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残月の輝く蒲葵島へと向かう、良栄渡船の屋上から。
うねりでよく揺れました。 |
・2週間ぶりの柏島
プロ野球が開幕。正直どこのチームか分からなくなってしまった阪神タイガースの打線がたまたま?爆発して大勝を収めた3月29日夜、先々週の悔しさ冷めやらぬ私は、柏島へと続く385kmの道をまた一人駆け抜けていました。
桜前線とともに活性化した40〜50cmクラスの尾長グレの食い。朝夕通し・13時間にわたる真剣勝負への期待。そして新しく手に入れた竿のオープニングゲーム・・・。胸が高鳴り眠れぬままに、出船時間が迫ってきました。
選択した磯回りはもちろん蒲葵島(びろうじま)。渡船も前回と同じ良栄渡船。
今回は上物ばかり13人。カジヤノキリに3人、高場に2人・・・私のポイントはあの辺りかな・・・なんて考えながら、いつも通りにゆっくりとした船長の出勤を待っていると、突然背後から「おいっ!」という声がかかり、その声と同じ弾んだ調子で、私の両肩がポンッと叩かれました。ありゃ〜、「てぼ@高知」さんじゃないですか〜。予期せぬ再会にもビックリ。この時期に上物狙いというのにもビックリです。蒲葵島と本島、エリアの両端に分かれての挑戦ですがお互いにやり切りましょう!健闘を誓い合った二人が乗った渡船は、午前6時前に港を離れていきました。
・高場の横(高場の奥)に渡礁
この日は波高2〜1.5mという予報でしたが、出船直前の沖の島灯台の風は北13m。宿毛へと続く海面には白兎が群れ遊び、良栄渡船も上下左右に大きく揺さぶられています。潮も高いのでデコボコ、コウロウバエ、ミタライといった磯は使えず、カジヤノキリに3人、高場に2人と、予想通りの磯付けとなりました。
私は「高場」と「池田バエ」という、尾長の実績が高い磯に挟まれた「高場の横」という所に初挑戦! ・・・と思いきや、上がって初めて思い出しました。「ここは以前、釣巧会のリョータさんと一緒に乗ったことのある磯だ」ということを。記憶から消えている(消している)のも当たり前。その時の釣果はリョータさんがイサギ1枚、私がキツのバラシのみというもので、釣行記すら書けない有様だったからなあ。
今回釣り座を構えたのは、磯の右端の船着き付近。左側から伸びてきた棚が釣り座の前でスッパリと切り落とされ、深みが高場との間のワンドへと続いていくというポイントです。
私は、2ヒロ半からジワジワと沈むように設定したG5の仕掛けを、左前方からワンドへとゆっくりと入ってくる潮に乗せて流し込んでいきました。
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2週間前に上がった池田バエと、グンカン(赤バエ) |
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「高場の横」船着きの釣り座。奥まっているので
海面は静か。サラシが欲しかったな。 |
タックルは、ハリスも道糸も3号。竿は宇崎日新のゼロサム磯 弾X4 タイプ3(1.75号+〜2号−相当)という、穂先以外全て4軸カーボンを装備したものを選択しています。斬新なコンセプトの投げ竿・ゼロサムキスの開発者「竹さん」との関わりの中で興味を持ち、動画での曲がりを見て私の好みに合ってそうと思った竿ですが、カタログやテスターなんかの記事を見てももう一つ実態が掴めてこない謎の竿でもあります。果たして期待通りのものなのだろうか?
開始から1時間余り。少量のチョウチョウウオにサシエをつつかれるだけの沈黙の時間が続きました。
ワンドの中央でようやく反応が出たのは7時17分。31cmのイサギをゲットです。その30分後には31.5cmを追加。本命でもなく、引きも弱いですが、この美味しい魚が嬉しくないはずがありません。明日の食卓はイサギのフルコースなのか?とちょっと期待したのですが、残念ながらこの2尾で打ち止めになってしまいました。
その後はたま〜にコッパギツが釣れてくるくらい。
・なんという釣果!なんという奇跡!
9時過ぎにやってきた弁当船に、「イサギ2匹だけ」と報告すると、一番ましな釣果だと言われてしまうほど、この日の蒲葵島の状況は悪かったようです。
それでも諦めずに釣り続けていると、11時頃、右向きの横流れに変わった潮を掴んだウキが、左側の棚の際で怪しげな挙動を見せました。
すかさずアワセを入れてみると、「びよ〜ん」と、生命感のない重みが伝わってきました。しまった、棚に引っかけてしまったか・・・と、竿立てにロッドを預け、手に取った道糸を思い切り引っ張ると、ズルズルといった感じの手ごたえで、赤い物が上がってくるではありませんか。それは棚の向こうの水中でずっとサスペンドしていたウキでした。どうやら誰かが棚に引っかけた仕掛けをハリに掛けてしまったようです。
先客の仕掛けはもう一歩の所で海面に落ちてしまいましたが、すかさずタモを出し、ウキを引っかけて回収に成功。ラッキー!ウキ一つ儲けた〜♪
が、話はこれで終わりません。
ウキは回収しましたが、それが通っていた道糸を海中に残しておくわけにもいきません。ついでにゴミ掃除だ!とばかり、ボランティア気分でラインを手繰り寄せていきます。
重たい・・・。しんどい・・・。延々と続く放置ラインとの格闘。何度「この辺でもういいか。切ってしまおう。」と思ったことか。しかし、途中からは気付いていたんですよね。ゆっくりズルズルと上がってくる、このラインの先に続く可能性に。
その瞬間は突然やってきました。
黒く細長い物が海面を突き破り、磯と海との間に姿を現したのです。しっかりと掴んで慎重に手繰り寄せていくと、やがて、赤と黒のカラーリングを施された上物用の竿とリールが、ザバザバと海水をまき散らしながら上がってきました。
竿の名前は・・・ がま磯、い、インテッサだと・・・!!
「竿が釣れた!」
隣の磯から驚きの声が飛んできますが、当然、一番驚いているのはこの私。
釣具屋で触ったことすらないがまかつの最高級ロッドが、ガイド一つの欠損も大きな傷もない状態で釣れてくるなんて。長い長い道糸やガイドやリールが、シモリに掛りもせずにすんなりと上がってくるなんて。
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午後にミドルサイズの尾長との熱い釣りが繰り広げられていた蒲葵の高場。
こちらからワンド方向に流れたのは朝だけでした。 |
私はこの竿が再び強風で飛ばされないよう、重いロッドケースを上に乗せてキープ。そして奇跡に身震いしながら釣りを再開しましたが、正直、その後の釣りはうわの空でした。
隣の「高場」ではサラシの切れ目に尾長グレが見えているようで、エキサイティングな釣りが繰り広げられていますが、少し奥まった「高場の横」にはサラシなど無く、魚も見えません。
00のウキに、G3マイナスの自作の小ウキと、4号のガン玉を使ったスルスル仕掛けを入れ込んでいって、40cm手前のサンノジをいくつかは拾い、とりあえずニューロッドゼロサム磯
弾X4を曲げることはできましたが・・・。
引きの弱いイサギを掛けた時に、えらく先調子だなと感じたロッドも、サンノジの引きならしっかり胴にかかり、確かに曲げているだけで暴れさせずに正面へ正面へと浮かせてくれました。穂先などは少々古めかしい感じながら、取り込みに関してはへっぽこユーザーをしっかりサポートしてくれそうないい竿だな・・・とは思ったけど、比較対象は10年近く前の性格の違う竿(ツインパワースペシャル2号)ですし、タイプ3にこのサイズの魚の相手をさせても役不足。もう少し大きいやつと真正面から戦ってみてからじゃないと、何とも言えないなあ。
・夕釣りはトビワタリ
午後3時前に迎えの渡船がやってきました。さあ気分一新、上げ潮狙いの夕釣りです!
船長からは「今日はどこも釣れてないけど、それでもやる?」という問いが発せられますが、私は「やる!」と即答。
私は40cmの尾長が2枚上がった隣の「高場」とか、この蒲葵島随一の名礁「カジヤノキリ」でやってみたかったのですが、「今日はグンカンもいっぱいやけん、帰りに幸島へ寄ってあげる。」と、すでに港の近くにある幸島行きが決定している様子。まあ、たった一人だというのに、空気も読まずに夕釣りという面倒なことをお願いしているんだから、これ以上のわがままなんて言えませんよ。
で、幸島にやってきました。
「ヒナダンか?トビワタリか?」という2択に「トビワタリ!」と即答した私は、磯の前に着いたときにはすでに後悔していました。トビワタリの前には磯付けが困難なほどの激流が横たわり、磯をかすめて右前方に跳ね出していますし、おまけに朝とは違ううねりも押し寄せていたのです。
迎えは午後7時。4時間の短期決戦ですので、磯の中央部に大急ぎで移動して、Bのウキに4B相当のオモリを打った仕掛けを用意。目の前を轟々と音を立てて渦巻く激流に捕まらないよう、潮上のサラシを利用してサシエを潜らせ、本流脇=磯際を舐めさせるように流し込んでいきました。
この中央部のポイントでのアタリは一回きり。目の前の大きなシモリとの間を抜けた先にあるサラシと、浅く張り出した磯根の際の所で、竿が一気に引き絞られましたが、一瞬もドラグが止まることなく、あっという間にブレイクして終了です。
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幸島・トビワタリ中央の釣り座。激流。 |
それからは激流がさらに勢いを増し、磯際を流す仕掛けを、問答無用で飲み込んでしまうようになりました。
私も本流釣りで対抗しようとしますが、何もない右沖へ突っ走るだけの激流の中には答えなど無いと見切りを付け、移動を決断しました。(本流の中でグレが釣れることがあるということを、未だに信じられない私・・・。)
最初の引っ越し先は、引き潮で海上に姿を現しているナダレ向きの最先端のポイント。
浅いシモリの間の溝みたいな所を狙っていると、ウキが猛烈なスピードで白泡の中に消えました。
私は素早く糸を送り、必死で体勢を立て直そうとしましたが、弾X4の底力を試せる角度に持っていくこともできずに、ウキごと飛ばされてしまいました。
しかも、直後に釣り座は一発波の直撃を受け、タモ網とバッカン一式を一瞬にして失いかけました。今は上げ潮ですし仕方がありません。私は辛うじて岩に引っかかってくれたタモとバッカンを拾い上げると、またしても引越しです。
浅い棚の先からの引かれ潮に乗せて、沖へ跳ねる激流の脇を衝いてもダメ。ダン向きにできたサラシと本流のぶつかりを攻略しようとしてもダメ。私は広い磯をあちこち彷徨いながら、敗北感を醸成させていきました。
最終的には中央部に戻り、ウキを外した丸玉オモリだけの仕掛けを本流に流し込む釣りなどをやっていましたが、2分も経たずにスプールが空になる以外には何事も起こらず、タイムアップを迎えることに。
やはり夕釣り、やめておけばよかったか・・・。
● 柏 島 kashiwajima |
利用渡船 |
良栄渡船 |
出港地 |
高知県大月町・柏島 |
時間(当日) |
5:50〜15:00
15:00〜19:00
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料金 |
朝釣り5000円
半夜釣り5000円
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駐車場 |
港:500円 |
弁当 |
700円 |
宿/仮眠所 |
民宿を経営 |
システム |
磯割り制(5交替)
泊まり優先 |
磯替わり |
数回 |
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*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません) |
釣れていてもいなくても、朝夕通しの直後に兵庫まで走って帰る元気はさすがの私にもありませんでした。この夜はいつもの幡多郷で一泊して体を休め、翌日の朝は下川口港に寄って、ニューロッドに23cmのグレの引きを覚えさせてから帰路につきました。
そういえば、柏島の港で不意の再会を果たしたてぼ@高知さんはどうなったのでしょう?と思っていたら、掲示板にこんな書き込みがありました。
『流石、総帥!本島廻りも結構な風波で朝は塩漬けになりました(^_^)コッパグレ〜ダツの入れ喰い、エエ感じになったらカメ君、、、参りました(^_^;)』
悪天強暴組合の総帥、まだまだ健在です!(笑)
・警察署へ
ところで、竿を釣ってしまった時って、どうすればいいのでしょうか?
柏島のある大月町には警察署がなかったので、地元の警察署に寄って聞いてみました。
兵庫県警の担当者曰く、「物が物だけに、本来の所有者が名乗り出る可能性もありますし、場合によっては『占有離脱物横領罪』に問われることも考えられる。」んだそうです。まあ、流されていたウキや、引っかかっていたルアーを拾ったのとは話が違いますからねえ。
その上で、「こうして善意で申し出てくれた人を犯罪者にするわけにはいきませんから、拾った道具は預からせてください。」と、さすがに生々しく「規則だから、四の五の言わずにとっとと置いていけ!」とは言わなかったけど、警察署に置いていかねば家に帰してもらえない雰囲気です(笑)
道具が遺失者に返るのならば同じ磯釣り愛好家として大変に喜ばしいことです。それに、後々面倒なことに巻き込まれるのもご免ですから置いていくのに異存はありません。が、やはり気がかりなことが・・・。
「引き取りに現れた人が本当の遺失者かどうか、どうやって判断するんですか?逆に私が遺失者の立場だったら、自分の物だとどうやって証明したらいいんですか?」
「この道具のように、名前が書かれていないものについては特に厳しい聴取が行われます。落とした場所から道具全部の銘柄や状態まで詳細に答えてもらいますので、他人の手に渡ることはまずありません。」
まあ、一口に「がま磯インテッサ」と言っても色々と銘柄があるわけですし、リール、ライン、ウキの品名から番手までを全て当てられたら神業でしょう。その上、竿には特徴的な改造が施されていましたから、成りすましに持ち去られてオークション等で儲けられるなんてことは、不祥事でも起こらない限り大丈夫なんじゃないかな。
今回は高知県で拾って兵庫県で届けることになったわけですが、「警察署が提出又は届出を受けた拾得物件のうち、拾得の場所の都道府県と提出又は届出を受けた警察署の都道府県が異なるもので、貴重な物件(1万円以上の現金、1万円以上の価値のある物、クレジットカード、免許証、携帯電話など)に該当する場合は、「拾得の場所を管轄する都道府県警察」においても公表されます。」とのこと。あと、今回初めて知ったのですが、インターネットで全国の落し物検索なんてことができるようになっていたんですね。(ちなみに、「届出はどこの警察署、交番・駐在所でもかまいませんが、可能であれば拾った場所を管轄する警察署、交番・駐在所へお願いいたします。」だそうです)
現行の法律では、拾得した日から3か月の間に遺失者からの申し出が無い場合は、拾得者に所有権が移るそうです。つまり、今回のリミットは平成25年6月30日。
ただ、その時期にはリールが「動きもしないただのゴミ」に変わっているでしょうね。竿は真水できれいに洗うことができたけど、リールの方は真水に沈めておく事しかできませんでしたから。「メーカーに送ってオーバーホールして、戻ってきてから改めて預けたい」なんて言ってもあっさり却下。仕方ないか・・・。
ちなみに家に帰ってから調べたところ、以下のことが書かれていました。(一番分かりやすいと感じた、長野県警HPより引用)
拾った日の翌日から7日を過ぎて届出をされますと、あなたの権利(お礼をもらう権利・遺失者がわからなかったとき自分のものになる権利)はなくなりますので早めの届出をしてください。 |
※占有者のある場所(列車・バス・タクシー等乗り物の中とか駅ビル・デパート等の建物内)で拾った場合には、そこにいる運転者、駅員、店員等に届けてください。(占有者が警察へ届けるように遺失物法で定められています。)24時間以内に届けないと、あなたの権利はすべてなくなります。 |
竿を釣り、帰りに警察署に寄るなんてことはさすがに初めての経験でしたが、あの道具たちが無事、持ち主のもとに返ったら、本当にハッピーなことですよね。 |