風雲児  烈風伝
  ・磯の上の波!  いつも通りの鵜来島釣行記

2009年 12月5日〜6日  高知県鵜来島
・初日。仏バエ廻り
風も気になるほどではなく、波も穏やかな鵜来島。
渡船のキャビンや天井にひしめき合っていた釣り人たちが、一組、また一組と、本島・仏バエ廻りの磯へと渡っていきます。
やがて船内に人影が疎らになったころ、私も鵜来島西海岸の水源地という波静かな地磯へと降り立ちました。
しかしながら、いよいよ食い始めた巨グレの便りに誘われてこの島にやってきた釣り人たちの誰もが知っていたのです。
・・・この平穏がそう長くは続かないということを。

 釣り場の背後に建つ鵜来島の水源地。
船付きに釣り座を構え、撒き餌をパラリと打つ私。
まあ〜、いきなり出るわ出るわ。ソウシハギ、ウスバハギ、丸ハゲ、ハコフグ、ウミスズメ、キタマクラ、ハリセンボン・・・ガジガジオールスターズのみなさんです。
餌はもちろん残りません。もちろん針も。
それらを磯際に撒き餌で引き付けておいて沖に遠投したり、オヤユビ方向に流れる結構速い潮に乗せて流していくと時折スプールからバリバリと糸が出て行きますが、それは決まって体にパーマークを散りばめた70〜80cmのオシャレ?なハマダツ。

そのうちに一匹の丸々とした魚が撒き餌を追って磯際と沖合いを往復し始めました。
水面に背ビレを出して撒き餌を貪る50cmクラスのコロダイ。
これは今回がデビュー戦のロッド、elivery etreme stom メガチューン1.65号の力を試すには恰好の獲物!
早速2号のハリスを3号に張替え、万全の体勢を整えてコロダイの通り道にサシエを漂わせました。
狙い通り水面下50cmでサシエを飲み込んだコロダイは、磯際目掛けて矢の様に突進!
しかし竿は曲がりませんでした。重みも感じる間もなくそのまま高切れ。おのれぇ!ソウシハギめ!!
これもデビュー戦の道糸「オシャレ」、色変わり部分がやっぱり狙われたか・・・。

ハリスガジガジ軍団には本当に手を焼きました。
弁当船までに辛うじて釣った魚といえば、丸ハゲが1匹、手のひらキツが数匹、偶然掛かった口太グレ25cm1匹。
あとはダツやらウミスズメやらハリセンボンやら・・・。

弁当船といえば、最初に現れた船には何と弁当が乗っていませんでした。
「実は手違いで弁当が1個足りなかったんです。申し訳ありません。30分くらい後に持ってきますので・・・」
で、30分後に手にしたのがヌクヌクのご飯が妙にドッサリ入った弁当だったのですが、これを落ち着いて食べることは不可能でした。
それというのも、私の頭上では2羽のトンビが隙あらばと攻撃態勢を取って常に旋回しています。背後を取られたら確実にやられる!
弁当に覆いかぶさるようにして一口食べては空を睨み、また一口食べては箸を構えて威嚇し・・・うぅ〜白御飯が喉に詰まるぅ〜(涙)
しかも、こんな時に限って海面が騒ぎます。
キビナゴの群れを追ってきたヤズ、あるいはシオの群れがボイル!ボイル!ボイル!本当に弁当を食べている間だけ。
さらに、かなりの横風がこの時すでに磯を襲っていたのです。

水源地からの磯替わりの道中、仏バエの釣り人を回収。
この直後、船尾より大波が押し寄せ、船尾座席に座って
いた乗客みんなで、船の中で泳ぐことに・・・。
天気予報では低気圧の接近で9時ごろから雨が降り、そして風が吹き荒れるということでしたが、実際には雨など一滴も降らず、いきなり強烈な風が吹き始めました。

すっかり鵜来らしい海になってきました。
船着きにはバシャバシャと飛沫が飛んできますので、少し釣り座を移動して岩の陰で釣りますが、目ぼしいものは旨そうな良型オヤビッチャと、イシガキダイの子くらいで、どうにか3Bの仕掛けを合わせても、竿を引っ手繰るのはハマダツでしかありません。

この日は引っ切り無しに渡船が見回りに来てくれました。
強い横風で釣りにくいだろうと心配して磯替わりを勧めてはくれましたが、当の私にとっては、こんな風などいつものことと、別に気にもせず釣っていました。
それでもまあ折角ですので1時ごろの船で、鵜来の港の湾内にある「標識の下」の横の磯に磯替わり。

港周辺のエリアということで、自分の磯や隣の磯の磯際を重点的に狙いますが、いいサイズのガシラが一つと、瞬殺されたのが一度だけ。きっと黄色いのか青いのでしょう。
また、湾内にひしめき合う釣り人たちにも本命の気配は無い様子でした。一月後ならこの辺りでも面白い釣りができたかもしれないのですが。

  鵜来の港周辺にひしめく釣り人たち。
この日は2時過ぎに早めの迎えが来ました。
鵜来島の港に大量の人と荷物を降ろし、船は大波の海を渡って宿毛へ帰っていきます。
前日一睡もできなかったことで大酔いの、青い顔をした私を乗せて。

そうなんです。この日の泊まりは18人。
渡船屋の島の民宿は満室で、片島泊まりの組が出たのです。
しかも片島港の金澤旅館も私が電話を掛けた時には既に満員御礼で断られ、結局は大月町まで走って、いつもお世話になっている幡多郷で一泊ということで落ち着きました。

その幡多郷ではウツボの塩焼きや鍋、キビナゴや緋扇貝の刺身、ブリ大根などなど、美味しい料理に舌鼓を打ち、マスターとの楽しいマイナー魚料理談義に花を咲かせ、静かな環境でゆっくり休んで・・・と、本当は断られてラッキー!だったんですよね♪

・2日目。マルサゲ廻り
水島の大尾長との対決の朝、海沿いにあるわけではない幡多郷の建物は風で大きく揺れていました。
海上保安部のテレホンサービスからは「高知海上保安部が気象情報をお知らせいたします・・・土佐沖ノ島灯台では、西北西の風20メートル・・・」とのアナウンス。
ただでさえ今日は泊りが18人。結果は行く前から見えているような気がします。
しかしそれでも、のぼってゆく磯の下の青い海にもし一朶の白い尾鰭がかがやいているとすれば、それのみをみつめて磯へのぼってゆくであろう。
まことにちっぽけな人間が、暴風波浪牙をむく大海原にその身をゆだねる荒磯へ。
私は無謀ともいえる戦いの起点となる片島へと車を走らせましたが、その車内でBGMとしていたG・ロジェストヴェンスキー指揮の狂気をはらんだショスタコーヴィチの音楽が、磯釣り師の狂気と共鳴していくかのように聴こえました。

大阪、三重、尾張小牧・・・様々なナンバープレートの車と人混みでごった返す片島港を、私の乗り込んだ渡船が離れたのは5時半ごろ。
荒れ狂う波に何度も座席から放り出されそうになりながら、一度などは柱に頭を強かに打ちつけられてタンコブを拵えながらようやくたどり着いた鵜来島港。ここで再び大量の人と荷物を積み込んで、いよいよ巨大尾長の待つマルサゲ廻りの磯へと出発です!

まずは順当に、本島南岸のシロイワのスベリから渡礁開始・・・と思ったら、船は磯とコンタクトすることなくUターン。この時化っぷりではとても釣りはできないとの判断でした。

7時、暴風を背に受けながら唸りを上げていたエンジンがスローダウンし、水島群礁に到着です。
この時絶好調、巨グレが乱舞し、日に何発も何発もハリスをぶち切られているという水島2番、そして2番の奥、奥々へ、風に飛ばされそうになりながら人々が渡っていきます。
その数合計11名。

          その日のマルサゲ。
さて、次の磯は・・・
マルサゲは高々と上がる波の下にありました。見回せば数多舞い散る磯の上の波。
実績は聞かないけど、ここになら潜り込めるだろうとして私が狙っていたポイント・水島3番東向きの釣り座も釣りは不可能と判断した船長は、迷わず船を旋回させ、激しい波濤や風とぶつかり合いながら再び本島へ。

ワレ周辺、ドンタク周辺・・・次々と釣り人たちの名前が呼び上げられていきますが、その中に私の名前はありません。これはもしや波止釣り?
船中に残り5人となった時、ようやく私の順番となりました。
「これから少し走ります」と、港周辺から離れてミツバエへ。しかし暴風の状況は酷いもので、「やってみますか?」と問われてさすがの悪天の総帥も「はい」とは言いかねました。

で、結局私が上がったのは、一応マルサゲ廻りに含まれている「カベ」という名の磯。
港の2番とワレの間にある地磯で、断崖絶壁にあるくぼみとしか言いようの無い場所でした。
足場は高く、平らですが、その広さは半畳くらい。両側は当然岩の壁。
まるで仏像にでもなったような心持ちで左手を覗き込むと10mほど先に「三角」という磯があり、一人の釣り人がせっせと風の中にウキを打ち込んでいます。

時計を覗き込むともう8時!片島を出港してからこの磯に上がるまで2時間半!
釣りができる時間は6時間ほどしかありません。急いで準備をしなきゃと思いますが、やっぱりテンションが上がりませんなあ。

今日も竿は1.65号、ハリス2号でスタートです。
くぼみですので吹き荒れる風はほとんど当りませんが、引き換えに竿をまともに振ることができません。釣りにくいよぉ〜

足元に撒き餌をパラリと入れると海が赤茶色に染まりました。ミナミハタンポ(地方名ハリメ、ヘリコプター)の大群です。
グレの姿は全く見えません。沖ではアタリも全くありません。
磯際のハタンポの隙を突いて何とか仕掛けを沈めるとようやくウキが消しこみ、やった!と一瞬私の活性は上がったように思いましたが、浮いてきたのがミギマキだったものだから・・・(涙)

もういっそのこと、ハタンポを釣って泳がせてみるか。この頃やたらに多いイギス(オオモンハタ)か、ミノカサゴくらい食ってくるかも知れないし。
しかしいざハタンポを釣ってみると予想外に大きく、餌にするにはちょっと・・・。
これなら我慢してフカセを続けるとしますか。(餌にし損ねたハタンポは美味しいのでもちろんキープ♪)

浅ダナには何も居そうにありませんのでウキ下を4ヒロに変更し、ここは汽水域か?と疑ってしまうくらい右へ左へ安定しない潮に乗せて探っていきます。
しかしサシエはほとんど無くならず、沖合いを飛び交う白い波や、姫島の手前、時には竿下の海面に渦を巻く白いつむじ風を眺めるばかりの時間が随分と流れました。

その時、潮は沖から斜めに足元へ突っかかって来ていました。
ふと視線を落とすと、足元に流れ着いたウキが海中に突き刺さっているではありませんか!次いで、竿もウキを追うように足元へ舞い込んでいきます!
久しぶりの力強いファイトに、半ば釣りながら眠っていた体と心に一気にエンジンが掛かります。
ニューロッドは何度も執拗に突っ込んでいく魚を粘り強いバットで押さえつけ押さえつけ、ゆっくりと水面へと導いていきます。
竿を叩いたりしていたので、あまりいい魚ではないだろうと高をくくってやり取りしていたけれど、やがて海面を割ったその魚の姿に驚きと喜びの表情が同時に私の顔に表れていたはず。
その魚、イサギです!
     脂ノリノリの43cm!
大事にタモに入れ、引き上げた狭い足場であまりにもデカデカと見ゆる43cmのイサギ。
釣り開始2時間半、完全に諦めモードだっただけに、やった!やった!と一人なのに思わず言葉が口からあふれ出していました。
カベ、捨てた物ではありませんなっ!

きっとイサギは群れで居るはずと、丹念に辺りを探っていきますがアタリは全く続きませんし、サシエもまた取られはしません。
一度ウキにもラインにも何の変化も無いまま、拳グレ6号がクシャリと潰されていましたから、ネズミフグくらいはいたと思うのですが・・・。

結局次のアタリまでは1時間以上を要しました。
仕掛けと馴染む辺りに撒き餌を集中的にばら撒いて、しばらく待っているとウキがジワジワと入って水面下でサスペンド、間をおいて再び少し沈んでサスペンド。
どう見ても潮に吸い込まれているのとは違いますので、アワセ!
今回は非力ではあるものの先ほどと同じファイトがロッドを通して伝わってきます。
明日の夜はご馳走だ!とまたまた笑みのこぼれる36cmのイサギでした。

次のアタリもやはり1時間以上後。
35cmのイサギをクーラーに納めて、やがて2時半、タイムオーバーを迎えました。

今回もまた、尾長の乱舞を見るという10年越しの夢は叶わず、この磯では口太の影すら見ることはできませんでしたが、嬉しい美味しいイサギ3枚を手にして、朝とは正反対の気持ちで磯を離れる私。

この日、水島2番はグレもイサギも掛からず、上がっていた大阪の愉快なベテラン釣りクラブの皆さんは残念な事に一同打ち揃って撃沈だったとか。
結果的にはこの釣りにくくて一見パッとしないカベが、この日最も快適で最も嬉しい釣果をもたらしてくれた当たり磯だったようですね。

片島港で船長が「せっかく来ていただいたのに今回は済みませんでした」と声をかけてくださったのですが、何の何の、こんな悪天候の中で無事に竿を出させてもらっただけでも本当にありがたいことですよ。感謝しております。
だいたい、こうなったのも多分私のせいですしね。(今回も予約を入れた水曜日の翌日から、週末の予報が劇的に悪化しました)
お世話になった家本船長、そして全ての釣り人に申し上げます。
「いつも酷い天気にしてしまって済みません。」
          いつもの風景。

 ● 鵜来島 ugurujima
利用渡船 家本渡船 出港地 高知県宿毛市・片島港
時間(当日) 5:00片島発〜14:00 料金 初日:8000円
以降:5000円
駐車場 無料&有料 弁当 600円
宿/仮眠所 鵜来島:民宿を経営
システム 磯割り制(5交替)
1に大会、2に泊まり優先
残りは船内で争奪戦
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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