・年末!九州遠征! 薩摩硫黄島、風に消ゆ
2010年 12月26日〜30日 南九州一帯 (宮崎県 北浦)
正月休みに年休を合わせての九州遠征。
今回は鹿児島周辺を観光したあと、熊本県相良村の「かまちゃん」と合流して薩摩硫黄島で大尾長に挑戦するという6泊7日の大遠征です。
特に硫黄島では生まれてはじめての「瀬泊まり」をする予定でしたから、新たに準備したシュラフや磯バッグなど荷物がどうにも凄いことに・・・。
私は膨れ上がった荷物と同じくらいの不安と、遥かに大きい期待を抱えながら、車を大阪南港かもめターミナルへ進めたのでした。
12月26日、日本全土は強烈な寒気に襲われており、日本海側は言うに及ばず、鹿児島県内の高速道路さえ雪による通行止めが引き起こされた一日。
それでも「宮崎カーフェリー」は定刻の午後6時に大阪南港を出航、吹き荒れる四国の山並みで北西の季節風を防ぎながら、一路宮崎港を目指します。
様々な人々、出航から2時ごろまで約15秒刻みでメール着信音が鳴り止まない乗客と、堪りかねて声を上げたのにあまり効果の無かった乗客、結局1時間程も眠ることができなかった私等・・・を乗せて。
27日午前9時前、私は宮崎港へ降り立ちました。
この日の予定は観光。
都城市の関之尾滝と甌穴群を見学し、霧島の激しい噴気や霧島神宮の巨大さに驚き、上野原縄文の森にも立ち寄ったのですが、関之尾の滝は土砂災害の傷で遠くから見ただけ、霧島探索は積雪に阻まれ、上野原遺跡の展示施設は定休日。
他にも西都原遺跡や都城島津氏の資料館など、興味を引かれた施設はほとんど定休日だったし、宮崎の名物「なんじゃこら大福」も手に入れられずという有様。
その夜は、いつもお世話になっている「てんびんばかり」の管理人・KICIROWさんのご好意でご自宅に泊めていただき、何か微妙だった一日を全て打ち消す、本当に楽しい夜を過ごさせていただきました。
28日も引き続き観光。
丸池湧水 (鹿児島県湧水町)
雨の中、車を走らせるとさすがに鹿児島、車は火山灰まみれです(笑)
加治木から伊佐市へ。錦江湾沿いを南下してフェリーで桜島へ。同じ道を加治木まで戻り、急坂をのぼって湧水町へ。さらにはえびの市からループ橋を越えて人吉へ。
ん?翌日3時には硫黄島行きの渡船が出発するというのに、なぜ枕崎じゃなく、熊本県の山中にある人吉に?
既に述べたとおり、相生を出発したのはクリスマス寒波の真っ只中でした。
その時の週間予報は正月寒波が31日頃に到来することを予想していましたが、硫黄島釣行の予約を入れているのは29日〜30日。
つまり、私たちは寒波の狭間に釣行日を入れ込められるという幸運を喜ばずにはいられませんでした。
しかしながら二つの寒波の間にやってきたのは、薄日と大粒の雨が交錯する不安定極まりない天候と、木々をなぎ倒してしまいそうなほどの恐ろしい西風。
そんな風と、荒れ狂う錦江湾を目にすれば、「硫黄島の波予報は4mです」というかまちゃんの情報を聞くまでもなく、硫黄島どころか薩摩半島全域で磯釣りなどできるはずがないことが理解できます。
「それでも、どうにかして硫黄島で釣りができるように」というかまちゃんは硫黄島へ渡す黒潮丸の船長と連絡を密にして時化の僅かな隙を伺ってくださいましたが、自然はそれを許してはくれませんでした。
その上、北西風に強いはずの大隈半島も、どうやらこの風では無理ではなかろうかとのこと。
帰ろうか・・・。もう、どうでもいいや・・・。
すっかり消沈する私に、かまちゃんは「宮崎とか大分があります!あそこならこんな天候でも竿が出せるかも知れません!
その中で釣れているところを探します!折角九州まで来たのだから、どうしても釣りをさせてあげたい!!」と八方手を尽くし、大分県との県境に近い宮崎県の「北浦」のあゆ丸に予約を入れてくださいました。
昔、よく通っていた所だそうです。
こうして私はかまちゃんと合流、相良村でかまちゃんの車に乗り移って、宮崎県延岡市・北浦を目指したのでした。
阿蘇越えルートは積雪のため、国道10号線経由の約4時間の道のり。
車窓には、つい2日前に見た景色。宮崎市内の風景・・・。
関之尾滝 (宮崎県都城市) 霧島・御池と高千穂峰
(鹿児島県霧島市)樹高 30m、根廻り33.57m 巨樹日本一
蒲生(かもう)の大クス (鹿児島県姶良市)
・北浦 沖の高バエ
釣り談義をしていたので、あっという間に北浦・古江港に到着。
渡船の前に停めた車の中で目を閉じた次の瞬間、何ともう船が出ようとしているではありませんか!
寝すぎたっ!
二人は大慌てで服を着替え、車と船との間を荷物を抱えてネズミのように走り回ってどうにかセーフとなりました。
ここ北浦の渡船は、古江港周辺〜大分との県境までの地磯の周辺と、島浦島(しまのうらとう)の北側をテリトリーとしているようですが、この日「あゆ丸」が向かったのは島浦島。
船長は磯の前に船を停めて波の様子を見極めた後、かまちゃんの名前をコールしました。
サーチライトに照らされながら這い上がった磯は、「沖の高バエ」と言うそうです。
この時、5時過ぎ。辺りはまだまだ暗闇の中です。
その日の夕刻の「沖の高バエ」
磯の周囲の様子が分からず、釣り座も決められません。
これが硫黄島なら大急ぎで12号ハリスをセットして尾長狙いをしているはずですが、この釣り場では夜明けまでの2時間強を、寒さに震えながら過ごすしかなさそうでした。
北浦の渡礁ルールは、平日の場合は所定の時間に磯の前でジャンケンをして、一番に着ける磯を決める、四国で言う所の「西海方式」のようですが、土日祝日や年末年始等は出船時間を決めない早い者勝ち、つまり「フリー」になるとのことです。
大分県や宮崎県北部の渡船でよく行われているという「フリー」。
この日は5時の磯上がりで済みましたが、深夜の出船になったり、場所によっては人気磯で釣りをするために釣行日の2日前から磯に渡り、ひたすら釣り場が空くのを待つなんて事が起こったりするとか・・・。
四国南西部や播磨灘、若狭湾等をホームグラウンドにしている釣り師にはちょっと理解不能なシステムかも。
7時を過ぎてさらにしばらく待つと、やっとのことで明るくなってきましたから準備開始。さて、タックルをどうするかな・・・
かまちゃんによると、「いい時には40オーバーの地グロ(口太グレ)が連発し、50cmが出ることもある。尾長が出ることも。」との事ですがメインサイズは30〜40cm辺りと、ちょうど日振島と同じような感じですかね?
そして、宮崎県、大分県から腕自慢が押し寄せる人気釣り場ですから、グレは相当にスレているとの話です。(ネットにも「島野浦は日本一難しいクロ釣り場」なんて記述が溢れていました。)
結局、この日のタックルは、竿1.65号、道糸2.5号、ハリス1.7号という、今回持参した中で最も繊細なもの。(本来なら竿4号、道糸10号、ハリス12号でやっているはずだったんですが・・・)
これにG2のウキを通してウキ下を2ヒロ取り、船着きの上の段から磯際のサラシの切れ目に投入。
一投目から餌がなくなります。
二投目では投入直後のに反応がありましたが、ウキは少し入ったところで放されてしまいました。
そしてウキ下を1ヒロ半に縮めて投入した三投目、ウキに現れた小さなアタリを、こちらからの掛け合わせ!よしっ本命!
いきなり31cmの地グロ、つまり口太グレをゲットしてしまうという驚きの事態発生です。
幸先の良いスタートに盛り上がる二人の竿は、定期的に曲線を描き始めました。
私の右側の平らな所に入ったかまちゃんは磯際で尾長を連発していきます。手のひらサイズですが・・・。
一方の私はキタマクラを連発していきます。厳しいなあ・・・
厳しいといえば釣り座の環境。
沖の高バエ。向かいは人気磯・横バエ
沖には大分県の深島が見えます。
時折強い横風が吹き付けてきますが、これは沖の島・鵜来島の風を知る人間にとっては鼻で笑って済ませる程度のもの。
海面は大きなうねりにもみくちゃにされており、目の前の「横バエ」など、今にも飲み込まれてしまいそうな勢いで、他の渡船で上がっていたグループは見回りの船で逃げていきました。
ですがこれも、「こげん波の時に危なか所には降ろさんっちゃ」という船長が選択してくれたこの「沖の高バエ」では、釣り座にいる限り問題なし。
ただ、そのうねりは左手のワンドにぶち当たっては砕け散り、私の釣り座に容赦なく降りかかってきます。
一番下の足場に降りてようやく6mのタモが届く程の釣り座ですよ。この飛沫、10m近く上がってるなあ・・・
そんな中、隣のかまちゃんがイサギをゲット、さらに丸ハゲを追加しました。
美味しい獲物にかまちゃんも大喜び♪ いいなあ〜。
割と深いところで食ったという事ですので、私もウキ止めを1本強のところへ移動させ、そこからジワジワと沈めていきました。
この時使っていたウキは0号、ガン玉は7号でしたが、潮の加減で楽々入っていきます。
すると10時頃だったでしょうか、入っていくラインがスッと張りました。
この日は待ったり、送り込むよりも、瞬時に掛け合わせたほうが良さそうだというのが分かっていましたから、反射的にアワセを入れます。おお〜、心地いい引きだ〜!
この時ばかりは高い足場とうねりの大きさに手を焼きましたが、無事にタモに納まった34cm。
潮はフラフラと落ち着きません。
私はガン玉を7号にしたり、5号にしたりと、色々と仕掛けをいじりながら際を狙っていると、アタリ!
なかなか強烈な引きですが、今度は竿が細かく叩かれ、何かフワフワとした感じ。しかもサイズの割りに全然魚が浮いてきません。
「これは間違いなくバリですな。ほら。」と言いながら浮かせたのは40cm近いサイズ。
しかも普通の茶色いアイゴではありませんか〜。
最近は土佐清水とか、柏島とかでブルーのやつ(ハナアイゴ類)ばかり釣っていたので、何か懐かしいような感覚^^
これにはアイゴ好きのかまちゃんの「いいなあ〜」という声が飛びます。
それからはまたアタリが遠のいてしまいましたし、時計もいつの間にか12時近くを指していましたので、二人揃って弁当タイム。
あゆ丸の届けてくれた美味しい弁当を、四国での弁当事情の話題に乗せて平らげたのは、「渡船屋の弁当は南九州ではあまり一般的ではないんですよ」というかまちゃんの一言に端を発していたのです。
腹が膨れた所で、飛沫飛び散る釣り座にカムバック。
しばらくポイントを休ませた後は食うぞ〜!と、気合を入れて、サラシの切れ目の潮目に0ウキを投入。マキエをウキの頭に被せながら馴染ませていくと・・・
スルスルスル・・・思い描いたとおり、道糸とウキに反応が現れました。
この日の最長寸となった34.5cmのプロポーションのいい地グロです!
相変わらず連発とはなりません。
しかし、それまでフラフラと安定しなかった潮が左向きに流れ始めました。
本命の潮です。水面下でのコッパグレやコッパギツと思われる魚達の動きも良くなり、回遊してきたキビナゴを追って、青物も駆け抜けていきます。
ここで、かまちゃんが連続ヒット。
しかしながら、掛けても掛けても針外れだったり、ハリスを噛み切られたり・・・。
おっ!こっちにも!! 私の竿も大きく曲がりました。
「あ〜!またフワフワしとる!」
またしても40cm近いアイゴでした。もちろんキープですね♪
本命潮はドンドンいい走りになり、潮目も迫り、さらには風までも収まって、見るからに本日最高の状況です!
「このエリアでは夕マズメが最大のチャンス。午前中はあまり食わないけど、納竿直前に爆発する傾向がある。」という話でしたし、私はハリスを2.5号に上げて一発に備えます。
むむっ、食わないっ!
どうも水温が急落してしまったらしく、エサトリも消えてキビナゴの大群しか見当たらなくなってしまいました。
これではどうにもならないと判断して、ハリスを再び1.7号に戻し、ウキ止めを1本半に設定したBのウキを沖に投入したのが午後3時40分。
その一投目で、久々のグレが食ってくれました。
一日を通してグレが食ったのは仕掛けや釣り場に何らかの変化を与えた瞬間だけ。
午前5時からの長い釣りを終え、港に戻ったのは午後5時。
やはり全体的に食いが渋く、31〜34.5cmの4尾の口太と、ナイスサイズのアイゴをゲットした私が、何とこの日の竿頭になってしまった模様です。
初めての宮崎の海は私に優しかった。
港で待っていた「あゆ丸」の女将さんに釣果写真を撮ってもらい、荷物をかまちゃんの車に積み込んでから、渡船の待合室へ。
扉を開けてみると、ウエアを脱いだお客さんが皆、テーブルについています。
テーブルの上にはゆで卵と、すり身の天ぷら、暖かいお茶が並べられ、それらを手に船長や女将さんを交えてのんびりと談笑していました。
かまちゃん曰く「ここのゆで卵は日本一旨か!」
女将さん曰く「うちの船長はゆで卵を作らせたら一番だっちゃ!」
・・・さすがです。本当に旨い!
この雰囲気の中にいつまでも居たいなと思わせる時間でしたが、私は先を急がないといけません。
「機会があったらまた来ます!」と挨拶して、かまちゃんの車に乗り込み、大急ぎで熊本県相良村を目指しました。
実はこの夜は、渡船屋の周辺にある宿で一泊し、体を休めてから明朝、相良村へ引き上げるつもりだったのですが
「今は泊まっているような場合じゃない。一刻も早く九州を出発して、夜のうちに少しでも距離を稼いでおいた方がいい。」
そう忠告してくれたのは船長でした。
この時、とてつもない寒波が西日本の目の前に迫っており、翌日の昼には九州遠征最大の難所、山口・広島が雪に覆われてしまう、船長はそう読んだのです。
私の旅の疲れを考慮してくださったかまちゃんの計画は本当にありがたかったのですが、ここは船長の言葉に従って少々無理をしてでも帰るべきだと判断。
かまちゃんの車の助手席で目を閉じて、体力を充電しながら相良村にたどり着き、峻烈な寒さに凍りついた愛車のガラスを解凍すると、そのまま一気に九州を脱出しました。
そして、本州のいくつかのサービスエリアで眠りに落ちては、あまりの寒さに起こされることを繰り返しつつ、結局12時間かけて相生に帰還。
間一髪でした。
岡山県の備前エリアに達した時には、辺り一面銀世界。
高速道路も路肩まで雪に包まれ、反対車線では既に事故による渋滞が始まっていました。
もし、船長の忠告が無ければ、半日でも帰りが遅れていたらどうなっていたか、考えるだけでも鳥肌が立ちます。
鹿児島はこの日、20cmの積雪。
そして、1000台以上の車が雪に閉じ込められたり、400隻近い漁船が雪の重みで沈没する程の凄まじい年末年始が、まさにこの日、始まったのでした。
そして、旅を開始した日からちょうど1ヶ月に当る平成23年1月26日、霧島連山・新燃岳が本格的な火山活動を開始。
私が歩いた都城や御池は、火山灰や噴石に襲われ続ける苦悩の日々をスタートさせてしまったのです。
・今回の全行程
26日 兵庫県相生市 → 宮崎カーフェリー・大阪南港発(18:00) → 船中泊(寝られず) 27日 → 宮崎港上陸(8:30) → 関之尾滝(宮崎県都城市) → 御池、霧島神宮(鹿児島県霧島市) → 上野原遺跡(霧島市) → 鹿児島県加治木町・泊 28日 加治木町 → 藺牟田池(伊佐市) → 蒲生の大クス、武家屋敷群(姶良市) → 桜島・湯之平展望所(鹿児島市) → 天文館周辺(鹿児島市) → 丸池湧水(湧水町) → 人吉温泉(熊本県人吉市) → 熊本県相良村 → かまちゃんの車で北浦(宮崎県延岡市)へ → 港で仮眠 29日 北浦(宮崎県延岡市)で磯釣り(5:00〜17:00) → 熊本県相良村 → 人吉IC発(22:40) → 30日 → 兵庫県相生市(10:40)
何と、ゆっくり寝たのは1日だけ。実質1泊5日の南九州遠征・・・。
当初の計画が見る影も無いほど狂ってしまった九州遠征でしたが、旅の醍醐味でもある様々なアクシデントを楽しみ、KICIROWさんやかまちゃん、船長ご夫妻や同船の皆さんのおかげで、沢山の得がたい体験をさせてもらうことができました。
ただ、やはり残念なのは、硫黄島の噴出物で黄色く染まる海と、大きな大きな夢を見ることができなかったこと。
未使用のまま旅を終えた瀬泊まり道具一式とともに、いつかまた挑んでみたいものです。
今回の獲物。
北浦のグレ、アイゴ、カゴカキダイ。
そして、KICIROWさんに頂いた
世界最大の大根・桜島大根と、
世界最小のミカン・桜島小みかん。かまちゃんのご協力が無かったら、一度も竿を
出すことなく、泣きながら帰ってきていたことでしょう。
本当にありがとうございました。
● 北 浦 kitaura 利用渡船 あゆ丸 出港地 宮崎県北浦町・古江港 時間(当日) 5:00〜17:00
料金 4500円
駐車場 無料 弁当 500円 宿/仮眠所 無し? システム 年末年始、土日
:フリー(出船時間無しの早い者勝ち)
平日:一組目はジャンケン。後は他船との競争。磯替わり あり *データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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