風雲児  烈風伝
 ・由良半島、地方と沖の2日釣り

2013年11月1日〜2日 愛媛県由良半島
・由良半島
 もしかすると今回が今年最後の四国での磯釣りになるかもしれません。この晩秋は多忙で、10月半ば過ぎから12月中旬で自由になる週末というのは11月最初の連休だけという状況ですからねえ。
 ということで今回は奮発して宇和海・由良半島にやってきました。せっかくですから代休を使って金・土の2日釣りです。

 地図上の由良半島は宇和島市津島と愛南町内海の境にある延長13kmの半島で、その南半分、愛南町側が磯釣り師の言う『由良半島』の渡船区です。その渡船区は由良岬付近の「沖磯」と、観音島や塩子島、56号線下などの「地方(じかた)の磯」に分かれていて、沖には6軒の渡船業者が全て行きますが、地にも渡している業者は限られてくるようです。
 連休に入るとさすがに予約がギッシリだそうですが、初日・金曜日の乗客は二人だけ。この人数では沖には出られませんが、12年ぶり2回目の利用となるこの業者は地方もテリトリーにしているので、どうにか対応してくれました。

手前の独立磯が牛鬼バエ。磯の形が南予の祭りに
登場する「牛鬼」に似ているから?
その向こうは「オッチャン」というポイントだそうな。
 「近場ならハリスは2.5号、ハリは7号でやること!グレは群れで動くので、小さいのが釣れても上手ぶって逃がしたりしないこと!「お母ちゃん!怖い目に遭った!」とみんなで逃げてしまうから、小さいのでも全部クーラーに入れるように。」
 12年前もこの渡船屋の名物だった、現在91歳のおばあさんの有名なアドバイスを聞きながら準備をして午前5時45分に出船。港を出てすぐの道路の下にある「ヒラバエ」に同船のお客さんを降ろし、由良半島の中央を貫く船越運河の手前にある「牛鬼バエ」に私を降ろした渡船は立ち込めるPM2.5の毒霧の中に消えていきました。
 (なお、この渡船には、45cmまでの尾長の魚影が非常に濃いと雑誌等で紹介されている「塩子の灯台」という磯がありますが、あそこは一部の常連専用の磯で、一般客は絶対に上がらせないようです。)

・牛鬼バエ
 牛鬼バエは結構大きな独立磯ですが、高潮時にはあまり平らな所が無く、バッカンを置く位置に気を使います。磯の周りにはシモリや溝が点在しているようで、そこから45cmクラスが当たってくるようです。

 観音島方向に伸びている棚の付け根に釣り座を構え、まずは棚の左側、ストンと切れ落ちている側を狙います。
 足元に撒き餌をバンバン打ちこんでクロホシイシモチ(アカジャコ)やコガネスズメダイ、カワハギやフグを寄せてから、ハリス2号、ウキ下1ヒロほどの仕掛けをやや沖に投入していると、そのうち20〜25cmくらいのグレが湧いてきました。が、このグレがなかなかハリに掛からず、サシエとハリは次々と沖に群れているキタマクラの餌食になっていきます。
 そこで狙いを棚の右側のなだらかな方に切り替えると6時43分に31cmの口太グレがヒット。この日のキープサイズは30cm以上と強気の設定でしたが、初グレからキープできるとは幸先良し!
 それからはコッパギツに混じって23〜27cmくらいがパラパラと出ましたが、初日ですし、必要以上の持ち帰りは忌むべきことなので磯の裏側にリリースし、仕掛けをいじりまくって更に上のサイズを狙っていきます。

 8時半、1.5号1ヒロのハリスの中にG5のウキを引き入れたオモリなしの仕掛けで29cmの口太グレ、11時前にBの棒ウキにG2のオモリ、ウキ下2ヒロ強の仕掛けで30cmの口太グレをゲット。前者はちょっと迷ったけど結局両方キープです。ちなみにどちらも余浮力を残した仕掛けなのはウキが意図せずスパスパと沈んでしまうため。船越運河の交通は予想以上に激しく、引っ切り無しの引き波に引きずり込まれていました。

広いけど、満潮時にはバッカン置き場が限られます。
 やがて予報にはなかった強風が磯の左側から吹き付けはじめ、ただでさえ厄介な状況がもっと悪化・・・と思いきや、遅れていた満ち潮が入ってきたのか、潮が逆転して右向きに。おかげで潮と風が噛み合って釣りやすくなり、見えている魚も一回り大きくなって格段に面白い状況になってきました。

 反応が出たのはすぐでした。0号に戻したウキが鮮やかに消えていき、暫しの攻防のあと45cmの魚が浮上!グレにしては目つきが悪く、白っぽいこの魚を尾長グレだなんて書いたら、食品偽装を恥ずかしげもなく誤表示と言い張る“高級”ホテルと同じレベルに落ちてしまいますね(笑)

 その後も連発でヒットするようになりましたが、ここで久しぶりにハリ外れ病が再発。割といい引きの魚たちが姿を見るまでもなく次々と外れていきました。多くの魚は竿を叩くキツのような引きでしたが、11時46分に32cmの正真正銘の尾長グレが竿を叩く引きで上がってきたことにより、その中に本命が含まれていた可能性が示唆されます。

 終盤はウキを00号に換えて、前方の棚と右側のシモリの間の溝狙い。
 撒き餌を惜しみなく投入して狙っていくと、12時50分に30cmのイサギ、57分には31cmのサンバソウが登場。口太グレは30cmのキープサイズも追加できましたし、27cmくらいのリリースに迷うサイズもパラパラと出ました。
 ところが、料金は高いくせに時間は短い宇和海の悲しさ、1時20分でもうタイムアップです。由良半島には+3000円で午後5時まで釣れる「延長」というシステムがありますが、乗客2人、しかも単独行ではそんなことができるはずもありませんので、道具を片付け、撒き餌を洗い流して、20分ほど後にやってきた渡船で港へと戻りました。

 この日キープしたグレは29〜32cmの口太4枚、32cmの尾長グレ1枚。40cmどころか35cmも出ませんでしたが、イサギやらサンバソウやらカワハギやらでクーラーは結構賑やか。ですので明日は冒険が可能です。この時期、沖より大物が出るという柏崎のヒラバエに渡礁した方はキープ2枚だったそうですし、明日は沖磯に挑戦してみるかな。おばあさんはまだまだ早いと言っているけど、ちょっとだけ北の御五神島(おいつかみじま)では既に50cmクラスが釣れていることだし。

・宿泊したものの
 渡船屋には休憩室と一緒になった無料仮眠所もありますが、体のこともありますのでゆっくり休みたい。ですからこの日は有料の客室で宿泊です。
 一人なので晩御飯が用意できないということで御荘の街まで買い出し&食事に行き、明日の撒き餌を混ぜ、帰ってくるなり布団の中へ。ここのところ寝不足が続いていましたし、昨夜は松山道の工事通行止めの影響で到着が遅くなり、ほんの僅かしか眠っていませんでしたから朝までグッスリ・・・のはずでした。

 ところが全然眠れません。宿中に充満した焼き魚の焦げた臭い、家の人のけたたましい話し声と鳴り響くテレビの音・・・。一般人が寝るには早い時間とはいえ、これじゃ堪りません。タオルで耳を縛って寝ようとしましたがどうにもならず、宿を出て軽四の助手席でウトウトしてました。
 やがて部屋の電気が消え、家の人が寝静まったのを見計らって宿に戻り、やっとのことで安眠・・・と思いきや、12時過ぎに宿にやってきたグループがガヤガヤやりはじめ、朝も早い時間に起こされて・・・と、ろくな睡眠は取れずじまいでした。そんな中で病んだ心臓だけが眠りに落ちたのか、3拍ほど拍動が止まり、直後にドン!と凄い衝撃とともに再起動。それは幸い一回きりで以降は何の問題もありませんでしたが、「ああ、これが終わりか」と覚悟済みの死を冷静に受け入れかけましたよ。

・沖磯へ
 翌朝、休憩室に集ったのは総勢18人の釣り師たち。そして演説を始めるおばあさん。
 「近場に行く人はハリス2.5号、ハリは7号。沖に行く人はハリス3号、ハリは8号でやること!グレは群れで動くから、小さいのが釣れても・・・」
 それに合わせるように、小さな声が聞こえてきます。
 「上手ぶって逃がしたりしないこと!「お母ちゃん!怖い目に遭った!」とみんなで逃げてしまうから、小さいのでも全部クーラーに入れるように。」
 常連さん達が先回りしておばあさんのセリフを真似ているのです(笑)

 そして出船。ゆっくりと沖へ。

 6軒の業者がある由良半島の渡船システムは中泊や武者泊と同様、規定の時刻をスタートとし、その日最初に磯付けする場所が他船と競合した場合はジャンケン、その後はスピードレースというもの。とは言え本格シーズンにはまだ遠い今回はジャンケンも2船間でしか発生せず、渡礁スピードも落ち着いたものでした。

 乗っている渡船はメインエリアの大猿島へ直行しています。
 この日は大猿・由良岬方面のワレ、ハマガラス、水道、馬の背、砲台下など有名どころは予約でいっぱいです。由良って、自船の中だけで通用する磯予約も可能だったんですね。そんなことも知らなかった私は船長に「沖磯」としか伝えていませんから多分ろくな所には上がれないだろうと船尾でボ〜っとしていました。
 ところが渡礁開始後2番目に名前が呼ばれ、目を白黒させながら船首に走って大慌てで磯の上に。

・大猿島の?
画像では分かりませんが、船着きと釣り座の間に
切り立った壁が・・・。
 上がった磯は大猿島の・・・どこだろう?船着き付近が階段状になっており、切れ落ちた壁の右側によさそうな釣り座が1か所。そこに行くためには岩盤に配されたただ1つの小さな足場を経由しなければなりません。
 その釣り座は平らに見えても結構不安定。硬い岩の斜面からバッカンが滑り落ちそうです。(実際にサシエ入れが海へ落下・・・。)時折波も洗っているので、バッカンは流されてしまう可能性も・・・。

 撒き餌を入れてみると大小さまざまなキツが大集合。宇和海名物コガネスズメダイももちろんいます。そしてしばらくすると少数派ですがグレ達も姿を見せ始めました。
 最初はハリス2.5号、00号の仕掛けを選択し、浮上する魚にタイミングを合わせて狙おうとしますが、サシエのオキアミはチョコチョコとつつかれるだけ。じっくり観察してみると、グレやキツはもちろん、コガネスズメダイまでもがサシエを完全に見切ってUターンしていくではありませんか。
 
 まずはウキやオモリをいじりますが効果なし。そこでハリスを1.7号に落とすとやっとこさコガネスズメダイがヒット。1.5号に落としたらようやく口太グレが食いました。サイズは32cm。開始2時間半近く経っての初めてのグレです。

 これで連発するのかと思いましたが、甘くはありません。
 すぐに合わなくなった仕掛けを変え、タナを変え、タイミングを変えして攻めても、いっぱい居るはずの魚は悲しいほどに掛ってくれません。やがて潮が動き出し、ほんの一瞬本流になってもそれでも食わず、そのうち見えていたグレもどこかへ姿を消してしまいました。残されたのは私と、11月とは思えない嫌な蒸し暑さと、釣れないのも納得の緑色の潮。
 今日はダメ元の一発勝負のつもりでしたが、これではあまりにも面白くありません。それに、普段なら何とも思わないはずですが、寝不足の状態でこの地味に不安定な磯に居るのが苦痛に感じるようになり、11時ごろの弁当船での磯替わりを決意しました。

・後の祭り
 そりゃポーターさんも嫌な顔しますわな。今まで上がっていたのが、他のグループが予約していたはずの大猿島を代表する磯「ハマガラス」だと気付いたのは、弁当船に乗り込んだ後のことですから。とは言え、ここの磯予約っていったい・・・。
 まあ今更戻れませんので、とりあえず「地の方に行けん?」と聞いてみたら怒られました。「おばあさんが沖は釣れんと言うたやろ!」と。

2か所目の磯の船着き。荷物を置くのも一苦労。
さっきまで上がっていたハマガラスは向かいの先端。
 で、着けられた磯はハマガラスの奥にある「メオトバエの岡」だと思われる磯の一番ワンド側の場所。足場は・・・冗談かと思うほどの悪さ。しばらく道具を抱えたまま船着きで固まっていましたよ。
 これで潮が高かったら途方に暮れていましたが、今は幸い左手の釣り座に行けますので、溝伝いに駆け上がってくる波のタイミングを計って移動。ここもまた滑りやすく地味に面倒な釣り場ですなあ・・・。

 しかも撒いても撒いてもコガネスズメダイとカワハギ、キタマクラばかりでグレは全くいませんでした。コッパグレの気配すらありません。深く釣ればカワハギの、沖に投げればソウシハギの餌食です。やはりさっきの所で上げ潮に期待するべきだったか・・・。

 悔やんだところでもう遅い。グレがいないならカワハギを狙えばいいじゃないか!と思い直し、最初はフカセ、ラスト15分は1本バリのズボ釣りで攻めて8枚キープして終了。カワハギの身が大好きで肝が大嫌いという変わった伯母も大喜びするに違いない。

 2か所目は冬場に面白そうな場所だったけど、やっぱりまだ早いんですかねえ。11月なのにTシャツ一枚で片付けをするようじゃダメですよね〜。などと港で話し、クーラーを入れた車を運転して帰路につきました。(そういえば今年のGW後半の釣行ではヒーターを入れて運転したな・・・)
 まあ、再び動き出せる頃には好転していることでしょう。


2か所目の釣り座。よく滑ります。
 ● 由 良 半 島 yura-hantou
利用渡船 出港地 愛媛県愛南町柏崎(宿の前の護岸)
時間(当日) 5:45〜13:45回収
料金 地方磯 5000円
沖磯   5500円
駐車場 無料 弁当 700円
宿/仮眠所 1泊2食  6500円
1泊朝食 4500円
仮眠所あり
システム 一組目はジャンケン。
その後は他船との競争。
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)
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