時として宅急便は、どうしようもない空しさと一緒に届けられることがあります。
荷物と共に夢もどっさり詰め込んで旅先に送り出した宅急便。その後に旅が中止となり、一度も箱を開かれることも無く我が家へととんぼ返りしてきた荷物を受け取るその時です。
本人は行けなくとも荷物だけは旅行をしてきているので、その旅費はもちろん財布から出て行きますし。
ようやく訪れたこの年末年始の連休はどうしても行ってみたかった九州、夜行バスとジェットフォイルを乗り継いでの五島列島・福江島への遠征を計画していたのですが、荷物を送った途端猛烈な寒波が日本を包みました。
当日の福江の天気、暴風雪。波高5m。2ヶ月前に発表した時化予報がまたしても的中でした。
雪の長崎港で荒れ狂う東シナ海を眺めながらカステラを食べても仕方が無いので出発は取り止め。その2日後に空しい宅急便が届いたわけですな。
そんな寒波も年が明けるとどうにかピークを越えてくれました。
さて釣行のやり直しはどこにしよう。五島はバスが満席でもう無理。鵜来・沖の島はこの異常なブームですからもう入り込む余地は無いでしょう。他の有名どころも窮屈だろうし、蒋淵か、竜串か、藻津か、鈴か・・・。ピークを越したといっても山間部はまだまだ路面の凍結の不安もあるし・・・。そうだ!久通にしよう!
という事で、今回は早渕渡船で二日釣りです。情報・予約などネット仲間にして久通の主、のびたさんの心強い強力を得ながら。
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帰りの山道から見た久通東磯。久通の港は遥か下。 |
高知県須崎市久通(くつう)。
須崎の街から浦ノ内方面に進んで、鳥坂トンネルの手前からすれ違い困難な心細い山道に分け入り、ヘアピンのような、螺旋階段のようなその道を20〜30分かけて降りてようやく辿り着く秘境。
その磯は東へと延びる横浪半島と南へと延びる岬両方の付け根に位置し、北西の風にはこれ以上ない強さを誇り、高知市近辺の釣り人に近場として愛され続けている釣り場です。我が家からもたったの270キロという近さ!
今シーズンはこの久通がかつてないほどの絶好調で、40オーバーのグレ、特に尾長が釣れ盛っているそうなのですが港の駐車場には一台の車もありません。
時刻は3時。昔、登山をしていた頃に買った寝袋にくるまって一休み。
それが6時になると辺りは車・車で埋まっておりました。私の姫路を除くとぜ〜んぶ高知ナンバー。そりゃゆっくりと来ますわな。
ここの渡船は小さいのでこの人数は一気に乗れません。で、私は二番船です。
乗客の半数が燻らすタバコの煙にむせながら、船は油をひいたような瀬戸内と見まがうばかりのベタ凪ぎの海をゆっくりと南西方向へ。
九石鼻の沖の磯群の一つ、タカバエに上がって釣りの準備を完了した時、一年で一番遅く目覚める太陽が水平線を滑るように昇ってきました。
仕事が多忙でこんなに遅くなってしまったけど、いよいよこの秋冬シーズンの磯釣り開幕戦のスタートです。
まずは足元に撒き餌を一発、二発。現れたのは厄介なエサトリのオヤビッチャ。
グレの姿は全くありません。
軽い仕掛けではオヤビッチャの餌食。かと言って深く探るとキタマクラの餌食になっています。
しかも潮は当て潮になってしまって釣りにくいこと。
ならばと裏側に引越しし、シモリの回りや海溝を馴染むとしもる設定のG5のウキで探っていくと、やっとグレ。ただしサイズは18cm。
11時ごろの見回りの船(久通は弁当がありません)で船長が「他のハエに行こうと」言ってくれたのでマウラバエに磯替わりしました。
大きな磯ですが、釣り座付近は三角形が無数に並んだようで平らな所がほとんど無いしんどい磯です。浅いけど海底もそんな変化の連続で期待が持てそうな感じ。
ほら、やっぱり撒き餌を打つとオヤビッチャと一緒に尾長グレの群れが乱舞を始めたじゃないですか。
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こんな尾長が乱舞!(涙) |
12〜3cmの尾長グレの群れが・・・。
8ヶ月ぶりの磯釣りで未だに動かぬ体と頭で苦しんで、半ば嫌気が差して、足元のビッチャとコッパにこれでもかと撒き餌の無茶撒き。
結構潮下、右手の壁沿いに仕掛けを投入し、2ヒロ弱から探っていくと竿先にククッと水中からの信号が伝わってきました。
竿を立てるとようやく魚らしい感触。あっという間に浮いてきたのは23cmの尾長グレ。
数投後に続けて同じようなサイズがヒット。そうか、これだったかと同じ攻めを繰り返していると今度は波の下で揺らめいていた朱色のウキがスピードを上げて壁際に入っていきました。
また20cmクラスと油断して起こした竿は胴まで曲がっています。
魚は油断を見逃しません。程なくハリスがシモリにコツン!しまったと思う間に、実にあっけなく竿が跳ね上がってしまいました。
グレでは無さそうな感じでしたが悔いが残って仕方ありません。
この時のハリスは1.7号。こんな状況でも薦められたとおりに3号を通し続けていればあるいは多少・・・。
この日の大きなアタリはこれ一回きりでした。20cmクラスの食いもあっという間に途絶えてしまい、20〜24cmの尾長が4枚という貧果。
目ぼしい魚といえば爽やかな水色の地色と黄褐色の唐草模様とを点滅するように交互に浮かび上がらせるハナアイゴくらい。サイズは20cmほど。ゲテモノ五目釣り師としては嬉しい獲物でしたけどね。キープしたけど臭かった・・・。
釣りは三時に終了しましたが2番船だったので港に着いたのは4時前でした。
久通のコミュニティーハウスは今回利用できなかったので、長い山道を登って、とあるお遍路さんのHPで見つけた須崎駅近くの旅館で一泊です。
素泊まり3500円の古びた所でしたが、風呂の蛇口からは温泉の源泉が出ました。
ただし普通のお湯は出ないので体も服も硫黄の物凄いにおい(笑)
餌や翌日の食糧の買い出しを済ませ、道の駅「かわうその里すさき」での一番人気、これでもかと言わんばかりに細切りの青ネギや薬味が乗ったカツオの漬け丼「土佐丼」を堪能し、宿に戻ったら7時にはすでに夢の中にいました。
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マウラバエからタカバエ方向。沖の中央がタカバエ。 |
水色のアイゴ、ハナアイゴ。 |
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クツケの鼻と、すぐ隣のクツケの丘。 |
明けて4日。この日の早渕渡船は南東の方向に進路を取りました。
この久通の磯は東磯と西磯に分けられ、二軒の渡船屋が毎日交互に渡しています。という事でこの日は口太がメインの東磯。私はクツケの鼻に渡礁です。
この磯は西向きに突き出した地磯で、釣り座の左手(南)はドン深の壁、正面の水中に大きなシモリがあります。
右手には数メートルしか離れずにクツケの丘というハナレが寄り添っていて、そこに2人の釣り人が上がられました。
「東は餌取りがこじゃんと居る」という船長の言葉通り、撒き餌を打つとあっという間に魚のダンゴが現れては消えていきます。足元でも、遥か沖でも。
しかしそのダンゴを形成するのは幸いにもトンゴロ(トウゴロウイワシ)です。完全フカセとかをやらない限りいくら居てもそれほどの脅威にはならないでしょう。
とりあえず左手の足元に撒き餌を入れ、竿一本先を深いほうから浅い方へと流していくと、しばらくして水深2ヒロ半位でプリサイスG5がスルスルと海底めがけて消えていきました。
竿を起こすと青白い魚影が足元で暴れています。水面に浮かせ、できればこのまま切れてくれないかな〜なんて思いながらハリスを持って引っ張り上げた魚は40cm手前のキツ。
こいつは危険なので魚の尻を海に向けて針を外し、そのまま海へとお引取り願います。
それから随分と時間が経ちましたが今日もグレの姿はありません。
撒き餌に群がるトンゴロを取り囲むようにアオリイカの子供の群れが集まってはきましたが・・・。(エギ持ってないし)
餌もたまにキタマクラかカワハギに齧られるくらい。竿二本までウキ下を下げて流していってもサッパリ。
潮は右へと流れ続け、撒き餌はさっさと丘の釣り人の下に流れていってしまいます。
そのハナレの二人はグレを一枚ずつ仕留められてるのですが、シモリを越えて5mも流せないこの潮じゃこちらは辛いのなんの。
見かねた船長が見回りの船で磯を替えてくれました。
この日も見事なまでのベタ凪ぎでどんなシモリ磯にでも上がり放題。
今度の磯はクツケの鼻と港のちょうど中間地点に位置する「ミノテの上」です。
泣いても笑ってもここがこの秋冬シーズン最後の磯になるかもしれません。(この時は本気でそう思っていました)
年度末までさらに多忙で再び四国へ来る体力など週末には残ってないかもしれませんし。
では最終戦、気合を入れていきましょうか。
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ミノテの上から甲崎方向。釣り人が居るのがヒョウベエ。 |
先ずは船着き付近に釣り座を構え、すぐ沖に顔を出しているシモリとの間を攻めてみますが芳しくありません。
続いてミノテの下方向の磯際や沖をあちこち狙ってみてもフグやササノハベラばかり。
ヒョウベエ向きの溝を攻めてキツを一つ掛けたのがやっと。
迷いますが時間が有りません。
唯一コッパグレの魚影が見えた「ミノテの下」向きに腰を据えて磯際に撒き餌をまとめ打ち。そして少し沖の水中に見える二つのシモリの溝を重点的に狙い撃ち。
トンゴロ対策のためにここでもG5をジワジワ沈めて棚を広く探っていましたが、落ち方が気に入らなかったので00のウキ+G7のガン球での沈めに仕掛けを変更。
思い返せばこの頃あまりにも沈め釣りにこだわり過ぎですね。今回なんかスルスルの方が楽に釣れただろうに。
風の強い時にはウキを沈めたらやりやすいのですが、あまりにもそんな日ばかりで凪ぎの日の釣り方が頭の中から完全に消えていました。
ともあれこの変更は正解でした。ラスト一時間でようやく待ちかねたグレのアタリ。
涙ながらに20〜26cmの口太を5枚仕留めてタイムアップ。
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クツケの鼻から南東方向。右から一がハエ、
オオヒラバエ、タツバエ。 |
かつてない絶好調の久通での磯釣りは二日で20cm台が9枚という秋の瀬戸内の波止釣りよりもはるかに酷い釣果で終わってしまいました。
話を聞くとどうやら水温が急降下してしまい、魚の食いが一変したようです。
絶好調の釣り場×ベタ凪ぎ×風雲児=水温、潮流、状況一変という法則は今回も健在。数えるほどしかない凪ぎの四国でいい釣りができた日なんかありません。
とは言え、他の磯では20cmクラスなんていくらでも見えていたそうですし、35cmオーバーをクーラー一杯という方も居られたそうです。
やはりあまりにも下手すぎる釣り人には海もそっぽを向いてしまうようですね。
4月まで水温一桁の瀬戸内で頭を冷やしながらしっかりイメージトレーニングして、またいずれ出直します。 |