風雲児  烈風伝
  ・浦戸湾貸し船初挑戦。まさかまさかの高級魚三昧! 

2011年 5月3日 高知県浦戸湾(船釣り)
私のゴールデンウィークは2−3−2の飛び石のうえ、何のかんのと色々用事もありました。
どうせ道路も渋滞しますし、こういう時は日帰りできる近場が一番!
というような流れで、中学の時の同級生・M君との「浦戸湾」釣行が決まっていきました。

「御畳瀬(みませ)見せましょ 浦戸を開けて 月の名所は桂浜 よさこ〜い よさこ〜い♪」

浦戸湾は高知市街に大きく入り込んだ湾で、その奥行きは6kmあり、長宗我部元親の浦戸城跡と坂本龍馬像のある桂浜の傍らで太平洋に繋がっています。
この湾には埋立地や工場も多いですが、流入河川も多くて魚種も豊富。特にアカメはサイズを考えなければ土佐随一と言われていて、私も何度も訪れては湾岸を幾夜も歩き回ったものでした。
そんな浦戸湾に、今回は貸し船で挑戦しました。

浦戸湾の湾口近く、種崎に「釣りセンターうらど」という貸し船屋があることを知ったのは実は一年ほど前のことなんですが、船外機付き6000円、艪船なら3800円(釣行日現在)でチヌ、ヒラメ、エバ(メッキ)、スズキ、ヘダイ、カサゴ、キス、鯛子、カワハギ、蛸、烏賊、高知では大人気の対象魚ニロギ(ヒイラギ)等々、多彩な魚種が楽しめるとあっては、平成20年に閉店した和歌山県日高川河口の南釣具店のファンだった私の心を捉えないはずがありません。

何を狙うか、悩むところですなあ。

高知ではとことん嫌われているようですが、東海地方では絶大な人気を誇るという「ギマ」というカワハギの一種が浦戸湾には多数生息しているということで、私は当初、これを狙ってみようなんて考えていました。(相変わらずこういう魚が好きなんです)
しかし、色々検討した結果、エギでアオリイカを釣りたいというM君の意見を尊重、移動しながらポイントを攻めて行くM君の脇で、私は足元狙いに徹することにし、ターゲットを浦戸湾で近年激増しているというハタの一種「チャイロマルハタ」に設定してみました。
まあ増えているといってもさすがに確率は低そうですけどねえ。

午前1時にM君と合流して相生を出発。ゆっくり走り、途中で朝食を採ったりしても高知市まで3時間です。
私たちは市内で餌を探して彷徨ったりしながら種崎の集落に到着したのですが、果たしてこの御畳瀬行き県営渡船乗り場の横の店舗が「釣りセンターうらど」なんだろうか?
建物には「舟、餌、釣具」と書いてあるけど、船着場には小船が3艘しか繋がれてないし、日の出から日の入りまでOKのはずが日の出時間を大きく過ぎても閉まったままだし・・・。
で、M君と二人、不安になって近辺を探り歩いてみたのですが、結局はここが正解だったのです。(船はガレージの中にしまってるんですね。)
まあ、迷ったおかげで8〜10cmほどの活き海エビを扱っている餌屋を発見することができ、2人で300gを購入しました。(100gあたり600円でした。)
センターのおんちゃんに「ハタ狙いなら大きいエビやな。うちにはチヌ釣る小さいエビしかおらんき、途中で買うてきいや」と言われてましたからねえ。

浦戸湾。袂石から高知市街方面。
工業地帯もあるけど、水も随分綺麗になったとのこと。
ちなみに、この日は物凄い黄砂でした。
センターに戻って準備をしていたら、6時を回ってようやく店主のおんちゃんが登場です。
準備をすでに完了していた私たちは早速手続きをし、ポイントの山立てを詳しく教えてもらって船に乗り込みました。
私の4級小型船舶の免許は更新せずに眠らせたままなんですが、アルミボートでバス釣りを楽しんでいたM君の免許はしっかり生きていますから、今回は3馬力の船外機+艪(ろ)の付いた船を借り、M君の操縦で出発です。

最初に入ったポイントはセンターの対岸、袂石(たもといし)〜桟島跡(さしまあと)周辺。
ここは最深23mと浦戸湾で最も水深がある所で、それに伴う急激な駆け上がりや、航路を広げるために爆破された「桟島」の残骸等、海底は非常に変化に富んでいるとのこと。

船上で私が手にしたタックルは、シマノの「幻波0号300」「デジタナ小船1000」の組み合わせです。
リールはともかく、竿は船釣りの盛んな関東に留学していた時にマゴチ・メバル用として買った柔らかいもので、廃盤になって随分経っており、スペックが最早サッパリ分からない・・・。
なにしろこれまでに小さなガシラを1匹釣っただけという素晴らしい実績を持つ竿で、兵庫に帰ってきてからは出番も無く眠り続けていたものだから・・・。
ハタを狙うというのにこんな竿では不安この上ないですが、今回はオモリも軽いし、サイズも50cmくらいまでだということですので、とりあえずこれでやってみよう。

道糸はリールに巻きっぱなしのPE4号で、竿とのバランスは明らかに変。
その先に4号のフロロを矢引きほど繋ぎ、トリプルサルカンを一つ。ハリスは3号20〜40cmほど、針は丸セイゴ15号。捨て糸は2.5号をハリスの長さ+5cm、オモリ8号の仕掛けです。

7時前に釣り開始です。
仕掛けを足元に落として探りますが、船は潮に乗って南西方向に流され、すぐに灯台の際まで寄せられてしまいます。
この船には錨が付いてなかったので船の位置を何度も立て直し、結構沖の方からポイントへと流されながら底を狙います。

最初は尻掛けにしていたエビが、数流し目で頭だけを取られました。
この刺し方ではやっぱりダメだと感じて、次からはエビの頭の角を折って、口から角の付け根に抜く普通の刺し方に変更です。

それからまた数流し目、7時20分のこと。
水深17〜8mの所で柔らかい竿先が大きくグ〜〜っと引き込まれていきました。
やった!何か食ったぞ!サイズも良さそうだ!

いきなり本命!チャイロマルハタ40cm
魚は下へ下へと力強く潜っていこうとしますが、大急ぎで底を切ってしまえば船釣りのこと、引きを楽しむ心の余裕さえ生まれてきます。
ピッ、ピッ、ピピッ!
仕掛けが水面まで上がってきたことを知らせるリールのアラーム音に続いて、姿を現したのはなんと本命のチャイロマルハタ、サイズも40cmだ!!
「ほんまに釣ってしもたでぇ!」
やり取りを見ていたM君以上に、釣った私の方がビックリ。何かいきなり「今日はもう帰ってもいい」なんて気分にまでなってしまいましたね。(もちろん帰りませんけどね〜)

その20分後・・・と言っても、大喜びで写真を撮ったり、〆たり、仕掛けを作り直したりしていましたから再開後間もなく、再び私の竿が弧を描きました。
この時の餌は、エビが手に入らなかったときのために準備していた冷凍キビナゴ。
食らいついた魚は時折暴れながら、宙層を横方向に滑るかのように動いていきます。
そして、水面直下に浮かんできたコゲ茶色の魚体。おおっ!ヒラメだ!サイズは41cm!

相次ぐ高級魚、しかも40cmクラスの登場に、M君の頭からアオリの3文字は完全に消えたようです。(センターのおんちゃんに「今年はモイカが悪い」と言われた時点で半ば諦めていましたが・・・)
M君もひたすら餌で底狙い。
しかし、先の固いシーバスロッドが悪いのか、バス釣り風に針を幹糸に直結しているのが悪いのか、M君の竿はなかなか曲がってくれません。

M君に「そのうち、きっと釣れる!」と声をかける私も、アタリは朝の二つ以降完全に途絶えていました。
そこで移動を決意し、袂石の北西にある「クルス」や、5〜6艘の船が集結している「ナカミト」というポイントを巡り、さらにはセンターの南の浮標も攻めようとしましたが、こちらは潮が速すぎて断念。
そして御畳瀬の漁港の前で、ようやくエサトリのアタリを感じた9時半頃、船外機が突然トラブルを起こしてしました。

餌を刺しているM君。
背景の浦戸大橋の向こうは龍馬記念館、そして
長宗我部元親後期の本拠・浦戸城跡です。
船外機は周囲に盛大な爆音を轟かせ、その一方でプロペラはほとんど動きません。燃料切れかと思って給油してみても回復せず。
一旦センターに帰らざるを得ませんね。これではとても釣りになりません。

船外機が動かなくてもこの船には艪があります。
浦戸湾にはハイカラ釣りという伝統釣法があり、この釣りには艪が欠かせないので、貸し船にも艪が積まれているのです。
(「ハイカラ」というのは、ジグヘッドのようなテンヤの一種で、「ギリ竿」というガイドの付いた短い竹竿に通した「タカヤマ」(道糸)を手で捌きつつ、艪で船の位置を微調整しながら、キビレやエバなどを釣っていくそうです。)

しかしながら私たちにとっては「艪」なんてテレビの時代劇でしか見たことのないような代物で、正しい動かし方すら知りません。M君が挑戦してみたものの完全に制御不能です。
壊れたのが御畳瀬だったのが不幸中の幸い、艪はさっさと諦めて船外機のアイドリング・微速前進でどうにかセンターに戻ってきました。
センターのおんちゃんに見てもらうと、アクセルとギアを同時に動かしてしまったがために、プロペラを固定する割りピンが脱落していたそうです。

修理してもらって再出発。
針路は・・・やっぱり唯一の釣果があった袂石〜桟島跡に取ってしまいますよね。
朝と同様、23mの水深から一気に10m以上駆け上がる急峻な壁を、エビ餌の小突き(胴突き)仕掛けでしつこく攻めていきました。

ここでM君がキビナゴ餌でガシラをゲット。とりあえずホッと一息。

そして11時半、今度は私のエビ餌に反応が出ました。
エビが跳ねたかのような小さな前アタリに続いて、竿先がゆっくりと、しかし、今までで一番大きく舞い込んでいきます。
即座に大きくアワセを入れ、リールのハンドルを数回まわしたその瞬間に襲いかかってきた引きは凄まじいもの。
竿は瞬時にリールシートから捻じ曲げられて、船底をまたいで海中へと突き刺ささり、ミシッ!という苦悶の声を上げています。

切れる・・・ いや、折れる・・・。
軟竿、太糸、ガチガチのドラグ。最早ドラグを緩めている時間的余裕などどこにもありません!
私は右の親指でリールのストッパーを切り、左でのサミングを駆使して、最小限の糸を一気に放出。竿の角度を立て直すことに成功しました。
竿の弾力を活かせる角度で堪えていると、急激に魚の抵抗が弱まっていくではありませんか。
一挙に魚との距離を詰めるチャンスだ!当然、一気にリーリング!
すると、先ほどのパワーが嘘であったかのように、ただ重たいだけの巻き上げがしばらく続きました。

ここで、引きが豹変。
宙層へと登った魚は、秘められたパワーを一気に解放!まるでこの瞬間のためだけに体力を回復させていたかのような勢いです。
再び海中深く突き刺さっていく竿。こぼれる悲鳴。
負けるものか!!磯竿でのファイトしているかのように、私はサミングと竿の角度で凌いでいきます。
何なんだ??これは、一体!?

浮上。暴走。浮上。暴走・・・。
こんなファイトが3回にわたって繰り返されました。
そして、ゆらり・・・。水面下に姿を見せた魚は、光の加減で一瞬鈍い金色に輝き、やがて本来の色、茶色のまだら模様を顕わにしたのです。
その姿に思わず声を詰まらせる私。 「く、クエや・・・!」

まさか、クエが釣れるとは!
50cm、(2kgくらい?)
もちろんクエ鍋パーティーやりました♪
その驚きは魚にも伝わったのか、ここから最後の激しい抵抗が繰り広げられました。
どうにかかわして手ダモで掬い取り、ずっしりとした重量を感じながら遂に手の中に!
「やった!やったぁ〜!凄げぇぇ〜!」
まったく、柄にも無く叫んでしまいましたよ。
何しろ狭い船上の足元に横たわっているのは、言わずと知れた超高級魚クエの50cm。
私の興奮が収まるまでにかなりの時間を要したことは最早語るまでも無いでしょう。

午後になると予報の通りに雨が降り始めました。
これはまあ覚悟の上ですから、二人ともカッパのフードを被って釣りを続けますが、水は他の所から二人を狙ってきたのです。
太平洋に出ていたあらゆる船がこの雨を避けて、浦戸湾口から全速力で港に戻ってきます。
そのたびに私たちが乗っている小船は大揺れに揺れ、引き波は時折、低い船べりを簡単に乗り越えては、私たちを水浸しにしていきました。

さらに大潮の満ち潮が釣りを妨害します。
朝の引き潮と違って、船が乗っている表層の水は止まっているのに底潮は激流。
ドンドン流れ込んでくる塩分濃度の高い重い水が、10号のオモリなど、あっという間に彼方へと流し去ってしまいます。

そんな中、私は奇跡的に25cmのガシラをゲット。M君も潮が緩んだ時に竿を曲げたのですが、上がってきたのは残念な事にビッグサイズのクサフグでした。

ふと気付けばすでに海上には一艘の貸し船もありません。雨が降ってくりゃ大概の人は引き上げますよね。
私たちも4時過ぎに納竿。



この日の釣果。

クエ50cm、
チャイロマルハタ40cm、
ヒラメ41cm、ガシラ25cm
それにしても、こんな手軽な場所でこれほどの物が上がるなんて思ってもいませんでした。
今日の釣果、店で買ったとしたら一体どれほどの金額になるんでしょうか^^

この日は他のお客さんも色々と釣れていたようで、M君は常連さんが釣っていた25cmクラスのコトヒキやマゴチをプレゼントされていました。

近場でいい場所を見つけてしまったなあ。
クエなんてもう二度と釣れないかもしれないけど、やっぱりまた狙ってみたいですね。
そして、今回ずっと操縦を続けてくれたM君のリベンジ戦もやらなくてはいけません。次は必ず主役になってもらわねば!

おんちゃん、また来るからね〜〜!
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