風雲児  烈風伝
      ・不調の磯と絶好調の磯と。
                噂はあてにならぬもの。


2017年 5月14〜15日 高知県松尾、柏島
・ホームグラウンドの一つが絶好調!?
 GW前の牛窓釣行で出会えなかった瀬戸内天然マダイへの再挑戦は結局悪天候に阻まれて実現しませんでした。とはいえチャンスはまだまだ継続中!・・・なのですが、5月唯一の遠征のチャンスは結局牛窓を通り越して高知南西部まで走ってしまいました。

 「柏島の尾長が好調らしい!」
 「今年は50cmクラスがバンバン当たっているらしい!」
 「4月25日に赤バエ(グンカン)の船着きで60cmが出た!ついでに28日にはカジヤノキリで79cm、10.8kgのクチジロまで出た!」

 そりゃ、複数の仲間からこんな話を聞けば行かないわけにはいかんでしょう。口太グレでは好調でも尾長グレに関しては超絶スランプ中の私ですから、昔みたいに50cmとか60cmとかいう分不相応な魚を狙おうなんて思いません。でも、そんなサイズが釣れてるんならもう3年以上四国のどこに行っても何をやっても釣れない35cm、もしかしたら夢の40cmだって釣れてくれるかもしれませんからね。

 釣行前日は記録的な大雨&南風。初日の波予報は1.5mまで落ちるとありますが少々眉唾な気が・・・。
 とりあえず蒲葵島→赤バエ廻りの渡船屋に電話してみると大会が入っているという返事です。大人数ではないので船には乗れるようですが、海況を考慮すると絶望的な状況であることが容易に想像できますから、柏島での2日釣りは断念。初日はもう一つの候補だった足摺・松尾の正丸を釣果も聞かずに予約し、2日目はビロウマニアの私らしく柏島・蒲葵島廻りの「いのうえ渡船」を押さえました。

・松尾は不調?
 5月14日(日)早朝、松尾漁港で仮眠から目覚めると、釣り客は私の他に1人だけ。まつき渡船は今回も欠航、正丸も1週間ぶりの出航とのこと。凪の時は予約が無く、予約がある時は時化なんだとか。
 また状況の方も最悪で、生命線である黒潮は遠く離れて潮は動かずグレもほとんど釣れていないそうです。さらに小サバが猛威を振るう時期でもあり、そんな時に潮の動いていない沖ウスとかに上がったら地獄を見るそうです。(もしサバに囲まれたらネイリ(カンパチ)かアカハタでも狙ってみるか・・・)

 ともかく乗船名簿を書いて船に乗り込み、5時20分に出港。高知市から来られた常連のY木さんと和やかに話しつつ、西へ西へとゆっくりと進んでいきました。
 港の中でもうねりを感じる状況でしたから港よりの磯は全滅。沖臼もホンカゲも被っています。そしてやっぱり潮も止まったままでした。

 船着きの右側の、私が竿を出した安全なポイント
 「二人ともハナレに上がって!弁当船で替えてあげるから。」
 私たちはそんな船長の指示によって背後に高い所があるハナレに渡礁しました。

 波が落ち着いてくるまでの避難場所と言ってもこの磯にとってそのような扱いが役不足であることは二人とも当然熟知していますから、早速周囲を確認のうえ、Y木さんは船着きで、私はその奥の安全かつサラシを狙えるポイントに降りて釣りを開始しました。

・意外な展開
 サラシがあるのでウキは3B、ウキ下はとりあえず2ヒロ半に設定してサラシの脇にマキエを入れ、サラシの切れ目に仕掛けを入れて待っていると開始3投目でウキに違和感が現われました。回収を試みると重い!おおっ!居食いしてる!
 これはラッキー!と、グイグイとリールを回し、竿を突き出して磯際を躱して浮かせたのは口太グレの36cm!タモを縮めながら「グレは居ますよ〜!」と船着きのY木さんに吉報を送り、クーラーのある崖上に運び上げました。

 スタートはこのように幸先の良いものでしたが、やはりその後が続かない。基本、潮が動かないのでグレだけでなく、コガネスズメダイを中心としたエサトリ達の動きもよくはありません。
 そんな状況が変わったのは8時前のことでした。潮がゆっくりゆっくりと左に流れ始めると同時に20〜30m沖には長い潮目が出現し、潮目とサラシとの間の海面には鮮やかなヨレが釣り人を誘うかのように怪しくうごめきはじめたのです。

 馴染んだら沈んでいく設定にしていたG2のウキ。その仕掛けに取り付けたウキ止めの位置を浅くして潮目やヨレに投入すると、デジカメの表示で7時45分に29cm、7時57分には28cm、8時19分にも28cm、8時50分には31cmの尾長グレが竿を曲げました。これに加えてキープ少し手前のものも断続的に当たってきています。

 そして9時台に入ると潮が少しスピードを上げ、船着きのY木さんの竿が曲がる回数が増え、ついにはナイスサイズの登場にタモの柄も伸びていきました。

 「遠慮せずにこっちまでドンドン流して来たらいいからね!遠慮はいらんよ〜!」
 Y木さんのありがたいお気遣いに、サラシが弱まったことでアタリが遠のいていた私も流し釣りに移行しましたが、魚よりも早くやってきたのは弁当船でした。
 そういえば「弁当船で替えてあげる」と言われてたけど、この状況なら変わる必要もないだろうと2人ともハナレでの続行を選択。Y木さんはそのまま船着きで釣り続け、空腹だった私はY木さんの釣りやその先の波を見ながら暖かい弁当を平らげました。

・サイズアップを夢見て
 船着きで竿を出すY木さん。私は波が収まるのを待って
その左側の斜面のポイントに移動。
 「この波ならあそこも大丈夫そうだな・・・」
 弁当を食べ終わった私は、ホンカゲとの間のワンドを狙うため船着きの左側、南向きの斜面ポイントに移動しました。西向きに比べて一見見劣りするような気もするけど、尾長のサイズアップを狙うんだったらこっちだと以前に教えてもらったものだから。

 足元の払い出しにマキエを撒き、ワンドの中間付近に0ウキ&ジンタン5号一つの仕掛けを入れて合流を待っていると尾長がポツポツと食ってきました。しかしそれらはリリースを即決するサイズばかりで、11時半にかなり沖で沈めて随分放置して、ラインがグイッと走ったところを仕留めた31cmの尾長がこのポイントでの最長寸。丸々として内臓に脂を巻いていたメタボグレでしたけどね。
 その後、鮮やかなブルーのハナアイゴが登場した後は完全に潮が止まり、南向きでも船着きでも退屈な時間が続くことになりました。

・風が吹いてきた
 どうにもならないので西向きの元の場所に戻って仕切り直し。
 しばらくやっているうちに南からの風が強くなってきました。一旦静かになっていた海面は再び波立ち始めてサラシも活性化。さらには潮もゆっくり動きはじめましたが、強風と同じ方向に動くので非常に釣りにくい。

 これではまともにやっても釣りになりません。そこでウキの浮力を色々と変え、オモリも色々と変えてチャレンジし、最終的にG2のウキ、ジンタン2号2個、潜攻ストッパーM、ウキ下2ヒロという組み合わせに辿り着くとようやくヒットが戻ってきました。
 当たってくるのはやはり23cmくらい、たまに26〜27cmくらいの尾長でした。それでも13時58分には31cmの口太グレをキープ。

 長い釣りもようやく終盤を迎えた14時41分、サラシの下から重い引きが伝わってきました。磯際を躱して浮かせたのは35.5cmの口太グレ。引き抜くには不安だし、地形の制約もあるのでタモを手にしましたが、グレも6m先の網も激しくなったうねりに乗って思いもよらぬところに移動してしまって何度も失敗。それでもどうにかタモに収めてあとは縮めるだけ。ところがそこに直前に近くを全速力で通っていった漁船の曳き波が大きな横波となって押し寄せて、魚の収まった網を問答無用で引っ手繰っていきました。
 思わず叫び声を上げたけど、タモの柄はへし折られずに済み、魚も回収できました。しかし重くなった網が物凄い力で引っ張られたことによって穂先部分が固着、ブランクがあり得ないほど引き出されてガッチリと噛みこんでしまいました。Y木さんの力を借りて捻りながら押し込もうとしても最早ピクリとも動きません。えええ〜〜、今日はともかく、明日もこの長いのを抱えて渡船に乗らなきゃいけないのか!?その前にこの状態で魚を掬っても大丈夫なのか??

 意外と釣れた「ハナレ」。
 もっとも、後者の心配についてはこの日は問題ありませんでした。それからはタモを使うようなサイズもキープサイズも一枚も釣れることなく15時20分にタイムアップとなったから。(汗)

 不調という前評判の中、潮は動いてもゆっくり、止まっている時間の方が長かったという状況下でキープサイズ8枚。これは嬉しい誤算でした。
 これで明日は帰宅後のおかずを気にせずに尾長狙いに専念できます!土佐清水市街の釣具屋で見てもらい、一時はメーカーに出すことを勧められたタモの柄も無事に直してもらえたので、取り込みの心配はもう要りません!あとは大月町の幡多郷で寝ながら明日を待つだけです!
 後半に強まった風と、Y木さんの「この前、柏島で参加者40人の大会に出たけど、グレは全体で4匹しか釣れていなかった。」という言葉が気にはなりますが・・・。

 ● 松尾 matsuo
利用渡船 正丸 出港地 高知県土佐清水市・松尾漁港
時間(当日) 5:20〜15:45
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 近隣に民宿あり システム 一部の磯は磯割り制
磯替わり 可能 特記事項
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・いよいよ柏島へ!
 5月15日(月)早朝、柏島の対岸・渡し場の港は、平日にも関わらず多くの底物師・上物師が集結。私が利用した「いのうえ渡船」の乗客は11〜2人で、本島廻りを除く他の渡船も同じような感じでした。

 波立つ柏島の海をゆっくりと進むいのうえ渡船。この日は昨日とは打って変わって季節が戻ったかのような北西の風が吹き荒れています。
 そんな中、名礁カジヤノキリに3名が渡礁。その直前に私の名前が呼ばれたので、ああ、これは・・・と思っていたら、やっぱりカジヤノキリの10mほど後ろにある磯に上がるよう指示されてしまいました。





私は
からの竿出し。
カジヤノキリには3人、
私のポイントの裏にも
1人上がっています。

北西(左斜め)からは
強風が吹いてました。
 向こうは何度も竿が曲がり、こちらは餌も取られない。
 10m先のカジヤノキリは、やはり別格の磯でした。
 以前に一度上がったことのある磯、カジヤノキリの裏。私はこの磯に「潮の緩い時はともかく、一旦走り出せばカジヤノキリの釣り人のための餌撒きボランティアセンターと化し、活動の褒賞として次から次へと竿が曲がり続けるのを指をくわえて観戦することができる場所」というイメージしか持っていませんでした。
 海に向かってストンと切れ落ちた足場は前上がりでジワジワしんどいし、後ろには大きな腐った水たまりがあって、魚を落とせばアウト、その魚はもう食べられなくなってしまうので、魚を掛けても最後の最後まで気が抜けませんし・・・。
 まあ強風吹きっさらしで磯の中央を波が乗り越えていくカジヤノキリと違って、この磯の釣り座は風裏になるから楽ではあるんですけどね。

 釣りはじめの潮流は穏やかかつ複雑怪奇。Bのウキにジンタン2号1つの組み合わせでも沈め釣りができてしまうので、とりあえずこれでカジヤとの間にあるシモリまでを探っていきますが、エサトリも見えません。
 オモリの位置や数、ウキの大きさ、ウキ下などをいじるのはもちろん、竿尻を天に突き上げて磯際を狙ったり、高い足場に舞い込んで道糸を吹き上げる風対策にウキの上の道糸にガン玉を打ったりと普段はやらないようなことまでやってみますがアタリは全くありません。

 8時半ごろ、早い弁当船がやってきました。
 この時までに取られたオキアミはたったの2匹!いったい何月なんですか?いったいどうなっているんですか?このポイント。
 僅か10m先のカジヤノキリの先端付近では時折竿が曲がり、グレらしき魚やイサギがタモに収まっているし、この「カジヤノキリの裏」でも私のポイントからは移動不可のさらに後ろの釣り座でもイサギが何匹か上がっているというのに・・・。

 こんな磯、さっさと変わってやるわ!と憮然とする私でしたが、「他の所は全然釣れてないよ。みんな磯替わりした。釣れてるのはこの辺だけ!」とアナウンスしながらやって来た渡船に「替わりたいなら替わってもええよ。でも最近よく釣れているのはこの磯だし、これから潮が速くなるとドンドン面白くなると思うけど。」なんて言われてしまったら、替わることなどできぬではないか。

・突然の
 その後も相変わらずの状況でしたが、9時過ぎに3匹目のオキアミが取られました!
 そして9時13分、シモリ際を流れていたウキが突然海中に突き刺さり、ロッドが曲がり込んでいきました。私は一瞬、事態が飲み込めず呆然としていましたが、それでも無意識のうちにやり取りを始めていました。そうして31cmの腹パンパンのイサギをタモに収めて水たまりに落とさないように慎重に運び、無事クーラーに収めることに成功しました。

 その少し後にはカジヤノキリとの間の大小のシモリの溝に深く深く沈み込ませていた仕掛けが凄い力で引っ手繰られ、問答無用のぶち切られ。正体はともかく、貴重な貴重な一枚だったのに一方的にやられてしまうとは悔しすぎます!グレではないとは思うけど、もしかして80cmクラスのクチジロ??まあ、姿を見てないから何とでも言えますな。

・激流
 その後チャンスは続かずというか、アタリが出たというのが奇跡だったのか・・・。

 そのうち、本格的に潮が速くなってきて、蒲葵島本島との水道は川のようになりました。
 2回目の見回り船でシモリの上を直撃するようにアドバイスされたので、0号のウキにジンタン2号を2つ打ち、シモリ玉を入れてきっちりタナを取った仕掛けを放り込むと久々にヒット!しかし、寄せてくる途中でポロリとハリが外れてしまいました。締め具を使ってしっかり締めたチモトがやり取りの途中でくるりと回ってしまっているではありませんか。バラしたのが30cm程度のキツだったからまだよかったようなものの。

 その後、信じられないことに魚が見えるようになりました!
 表層にはトウゴロウイワシ類が群れ、それを追ってか50cmくらいのツバスか小ヒラマサが1匹通りがかるのが見えましたし、シモリ付近にはグレやキツのようなシルエットの紫がかったような魚の群れも見えています。
 でもこれらの魚を掛けることはできず、予想とは大きくかけ離れた釣果で納竿となりました。最後の方は周りの竿も曲がっていなかったような・・・。

・真相
 カジヤノキリの裏の釣り座。
 バッカンの手前には死の水たまりが・・・。
 松尾のグレと柏島のイサギ。
 35cmの尾長?えっ、尾長ってそんなにも大きくなるの?
 港でバッカンを洗ったり荷物の積み直しをしたりしていて支払いに行くのが一番最後になったので女将さんに他の人たちの状況を聞いてみると、いつも釣ってくる常連の名人が40cm級3枚を含むグレを5枚釣ってきた以外はパッとしない釣果だったとか。

 そこで今年は悪いという話が出たので“柏島尾長絶好調説”について確認してみると、「この冬から今までよく釣れた日はたった一日だけ。60cmはひょっこり1枚出たけど50cmがバンバン当たることなんて無い無い。そんな噂どこで流れてるの?ネット上??」とのこと。
 ありゃまあ、それならそれで最初から分かってたらよかったのになあ。わたしゃ「めちゃくちゃ釣れている!」「絶好調!」という場所に行ってもほとんど釣ったことがなく、最初から全然釣れてないと言われている場所の方でむしろ釣れていますからねえ。(ただし口太グレ。)

 次回は釣果を徹底的に調べ上げ、絶望的に釣れていない場所を厳選したうえで挑んでみるとしますかな。

 ● 柏 島 kashiwajima
利用渡船 いのうえ渡船(兄) 出港地 高知県大月町・柏島
時間 5:00〜14:40
料金 5500円
駐車場 港:500円 弁当 700円
宿/仮眠所 民宿を経営 システム 磯割り制(5交替)
泊まり優先
磯替わり 数回
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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