風雲児  烈風伝
    ・両極の釣りを満喫! H25年末遠征記 

2013年 12月29日〜30日 鹿児島県 枕崎沖磯、硫黄島

・日南海岸定番コース  大阪南港〜宮崎港〜枕崎  12月26日夜〜27日

運玉投げで有名な鵜戸神宮。
真新しい注連縄に向かって
投げてみたのですが・・・
伊東氏が取り戻した飫肥城。
厚焼き玉子、飫肥せんべい、おび天
など、旨いものも見どころも満載!
 観光がメインになるだろう。そう覚悟して出発することになった今回の年末遠征。無理もありません、硫黄島での釣りを予定している12月28日、29日の種子島・屋久島地方は最高気温8度〜9度、最低気温2度で雨マークどころか雪マークすら付いており、加えて波の高さも4m〜5mという絶望的な天気予報。風裏になる大分・宮崎方面に転進しようにも、今年は絶不調という話しか聞こえてこない状況でしたからねえ。

 溜まりに溜まった代休で仕事納めを早め、大阪南港からフェリーに乗り込んで14時間。27日午前9時過ぎに宮崎港に上陸した私は、国道220号線を南下しました。

 まずは定番の堀切峠に立ち寄って寒風吹き抜ける群青の海を眺めます。
 続いてこちらも定番、本殿下の「亀石枡形岩」の窪みに向かって願いを込めた土師質の小玉を投げ、見事入れば願いが叶うという「運玉投げ」で有名な「鵜戸(うど)神宮」を訪問。そこではちょうど亀石枡形岩で作業がおこなわれており、神官や巫女の皆さんやテレビクルーまでもが勢揃いして見つめる中、職員の方が崖を下り、岩に設置された注連縄を新しいものに取り換えていきました。
 作業を見届け参拝を済ませ、運玉投げに挑戦!折角の鵜戸神宮ということで渡された玉5つのうち1つには良縁を、もう1つには大尾長ゲットを、残りの3つには無事の帰宅という願いを込めて投入!全弾命中せず。なんか不安になってきたぞ。旅の行く末が・・・。
 
 その後、飫肥(おび)の城下町に移動して城跡や資料館等を見学。それぞれ見応えがあって大満足でしたが残念なことが二つありました。
 昼食に食べたかったレタス巻きの店が休業中だったことと、 今回も釣行をプロデュースしてくださっている「かまちゃん」から連絡が入り、「硫黄島の渡船は明日(28日)も明後日も欠航。」と告げられたことです。

 とはいえ代わりに入った店で食べた飫肥の「厚焼き玉子」が素晴らしかったし、釣りの方も「30日は波高1.5mなので日帰りでなら行けそうです。」ということなのでひとまず安心。後ろには余裕がある連休ですので日程を一日伸ばすことにして、その日はとりあえず鹿児島県道71号経由で錦江湾に抜け、地道をひたすら走って枕崎市内の宿に向かいました。

 なお、飫肥の厚焼き玉子というのは、通常の厚焼き玉子とは全くの別の食べ物で、大量の卵と砂糖を使って蒸し焼きにしたものです。プリンに少し歯ごたえを足したような味と舌触り。おかずというより高級スイーツですね♪土産に買った飫肥せんべいも最中の皮のようなものに飴を挟んだ独特のもので、これも甘いけど旨かった♪

・むかしの釣りとクルージング  枕崎市&南さつま市  12月28日

 時雨空の南さつま。
 久志(くし)の海岸線に虹が。
 28日は9時前まで宿でゴロゴロした後、吹き荒れる風と冷たい冷たい雨の中、カツオの名所枕崎港から鑑真和上上陸地&磯釣りの名所として名高い秋目までの海岸線を一人でドライブ。
 途中の坊津で貿易と漁業をメインに据えた資料館「輝津館」に立ち寄ったのは正解でした。かつて使われていたカツオの仕掛けや、江戸期に奄美で生まれ薩摩に伝わったという”元祖”餌木と伝統的な餌木竿など釣り師必見の展示物にはじっくりと見入ってしまいましたよ。

 見どころも尽きたので昼には枕崎へ戻り、港の「おさかなセンター」のカツオ丼(個人的には甘すぎでした。高知のカツオ丼の方が口に合うなあ。)で腹ごしらえをしてから226号線沿いの園田釣具店を訪ねて情報収集です。冷たい雨は辛いけど、やはり明日は釣りをしとかなきゃ!釣り場を眺めながら宿で何日もゴロゴロなんてしていてはおかしくなってしまいそう。

 「明日、どこか船の出る所はありませんか?」
 「海星丸なら今日も出てますよ。電話かけてあげようか?」
 北西風には滅法強い枕崎の沖磯に渡す「海星丸」には4年前に乗ったことがあります。出船場所に屋根があることも分かっています。
 園田釣具店から連絡を入れてもらったあと、渡船乗り場の屋根の下に移動して明日の準備。12号ハリスを1.5号に、マダイバリ12号をグレバリ4号に、大きな電気ウキを小粒の00のウキに・・・といった具合に、ベストの中身をこんな事態を想定して持ってきていたライトタックルに入れ替えていると、2時の回収に行っていた海星丸が戻ってきました。

 早速船長や乗客から情報収集ですがやはり渋いようですね。本来なら乗っ込みで絶好調になっているはずが水温急落の影響でまるで産卵後のような食い渋りだそうです。それはそれで腕が鳴るのぉ!
 他にもあれこれ雑談していると、「次は5時に回収に行くから、偵察というか、クルージングに行きませんか?」と船長からの提案が。

枕崎のシンボル・立神。高さ42m。
 それから3時間後、私は海星丸の操舵室にいました。例えこの日のように暇を持て余して無かったとしてもそりゃ行ってしまいますよね^^

 冷たい小雨の中を沖に出るとやはりうねりがあります。
 「明日は立神が当番瀬なのに、もしかしたら使えないかもしれない」と、船長も渋い顔をしています。
 「あ、明日は穏やかな場所でいいですよ。道具を流されたら明後日、釣りができんから。」
 「ハハハ。硫黄島に行けないと意味ないもんね。じゃあ、明日はちょっとマニアックな所に乗せてあげましょう。」

 「ところで最近は口永良部島とか、離島へは行ってないんですか?」
 「離島便はやっぱり厳しくてねえ・・・。離島行きの船は売り払って、近場専門で頑張ってます。」
 「口永良部、一度は行ってみたかったのになあ。」

 「実はこの船には前に乗せてもらったことがあるんですよ。今回のように時化で硫黄島の日程がずれて。その時は翌日にデカい尾長が釣れました。」
 「それは縁起がいいですね!もし明日釣れなくても明後日の釣果は確実ですよ!」
 なんて話をしながら、西磯・赤瀬周辺で釣っていた2組を回収して帰港しました。釣果はみなさん1〜2枚。赤瀬は一面のオヤビッチャで釣りにならなかったそうです。やはり厳しそうだなあ。

 港に戻った私は明日に備えて温泉に入り、薬味たっぷりのカツオと茶飯の出汁茶漬け「枕崎鰹船人めし」、「かつおラーメン」、腹皮の塩焼きがセットになった定食に舌鼓を打ってから、宿に戻ってさっさとベッドに潜り込みました。

・歯ごたえあり!枕崎の磯  枕崎沖磯 太田瀬   12月29日

 出船時間は午前7時とかなりのんびりしたものでしたが、私はほとんど寝られないままその時刻を迎えることになってしまいました。前日にぐうたらし過ぎたのもありますが、宿がゆっくり眠れるような環境とはかけ離れたものになっていたからです。
 1泊3000円の宿のボロさは先刻承知で、寝るだけならば充分とこれまでは納得ずくでした。しかし今回、私の部屋の窓の下は近隣トラブルにならないのが不思議なくらいの状態に変わっていたのです。
 深夜2時3時まで開いている路地の向かいのラーメン店が路地裏にあるとは思えないほどの繁盛ぶりで、ベロンベロンに酔っぱらった客が引きも切らずに車で押し寄せ、食べ終わった客が駐車場で次々と乱痴気騒ぎを始めるのです。宿選びの盲点、こんな所にあったとは・・・。

 朝食を食べに行った24時間営業のファミレスでは、正体なく酔いつぶれた高齢の女性が若い男性を大声で口説いているという、見苦しいにも程がある光景が繰り広げられていました。
 さらに渡船の駐車場では駐車中の車からヤクザ映画か何かの大音響がズシンズシンと周囲に響き渡っていました。音量の調節もできん迷惑野郎がこの港にもおるんかい!おんどりゃ画面ばっかし見とらんと、周りの様子を見てみい言うとるんじゃ!ほんま、ごーわくのぉ!
 ああ嫌だ嫌だ。早く潮風に当たって体を清めなきゃ。

嫌なものを全て吹き飛ばす、立神からの日の出。
 ようやく7時がやってきました。大勢のお客さんとともに乗り込んだ海星丸はまずテジロ瀬、次いで立神に付けていきます。昨日心配したとおりうねりは残っていますが、釣りができないほどではありません。
 枕崎のシンボルであり、当番瀬(磯割り(2交替)のある磯。該当する磯以外には自由に渡礁できる。)、すなわち枕崎沖磯で屈指の名礁でもある立神は高さ42mの大きな磯で、収容可能もかなりのもの。その立神の4か所のポイントに各グループを渡し終えると、船内には大阪からの釣り師と兵庫・播州人の私の2人しか残っていませんでした。
 大阪からの釣り師は枕崎へ帰省するたびにこの船で竿を出しているそうです。今回も竿をゴルフバッグに詰めて大阪から送って来たけど、渡船に積まれたロッドケースの中にゴルフバッグが混じっていたら怪しいので、今日はロッドベルトで束ねて持ってきたとのこと^^

 さて、私も渡礁です。
 上がったのは赤瀬の西側、ママコ瀬から磯二つ地向きにある太田瀬(大田瀬?)。マイナーな磯ですが、実は最近一番よく釣れている磯なんだそうな。底が見えるくらいの水深に多くのシモリと海溝が点在しています。

 冷たい雨の止み間、聳え立つ立神と山立神の間に茜色の帯を架けて昇ってくる太陽の神々しさに何度も手を止めながら準備を整えて、0ウキにジンタン7号を打ったいつもの仕掛けを20mほど沖の海溝に投入。
 初期段階で視認できたエサ取りは、少数のチョウチョウウオ類とハコフグでした。恐れていたオヤビッチャの大群はいませんが、グレも見えません。一度クサフグが掛った以外はアタリもありません。

マニアック磯・太田瀬。侵食で結構デコボコしてます。
 しばらくやっていると徐々にサシエを触られる回数が増えていきました。逆光でウキが見えないし、とりあえずアタリを出したいということで、ウキをG2の棒ウキに交換し、ウキ下竿1本弱で捉えた小さな動きに即アワセ。パワーはあるけど細かく竿を叩くフワフワとした引きは予想通り40cm近いバリでした。

 空は再び掻き曇り、みぞれがカッパのフードを叩く中、9時31分に25cmの尾長グレが姿を現しました。
 魚の姿が全く見えないのと事前情報に流されて深い深いと思っていたけど、実はかなり浅いタナに居るのではないだろうか?一時4ヒロまで下げていたウキ下を上げていく途中で食ってきたこの1枚は、私に大きなヒントをくれました。

 このヒントを手掛かりとしてグレ釣りの醍醐味の一つである"推理"が始まります。
 まず、ウキを00号にして矢引き・・・では食わないか。フカセウキゴムの位置を変えてもう少し深くしてみても、00ウキ自体が合っていない感じ。ウキを0号に換えてハリスを1.5号に落としたところでまだ違う。撒き餌のタイミングも変えてみて・・・ そうだ、ハリスにアタリウキを着けてシブシブで浮かせてみよう。 ・・・おっと、25cmクラスが食ってきたけどまだ何か違う気がするな。
 そんなこんなで辿り着いた仕掛けは、ハリ元に7号の口ナマリを打ち、1ヒロ半の位置に取り付けた0号のアタリウキと、その上の0ウキで探っていくというもの。そして10時13分、35cmの尾長グレという一つの答えに到達することができました。

 船着き方向以外はかなり浅く、
 秋のエギング専用かも。
 この仕掛けでコッパから27cmくらいまでの尾長をいくつか拾うと潮が変わりました。オヤビッチャの群れも登場して再び停滞の時間となりましたが、G5のウキにG7を2つ打った仕掛けで打開し、26cmまでをパタパタと拾うことに成功!

 1時半ごろ、状況が好転しそうな予感が見て取れましたが、海星丸の迎えの時間は午後2時です。ただしプラス1000円で5時まで延長可能ですし、ホームページには、

・じっくり、のんびり釣りたい人
  「昼釣り+夜釣りセット」=¥6000 「夜釣り+昼釣りセット」=¥6000
・瀬と同化してしまうぐらいハマりたい人
 「昼釣り+夜釣り+昼釣りセット」=¥8000 「夜釣り+昼釣り+夜釣りセット」=¥8000なんてのが載っていたりします。

 でも今日は明日のことを考えて素直に納竿。2時の迎えで港に戻ることにしました。

 本日の釣果は35cmを1枚、25〜27cmを6枚というものでした。その中から3枚だけキープ。今日も全体的に食いが悪く、どの磯も1〜2枚という中、いい感じの釣りができました。とりわけ魚との距離を徐々に詰めていったあの時間は、時雨空も、全身に突き刺さる寒風も気にならないほどに熱かった♪

当番瀬の一つ・長瀬。その向こうには
坊ノ岬。遥か沖合には、大叔父が
罐を炊いていた戦艦大和が眠っています。
 港では再び道具の詰め替え作業。明日はようやく硫黄島アタックだ!目指すは70cmクラスの尾長グレ!!
 今日もまた温泉行って、鹿籠豚とカツオの枕崎グルメで英気を養い、明日の釣りに備えることにしますかな。
(枕崎グルメは結構安価に楽しめますが、さすがにカツオには飽きてきたぞ・・・)

 ● 枕崎沖磯 makurazaki-okiiso
利用渡船 海星丸 出港地 鹿児島県枕崎市・枕崎漁港
時間(当日) 7:00〜14:00 料金 4000円
(+1000円で5時まで可)
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 数か所のみ磯割り。他は自由。
磯替わり 可能
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・硫黄島磯の尾長よこころあらば・・・  硫黄島 みゆき   12月30日

 ラーメン屋の酔っ払い共の騒ぎはますます激しく、この夜もほとんど眠ることはできませんでした。ま、午前2時半集合3時出航、1時間半かけて硫黄島へ突っ走る黒潮丸の船内で眠れたからいいとするか。

 船が急激にスピードを落とすと、眠っていた13人の釣り師が一斉に目を覚ましました。枕崎の港で再会を喜び合った「かまちゃん」「uenoさん」「M中さん」達ももちろん飛び起きて船室のカーテンの向こうの暗い海に目を凝らしています。船はほとんど揺れを感じなかった航行中と打って変わって、縦横無尽に揺さぶられています。

 黒潮丸が最初に接岸したのは、2年前にこの4人で釣りをした「竹島ノ鵜瀬」でした。しばらく走ってお次は「浅瀬」。そして鬼界カルデラの外輪山の一角、永良部崎の沖にやってきました。
 この岬の西側の中間あたりにある地磯が、私たち4人の釣りの舞台「みゆき」です。

 今日もまた降る雨の中でうねりにもまれ、激しく暴れる黒潮丸から暗い磯へ。この時、眼が慣れていなかった私は渡礁のタイミングを誤ってしまい、迫りくるフォースヘッドから必死に逃れ、転げるようにして安全圏へ。危なかった・・・。

タマンロッドを手に、「みゆき」の
夜釣りポイントで粘るM中さん。
 今日の状況では「みゆき」唯一の夜釣りポイントとなる手狭な船着きには4人分の荷物が足の踏み場もないほど散乱しています。しかし、きちんと整理しようにも平らなスペースはほとんどありませんし、何より時間がありません。硫黄島でワカナと呼ばれる大型の尾長グレが釣れるのは夜が明けきるまでの間だけ。タイムリミットまであと2時間少々しかないのです。

 夜釣りの短時間勝負で重要なのは何よりも撒き餌ということで、他の方々がセッティングしている間に生オキアミとアミエビの撒き餌を撒き込んでおきます。そして、一番乗りのかまちゃんと交替して後方へ下がり、磯遠投EV4号に8号の道糸を巻いたファントムJ4500をセットし、短時間勝負に備えてワンタッチで通せるように仕込んできた2号の電気ウキ仕掛けを使って一気に遅れを取り戻しました。

 ところが開始直後にトラブル発生。キザクラの電気ウキがいきなり消灯したのです。以後ショックを与えるごとに点灯と消灯を繰り返します。その症状は電池を新しいものに取り換えても変わらず、折角仕込んできた仕掛けを切って、クリップライトの灯りを頼りにコツコツと作り直す羽目に(涙)
 で、トウガラシタイプの電気ウキ2号をセットしてようやくスタート。今度は大丈夫そうです。さすがは世界のナショナル、パナソニック!(釣り用品からは撤退したけど。)

 4人で並んで釣るにはあまりに狭い「みゆき」の船着き。激しく混ぜ返すサラシの中に4つのウキが浮かびます。ある者はひたすら足元に引き付け、またある者は払い出しに乗せて沖へ沖へと流していきます。しかしその4つのウキは、どれも魚のアタリを表現しないという点において共通しています。撒き餌は絶え間なく撒き続けていますが、エサ取りの反応すらない時間が一時間近く続くことになりました。

 6時20分。断続的に降る雨に漂う沈鬱な空気を打ち破ったのは今回もやっぱりこの男!磯釣り歴4回目、硫黄島歴4回目、尾長率10割の恐るべき釣り師、Dr.M中氏でした。
 船着きの一番左の暗がりで、タマンロッドを手に悶絶するM中さん。尾長だ!尾長がきた!という声が飛び交う中、私は後ろに立てかけてあったuenoさんのタモ網をほとんど手探りで掴み、ようやく浮いてきた魚に駆け寄ります。
 デカい!でもやや長めのシルエット。尾長ではなくコロダイか?私は必死でタモを操りますが、魚の大きさと激しいうねりに阻まれて決めることができません。このままではバラシてしまう・・・。私はタモ入れ係をuenoさんに代わってもらい、二人掛かりで重い重い魚を引きずり上げました。
 網の中で跳ねる魚に、一斉にライトが注がれます。その輪の中に居たのは、尾長でもコロダイでもなく、65cm超のタバメでした。標準和名ハマフエフキ。各地でタマミ、タマメ、タマンなどと呼ばれる夏の魚。「M中さん、タマン竿の本命ば、釣りよったとね!」と仲間から祝福の言葉が飛びました。

 M中さんはタバメ
 かまちゃんはシブダイ
 私はテンジクイサキ
 次にヒットさせたのはかまちゃんでした。磯際の1ヒロ半のタナで食ってきた40cmほどの魚を一気に抜き上げてビックリ仰天。これまた南九州における夏磯のスーパースター、シブダイ(標準和名フエダイ)ではありませんか!冬を通り越した感じの枕崎の海からたった90分走っただけで夏の海が待っているだなんて。

 6時58分。私のウキにようやく反応がありました。日の出直前の尾長のゴールデンタイムに膨らんだ期待は竿を立てると同時に消え、40cm強のムロアジが手元に飛び込んできました。

 既にuenoさんは昼釣りのポイントに去り、かまちゃんも夜釣りタックルを片付け始めた7時20分。諦めきれずに流し続けていた私の電気ウキが海中に鋭く突き刺さりました。今度は歯ごたえのある引きですが、嫌なことに竿を叩いています。上がってきたのは案の定、47cmのテンジクイサキ(イスズミ科)でした。

 結局、尾長タイムはタバメ、シブダイ、ムロアジ、テンジクイサキの4尾だけで完全に終了です。夜釣りなんかやらなければ日中にも釣れるかもしれないのに・・・なんて僻事を言ったところで、そんなの都合の良い妄想でしかありません。
 ここからは気分を一新して口太狙いに専念することにしましょう。
夜釣りポイントとかまちゃん。
向かいはヒレ瀬。
uenoさんは早々に夜釣りを切り上げ、
「奥」のポイントで口太グレを連発中。

 「みゆき」の昼釣りポイント。
 険しい通路を通らねば、奥と赤岩に行けません。
 みゆきの奥。”普通”の釣りが可能な
 ワンドのポイント。
 高場で竿を出すM中さん。狙いは足元のワレの奥。
 2月に比べて明らかにスケールアップした
 タジロの絶景。
 浅瀬からの硫黄岳。何度でも見たくなる風景。
 かまちゃんによると「みゆき」の昼釣りのポイントは、夜釣りポイントの左に聳える「高場」、そのまだ左の「赤岩」、どん詰まりの「奥」という3か所とのこと。夜釣りポイントから高場に行くには崖を上らねばならず、赤岩と奥に行くには夜釣りポイントの裏の溝に一旦降りてからこちらも崖を上っていかなければなりません。いずれも足場が非常に高いため、魚を掛けたら強い竿と太い糸で一気にぶち抜くしかありません。

 「高場」にはM中さんが入りました。「奥」では既にuenoさんが釣りを開始していて、本命を次々にヒットさせています。かまちゃんは、見回りに来た黒潮丸の情報を元に、夜釣りポイントの左側のワレを狙ってみるようです。
 私のポイントは「赤岩」。バッカンとドンゴロスと飲料水を「赤岩」へ運び上げて3号竿で足元のワレ狙い。
 船長によると、キツ(イスズミ)が圧倒的な勢力を誇るこの海域でグレを仕留めるための手っ取り早い方法はポイントをワンドのさらに奥の奥、小さなワレだけに限定し、仕掛けをそこから出さないようにすることだそうです。通常は10号程度のオモリと6号程度のハリスを使った脈釣りで攻めていくのですが、波のリズムを読めば行けるかな?と過負荷のオモリを打った3Bウキの仕掛けをまず試してみました。

 晴れ間が出始めた8時25分、26cmのイシガキダイの子が登場。あとはコッパギツが時折上がってくるだけ。沖を攻めてみてもやはりキツとソウシハギが多くて釣りになりそうもありません。

 「こっち来んね!一緒に釣ろい!」
 苦戦している私に、uenoさんが再々声をかけてくださいました。私はしばらく赤岩からの遠投でuenoさんのポイントを狙わせてもらっていましたが、uenoさんが44cmという、硫黄島では最大級に近いサイズの口太グレを上げるのを見て、とうとう奥の釣り座に押しかけてしまいました。

 ワレを狙い続ける赤岩と違って、奥ではワンド全体を使った普通のフカセ釣りでOK。グレは姿こそ見えませんが相当数入り込んでいるようで、3Bのウキをワンドの中央に投げ込むuenoさんのドンゴロスには既に7〜8枚のグレ達が収められていました。

 私もuenoさんに倣って3Bの仕掛けを投入すると一番に伝わってきたのは昨日も味わったフワフワした強い引き。またしても40cmクラスのバリでした。(昨日釣ったアイゴとは違って、ブルーの体色のセダカハナアイゴの方でしたが。)

 G2のウキにBのオモリを打った仕掛けに換えてみると、9時26分、30cm後半の本日の初グレがヒット。この一枚をきっかけに35〜40cmの口太グレがポツポツと食ってくるようになりました。

 奥での釣りは豪快そのものです。普通のフカセ釣りといってもそれほど仕掛けにこだわる必要もなく、4号ハリスでも全然気にすることなくヒットしてきます。足場が高く、タモは基本的に届かないので、掛けた魚は竿の強さを信じてぶち抜きます。
 ただ、この取り込みが曲者で、ダイコーの龍刀2号で斜面も利用して軽々と抜き上げるuenoさんに対し、私の方はBBXスペシャル(緑)3号で毎回毎回おっかなびっくりの不器用な抜き上げ。磯の形状の関係で足元がどうなっているのかさっぱり見えず、また力を後ろに逃がすことができない私の釣り座では、竿の力だけでほぼ垂直に魚を持ち上げることしかできません。当然竿には多大な負担を強いることになるので、いつ折れるかとヒヤヒヤものでしたが、今回はなんとか最後まで生き延びてくれました。

 釣りを続けるうちに段々キツの数が増えていきました。また、狭いワンドに浮かぶウキの数も段々と増えていきました。
 高場と夜釣りポイントでワレの奥を狙っているM中さんとかまちゃんに高切れが連発。二人の手を離れたウキが流れてきてワンドの中を漂い続けているのです。私のウキの周りはウキだらけ。uenoさんのウキと合わせて5個のウキが至近距離に集結し、どれが自分のウキだか分からないまでになってしまいました。非常にやぎろしいので一旦釣りを止めてウキ取りグッズを取りに行き、回収作業にいそしむことに。

 前半ハイペースで飛ばした名手uenoさんは44cmを筆頭に14枚のグレと、黒潮丸の竿頭をゲットされていました。ただ後半はキツの連発に苦しめられ、回収まで1時間を残した12時に納竿。

 私はサシエのボイルへの切り替えが奏効したのか後半に猛烈に追い上げ、31〜42cmを9枚。折角の離島なので時間ギリギリまでやろうとしましたが、12時15分に大物を掛けたのを機に納竿しました。
 3号竿を胴まで引き絞る強烈な引きに期待したんですけどねえ、正体はでっかいソウシハギのスレ掛かり。こういう魚でも尾柄に掛れば引きますねえ〜。抜き上げなんて絶対無理なので、よく見えない磯際にハリスをこすり付けてどうにか切り、ホッと一息。

 夜釣りポイントのワレで頑張ったかまちゃんは、カンムリベラやモンガラカワハギ、アカモンガラ(ドラキュラ)やメガネハギなど、高場のM中さんはムロアジを連発させながらも、どちらもクーラーにはグレが収まっていました。
 
 みんなで後片付けをして13時14分離礁。
 忘れ物は尾長だけ。今ひとたびのみゆきまたなむ。

 離礁に手こずるほどうねりのあった「みゆき」を離れた黒潮丸は、永良部崎を回って硫黄島港の沖で一旦ストップ。嘘のように穏やかになった海上で道具を積み込み直し、タジロ、浅瀬、平瀬と回収していきました。6月に硫黄岳が小規模噴火した影響か、タジロの硫黄の壁も変色した海も、鮮やかさ・範囲とも2月とは大違い。
 一方で硫黄岳の活動は噴火後急速に鎮静化、7月からは噴火警戒レベルが平常に引き下げられており、噴気もこれまでとは違って元気の無いものに変わっていました。
 ま、今、渡船が走っている海底に横たわっている巨大カルデラの地下はどうなっているか分かりませんけどね。昭和9年に出現した昭和硫黄島のような新しい島がまた生まれるかもしれないし、私たちを破滅に追いやる破局噴火が発生する可能性も無いとは言えませんしね。

 全ての回収を終え、枕崎へひた走る黒潮丸。帰路は大揺れかと思われましたが波は意外と穏やか。どうやら「みゆき」周辺の一角だけ波当たりがやたらと強かったようですね。
 とはいえ終日1.5mだったはずの天気予報は3mに急変しており、本日磯泊まりの予定だったお客さんもこの船で回収せざるを得ませんでしたが。薩南三島での一泊釣りのチャンスは本当に少ないものですねえ。

 2日間の釣果。
 刺身と干物で堪能しました♪
 枕崎に戻った私は、サービスのバラ氷をたっぷりとイグローに詰め込み、今回もまた楽しい釣りをさせてくださった黒潮丸船長や3人の仲間に感謝しながら車を発進させました。

 ● 硫黄島 ioujima
利用渡船 黒潮丸 出港地 鹿児島県枕崎市・枕崎漁港
時間(当日) 3:00(枕崎発。航程約90分)
〜13:15(回収)
料金 13000円
 (夜釣り 16000円
 一泊釣り 21000円)
餌代別
駐車場 無料 弁当 無し
宿/仮眠所 無し システム 磯割りあり
磯替わり 可能 餌の用意可
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・初日の出とともに帰還  加治木〜大分〜帰宅  12月31日〜1月1日

 枕崎を出発した私は、眠気と戦いながら錦江湾奥の加治木向かいました。その夜はKICIROWさんのご自宅に泊めていただき、KICIROWさんが育てた美味しい野菜を味わいながらの楽しい夜を過ごしてゆっくりと睡眠をとることができました。

 さあ、播磨に帰ろう。このまま高速道路に乗って一気に帰ろう。最盛期の私なら間違いなくそう呟いたはずですが、今回の私にそれは不可能な話です。
 今年散々苦しめられた高速恐怖症の主因が気付かないうちに歪んでいた眼鏡だったことがわかり、それについては解決済みではありますが、過換気症候群の恐怖は拭い去れないし、年齢のせいか一晩寝たくらいでは体力が回復しなくなってしまったのが大きいです。

 大分県宇目町、轟(ととろ)のバス停。
 ということで今回は横着して、大分港と神戸・六甲アイランドを結ぶフェリーを利用して帰ることにし、宮崎経由宇目町越えで大分市を目指すことになりました。その道中、宮崎県木城町では高城跡と高城川(耳川の合戦)古戦場(島津四兄弟VS大友宗麟)、大分市では戸次川古戦場(島津家久VS仙石権兵衛、長宗我部元親・信親、十河存保)、府内城跡などを見学することができ、図らずも島津家の九州制覇を追体験する旅になってしまいました^^
 ただ、この大分までの旅も相当辛く、フラフラになりながらようやく辿り着いたほどの消耗ぶり。鹿児島への遠征は最早限界なのか・・・。

 大晦日の午後7時15分、フェリーさんふらわあで大分を出航しました。
 比較的少人数ごとに区切られた雑魚寝の船室に潜り込むと、隣のおっちゃんは大分県蒲江の磯をホームグラウンドとする上物師でした。そりゃもう同じ上物師同士ですから、一瞬で意気投合して釣り談義に花を咲かせることになりますわな。他のみなさんとも紅白歌合戦を観ながら和気藹々と過ごし、トランプ大会まで繰り広げ・・・と、何とも楽しい帰り道でした。
 そんな調子で船は進み、ライトアップされた来島海峡大橋をくぐってしばらく進んだところで、カウントダウンが始まりました。そして船員の打ち鳴らす銅鑼の音とともに2014年がやってきたのです。

 六甲アイランドへは午前6時半ごろに到着。初日の出をバックミラー越しに見ながら阪神高速を走り、姫路バイパス、太子龍野バイパスを抜けて無事に帰宅することができました。

 図らずも一週間に及ぶ納竿釣行、年またぎの遠征となりましたが、今回は本当に贅沢な遠征だったのではないでしょうか。
 多くの仲間、名物との出会い、楽しいハプニング盛りだくさん。釣りの方も、よく言えば豪快、悪く言えば大雑把な釣りばかりではなく、G7のオモリ一つ、ナビの位置一つで明暗が分かれるシビアな釣りまでも堪能できるという素晴らしい遠征なんてなかなか無いかも。

 2014年もまた、こんな釣りができるといいな。
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