・急遽、沼島へ
今回の代休は牛窓でのんびりと秋チヌを楽しむつもりだったのですが、こんな時期の平日なので前日の夜7時まで待っても他に予約が無く、船が出ないということになってしまいました。
ということで急遽、行先を変更して明石海峡大橋を渡って淡路島を南下、次から次へと立ちふさがるニホンジカの群れをかき分けかき分け、沼島(ぬしま)への渡船が出る土生(はぶ)漁港までやってきました。
兵庫県の最南端で、瀬戸内海にも太平洋にも分類される紀伊水道に面した沼島では今、40cmオーバーのグレや青物が連日のように出ているということで、川口渡船には1回では渡し切れない数の釣り師が集結していました。
私が乗り込んだ1番船が土生港を離れたのは5時40分ごろ。空にはまだ満天の星、山々の輪郭がようやく明らかになってこようかという時間帯でした。
1番船に乗り込んでいるのは7人の釣り師。フカセでグレを狙う私と神戸からの2人組、それにルアーとノマセで青物を狙うという4人組なのですが、そのルアーマン達の出で立ちには唖然とさせられました。手にはしっかりしたロッドケース、ジーパンにダウンジャケット・・・はいいのですが、フローティングベストなんて誰も着ていないし足元もごく普通のスニーカー!本格的な荒磯に渡るというのにそこらの池にブラックバスでも釣りに行こうかというような格好なのですから。
この人たちは死ぬために磯に来ているのか?こんなのを渡船に乗せていいのか??
中央構造線断層帯の南縁にあたる沼島の磯は、三波川変成帯の結晶片岩というもので出来ているそうです。概ね滑りにくくはありますが、所々に石英や雲母などの大きな結晶が含まれていて、そんな所にうっかり足を置いてしまうとカットラバーピンフェルトソール(通称なんでもありソール)の磯靴ですら何の役にも立ちません。私も今回見事に滑って盛大に尻もちをつきました。足場がよかったので助かったけど、下手すりゃ落水してましたよ。
そしてこの島、風向き次第で海が地獄と化すことは地図を見りゃ誰にでも分かるはず。
今になって悔やんでます。トラブルを恐れず、ひとこと言っておけば良かったと。(実はああ見えてダウンジャケットやカッパの下に膨張式ベストを仕込んでいたとかならごめんなさいね。)
・縁のフチに渡礁
夜空を彩る星座が急速に光を失い、港で吹き荒れていた冷たい北西風が潮に蒸された温かい風に変わりました。
そしてライト無しでもはっきりと磯の姿が見えはじめた頃、渡礁の時がやってきました。
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足場は最高、縁のフチ。(磯靴でも滑る場所もあるけど。)岬の先端には上立神岩が見えます。正面のヒラバエは禁漁区。 |
神戸の2人組と一緒に3人で上がるように言われたのは、島の南西側、上立神の南の奥まった所にある非常に足場がよく4〜5人は余裕で竿を出せそうな地磯でした。船長によると「縁のフチ」という場所で、ポイントはどこでもOKとのこと。前日には40cmオーバーが2枚出たそうです。
とはいえまだ薄暗くてポイントの様子は分からないし、バッカンの中の様子もよく分からないのでマキエに水を混ぜることすらできません。夜釣りを好む九州のグレ釣りや地元の太刀魚釣りだったらこの時間帯はベストタイムですが、今日は敢えて狙う必要なんてありませんので同礁のお二人と話をしながら時間を潰していました。
お二人は最近よく沼島に来ているものの、グレ釣りは初心者ということでまだ納得サイズには出会えてないとのこと。いつも二人だけなのでどうしたら釣れるのかが分からない。今日は慣れた人の釣りが見られてラッキーだと仰っておられましたが、私も全く自信がありませんがな。何せ16年ぶりの沼島です。記録ノートによると1998年から2000年に5回も来ているようですが、オセン餌のノマセ釣りで92cmのシイラを釣った時以外はほぼボーズ。38cmまでのチヌを2枚と手のひらサイズのグレを1枚釣っているだけですからねえ。そもそもその頃には40cmのグレなんてまだ居なかったし。
・ようやくスタート
第1投は6時40分くらいだったかな?1.35号相当のX4を伸ばし、0ウキにG5を打った2ヒロ半の仕掛けを磯際に入れてマキエをパラリ。
しばらくしてから回収するとチモト際がギザギザになっていました。1投目からこれですから今日は一日フグに悩まされるのかと少しテンションが下がったけど、実際にはハリスを噛まれたのはこの一回きり。めったにサシエが落ちない状況が続きました。
ファーストヒットは日の出の10分後、6時59分。15mほど沖でジワジワ沈めていた仕掛けにドン!とアタって来た25cmのマダイ(チャリコ)でした。
その数投後にもマダイが来たけど15cmにサイズダウン。その後はまた反応が無くなったので、ただドン深なだけの船着きから小さなサラシが狙える右側の高場に移動しました。
ちょうどその頃、船着きの左側のハエ根の辺りを攻めていた方が竿を曲げました。結構大きそうです!しかし残念、ウキが見えてきたところでラインブレイク。磯際で竿を立ててしまったのが敗因ですね。こればっかりは何度もバラさなきゃ体が覚えてくれないんだよなあ。
・タモが大活躍
このバラシには期待が高まりましたが、私のポイントでは相変わらず厳寒期のような状況が続いています。
オセン(スズメダイ)やミニアイゴらしきエサトリはチラチラと見えないことも無いのですが動きは非常に悪く、サシエも触ってはいるけど大概残ってきます。元気なのはごく稀に回遊してくるボラ類の小編隊と、水中を自由自在に飛ぶように高速で泳ぎ回っている絶滅危惧種1A類の小さな海鳥ウミスズメだけ。この鳥、投入したマキエにちょっかいを出してくる“餌鳥”です。これじゃいつハリ掛かりするか心配になってきますなあ。(ちなみにウミスズメ、シジュウカラ、クロサギ、シマアジという和名を持つ生き物は鳥と魚の両方にいます。魚の方のウミスズメは四国などの磯釣りで目にする“トゲのあるハコフグ”、シジュウカラはブダイ科の魚、クロサギは内湾に多い口の伸びる銀色の魚。鳥の方のシマアジはカモの一種です。ついでに、カラスという和名の鳥はいませんが、カラスという和名のフグ科の魚はいます。)
隣の方のウキ止めの位置、2ヒロ〜2ヒロ半も参考にしつつ、少しでも餌を取られる確率の高いタナを探っていきます。仕掛けもG2、00の沈め釣り、G2棒ウキ、2Bの棒ウキなどと変遷していきました。
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隣の方の道糸に翼を絡めたウミスズメ。
潜水して逃げ回っていたけど、引き上げて掴み、タモの中で
2人がかりで道糸をほどきました。元気に飛んで行ったので
一安心。 |
すると、9時過ぎになってウキ下4ヒロ強の仕掛けにようやくハッキリとしたアタリが出てくれました。アワセを入れると魚は磯際に一直線!私も全速力でリールを巻きましたが間に合わず、ハリスが飛んでしまいました。竿に感じた重量感からするとそれほど大きくはなさそうでしたが、この状況では貴重すぎる納得サイズだったのは確実でしたから、このバラシは本当にショックでした。
その後、11時までに釣れた魚といえば、手のひらサイズのアイゴ1つとオセン1つのみ。タモは何度も出たんですけどね。
経年劣化で再起不能になったので買い直すしかなかった玉ノ柄XT、まさか最初の獲物が道糸に絡まった特大のミズクラゲになろうとは。
さらに2度目の獲物が鳥・・・。隣の方の道糸に絡まったウミスズメになろうとは。
「今日は魚以外の物がよく釣れますなあ。」
「新調したタモが大活躍やね。」
もう3人で笑い合うしかありませんでしたよ。
・当て潮!
11時頃になるとやや速い潮が左斜めの急角度から当ててくるようになりました。
すると磯際のオセンとアイゴがはじめて高活性になり、やっとのことで期待が持てる気がしてきました。
当て潮は狙い方を変えれば横流れの潮になりますので、マキエを潮上の磯際に集めてエサトリをくぎ付けにし、少し潮下の沖に少量のマキエと仕掛けを投入。磯にぶつかった後、壁に沿って流れる潮と、今まさに壁にぶつかる潮との合流点を沖から狙っていきました。
G2の円錐ウキにジンタン4号を2つ打ったウキ下2ヒロの仕掛けが、引き込みの潮を見つけてジワジワと沈み込んでいきます。さあいつだ!いつラインが走るんだ!竿を握る手に思わず力がこもる瞬間です。
ところが結果はなかなか出ませんでした。コッパグレの姿も未だに見えず、迷いばかりが深まっていきます。
このドン深ポイント、棚ももっともっと深くしなきゃならないのか。でもちょっと前にすっぽ抜けでバラシていた一番左端の方のウキ下も2ヒロ半くらいだったしなあ・・・。とりあえずこの1投を流し終わったらウキを2Bに戻して、一度当たった4ヒロ、いや5ヒロ、6ヒロと探っていこう。
皮肉というか、危機一髪というか、沈みゆくウキがスピードを上げ、1.35号相当のロッドに重みが加わったのはそう決意した瞬間でした。
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11時33分、口太グレ。 |
これはバラせんぞ!足場を移動しながら必死にリールを巻き、壁から引き離すと、拍子抜けするほどあっさりと魚が浮いてきました。キープするには充分な33cmの口太グレです。それも体高も厚みもある脂の乗った1枚です。それなのにここまで引かないグレというのも珍しい・・・。
まあともかく「やっと釣れた・・・。」と心からの安堵の声を漏らした1枚、この日唯一のグレでした。この磯のグレって実在したんですねえ。
・続かず
グレの登場に一気にボルテージが上がった3人でしたが、それが持続することはありませんでした。
その後私が釣ったのはオセン1枚と20cmくらいのウマヅラハギ1枚のみ。潮の変わり目に再びエサトリが活性化して、その下に一瞬グレらしき魚が見えた気がしたので大喜びして00ウキに切り替えて挑みかかったけど、冷静に考えればあれはウマヅラハギの誤認だったような。
ただ、一番左端で釣っておられた方は、私が諦めて片付けにかかった後も竿を出されており、最後の最後にチヌを仕留めておられました。
この日は1番船だったのでちょっと早い納竿でした。磯のマキエを流し、前日の釣り師が放置していたゴミなども回収して渡船に乗り込んだのは13時49分。青磯やヤカタ周辺で竿を振る2番船のフカセ釣り師を横目に港へと戻りました。ですので他の磯のグレの釣果は分かりませんが、縁のフチと違ってエサトリが多かったようですね。
ということで16年振りの沼島釣行はグレ1枚という釣果でした。長いこと磯釣りを続けているくせにあんまり成長してないような・・・。でもまあここの釣りは高知南西部の釣りとも播磨灘の釣りとも大幅に異なること、本腰を入れてこの釣り場に取り組み、癖の把握と感覚の研磨をしなければ納得のいく釣果は得られそうにないことが分かるようになった分だけ成長してるか・・・。
ただそれ目指すかとなると、今のところはパスかな。帰りの渋滞のことを考えると高知に行く方がむしろ楽でしたからねえ。
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最終的に釣り座を構えた場所。
油断したら落水します。 |
アゼトウナの花が見事でした。 |
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何度か竿出ししたことのある下立神(釣ったことは無い) |
青緑の岩肌が異彩を放つ人気磯「青磯」 |
● 沼島 nushima |
利用渡船 |
川口渡船 |
出港地 |
兵庫県南あわじ市・土生漁港 |
時間(当日) |
5:45〜13:30
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料金 |
5000円
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駐車場 |
500円 |
弁当 |
無し |
宿/仮眠所 |
無し |
システム |
磯割り制(2交替) |
磯替わり |
可能 |
特記事項 |
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*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません) |
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