水域、以前にアカメを仕留めることのできたポイントに入って一足先に釣り開始です。
夜釣りですしそのうち金魚も泳がせるので竿は2号、道糸3号、ハリス2.5号にケミホタルを装着した棒ウキ、夜釣りBM2Bをセット、グレ針に青虫(アオイソメ)をチョン掛けして川面にキャスト。

ベストのポケットに
このまま貼りたい(笑)
3分も経たぬ間にフラフラと漂っていたウキのトップがゆっくり水面下に消え、暫くするとまた浮いてきます。
沈んで浮いてまた沈んで。時間をかけて充分に食い込ませてからアワセ!
その瞬間、ヒラヒラとキビレが宙に舞いました。12cmほどのやつが(笑)

アタリは断続的に出ます。針に掛からないのも多いですが、キビレ、キビレ、メッキ、キビレ、キビレ、ヒイラギのスレ掛かりを挟んでまたキビレ、キビレ・・・。ですがどれもこれもが15cmを超えませんでした。


8時半頃、ビニール袋を手にぶら下げてだいきちさんが釣り場に見えられました。
袋の中はもちろん小赤ですが、なんと愛媛の愛南町で買ってきてくれたそうです。
職場の近くだからと仰ってましたが本当にお手数をおかけしてしまいました。

では早速その小赤、使わせてもらいましょう。
そっと網で掬い、背掛けにして優しく投入!今までの虫餌と違ってワクワク感が堪りません。
二人で固唾を飲んでウキの灯りを見つめているとすぐにピクピクと反応があり、そのまま消しこんでしまいました。
タイミングを見計らってアワセ!あれっ??

竿先には小赤とは明らかに違う魚の感覚があります。プルプルと。
首を傾げながら引っこ抜いてみると3cmの小赤の代わりに針にひっついていたのは何と10cmのキビレ。二人でズッコケましたよ。

小赤の威力は抜群で、アタリは以後も連発しました。
しかし待てば餌を盗られ、待たねば外れ。たまに掛かればやっぱりキビレ。
サイズも上がらず、だいきちさんが帰られた後に27cmがどうにか一尾上がってきたのがやっとのこと。
折角魚を泳がせているんですがやっぱり小赤では小さすぎますね。考えてみたら青虫の方がよっぽどボリュームあるんだし。

深夜2時を過ぎると潮が低くなってしまって釣りにならなくなったので、予定通りワゴンRを寝やすそうな場所に移動させて寝ることにしました。
道具を片付けながら見上げた星空を、この川のどこかを泳いでいるアイツの眼を思わせるように赤みを帯びた、1等星ほどの明るさの流星が一筋流れていったのは、明日へ繋がる吉兆なのでしょうか?

・第二戦 四万十川河口にてオキアミを撒き、円錐ウキを用いる事
眼を覚まし、再び釣り場に向かったのは6時半のこと。
昨夜の電気ウキ釣りに続く今度の釣りは、ポイントを初崎漁港に替えてのフカセ釣りです。

車をポイントに横付けし、どう攻めてみるかと川面を覗き込めば水中に没する石畳の斜面に40cmほどの黒い魚影があるじゃないですか!。
頭を斜め下にしてゆったりと漂うその姿。凝視していると水面近くに浮かび上がるようにヒラを打ちました。見まがうはずも無いその魚はアカメ!!

大急ぎで竿を引っ張り出し、ベストの中の道具を辺りにばら撒きながら仕掛けを組み、手元にあった青虫を針に刺して口元に落とや否や、そのアカメはプイッとそっぽを向いて深みに姿を消しました。
まるで「この人間、ワシらをなめとんか!」とでも言っているかの如く。

気を取り直して撒き餌を作り、仕掛けを組み直してフカセ釣り開始!
対岸の青砂島方面の波止からはドン!ドン!!とまるで隠れ家のドアが何者かにぶっ壊されるような激しい音が響いてきます。
あれは春の流氷・・・いえいえ、関東に迫りつつある強力な台風が作り出す波とうねりが押し寄せて波止を乗り越えているのです。

そうは言っても河川内のこのポイントには波なんて関係ありません。むしろチャンス!と思ったのですが、撒き餌に群がるのはボラとメッキとダツ、針掛かりするのはやはり10〜15cmクラスのキビレ、メッキ、ヘダイ、ヒラスズキ。

台風のもたらす異様な蒸し暑さと焼け付く日差しの中、この釣果ではさすがに体力も気力も持ちません。
56号線沿いの立ち寄り温泉「平和な湯」が開店する10時を待ちわびるようにして駆け込んで、まとわり付く汗を流し、クーラーの効いた休憩室で3時前まで大の字に。ふぃ〜〜〜

・第三戦 幡多郡のチベットの山路を踏み迷う事。 付けたり 下川口にて青虫を落としこむ事
最高点は標高700m超。まさかここまで登るとは・・・。
この後、夕立の中で道は尽きた。
カルロス・ガ〜ンさんが4日の晩は「遊びに来ませんか?」と言ってくれたので進路をそちらにとりました。
中村からガ〜ンさんの下川口までは四万十川河口付近から下ノ加江を経由して東側の海岸を行くか、一旦宿毛市に出て西海岸、大月町を進むか、どちらにしても1時間かかるかどうかの道のりです。
この日私が取ったのはそのどちらでもなく、半島のど真ん中の三原村を通過する山越えルート。
通ったことの無い道なので地図を見ながら探検ドライブ!のはずが、その地図が見当たりません。ゲッ、家に忘れてる・・・

まあどうにでもなるだろうと、急峻な山道をせっせと登って三原村の中心部へ。そして「↑下川口」の看板を頼りに県道を走っていると突然、反対車線の看板が「↓下川口」になりました。下川口への入り口って、どこ???
道端におられたお婆さんに尋ねてみてもあまりの高齢ゆえか全く会話になりません。
結局おじさんに入り口を教えてもらうまでに「↑下川口」と「↓下川口」の間を何往復もしてしまいました。

ようやくたどり着いた下川口への道の入り口。下川口はもう近いですよというおじさんの言葉と裏腹に、道は急な坂道を右に左に延々と登る登る。
バリエーションルートはリスクが高い。
下ノ加江川の峡谷は見事でしたが
もう通りたくないです。
ぐいぐい高度を上げて三原の町ははるか下。いつしか辺りは雲の中に入ってしまって雨粒がフロントガラスを叩きます。
家に帰って地図を見てみると、どうやら今ノ山(865m)の大規模林道に入り込んでしまっていたようで、林道の標高もなんと700mを超えていたのです。

その林道の最高点までどうにか登りつめると今度は当然長い長い下り坂。また右に折れ左に折れしていると、一つの看板が目の前に現れました。
「この先、法面崩壊。全面通行止め」

仕方ないので折角越えてきた700mの山を登り返し、他のルートも分からないので迂回にはなりますが確実そうな「↑下ノ加江」の看板に従いました。
下ノ加江へはすれ違いのできない細い道が薄暗い森の中を通り峡谷を覗き込みながら延々と続きます。さながらショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の冒頭をオイストラフが奏でるかのようにどこまでもどこまでも。


やっと到着、下川口漁港。中村から実に3時間もかかって・・・。
残された時間は少ないのですが、かねてからの計画通り「落とし込み釣り」をやってみることにします。大急ぎで餌にするカニを現地調達せねば!
しかし石をめくってもカニなんてどこにも、1匹も見当たりません。またしても目論見が外れて途方に暮れてしまいました。
後で聞いてみると土佐清水ではごく一部の浜辺でしか小さなカニは捕れないそうなんです。
石さえひっくり返したらどこにでも居ると思っている瀬戸内の人間にはこれはショックですわ。
この落とし込み釣りはやはりカニやイガイを使ってこそ真価を発揮するのだと思うのですが無いのなら仕方ありません、今回は昨夜の残りの青虫を針に刺してやってみましょう。

下川口漁港。釣れそうな感じなのに。
アタリはほとんど無いとはいえ丹念に探り歩いていくと、目印が見えなくなるまでの30分ほどの間に2尾の魚が飛びついてきてくれました。
九州ではシブダイという名前で磯釣り師の好敵手になっているフエダイと、凛々しい姿のオキフエダイ。
ただし、サイズは12cmと14cmというミニサイズ・・・。
フエダイ(シブダイ)
12cm・・・。

・第四戦 土佐清水にてカニを捕り、波止の壁に落とし込む事
ガ〜ンさんとその愛猫のブーと楽しい一夜を過ごし、明くる5日の朝はガ〜ンさんに教えてもらった浜でカニを捕まえて改めて落とし込み釣りに挑戦です。

リールはギア比1:1の古い落とし込み専用リールですが、外海の魚を想定して竿は2号。2,5号の糸に発泡シートの目印を約10cm間隔で30個ほど取り付けた自作の仕掛け、ハリスも同じく2.5号を使用しました。
餌の重みだけで壁スレスレに餌を落とし込み、引き上げては少し移動してまた落とし、一個ずつ落ちていく目印が数個引き込まれたり一瞬止まったり浮いてきたら間髪入れずにアワセを入れられるように気を張り詰めて波止を少しずつ歩いていきます。

しかし下川口漁港では一度として目印の変化は表れてくれませんでした。当然餌も全く触られていません。
以前に巨チヌをはじめ、様々な種類の魚たちが泳いでいるのを確認していた土佐清水の湾内の小さな波止にポイントを移動しても状況は同じ。
「この辺りの魚はカニを見たことも食べたことも無いんですか?」と海に問いかけていると「いや、そんなことはないよ」と、やっとのことで返事が返ってきました。
アワセを入れれば竿に感じるずっしりとした重量感。しかし引きはほとんど無し。ってハリセンボンかいっ!


カニ餌での唯一の釣果がこれ。
ハリセンボン。
まあ完全試合はどうにか逃れたし、この調子でもっと嬉しい魚を!と私は少し気合が入って水面と目印ばかり見ながら探り歩いていましたので、波止が一箇所削れて窪んでいるのに気づきませんでした。
その窪みに足を突っ込んでガクッ!幸い海には落ちませんでしたが腰がグキッ!!「ギャア!!」
その瞬間、リタイアするしかありませんでした。

・第五戦 四万十川河口でルアーを投げる事 付けたり 香美町に友を訪ねる事
土佐清水で食事を済ませ、今度はまともな道で迷わずに四万十川の畔に帰還。
腰は幸い大事には至らず、これだと無茶をしなければ釣りもできそう。となるとやはり四万十川を素通りはできませんでした。

今度は比較的ライトなルアー釣りです。あちらこちらのポイントを転々としましたが、下川口で釣っているころから始まっていた腹痛は治まってくれなかったので、移動は釣り場とトイレを交互に(汗)

ちょっと寄り道。香美町・轟(とどろ)の滝。
猛暑の炎天下のこと、7〜8cmのミノーを主力にして木陰、船陰、建造物の陰、崩れた石積み、繁茂した藻の間など、魚が涼んでいそうな所を攻めると、予想通りの展開が待っていました。
ルアーを猛追する魚の群れ。メッキも居ますがやはり大半はワッペンサイズのキビレたち。
キビレのルアー釣りは人気急上昇と言えども、ここのはこんなサイズでも呆れるほどに獰猛ですなあ・・・。
数匹針に掛けましたが、水中に張られたロープに掛かってルアーを失ったのを潮として今回の釣行での納竿としました。

その後にも佐賀温泉に入ったのが裏目に出てフラフラになりながら南国にたどり着き、大学の頃からの釣り仲間であるakio君の家を訪ねて香美町に向かおうとして再び道に迷って大混乱というエピローグがあるのですが・・・。

地図を頼りに知らない道を走るのは得意なはずなんですが、その地図が無いとなれば全く話になりませんね。


今回の旅は様々重なった厳しい出来事がずっと溶けて溶けて溶け続けて、最もシンプルな疲労困憊という結果に到達してしまいました。
釣りにしてもあれもこれもと詰め込みすぎて自分でも結局何がしたかったのか訳が分からずに帰路につくことに。。
ま、色々と試してみてこの方法ではダメだとかのデータは取れたので、これをまた次回に生かすとしますか。
今回の釣獲魚種
・キチヌ ・ロウニンアジ ・ヒイラギ ・ヒラスズキ ・ヘダイ ・フエダイ ・オキフエダイ ・ハリセンボン 以上8種。
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