ざっと周りを見渡してみただけでも気晴らしには色々と方法があります。酒、タバコ、パチンコ、彼女や家族とのひと時・・・
それらをどれも全くやらず、女性なんて大昔から不思議なほどに縁もゆかりも無い私は、やはり釣りが心のバランスを取るための本当に大事な物になっていますね。
6月のこの時、私はストレスが重なって半ば陥ってしまっていた鬱状態から脱出するため、土日を利用して釣りに行く必要に駆られていました。
しかし地元はちょうど祭りと花火大会で身動きをとるのは不可能。四国南西部の磯釣り・鳥取のヒラメ・紀州日高川のカセ釣りと、あまりにもバラバラな方向とジャンルに迷った末、今が旬のイサギの味に惹かれて四国行きに決定。
ただ決定が遅れたし、朝一番の船に乗るには決定的に体力が不足していました。こういう時に時間が自由になる御荘のありがたさを感じます。
仕事を終え、一眠りしてから出発。土曜の午前10時前に御荘に到着し、高畑の護岸から八栄丸に乗り込んだのです。
どんよりとした蒸し暑い梅雨空の下、船は御荘湾の出口・銚子の口を通り抜けて沖磯へ直行!ではなく途中でスローダウン。
「磯に上がる前に1時間ほどホゴ(ガシラ)釣りをしてみませんか?」という船長の提案に乗って、まずはしばしの船釣りです。
レンタルの仕掛けは胴突き1本針。一気に落として竿先で底を小突く探り釣りは瀬戸内の釣り人が最も得意とするスタイルですがなっ。
ただエサがエビじゃなくてキビナゴの1匹掛けなんですねえ。さすがサイズが違う宇和海のガシラ釣り。
第一投、落とすと同時にいきなりヒット。レギュラーサイズ20cmちょいのホゴがキビナゴを丸呑みにして、Jの字のお決まりのポーズで上がってきました。
それから数投、またヒット。これは結構な重量感。おっ!いい型!26.5cm。
餌を付け替え投入。グググッ・・・ こりゃ入れ食いじゃないかいな〜^^
とまあ最初のうちは連発でしたが、そのうちにベラやキタマクラなどのエサトリに邪魔されたり、食い逃げや根掛かりが連発したりして苦しみましたが、1時間半ほどの間に合計8尾という結果でエサ終了。
さてボチボチ磯に渡りますかな。
釣具屋やネット仲間から伝え聞いた他船情報によると、黒部島などでは尾長も40クラスも混じって30cmオーバーのグレが入れ食いだとか。実際に釣ってきたという話は聞いてないけど・・・。
こちらの船長の情報によると、相変わらず食ってないし、黒部島でも竿を曲げているのはほとんど見ていないんだとか。
さて、実際はどうなんでしょう。
さすがに土曜日だし、11時半だし、外海は低気圧で荒れているし、比較的マイナーな御荘とはいえ話題の黒部島も角島も滅多に上がれないイナグラもすでに他の渡船によって人が上げられてしまっています。
まあ三ッ畑田島は空いてますので、前回と同じ1番に渡礁。今回は柏崎向きの角に釣り座を取りました。右手には島影を利用した養殖筏とそのロープが並んでいます。
潮は激下げ。釣り座の角をかすめて左へ左へといい感じに流れています。澄み切って、緑色を帯びた潮が。
釣れているという他船情報には但し書きがあって、雨の日や濁った潮の日は釣れるが、澄んだ潮・緑色の潮ではコッパも出てこないそうなのです。
事実その通りでした。ですからこの磯での釣りは書くことがありません。
まあ敢えて書くとすれなら、サンゴの名所としてダイバーに知られているという三ッ畑田島だけに、足元の珊瑚の群落と、群れ泳ぐコバルトスズメやクマノミが本当に綺麗だったなあ〜とか(笑)
とりあえず夕方6時まで竿を出し、その後は宿に戻って、この時期にしか食べられない絶妙のサイズの豆アジ(スーパーゼンゴ)尽くしの夕食に舌鼓を打って、たちまち夢の中へ。
二日目は少し早く出ようと言うことで5時前に出船。
しかし狙っていたイナグラは上がるには危険な状態で、黒部島には既に釣り人の姿。
ただ御荘では一番沖に位置する角島(かどしま)が空いていたのでここに着けてもらいました。明日は仕事なので今日は2時までガンバロウ!
御荘湾外は基本的に上げ潮釣り場だそうですので、この日は8時半までが勝負、急いで準備。
潮も昨日とは違う青黒い感じで何となく期待が持てそう。撒き餌を打つとハコフグやコガネスズメダイなどが割りと活発に動いています。
パイロット仕掛けはG2。大幅にウキ下を変えながら様子を伺ってみますが、色々探ってみてもエサどころか針が全く帰ってきません。
沖に投げても左手前に付けてくる潮に乗ってウキが戻ってきてしまい、結局針が残らない辛い状況。
程なく沖向き(西向き)に見切りをつけ、切れ込んだ溝をまたぎ越して先端・黒部島向きにお引越し。
そこはシモリの点在するポイントですが、エサトリの巣窟のような感じ。ただこの日は潮が引けば完全に露出するであろう、釣り座から伸びる低く細長い岩を、当て潮とともに波が乗り越えてサラシを作ってくれているので、いけるかも!?
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オトメベラ(どの辺が乙女??) |
撒き餌をしばらく打っているとネンブツダイやハコフグ、カワハギが集まってきました。
それらを足元に集めておいて、サラシ〜サラシの切れ目〜シモリとブレーキを掛けながら流してみると御荘の付き物、ササノハベラが針を飲み込んで次々と上がってきました。。
そしてこの日の風雲児、御荘の乙女達にモテモテです。大勢の乙女達がキャーキャーと、もみくちゃにしてくれるんですよ(涙)
遠投して磯の先端を回り込む潮を釣っても餌が取られるばかり。ならばとオモリを追加してサラシのど真ん中でビシッと止めて狙ってみると、遂にウキが勢いよく引き込まれていきました。(乙女ちゃんのアタリも勢いだけはいいけど)
シモリと磯際の間の狭い溝をやたら元気よく小回りよく走り回るやけに青白い30cmほどの魚影。
魚種はキツだと容易に想像がつきますが、2日目にしてようやく掛けた側扁型の魚。何かホッとするような。
キツが出たということは、これから期待できるかも!?
気合を入れて釣ろうとしたところに弁当船が到着。ああもう9時か。潮は下げに入ってしまいましたね。
今日は早く出たのでこの弁当は朝昼兼用。いつもの海鳴りの代わりに自分の腹が鳴っていましたから、竿を置いて穏やかな海を見ながら腹ごしらえ。
天気予報ではこの日は1時間10mm越えの豪雨の予報でした。前回の大三角での雨に懲りて、袖口ガードなど雨対策は万全でした。
しかし実際は「そんな予報、誰がしたの?」 前日に少しだけ小雨が降ったぐらいで晴れ間も出る天候。
釣り仲間からも「何かあったの?えらい凪いでるけど??」という電話が何本もかかって来るほど海も穏やか、多少ざわつく程度。
悪天の総帥が釣りをしているとはとても思えない状況に、これはきっと晴れ魔王・磯際さんが隣の中泊か由良にでも来られているのに違いない、そんなことを思ったりしていました。この時は・・・。
弁当を食べ終わって釣りを再開。10時前頃、ようやく見え始めました!グレの姿!!
その中に仕掛けを入れてやっと一匹目の尾長ゲット。といっても20cmなんですけどね、これ。すぐにリリース。
小さいとはいえ、この魚が呼び水となって何かが起こるんじゃないかな!?強い予感が胸を駆け巡りましたが、事実、事態はその直後に急展開を見せたのです。
ズドドドドド・・・! グワァァァァ〜〜〜!!
多少ざわつく程度だった辺りの海を轟音と長い残響を伴って大きな波が襲いました。
一発波かな?いや、何発も何発も。何か急にうねりが大きくなってきたぞ!?
見る間に足元からシモリの沖まで真っ白。
この御荘は、隣接する中泊の鹿島などの島々が頼もしい防波堤となってくれるため、うねりにはかなり強いはず。
しかし偶然なのかもしれないけれど、潮が下げに入ったのと時を合わせる形でうねりの方向が変わってしまったようです。
ウキや魚よりうねりばかりを気にしながらなおも仕掛けを流していたのですが、押し寄せるうねりはますます大きくなり、一段と激しい海鳴りとともに飛びぬけて大きな白い牙が釣り座に突き刺さりました。
辺りは水浸し。私も頭から濡れ鼠。
格段に釣れそうな感じになっているとはいえこれは危険過ぎます。荷物をまとめて船着きの方に退却です。
朝一番に釣っていた船着きのある下の段は安心して釣りができるような状況ではありません。
船着きの背後の、3〜4mほどは高くなっている荷物を置いている上段から撒き餌と仕掛けをキャスト。
早朝には予想もできなかった大きなサラシが左手の方に2本3本と伸びてるので、そのサラシの付け根脇に撒き餌を入れて、白泡のぶつかりで仕掛けを張って待ちます。
すると何投もしないうちに30cm程度ですが元気なキツが竿を引っ手繰って行きました。
1枚2枚と磯際で膨らむ海面とともにぶち抜いて、3枚目を捕ったころ、ついに釣り座を構えていた高場の南よりにまで波が打ち付けてきたのです。
このままやっていればグレが竿を曲げてくれることでしょう。潮は激下げ。この釣り座に関しては波のピークはちょうど今なのかも知れないという期待も頭をよぎります。しかし・・・
角島沖向きのこのポイントは今や青白い怒涛の中に佇んでいます。
朝、船着きに使っていた足場ももう波の下です。
暴力的な白い手は足場の1mほど下まで届いています。
もしこのうねりがもう少し大きくなってしまったら・・・。
逃げ場はまだ有るとはいえ、何より今回の八栄丸は漁船を改造した小船、磯着けなどとてもできなくなってしまうことでしょう。現にこれ、今でも着けられるのか!?
11時26分、携帯にてSOS。
9時の弁当船で穏やかな海を見ている船長ですので、半信半疑も無理はありません。
鏡のような御荘湾内を抜けて、この角島に間近に迫ってビックリ仰天。まさに修羅場ですもん。
間一髪、まだどうにか船は着けることができる模様です。何mも上下する海面、当然ホースヘッドをピッタリ磯に押し付けて・・・なんてできる訳がありません。悠長に荷物を積み込む余裕なんてとてもありません。
磯に持って上がっている荷物は普段どおり3つ。ロッドケース・バッカン・クーラー。
タイミングを見計らって、まだ撒き餌の残るバッカンを船の中に投げ込んで・・・と準備していると、一瞬のうねりの隙を逃さず、渡船が磯にヘッドをコンタクトさせました。
バッカンを投げるよりも、考えるより先に反射的に船の中に体ごと一気に飛び込んでいました。しまった。
でも、これで船長との打ち合わせができました。
また一瞬だけ、うねりが力を蓄えるように静まる瞬間を狙ってコンタクト。その一瞬で私が磯に飛び乗ると、瞬間に船は後進、私は岩をよじ登り、襲い掛かるうねりの牙をかわします。
そして残りの道具に走り寄ってクーラーを手に取り、しっかり蓋が閉まっているのを確認してから磯を滑り降りる波にあわせてポーンと海の中に放り込みました。一瞬で沖へと流されるクーラー。
激しく打ち寄せるうねりをしばらく見送って、また一瞬の隙を突いて船着きの上、磯の中腹に舳先を寄せた渡船に体をぶつける如くにロッドケースとともにダイブ。甲板に2度3度バウンドして着地。どうにか脱出成功です。
クーラーを回収し、角島を離れて三ッ畑田島まで戻ると今度は私がビックリしました。何という穏やかさ・・・。角島だけがピンポイントで修羅場になっていたのか・・・。
どんなに凪いでいても磯は一瞬で状況が一変する危険を常に孕んでいます。
この日、近隣の磯では何名もの釣り人がうねりにさらわれ、流されたそうです。
こちらも危ない所でした。もし救援を呼ぶタイミングが少しでも遅れて、更にうねりが高くなっていたら、よくて磯で孤立だったでしょう。
その連絡が作った時間の余裕と、釣行の度に遭遇する大時化の豊富な経験、特に御五神の寝床2番での凄まじい救出劇を目撃したことが大きな心の余裕となり、必要以上の恐怖もなくパニックにもなることもなく(とはいえ船と人を危険に曝す回数を増やしてしまうミスはありましたが)その余裕が命を守ってくれました。
そして何より心強かったのが荒海での経験を豊富に持つ、元漁師の山本船長に他なりません。
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角島南向き AM9:00ごろ |
角島南向き AM11:00ごろ |
12時前には港に着いて、船長と女将さんと談笑、次回もまた宜しくお願いしますと挨拶をして高畑集落を後にしました。
2日間、磯では結局クーラーに収まる魚なんて一匹も釣れてませんし、餌も時間も残っています。
小雨はパラパラしていますが、これまで何度か遊んだことのある旧御荘町内の波止に寄り道してみますかな。
短いながらも体力を奪う悪路を大汗をかきながら辿り着いた波止。
覗き込むと磯とは大違い。足元からビッシリ敷き詰められた捨て石ブロックに群れ遊ぶコッパグレの姿。
中には30cmを越えるようなやつも混じっています。それに魚種は確認できませんでしたが、他とは桁違いにデカイ魚影が一つ、深みへと向かって泳ぎ出していきました。
汗をぬぐう暇もなく大急ぎで道具をセット。とりあえず波止らしく、ナビを噛ませたゼロスルスルを選択。ハリスはデカイの見てしまったし一応2号を掛けておくかな。
コッパ連中はまあまあいい動き。撒き餌のど真ん中にサシエを落としてみると気持ちよくナビが引っ張られ、手のひらコッパをゲット。すぐに放流しましたが、このサイズでも今はやたらに愛おしい(笑)
と言ってもまあこんなのばかり入れ食いにしても仕方ないですし、足元に撒き餌を数発。そして撒き餌を縦長に撒いて少し沖を狙ってみると25cm。よし、とりあえずキープしておくか。
続いて左右にポイントをずらして、15mほど沖に投入。
さすがにアタリの出は遅いですが、何投かしているうちにラインが走り、まあまあの手応え。元気一杯、29.5cmの口太がヒット!
波止の上部から水面まではほぼ6mあります。必然的に道糸は空中を漂っていますが、それが水面を切り裂くようにピンと張りながら、ウキと共にスルスルと水中に吸い込まれていく今回のアタリ、なかなか気持ちいいですなあ〜 うねりはあっても珍しく風は無いからこそなんですけどね。
ただ釣りづらいのは水面に浮かぶ大量の流れ藻、ホンダワラ。これが右に左に漂って、水面のラインを奪い取ったり、時折水面を完全に封鎖したりするから厄介です。
流れ藻が疎らになった時間を狙って竿を振りかぶり、今度は20m以上沖に仕掛けを投入。
仕掛けはG5のウキにG5のガン球を二つ。落ち止め代わりのナビは一ヒロ半程の所に有りますが、なるほどウキ止めは竿一本半の位置。
これを右へとゆっくり流れる潮に乗せて落としていって、じっくり釣ります。
またポツリポツリと落ちてきた雨粒を気にして余所見。そして竿先に視線を戻すと、ちょうど道糸が海面を掻き分けてピンと張り詰めていくところ。ウキも一緒にスーッと海底へ。アワセ!!
どうだ!さらにサイズアップか!と期待を持って起こそうとした竿、ズドン!と胴から曲がって大きな弧を描いています。
何だ!これは!?
リールのレバーを握り締め、両手で竿にしがみついていると、底へ底へと突進していた魚が方向を転じ、中層を一気に沖へと突っ走っていきます。
これも竿の弾力で凌ぎきると、かなり沖で大きな魚が水面にポッカリと浮かび上がりました。
光線の加減で赤褐色に見えた魚体、脱走養殖マダイか??
何度かの抵抗をかわしながら寄せてくると、これがチヌだということがハッキリとしました。
足元まで寄せてタモを入れてフィニッシュ!のはずが、ここからが大苦戦。
何せ6mのタモを真下に伸ばしても網の先端が海面をかする程度。しかもその海面は角島のとは比較にもならないけど、うねりで大きく上下しています。
掬ったつもりが実際は魚は網の下だったり、大きく持ち上げられて網の上を滑っていったり。
重たくて操作性の悪いタモが容赦なく筋力を奪っていきます。思い出したかのように再び走る大チヌ。
たまたま波止の付け根の磯にセイ(カメノテ)を採りに来ていたおっちゃんに横手からヤイヤイ言われながらやっとの思いで取り込んだ時は私も魚もクタクタ。あ〜、しんど。
後で冷静に考えたら、先端を回って波止の裏側に降りればそんな苦労なんかせずに楽に取り込めてたし(汗)
ともかくこのチヌ、53cmありました。巨チヌ・大チヌの宝庫のこの地域ではそこまでの価値は無いのかもしれませんが、この時の私には何物にも代えがたい価値と、嬉しさと、安堵感がこみ上げてきてました。
時計を見るともう3時。そろそろ出発しなければならない時間です。
雨も強くなってきたし、満足したし、これにて納竿、寄り道しながらも無事、10時前に帰宅しました。
今回もいつも以上に波乱に満ちた遠征釣行でしたが、ともかく無事に帰れてよかったです。
よく考えたら今回も磯では撃沈でしたが、最後にチヌが救ってくれました。
この一尾でストレスも解消。暫くは大丈夫。これでまた頑張れることでしょう。
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