今年は2月後半か3月頃まで冬眠する予定でしたが、年末の九州遠征が意外なことに(?)短縮日程で終了し、そんな日程から宿代が完全に浮いてしまうという幸運(??)にも恵まれたので、年明け早々四国へGO!
宇和海では全域でグレが絶好調です。
50cmも頻発しているという今なら、私にも40cmを手にすることができるかもしれませんが人だらけ。
特に日振・御五神などは渡船屋の予約すらなかなか取れない状態と聞けば、釣れていても混雑した釣り場を極力避けたがる今の私が出向こうはずがありません。
また、沖の島・鵜来海域でも沖では尾長が食い、地方では口太の二桁釣果はざらだとか。
従弟は日帰りで鵜来に行くつもりで、前日昼に予約を入れたとのこと。
「グンカン廻りやけど人がおらん。ガラガラや言うとった。」
これには心を動かされました。グンカン→仏バエもいいかも!お気に入りの「港の高バエ」を狙って、久しぶりの数釣りに挑戦なんて!
色々考えたけど、結局私が初釣りの舞台に選んだのは、またもや柏島です。
あまり数も出てないし、サイズも小さいということですが、それなら人も少なそう!
「沖の島・鵜来で食っているんだから、そろそろ・・・」という期待もありますし、蒲葵島・赤バエならどこでも40cmオーバーの尾長グレという(私にとっての)幻の魚が出かねないという邪な気持ちも。(去年、2011年の目標サイズは35cmだと言ってたのに・・・)
でも決め手はやはり、平和な雰囲気と、美しい風景、そして釣らせたいという思いがビシビシ伝わってくる井上(弟)船長が好きだということ。
12月末、私の九州遠征に合わせるように到来した寒波は年が明けてもまだ居座り続け、高知道大豊付近は行きも帰りも雪の中でしたし、高知県窪川では路傍の温度計がマイナス5度を示していました。
そんな1月8日、井上渡船の本日の磯割りは蒲葵島廻り。
私が上がったのはおそらく「コウロウバエの地」という所のようです。
最近ここでいいのが出ているという船長の言葉に心を浮き立たせながら、準備を整え、いざ、2011年の第一投!!
・・・なんと、その前に井上渡船が舞い戻ってきました。
「Tさん、替わろう!道具を積んで!!」
「えっ??」
「ここも釣れちゅうし、ええと思うけど、今日のこの潮ならミタライが絶対ええき、あっちに行こう!」
広げたばかりの荷物をまとめて船に乗り込むと、蒲葵島を半周回って東のミタライへ再渡礁。 「今日は釣れるで!ここは太いのがおるき、頑張って!・・・多分取れんけど!」
メラメラと闘志が沸き上がってきます。「やってやろうじゃないか!」と。
滑り台のような釣り座から、背後の滑り台に飛び移って高いところに荷物を運び上げると、タックルを再構築します。
ツインパワーの2号に道糸・ハリス4号、そして尾長針を選択し、G2のウキでウキ下2ヒロ。サラシの先からシモリへ、カジヤノキリ方向へ流れる潮に乗せて探っていきます。
光量が少ないのと、風とサラシでざわついているのとで海中の様子はあまりうかがい知ることができませんが、どうやら魚の姿はないようです。開始直後に海亀が一頭泳いでいっただけ・・・。
しばらくやってみてもアタリはありませんし、風もあるのでウキをB、ウキ下も1本に変更。
すると8時15分頃、シモリ際をジワジワと潜行させていたウキが加速するや、バラバラバラ!とラインがスプールに掛けた人差し指を弾いて駆け抜けていきました。
ビシッ!
反射的に起こされた竿が描く雄大な曲線。
水底の戦士は漲る重量感で圧倒し、ジワリジワリと押し切ろうとしてきます。
私は竿尻をグッと引き付け、太糸の援護を受けながら、好敵手の重厚な動きについていきます。
攻防しばし、水面にその姿を現したモノトーンの魚体。本命だ!
私はタモ網に手を伸ばします。網は海面に横たわる魚体めがけてスルスルと伸びていきます。
さあ、俺達の戦いはここからだ!
ここからは磯際で砕け散る波と風が魚に加勢し、タモ入れを大の苦手とする私に襲い掛かります。
スルリ、スルリ。
案の定、タモ枠をすり抜けていく魚。砕ける白泡が魚を誘導する私の目測を狂わせます。
必死の形相の私の15m沖には、弁当を運んできた井上渡船が待機中。
そのスピーカーから、船長の呆れた声と、檄が浴びせられます。
やっとのことで2011年のファーストフィッシュをタモに納め、磯に引き上げた私は、船に飛び乗って弁当を受け取りました。
「あんなタモ入れがあるか!タモ入れはこうやって・・・」
「何匹釣った? なにぃ1匹!? 折角釣れるところに替えてやったのに!」
勝手知ったる船長の、楽しい冷やかしの言葉とともに。
さて、磯の上で暴れている口太グレです。
これはやったぞ!とメジャーを当ててみると、尾鰭の端は47cmの目盛りに達しているではありませんか!
永らくのしかかっていた42cmという壁が突き崩され、ようやく口太の自己記録を更新した瞬間でした。
この日はベタ凪の予報でしたが、結構強い北西の風が普通に吹き続けていました。
その風の冷たいことといったら、昼前になってもまだ手がかじかんでしまうほど。
そんな冷たさも、先ほどのグレに気をよくした私の心を冷やすことはできない・・・と思いましたが、後が続かないのではどうにもなりません。サシエもあまり取られなかったし。
それでも2度の渾身のファイトを味わうことはできましたが、一度は50cmのサンノジ。もう一度は圧倒的パワーの前に竿を立てることもできませんでした。(かなり深いところで掛けた魚で、グレじゃ無かったような気がします)
結局初日は25cmのカワハギ2尾を追加しただけで納竿。
他の磯では40cmクラスを含むイサギを二桁釣りしていた所もありましたが、グレの食いはよくなかったようでした。
イサギといえば、小さなやつが掛かったのに、抜き上げようとしてオートリリースしてしまったことが悔やまれます。
そういえば鵜来はどうだったんだろう?
宿に帰って従弟に電話を入れてみたら、ガラガラのはずがやはり超満員で水島には上がれず、一日港の周りで口太を狙っていたとのこと。
その港周りも口太2桁どころか1枚を手にするのがやっとで、水温が下がってしまったんだろうなあ・・・と嘆息しておりました。
|
ミタライから見る、一番カッコいい
グンカン(赤バエ)の姿。
戦時中には米軍機が誤って
攻撃を加えたんだとか・・・
明日はあそこもう一勝負! |
2日目、港に向かうと、渡船の周りは人で溢れ返っておりました。
今日は高知の釣具屋の大会がこの井上渡船を含む2船に分かれて行われるということです。
人数を考慮して、まだ暗い6時過ぎに港を離れた渡船の船上には、30数名の大会参加者と、6名の泊り客等が乗り合わせています。
幸いこの日は本島廻り担当の渡船に3名の客しかいないということもあり、大会世話人と船長の協議の結果、大会参加者は大堂海岸へ、一般客は本来の磯割りである赤バエ(グンカン)へということになっています。
船はまず大堂海岸へ。
大会参加者の忘れ物で引き返すなどのトラブルもあり、私は果たして磯上がりはいつになることやら・・・と心配していたのですが、さすがは熟練の井上船長。
的確な指示出しでごった返す乗客を纏め上げ、テキパキと心地よくなるほどのハイペースで大会組みを捌き切り、反転。大揺れの海峡を渡って一路、赤バエへ!
本日の戦場は「グンカンの高場」の西側に隣接する、三角形をした平らな低い場所。
足元はズバッと切り立っているようで、見るからに石鯛やクエの釣り場です。
マキエを打ってみるけど今日も反応は無く、潮もほとんど動いていません。
ここ、どうやって釣るんだろう・・・って、際でドンドン沈めていくしかないか・・・なんて一人ごちながら、齧られもしないサシエを打ち返し続けていました。
7時ごろに渡船が登場。
「風でやり難かったら向こうに行ってもええよ」とのこと。
今日の天気予報は後半に寒気が流れ込み、波高は1.5m後3mとなっていますが、磯に渡る前から風はビュンビュンに吹いていました。
ただ、この釣り座は時折左から強く吹かれはしますが、どうせ狙うのは際ですし、それほどやり難いことは無かったので「ここで続けます!」というジェスチャーを返します。
「隣(グンカンの高場)は3枚上げちゅうよ!」と発破をかけて去っていった渡船、それを一旦は見送った私ですが、8時半頃にやってきた弁当船は、開口一番「Tさん、道具を構えて!あっちに替わろう!!」と・・・。
船長の言葉に従って移動です。
風裏に行くのかな?と思っていたら、船は蒲葵島の東向きへ向かい、「蒲葵の水道」の北側にある磯にホースヘッドが押し着けられました。
船長曰く、「ここも太いのがおるよ!この前も45cmばぁの、2枚上がっちゅう!」
とっておきの磯に上げてもらったのだから頑張らないわけにはいきません。
ですが、これ、なんちゅう風やねんっ!
構えているだけで根元からひん曲がる竿。
先ほどのグンカンとは違い、激しい風が唸りを上げて常時襲いかかってきます。
ウキの周りには頭を潰された波・波・波。
その波の群れは、遠く霞む宿毛の山並みまで遥かに連なり、その上を白い潮が旋回しながら、競い合うようにして次々に駆け抜けていきます。
この蒲葵島のすぐ隣に浮かぶ沖の島の灯台の、この日の風速は15m。
風のときは重い仕掛けで・・・ 風のときはウキを沈めて・・・
そんなのは、そよ風の中でしか釣りをしたことのない人の寝言です。
これほどの暴風の吹きっさらしでは、潮の流れも魚の動きも考えず、ただ風下にマキエの斜列を作り、風上から吹き寄せられてくる仕掛けが出会う瞬間に賭けるのみ。
とはいえ、こんな釣り方で次々に魚が食うのを期待するなんてことは、あまりに厚かましい話。
それでも、2時間ほどもやっていると、波の谷間を漂うウキがズボッ!と海底へ連れ去られていきました。
スピード感溢れる凄まじい突進でした。何度も何度も執拗な。
ロッドを満月に撓らせてこれをねじ伏せます。
切り返すたびに竿先をゴンゴン振動させながら激しく抵抗していた魚が遂に浮上を始め、波の下でギラリ!と青白い鋭い光を放ったその瞬間。
張り詰めていたロッドが、一瞬にして力を失いました。無念の針外れです。
キツ?いや、ヒラアジか??
残念。でもデカい魚は確実に居ます。
正午を過ぎると、風の角度が多少変わり、暴風が更に激しく釣り座にぶち当たってくる状況に。
バッカンの杓立てに指していた杓は、空高く舞い上がって、波の向こうに消えていきました。
弁当のおかずは、私の口に入る前に多くが弁当箱から飛び去っていきました。
私の足元で発生した小さな潮の竜巻が、何度も何度も、そのまま私を巻き込んでいきました。
仕掛けを投入するチャンスは、風が息継ぎをする一瞬だけ。
それは、竿を構えてから仕掛けを投じるまでにかなりの時間を要するようになっていた1時過ぎのこと。
吹き戻されてきたウキが、駆け上がりの線の向こう側に、残像を残しながら吸い込まれていくではありませんか。
「きたぁ!」
荒れ狂う風を切り裂いて振り上げられる竿、その先端は波の中に鋭く突き刺さっています。
その更に先端には、うなりを上げながら、脇目もふらずに岩陰に突っ込んでいく力の塊。
ハリスは2,5号。腰ダメで耐える!耐える!耐える!
度重なる突進をことごとく止められた魚は、突如反転、駆け上がりを乗り越えて、足元に走りこんできました。
「そうはさせるかっ!」 私は竿と拳を前方に大きく突き出して凌ぎます。
ここで斜面を駆け下りて、左側に竿を回して引き剥がせば勝てる!いや、待て!左側の斜面は滑って危険・・・どうする!?
そんな一瞬の躊躇を敵は見逃しませんでした。
パアン!!
弾け飛んだハリス。竿は風に吹かれてたなびく竿。
・・・でかかった。しかもかなりの確率でグレだった・・・。
しばし呆然。
その後も戦い続けましたが、風に耐えているのがやっとの有様で、この日一日で手にできた魚といえばエサトリも含めて1尾も無し。
しかし強敵と力を尽くして戦えた、強烈に心に残る一日であり、また、強烈に疲れの残る一日でもありました。
2時半頃、納竿。
常連さんに「またここで会うでしょうが、その時も宜しく!」、船長に「また来ます!多分3月の連休くらいに!」と告げて進む帰り道。
グレ1枚をクーラーに入れて進む帰り道。
でも、その1枚は、ようやく手にした自己記録です。
この釣り場にこだわって正解だったかも!
ん?そういえば宿の部屋にあったルアー雑誌に、某団体が「資源保護のため、釣り対象魚にバックリミットを提言する。持ち帰れる魚を、メジナ類は30cm以上を1尾のみ。(クロダイも30cm以上を1尾のみ、イシダイ・イシガキダイはオールリリース)あとは全て(タグを打って)リリースするべし。」(但し、強制するものではないんだそうな)という記事が載ってたなあ。
全国一律でこれ?そもそも根拠は?と、押し寄せる「?」に首を傾げたものですが、図らずもこれを遵守している事に気付いてしまった、そんな帰り道でもありました。
● 柏 島 kashiwajima |
利用渡船 |
井上渡船(弟) |
出港地 |
高知県大月町・柏島 |
時間 |
6時半前後〜15:00
(1月)
|
料金 |
5000円
|
駐車場 |
港:500円 |
弁当 |
700円 |
宿/仮眠所 |
民宿を経営 |
システム |
磯割り制(5交替)
泊まり優先 |
磯替わり |
数回 |
|
|
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません) |
|