風雲児  烈風伝
 ・往復約800km日帰り単独行、しかもトリプルヘッダー。
            狂気と執念が奇跡を起こす!?

2012年 11月9日  高知県小才角・高知県南西部の漁港・河口
・秋のうまいもんフィッシング(仮)
 従弟が沖の島・中バエで旨い魚を釣ってきました。
 標準和名「スマ」。体側に灸をすえた痕のような黒い斑紋を持つことからヤイトガツオと称されることも多い魚です。要するに高知エリアで「モンズマ」「オボソ」と呼ばれる魚のことなんですが、高知では標準和名「ヒラソウダ」のことを「スマ」と呼ぶため、四国外からの釣り師を何かと困惑させる魚でもあります。

 本鰹以上と評価されることも珍しくないこの素晴らしい回遊魚の群れが今、高知南西部に押し寄せているのです。

 溢れるような脂はスッキリと切れがよく、カツオ独特の風味を見事に引き立てていた刺身。臭みに邪魔されることのない強く深い旨みが、喉と心を満たしてくれたアラの味噌汁。
 旨かった。また食べたいな・・・。
 
 食欲が、私を釣りへと駆り立てます。 
 この秋の私は土日のいずれかに出勤、平日に代休というパターンですし、鮮度落ちの早い魚を美味しく味わいたいこともあって今回の釣行プランは平日日帰り1択。

 釣り場は、特にスマの回遊が多いという鵜来島・水島群礁・・・と行きたいところですが、釣行前に55〜60cmクラスの尾長グレが出始めたという情報が出回ってしまいました。こうなってしまえば「凪の日なんて曜日に関係なく満員御礼」との読みで鵜来という選択肢は消えました。今は昔ほど客は居ないと聞いても、鵜来ブーム到来以降の経験が私を島から遠ざけてしまいます。

 その代わりに選んだ釣り場は小才角。
 平日なのでいい磯が予約できますし、島より5000円も安い渡船代は、餌代のかさむこの手の釣りには本当にありがたい。そして、標準和名スマのみならず多くの磯で40cmクラスのシマアジが出ており、65cmのヒラマサも釣れているという情報が決定打となりました。
 
 「秋のうまいもんフィッシング」。これが出発前に浮かんだ今回の釣行記のタイトルです。

ベタ凪の名礁・ウスバエからの風景。
中央の磯が、予約を入れていたオオバエ。
国道321号線から丸見え^^
・まさかの名礁にアタック!
 当日、小才角新港に集まった車は6台。「シマアジが出ると聞いているので赤アミ主体のマキエにした。」というフカセ釣り師を含め、皆さん東磯に次々と渡礁。渡船が西を向いて速力を上げた時にはもう私しか残っていませんでした。

 尾長を狙うなら東磯に行かねばなりませんが、まだ釣れていないとのことですから今回は迷わず西磯を選択し、秋口のシマアジの実績磯である「オオバエ」に予約を入れていました。しかしながら乗船の際に意外な言葉が船長の口から飛び出していたのです。
 「ウスバエの予約がキャンセルになったから、乗ったらええよ!」
 ウスバエと言えば西磯随一の実績を誇る人気磯!断る理由なんて見つかりません。

 「昨日はここでしか釣れちょらんけん、頑張ってよ!」という船長の激励によって、なかなか予約の取れない名礁での釣りが幕を開けたのです。それは午前6時45分ごろのことでした。

・悲歌
 ウスバエは360度全てがポイントで、どこから攻めるか迷ってしまいます。
 まずは船着きにエサトリ用のマキエを気前よく打ち込んだ上で、船長一押しの沖向きのシモリとの間を攻めてみましょうか。

 すぐに尾長グレが竿を曲げてくれますがサイズは23cmほど。そしてこれが次々とヒット・・・というか、海一面こればっかりです。遠投やら、遥か潮下、潮上狙いとか色々とやってみても大きくて26cmくらいまでのコッパ尾長と、たまに同サイズのキツしか釣れてくれません。

何か騒がしいと思ったら、秋の火災予防運動のPR、消防車の
パレードでした。中央の磯はフタゴ、左はマルバエ。
 埒が明かないのでポイント変更。北側の高くて狭い足場に登り、オオバエとの水道を狙ってみます。
 ここはかつて、40cmクラスのシマアジを一日で70枚以上という恐るべき釣果が、カルロス・ガ〜ンさんによって叩き出されているポイントなのですが・・・。。
 う〜ん、南向きよりは多少大きいグレが見えたりするんですけどね・・・。それでもキープサイズには全然届かない感じですし、回遊魚もいません。

 ゆっくり東へ流れていた潮が9時ごろに西向きに変わると状況はますます悪化していきました。

・序章
 オキアミ生・ボイル計12kg、赤アミ4kg、グレパン、V10、アミパワー各1袋。今回は回遊魚狙いということで私の普段のグレ釣りよりかなり多い量のマキエを磯に持ち込んでいました。(人や地域によっては「たったそれだけか?」と笑われそうですが・・・)
 そのマキエは順調に消費されていきますが、シマアジも、標準和名スマも、スマ(ヒラソウダ)やメジカ(マルソウダ)さえもまだ回遊してくる気配はありません。
 時刻はもう正午過ぎ。焦りを通り越して諦めの感情が全身に広がっていきます。

 そんな折、再び潮が東向きに変わりました。
 それは、沖向きのポイントでは小さな小さな変化に過ぎませんでしたが、北側の高場に登壇するとこれまでとは違う風景が見えるようになっていたのです。
 
 数時間休ませていたオオバエ向きでの第一投。竿下に投入した0ウキがスルスルと沈降し、これまでとは違う抗い方をする魚がヒットしました。
 私は水面を割った丸っこい黒い魚を低場へぶり上げると、思わず「デカい!」と口走ってしまいました。しかしその魚をクーラーの蓋のメジャーに押し当ててみると32.5cmしかありません。やはり錯覚を呼び起こしてしまうようです。20〜23cmくらいのスリムな尾長を見続けた眼に突然飛び込む、口太の厚い体は。

 沖は相変わらずのコッパに占拠されていますが、磯際にはこのサイズのグレが目視できるようになっていました。
 ただそれは沖のコッパ、表層のチョウチョウウオの群れに遠慮するかのごとく磯際の中層から離れず、軽い仕掛けでも、過負荷のオモリを打った仕掛けでも、重い仕掛けでも、どうしても2枚目を食わすことができませんでした。

・中断された終曲
左端がオオバエ、二つ右がスベリ。
分かりにくいですが、小才角新港も見えます。
 暫くすると煮え切らない魚たちのサイズがワンランク上がり、数も東向きの潮が増した速度と比例するように増えていきました。そしてついに水面に張ったチョウチョウウオの膜を突き破って水面に姿を現し、沖のマキエの中心と磯際の住処との往復運動を繰り返すに至ったのです。

 コッパグレの群れを従えて水面を走るこげ茶色の魚たちは50cm程はありそうです。

 尾長グレ!!
 上物釣りをする人の眼にはそう映る、いや、そう映したいこの魚群に目を凝らし、客観的かつ否定的な眼で見つめると、四国の磯で出会う多くのケースと同様にキツ、つまりスズキ目イスズミ科の魚によって群れが構成されていることが徐々に明らかにされてきます。
 が、その冷静な眼にも、そこに明らかに毛色の違う40cm程の魚たちが含まれていることを否定することはできませんでした。

 鋒矢の陣形でマキエの中心へ食い込んでいく魚の、その先頭を叩く。
 私は魚たちが往復する時間を見計らってマキエを打ち、中心にサシエを紛れ込ませます。が、魚たちはウキを嫌っているのかどうしてもヒットに持ち込むことができません。
 ならば、あれを使うしかあるまい!

 今回も円錐ウキを外し、小さなアタリウキ「くわせグレ0号」と潮受けゴムを装着、ついでにハリスを2.5号に上げ、ハリをサイト尾長に換えて投入。思惑通り、直後にヒット!
 
 40cmを超すキツが次々と竿を曲げます。尾長は相変わらず最大27cm程度のものしか掛かりませんが何せ状況はドンドンとよくなっていっているのです。時刻は午後3時前。残された時間は実質45分。狙えるとも思っていなかった悲願の尾長グレまであと一歩!

 しかし・・・

 必死の形相で没頭する私の耳に届き始めたエンジン音がゆっくりと、確実にクレッシェンドしていきます。
 眼を上げると柏原渡船の姿。そして掲げた両手で×印を作った船長の姿がありました。
 納竿・・・?そんな馬鹿な・・・。可能性と闘志がかつてないほどに高まっているこの状況で、戦場を去らねばならないのか・・・。
 不測の事態に足元が揺らぎ、磯の上から崩れ落ちるかのようでした。

 ここ小才角の最終納竿時間は午後4時のはずですが今日は他の全員が3時上がりを希望しているようです。船長の体調のこともありますし、いつも無理を聞いてもらっている身でさらに無理を言うことはできません。私は大慌てで道具を片付け、渡船に飛び乗ったのです。

 最高に釣れそうな潮が走っていたこの日の小才角で釣果に恵まれた人は一人もいませんでした。

 ● 小 才 角 kosaitsuno
利用渡船 柏原渡船 出港地 高知県大月町・小才角新港
時間(当日) 6:25〜15:00
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 磯予約制
磯替わり あり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
 東磯では、カワグチなどにヒラマサが襲来。何度も何度も取り込み目前まで持ち込んだものの、最後は決まって6尾のサメに追い込まれ、食いちぎられ、ただの一本すら手にすることができなかったそうです。

 私のウスバエには結局、スマもシマアジも一度として回遊してくることは無く、クーラーの中に納まっているのは32.5cmの口太グレと、「うまいもん」としてキープしたオヤビッチャとチョウチョウウオ(本チョウ)が1枚ずつ。

 こんな状態で400kmの道のりをとんぼ返りできようか・・・。

・継の遊び
 普段なら港でゆっくりと片づけをし、船長や他のお客さんと雑談などして過ごすところですが、この日の私はただ大急ぎで道具を積み込み、支払いを済ませ、あっという間に小才角新港を後にしました。
 
 秋の日は短い。
 私は国道とふるさと林道をひた走り、目をつけている港にたどり着くと残ったマキエと道具を持ってポイントに走ります。
 
 狙いはゴマフエダイ。いわゆるマングローブジャックという魚です。
 目的の「うまいもん」からは少し離れてしまいますが、中学生だった頃からずっと憧れ続けている魚です。

 いつも見かけるこの場所ですが、この時期には確率はさらに跳ね上がっているはず!と信じて波止の壁際を探し回ると、やはり居ました!水面直下、見紛う事なき本命魚!
 ただサイズが10cmほどと小さいですがそれでも本命は本命。しかも、いつもいつも餌を見れば決まって逃げ出すこの魚がマキエに反応を示しているではありませんか!
 私は大急ぎで仕掛けをセット。この日の手持ちで一番小さい浅層グレ4号に小さな生オキアミを刺したゼロスルスルの仕掛けを静かに落とし込みました。

 すると小さな本命魚がサシエに急接近してきます。そしてそれを品定めでもするように至近距離で見つめています。
 食えっ!食えっ!
 魚のサイズは違えど、ウスバエで味わったものと同じ興奮が全身を支配します。が、魚はプイッと反転し、どこへとも無く姿を消してしまったのです。

オキフエダイ(フエダイ科)12cm
 それからウキが見えなくなる6時前までに、もう一度、全く同じやり取りがありました。そしてその間に私が手にできたものは何度も釣ったことのある12cmのオキフエダイと、20cmのギンガメアジが一匹ずつ。
 ここでも本命魚は私の手のひらをすり抜けていったのです。

・狂気のトリプルヘッダー
 失意の私に兵庫への道を一息に駆け抜ける気力・体力は残されていませんでした。
 日帰りといっても翌日昼前までに戻ればOKですし、少し体を休めてからじゃないと帰れない。そう思った私は一旦中村に出て、午後11時まで開いている日帰り湯「四万十温泉・平和な湯」へと向かいました。
 
 併設のレストランで腹を満たし、湯で体を癒し、畳の休憩室へ転がり込みます。そこで1時間以上は熟睡していたようで、目覚めた時には気力も回復。当然ながら体力も、車の運転席で寝るのとは違う格段の回復を見せていました。

 まだやれる!まだ戦える!
 そう実感を得た私は畳を蹴って飛び起き、またもや釣り場へと向かったのです。
 
 本日3箇所目のフィールドは河口。マキエは既に処分してしまっていたし、電気ウキの類も持ってきていません。そこで、磯上がり後にエバ(メッキ)を狙うかもしれないと思って車に積んでいたルアータックルを引っ張り出し、着々と組み上げていきました。

 ロッドは、先日解散してしまったufmウエダの「ソルティープラッガー SPS−862」、リールはいつもの初代LBD、ラインはナイロン2号を巻いていたスプールを急遽取り外し、3号150m巻きのスプールをセット。ルアーはとりあえず「サラナ80F」のチャートリュースオレンジ、つまり背中が黄緑で腹がオレンジ、側面はホログラムというやつを繋いでみました。
 「魚種の多い秋の時期、小さいものでいいから何かしら掛かってこないだろうか?」そんな意図が丸分かりの設定です。そして大物なんてほとんど想定すらしていないことも丸分かりです。

 ところが「準備も整ったし、いざポイントへ!」という段になって大問題が発覚しました。いつも車に積んでいるはずのキャップライトがどこにも無いのです。夜釣りをするなんて夢にも思っていなかったので、その他の照明も用意してはいません。月も今夜は午前1時まで出ません。

 とりあえず行ってみよう。ルアーを一個だけ投げてみて、無くなったら帰ろう。
 快晴のこの夜は星明りがありますし、毎年毎年何度となく訪れたポイントですのでルートもよく分かっています。
 足場が良いわけではないこの釣り場を、そろり、そろり。時には手をついて足場を確認しながら慎重に慎重を重ねて進みます。足に残る記憶を頼りに、昇りゆくオリオン座が照らす道を。

 初めての場所であれば絶対に不可能だったでしょうが、どうにか無事にポイントまでたどり着きました。
 そして足場を決め、暗闇の中にキャスト開始!

 そこでは視覚は頼りになりません。聴覚、触覚、記憶、経験、勘が全て。キャスティングも、リトリーブも、ピックアップも、一番大事な安全確保も全部、これらを総動員してのものとなります。
 狂気・・・。私は何という馬鹿なことをやっているのでしょう。確かにこの時の私の精神はいつも以上にまともではありませんでした。闇に身を潜める何者かに魅入られてしまっていたとしか思えません。

・地上に降りたベテルギウス
 機動力が売りのルアーフィッシングですが、こんな状態での不用意な移動は危険を増やすだけ。
 数投続けざまに投げて、暫くその場で立ちすくんでポイントを休め、また数回竿を振る。そのたびに私の神経は研ぎ澄まされていきました。

 必要最小限の移動を挟みながら、数セットキャストを繰り返した時のこと。上げ3分のまだまだ低い潮の中でフックに絡み、プルプルと小刻みに震える小さな魚の感触がはっきりと伝わってきました。
 魚はリールを数回回したところで外れたので魚種まで特定できるはずもありませんが、それが小型のフィッシュイーターであったにしろベイトであったにしろ、この感触こそが一筋の希望です。

 その暫く後、21時30分。慎重に小移動して投じたミノーの着水音は思いのほか遠くから聞こえてきました。
 リールの状態を掌で確認しつつベールを返し、この時の自分の体だけが知っている平常心と同じ速度で巻き始めます。
 5回転。10回転。ハンドルの動きと連動して手元に伝わってくるルアーの挙動が突然途絶え、竿が曲がっていく感触に置き換わりました。フックは魚の顎をガッチリと捕えたようです。

 私はずっしりした魚の重みをしっかりと竿に乗せ、ゴリ巻きで引き寄せにかかります。
 魚は疾走するでもなく、根に回るでもなく、水面に出て大いに暴れ回ります。何度も何度もバタバタッ!という派手な水音が響き渡ります。
 なるほど、これはスズキか。それもハネ(フッコ)クラスの中でも上の方のサイズだな・・・。そうと分かれば気楽なもので、その派手なファイトを楽しみながら至近距離まで余裕で寄せてきました。
 
 しかし魚は、そこから予想外の抵抗を試み始めました。これまでの方針を180度転換したかのような底走り。そして、方向を沖に転じて一気の逃走を試みます。この魚、案外サイズがいいのではないか?
 私はともすれば制御不能に陥るドラグに頼らず、レバーブレーキの操作によってロッドの角度を保って、その弾力を最大限に生かすというフカセ釣りのやり取りで魚の反撃を凌ぎます。10年以上使い込み、性質を完璧に把握しているロッドをもってすれば暗闇など恐るるに足りません!

 やがてスズキと思しき魚を川べりの平たい石の上にずり上げることに成功しました。
 何か体高が高いようですがヒラスズキなのか?暗闇の中では足元で観念したように横たわる魚が何なのかさえ分かりません。
 どうしよう・・・。そうだ、携帯があるじゃないか!私はポケットを探って携帯電話をつかみ出し、開いて魚に翳しました。そして、息を呑みました。

 そこに横たわっていたものは・・・









 Lates japonicus !汽水の帝王・アカメではありませんか!!

 奇跡だ!!

 まさか、頭の片隅にも無かった魚がヒットしていようとは・・・。
 そうなんです。何としたことか、私はこの魚がヒットする可能性を完全に忘れ去っていたのです。

 ランディングツールとして唯一釣り場に持ち込んでいたダイワの魚バサミでこの無欲の産物、狂気の産物をしっかりと掴んで、また慎重に慎重を重ねて車の所まで運ぶ私は、それでもまだ信じられなくて道中何度何度も携帯を翳してしまいました。

 車のルームランプを頼りにルアーを外し写真を撮ります。メジャーを当ててみるとアカメの尾鰭の末端は49cmの目盛りを差しておりました。

 この後、もう一度釣り場に戻って二匹目のドジョウを狙ってみますが、すぐに根掛りでルアーを失ったので、予定通り、いや予定と違って意気揚々と帰路につくことになったのです。


 さて、このアカメですが「もう一度食べたい」という親からのリクエストがありましたし、釣り場の環境も良かったのできっちりと血抜きして大事に持ち帰りました。高知県には、宮崎県のようなアカメの捕獲を禁ずる条例(そんなことして魚への関心を消すことよりも、生息環境を保護すべきなのでは・・・)はありませんので、手と包丁と舌で味わってより深くアカメのことを知ることができるのです。
(※一般家庭で飼うには適さないこの魚の稚魚の売買や、そのための乱獲には絶対反対!

 アカメは味の個体差の大きい魚と言われており、個人的にもそれを実感していたのですが、この個体はどうだろうか。
 二日寝かせた刺身は一見淡白ですが噛み締めるとスズキともヒラスズキとも違った優しい旨みが沸き上がってきます。ただ癖・・・、というか、独特の持ち味も少々感じられました。

 驚いたのは「漬け」でした。醤油・みりん・酒・卵黄に漬け込んでしまえばどんな魚も同じような味になってしまう。そんな思い込みは一口で崩れ去ってしまったのです。決して極上ではないあの刺身が、あの持ち味が、漬けにすることでここまで化けるとは!また一つ、魚料理というものの深淵を覗き見ることができた気がします。

 そして頭と中骨の潮汁。しっかりと血合いを取り、ヌルが残ってしまう各ヒレの軟条部分も除去しておいたのが良かったのか、出汁は言うに及ばず、身も滋味だけがより一層際立っています。これには家族全員感動し、頭や骨を徹底的にしゃぶり尽くすことをためらう者は誰もいなかったのです。

 あれっ、シマアジ、スマ、ヒラマサは釣れなかったのに、「秋のうまいもんフィッシング」がしっかり達成されているではありませんか!
 釣りは最後の最後まで分からないものなんですね。悪あがきも徹底的にやり切れば奇跡が起こる・・・ことも、ごくごく稀にはあるようです。
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