・からことといふ所にて、旧友と再会す。
「波のおとの けさからことに聞ゆるは 春のしらべやあらたまるらん」 安倍清行朝臣(古今和歌集)
岡山県牛窓の港から「唐琴の瀬戸」を隔てた牛窓諸島やその先の小豆島から帰ってきた人から聞こえてくる「チヌが絶好調!」という調べが、ついに「チヌに加えてマダイも最盛期に突入!」というものに改まりました。さあ待ちかねていた時が来た!今年も行くぞ、牛窓へ!
※上記の歌に詠み込まれている唐琴は実は牛窓の唐琴じゃなくて児島の唐琴だそうですが・・・
出船30分ちょっと前まで車の中で休み、そろそろマキエでも作ろうと外に出ました。すると隣の車の人も準備を始めていたので挨拶したらお互いビックリ!何と今はもう閉店している釣具店の常連仲間で、その頃は毎夜のように千種川河口でルアーを投げて一緒にスズキを狙っていたHさんではありませんか!
HさんはかつてはG杯などにも出場していたけど最近は底物釣りや船釣りがメイン。今回は悪天候で行くところが無く、マダイの情報に誘われて久々のフカセ釣りで牛窓には初挑戦だそうです。他のお客さんもマダイ狙いの人が多いようです。
|
ダンプの裏側。すぐ近くの千振本島すら見えません。 |
|
荷台の付け根が私の釣り座。 |
|
濃霧の中、Hさんにマダイがヒット! |
・濃霧の中、小豆島へ
午前5時、10人の乗客を乗せたまこと渡船は唐琴の瀬戸を越え、まずは牛窓の磯に3人を降ろしました。ただ、どこの磯に降ろしたのか、船が今どこにいるのかがよく分からない。
この日、海上は濃霧でした。牛窓諸島を出て小豆島に向かう道中もレーダー頼りで、漁船があれば慎重に慎重に回避行動を取りながらの航行で、小豆島への到着も船速が急減して目の前に小島が浮かび上がってくるまで分からなかったほどでした。
目に入ってきたのは何度も見た千振島周辺の風景で、その北側のグンカンに一人が渡礁。次に渡す名礁ダンプの前で船長がやってきて、私とHさんに「顔見知りなら一緒に上がってみますか?」と声を掛けてくれたので当然二つ返事で渡礁です。そして「一緒に竿を出すの、阪神が優勝したとき以来かなあ?」「いやいや、もっと前と違(ちご)たかな?」なんて言いながらの釣りになりました。
・潮が動かぬ中
この日は大潮で、干潮5:32、満潮10:54(小豆島・大部)ですが、どうしたことか6時前の今も潮がほとんど動いておらずまるで池。こんなダンプ、見たことないぞ・・・。
とりあえず初挑戦のHさんにダンプのメイン釣り座である“運転席”に入ってもらい、私は“荷台”の付け根でやることにして、マキエを打ちこんでから道糸2.5号、ハリス2号、G5のウキに7号のジンタン1つを打ったウキ下2ヒロの仕掛けを作って第一投。
竿下に投入したウキは南東方向へと微速前進。ところが馴染みきったかなというところでジワジワと沈み始めてしまいました。
おかしいな、浮力が狂っているのか、それともそんなに吸い込む潮なのか・・・。そう思いながらしばらく放っておいたけど、やはりどうもおかしい。もしかして?とアワセを入れてみると魚じゃないか!しかも33cmのマダイだ!これには私もHさんもビックリです。まあHさんには「一投目から本命が釣れたら日はその一匹で終わりということが多いで〜」と脅されてしまいましたが・・・。
微速前進していた潮は2投目にはピタリと止まっていました。ところが3投目は違う方向にゆっくり動いていて、今度は25cmながら裏本命のチヌがヒット。その後も一投ごとにあっちへフラフラ、こっちへフラフラ、右に流れるか左に流れるかの分水界ごとフラフラ彷徨っています。いい感じで流れていくマキエが突然Uターンして戻ってくることもあるし。
・渋い!
開始後1時間あまり。3投以降一気に失速してしまった私に対して、隣のHさんが加速し始めました。
足元でのバラシとハリ外れ数回ののちに30〜35cmくらいのマダイとチヌを連発。運転席の沖の大きなシモリの右側で、微妙な吸い込み潮の入り口を探し出しての釣果です。ただアタリはウキが瞬間的に消し込むようなものではなく、ジワジワ、ジワジワと入っていく渋いものでとにかくハリ外れが多いし、チヌとマダイをアタリで見分けることなんてできません。
磯際狙いにこだわる私にも何度かはアタリが出て、ハリ外れが数回。ジワジワといい感じで入っていっても途中で放されてしまうことも多いし。
そして7時52分、ゆっくり入っていくウキを放されることなく、腹パンパン36cmのチヌをようやく追加。8時15分にはほぼ同じアタリで27cmのマダイ、さらに8時27分にも35cmのチヌが掛ってきました。磯際で数秒間ファイトしただけのハリス切れがあったけど、これは撒き餌周辺をウロウロしていたコブダイだったような気がします。
運転席のHさんの好調は相変わらず。右向いて左向いたら潮の向きや速さが変わっている不安定さも相変わらず。そして島影一つ見えない濃霧も相変わらずです。Hさんのラジオから聞こえてくる「大阪は雲一つない日本晴れ」という言葉を、背後にあるはずの千振本島すら見えない状況で聞いてもにわかには信じられない気分です。
まあ濃霧といってもウキが全く見えないほどではないので釣りに大きな支障はないものの、遠近感のぼやけたウキを見ていると何か目がチカチカしてくるし、2号のハリスが白い空気に溶け込んで回収時に全く見えないのでやり難くて仕方ありません。大阪が真夏日間近という暑さなのに対して、飲み水と氷を大量に用意してきたのが馬鹿らしくなるような気温なのはありがたいけどね。
・待ちかねた瞬間
潮は基本的に緩やかですが、時折思い出したように音を立てて流れる時があります。が、すぐにまた緩んでしまいます。そうなると軽い仕掛けに戻したくなるし、何ならゼロスルスルにしてしまってもいいとも思うけど、速い時に変更したG2で我慢。Hさんのように沖を攻めて見たくもなるけど我慢。きっといつかここからシモリをすり抜けて南東へ駆け抜ける最高の潮が来る。その時に賭ける!
しかし潮が走っても9時48分時点では北西へ、10時13分時点では真逆の北へと走っていました。前者は潮の中を流し込んで、後者は磯際の巻き返しで38cmと37cmのチヌがヒットしてくれましたが。
|
38cmのチヌ。腹パンパン。でも身質はgood |
|
37cmのマダイ。素晴らしい味でした。 |
その潮もまた数分で緩み、ついに完全に停止してしまいました。時計を見ると転流の時間だ。予感がする。さあ来るぞ!
10時15分ごろ、待ちかねていた速い潮が流れ出し、複雑な文様を描きながら南東方向へ突き進みはじめました。
まず動いたのは運転席のHさん。10時23分、この日初めての目の覚めるようなアタリで棒ウキが消え、本命のマダイがヒット。
円錐ウキをドンドン流し込んでいった私も、10時50分過ぎにかなり遠くでアタリ。Hさんの仕掛けと絡まないように引き寄せてタモに収めたのは37cmの美しいマダイでした。後で捌くとこの個体は尻鰭側の背骨に瘤、いわゆる「鳴門こぶ」を持った激流育ちの桜鯛。身質も旨みも最高で、刺身はもちろん潮汁なんて、これまで食べた鯛は何だったんだという味わいで、汁かけ飯なんかしてしまったらもう無限に食べ続けられるような味でしたよ。
・お手上げっ
最高の潮が長く続かないことは重々承知しています。マダイを取り込んだ次の一投では随分ゆっくりになっていたけど、このまま右に右にと旋回していくものだと思っていました。
でもまさか、いきなり正反対の北向きの激流に変わるなんて・・・。
こうなると激流が荷台の下に潜り込む私の釣り座は厳しくなります。ただこの潮の攻略は前々からの宿題ですので、どうにか正解に近づこうと足掻いていきます。
とりあえずG2のウキはそのままにハリスに3Bのオモリを打って止めてアタリを待ちますがどう攻めても反応無し。荷台の反対側に回っても巨大な鏡に阻まれて攻略できず。私が諦めた後に入ったHさんもお手上げのようです。(最終的にチヌを一つ掛けて、藻に取られてしまっていたけど。)
「この潮は釣りにならんなあ。でも向こうのあの岩の上からならやれそうやから行ってみたら?20mくらいやし泳げるんと違うか?尾道水道みたいに100mも無いで!」
「こんな激流、流されるわぁ〜!」
Hさんもむちゃくちゃ言いますわ。わたしゃ「向島より泳いで参った!」の人でも、備前宰相さんでもないんですからね(笑)
そんなこんなで終盤は結局釣りにならず、13時15分くらいに撤収。こんな潮じゃ・・・なんて言っていると船長に「下げは全く釣りにならない日もあるけど、裏側に鏡ができる今日の潮の角度はベスト。満ち潮も動かないのが最高の潮で、潮が走る時はよくない。」なんて言われてしまいました。
ちなみに下げの時はハリスにオモリをバシッと打って、湧き潮の所で止めておけばいいとのことでした。実は惜しい所まで行っていたのか・・・。
この日の私の釣果は37cmまでのマダイ3枚と38cmまでのチヌ4枚(どちらもミニサイズ1枚含む)でした。しかし隣で釣っていたHさんはマダイだけで6枚上げているし、千振島北側のグンカンでは60cmのマダイも!
いや、やはりこんなの見せつけられたら悔しくて悔しくて・・・。こりゃゴールデンウィーク中に再戦しなきゃ収まらんぞということで、予定を聞いたら3日は大荒れ、4日も大風、5日は貸切、6日は大会ながら空きありですか。火曜も天気悪そうだし、潮悪いけど食っている時に行っとくか。
|
|
正午過ぎにようやく霧が晴れだしました。 |
一のソワイと千振本島。これぞ瀬戸内、白砂青松! |
|
本日の釣果↑
←牛窓・前島はまだ霧の中。
|
・再戦は前島
|
風景は前回と大違い。朝焼けのとおり、帰路は雨でした。 |
5月6日のまこと渡船は2隻とも出船で、牛窓諸島と最近渡し始めた日生(ひなせ)諸島に行くそうです。大会組はマンツーマン形式でやるそうですから複数上がれる磯を占め、一般客は基本的に一人磯に上がることになるとのこと。ということはマダイ狙いの私はきっと小崎の周辺だな。
私が上がったのは予想的中のボート岩。小崎の東隣のチャランボを持ってあがらないといけない狭い磯です。
ここには一昨年上がって手のひらチヌを1枚釣っています。軽い仕掛けも本流釣りもダメ。重たい仕掛けで本流までの間を釣るのがコツで、ドン深なのでウキ下は確か竿1本だったかな・・・と、3B+G2負荷のウキとオモリでスタート。(実はこのウキ下竿1本という記憶が大間違いだったのですが・・・)
潮はひたすら当て潮。1日通して当て潮。遠くに投げてファストリトリーブで追いかけて磯際を狙うというパターンばかりでした。この当て潮が釣れるのは分かっているけどこればかりだとどうにも面白くないなあ・・・。
とりあえずチヌは釣れました。6時49分と7時31分に23cmほどのが各1枚。あとはクサフグが1つと、ムスジガジ(タウエガジ科)という瀬戸内では普通に生息している魚が1本。あと終盤にわりといいサイズの魚のハリ外れが1回だけ。
前半はエサトリが結構いましたが後半はほとんどいなくなりました。チャンスだと思ったんですけどねえ・・・。それと前後半ともボラやメナダの群れが私のウキでバレーボールして遊んでました。
この日の敗因は深釣りをし過ぎたせいだと思いますが、周辺の釣果を見ている限りでは適切なタナでやっていてもおそらく大して変わらなかったでしょうね。
なかなか上手くいかないものです。
|
潮筋はボラの大群↑
←ボート岩からの黄島。 |
● 小 豆 島 & 牛 窓 syodoshima & uhimado |
利用渡船 |
まこと渡船 |
出港地 |
岡山県瀬戸内市・牛窓港 |
時間(当日) |
5:00〜13:15
|
料金 |
牛 窓:3000円
小豆島:4000円
|
駐車場 |
無料 |
弁当 |
無し |
宿/仮眠所 |
無し |
システム |
― |
磯替わり |
有ったり無かったり |
|
|
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません) |
|