風雲児  烈風伝
   ・目指せ不調脱出。シーズン真っ盛りの高知の海へ

2020年 2月11〜12日 高知県 下川口&宿毛湾(宇須々木)
・40のグレを求めて
 西暦2020年、和暦令和2年、牛窓で行った異例の初釣りで成果を得た風雲児は、その勢いをもって昨年から続くグレ釣り絶不調を粉砕すべく、ベタ凪予報の高知南西部に向かった。二日目の本降りの雨と風の到着までに、昨年一枚も得られなかったサイズを手にすることができるのか??

 ということで今年初の四国釣行は、数はともかく今回の目的である40cmの口太グレが期待でき、相性も良い下川口です。ムラは激しいものの場所によっては40cm強の尾長グレも出ているようですし、祝日でもありますから人は多いでしょうが、何せベタ凪なのでどこかには上がれるはず。あわよくば潮が引くまで待ってタテバエのハナレかシモリにでも・・・。なんて思っていたけど、港に集まったのは僅か6人、しかも今期も好調のヒラバエに上がれることになろうとは。

・敢えて太ハリスを手に
 下川口東磯の最前列東端にあるヒラバエは、まつした渡船HPによると「東向き(千尋・みのこし方面)は浅い棚が広がっているがその上で良型グレがアタる。ただゆっくりやりとりしていると磯擦れしてバラす為、早い取り込みが必要。南向きの溝も狙い目。水深はかなり深い。凪の日しか磯上がり出来ない。定員2名。」とのことですが、今期は棚の上よりも南の船着き前、シモリとの間で口太も尾長も40cm前後のものが当たっており、さらなる大物のバラシも多いとのことです。
 ヒラバエ船着き。少し沖にある大きなシモリとの間を狙いました。正面の独立磯はラクダ。

 竿は1.75号、ハリスは2号を結びかけて2.5号2ヒロに変更。それにO号のウキとフカセウキゴム、速攻グレX7号をセット。最初はウキ止め無し。7時15分ごろ、これを船着きの前10mに投入してこの日初めてのマキエを2発、パラリ、パラリ。竿を立ててウキとフカセウキゴムがあまり離れないようにコントロールしていると空中で軽くたるませていた道糸が張り詰め、竿が一瞬にして胴まで突き刺さっていきました。
 これは強い!デカい!
 こういう場合、体勢すら整えられずにハリス切れとなるのがお約束ですが、今回は初めから体勢は万全、竿にもハリスにも不安はありません。右へ左へ手前へと手加減無しの暴走を凌いで凌いで凌ぎ切り、50cmを軽々超える茶色い魚を沖の水面に浮かび上がらせることに成功しました。それを見てタモ網の所まで移動しようとした時も、たどり着く前に仕掛けが天高く跳ね飛んでいくのを見たその時も私は比較的落ち着いていました。デカかった。しかし水面で見えた魚の茶色さはノトイスズミを思わせる色合いだったし、竿も少しばかり叩かれていたし・・・。尾長だった可能性も否定しきることはできませんが、おそらく二日目なら持ち帰って味噌漬けにしていたであろう魚だった、そう信じなければ悔しくて夜も眠れないでしょう。バラシの原因が道具を使ってしっかり締め上げたはずのハリスの回転に起因するハリ外れだったなんて。

 その数投後、今度は深い所でアタリがあり、底を這うように走っていく魚がヒットしました。これもなかなか大きいが、シモリまでは行かせん!と耐えているとまたハリ外れ。もっと確実に締め上げたハリスがまたしても回転。こんな馬鹿な話があるか〜!!

 しばらくすると25cmくらいのコッパ尾長が釣れました。足元では大きなヒブダイのオスがマキエを拾うようになり、少し沖にはボラの群れが出現しました。7時47分にはそのボラの70cmのものがヒット、取り込みはしたけど疲れましたわ。この時期の外海のボラですから旨くないはずがないですが、このタイミングでこのサイズのボラをクーラーに入れるのは・・・とリリース。

 少し休んで再開。またボラが掛かるとしんどいので別の所を・・・と、ヒブダイを避けながら竿下の棚の先に仕掛けを入れていくと、ウキが一気に消えて40cmオーバーのサンノジが掛かってきました。そりゃそうでしょうねえ。なんせ足元は大小様々なサンノジだらけ。一瞬グレかなとハッとする魚影も、しばらく目で追うとサンノジの見間違いでしかないことが明らかになってしまいますからねえ。

・食いが渋くなるのは・・・
 やはりもう少し沖を釣ることにして、ボラに食われないことを祈りながら水道の左から入ってくる緩い潮に乗せて釣ってみると、25cmくらいの尾長グレがポツリポツリと当たってきました。しかしその食いは段々と渋くなっていき、ボイルは一切食わなくなり、加工オキアミやマキエの中のオキアミを使ってもウキをほんの少しだけ沈めるだけで持って行かずすぐ放してしまうようになりました。緩やかに誘いを掛けてもダメ、早合わせも無効です。
 むしろ本当に渋い時はゼロウキよりも浮力のあるウキ。そこでウキをG5に変えてウキ止めの位置を微調整しながら釣っていくと8時46分にシモリの手前でウキがゆっくりゆっくり沈んでいったので、張らず緩めず送りこんでいくとようやくヒット。あんまり引かないのでそれほど・・・とは思ったけど、上がってきたのは36cmの口太グレ。よかった、居てくれて。

 大潮干潮時のヒラバエの裏側。
 それからも食い渋りが続いたのでついにハリスとハリの号数を落としました。さらにウキも0号にしてガン玉7号を打ち、ウキ下を2ヒロ半にしてみると、小さくて30cm、大きいものは50cmのサンノジが連発したものの、肝心のグレは釣れてくれませんでした。そこでウキ止めを無効化してスルスルの止め釣りに戻してみるとようやくコッパ尾長少々とコッパ口太少々がヒット。あと2枚目の50cm級サンノジも・・・。

 正午前後には潮の引いたヒラバエのポイントをあちこち放浪していましたが、2匹目の70cm級ボラとサンノジ、アカササノハベラ、オトメベラ、ニシキベラ以外の成果はなく、オキアミは大抵そのまま返品される始末でした。結局船着きに戻ってきたけど、下川口のゴールデンタイム(回収の直前)でも成果は上がらないままタイムアップ。
 腕は痛いけどクーラーの中身はグレ1枚だけ。釣っている間に水温が下がってしまったようで、同じ並びのラクダで34cmが一枚釣れた他はどの磯もサッパリでした。
 かなり期待した一日だったんですけどねえ・・・。

 貧果の歴史が、また1ページ。

 ● 下 川 口 shimokawaguchi
利用渡船 まつした渡船 出港地 高知県土佐清水市・下川口漁港
時間(当日) 6:50〜14:30
(日曜は15:00まで。
それ以外は14:30まで。)
料金 2500円
駐車場 無料 弁当 500円
宿/仮眠所 無し システム 磯予約制
磯替わり
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

・嵐の前
 初日の好天ベタ凪は束の間の夢。明日は北東のち南の風が吹くので下川口は休業宣言。出発時には15時ごろからの予報だった雨も降り出しが早まり、明日は午前中から悪天候との戦いを強いられることになる模様。よろしい。本懐である。
 ただ悪天候の釣りに慣れている時化男も船が出なければどうにもなりません。明日は安全かつ40オーバーのグレが釣れており、もしグレには厳しい奥まったポイントでしか釣れない事態になっても大チヌで挽回できる可能性がある場所で釣ることにして、大月町の幡多郷で眠りに就きました。

 翌2月12日は雨の大月町から薄曇りの宿毛へ北上、昨年からエスケープ釣り場として濫用している宿毛湾・宇須々木の西田渡船に向かいました。実は今日は悪天候なので休むつもりでいたけど、私ともう一組から電話があったということで快く出船決定。今夜の大荒れに備えて別の港に避難させていたという船を取ってきてくれて、7時ごろ、もう一組の乗客、国見孝則さんとその友人の到着を待って出港となりました。

 大藤島のアジロ。沖の岬の先端部がタタミ。
・風は大藤島(おとうしま)
 この日上がった磯は大藤島の西向き、何度も上がったタタミの北奥にあるアジロという地磯でした。
 ここは沖にあった筏が撤去された今期から本格的に渡し始めた場所だそうで、チヌ釣り場を想定していたのに、蓋を開けてみると今期の40cmオーバーのグレはほとんどがここで上がっていて、45cmクラスも出ているというグレポイントだったとのこと。ただし一日釣って1枚釣れるかどうか、つまり1か0かの極端なポイントだそうです。やってやろうではないか!勝利か撃沈かではない。勝利か、より完全な勝利かだ!

 このポイントで釣るコツは遠投して深く釣ること。そしてコッパ尾長が釣れても完全に無視することだそうです。
 Bのウキで少し様子を見た後、数年前に叩き売りされているのを買ってからほったらかしにしていた4Bの足長太身の管付きウキにチェンジして、ウキ下3ヒロから3ヒロ半で遠投・・・しているつもりなんですが、このウキ、右からの横風となる北東風に煽られるうえ、タックルバランスの問題も大きいのだろうけど、いかにも飛びそうな外見ほどは飛距離は出ませんなあ。そしてよく絡む・・・。でもまあよく見えるし、今日はしばらくこれでいくか。

 マキエの周辺はいつもの茶色や黄色ではなく桜色で塗られたようになっています。集っているのは20cmほどのチダイとマダイの子どもたち。それは当然足元ばかりでなく沖にもいるんでしょうけどウキへの反応は表れません。しかし第1投からサシエ、還らず。加工オキアミはもちろん、ボイルも食用冷凍むきエビも、一度として戻ってくることはありませんでした。

・失われたもの
 私の苦戦を背後でじっと見つめている者がいます。釣りを開始した直後に現れたキジトラの野良猫です。
 まともな水源も無い島で何年も生き抜いているというこの猫は夏目友人帳のニャンコ先生か!?というほど丸々と太っていて、面積0.21平米、標高114m(『SHIMADASU 2019年版』)の大藤島全域を移動しているだけでなく、船長の話では平気で海を泳いで釣りをしている場所までやってくるという驚異のネコだそうで、ネット情報によるとハリを外す前の魚にも襲い掛かってくることもあるそうな。
 釣り座のすぐ後ろやクーラーやロッドケースの側の窪みで風を避けながら留まり続ける猫の写真はありません。写真を撮ったり相手をしてやってもよかったけど、猫のために割く時間は私にはあまりにも貴重すぎる。ちゅうか、お前!魚が欲しいんやったらエサトリもよお釣らん下手の後ろやのうて、隣のタタミかその近くに上がっとっての名人の所に行けや!それより、そもそもこんな無人島にあらゆる野生動物を食害する肉食獣がおるのん、大問題やろ!!

 そんなことを思いながらキャストしていると、8時前、投げ損ねたウキが15mほど沖に着水。まあええかとそのまま左への緩い潮に乗せて流しているとジワジワと沈んでいくではありませんか。ヒットしたのは32cmの口太グレでした。棚を躱して慎重にタモに収め、ロッドを一段上の岩の隙間に打ち込んであるホルダーに差し込んで、ネコを警戒しながらタモの中でハリを外してクーラーの側まで移動。そしてサイズを測って写真を撮っているとガシャンという大きな音がしました。ああっ、竿がロッドホルダーごと一段下の岩盤まで落下している!
 猫の襲撃に気を取られるあまりラインに対する注意がおろそかになっており、テンションが掛かり過ぎた状態で外されたハリが急上昇、首元のカッパのフードを貫いたのに気付かずに移動したのが原因です。竿の上部は運よくバッカンの上に落ちてくれたものの、リールのラインローラー付近が傷付き、仕掛けは磯に食われて傷だらけで作り直し。さらにフード2か所を一度に貫通したハリはペンチが無いため外すこともできず、かといってフードを破るわけにも、むき出しの針先を頸動脈に突き付けた状態で釣るわけにもいかず、仕方がないので針先にフカセウキゴム&フカセからまん棒を無理やり押し込み固定して続行することにしましましたが、一枚のグレと引き換えに多くの時間を失うことになりました。

 アジロの釣り座。気温は高かったけど写真の
正面から吹く風で寒かった。
・昏迷の地磯
 このタイムロスで時合いを逃したのか、食ったこと自体が偶然でしかなかったのか、その後はサシエが取られ続けるだけの時間に戻ってしまいました。どうやってもダメなので、9時45分ごろには気分転換でもしようと、チヌ釣りになった場合を想定して持ってきていた練り餌「食い渋りイエロー」を開封して取り付けて遠投。すると重みに耐えかねて沈んでいった足長管付きウキを追いかけるように竿先がグッ、グーッと入っていきました。チヌ、おったぁ!と噂に聞くマッスルチヌの激走を警戒しながら合わせると、何かよく知っている引き方がしました。あっ、これは!
 水面に浮いてきたのは予想通り口太グレ30cmだったので、そっと抜き上げて素早く掴み、後ろで待機している豚猫を追い払ってからハリを外してキープしました。

 実はこれまでフカセ釣りでは練り餌をほとんど使ってこなかったので、このグレのヒットは本当に新鮮でした。そしてこれこそが今日の突破口だと目の前の霧が晴れる思いがしたのですが、アカササノハベラがいくつかヒットしただけでグレの追加はなくチヌのヒットも無し。ああ、私の釣運の鉱脈も尽きたか・・・。

 ちなみに背後にいた猫は、水たまりに落ちたアカササノハベラを前足を伸ばして器用に捕まえて食べてしまいました。そしてそれに満足したのか、ついに降り始めた雨を嫌ったのか、その後姿を見せなくなりました。
 釣り人にとっても吹き降りの雨はうっとおしいですけど、今回は釣具屋でたまたま見つけて感心しながらレジに運んだタカ産業の「フードホルダー」という便利グッズがあるので快適。帽子に取り付けてカッパのフードを挟むシンプルなW字型のクリップですが、これはもっと知られてもいいナイスアイデアですわ〜。(何ももらってないけど、よかったのでオススメしとこ)

 不快ささえ気にならなければ雨はチャンスでしかないはずなんですが、状況は全く好転せず、何層にも連なっているであろうエサトリの縦深陣を打ち破れずにいました。
 何か打つ手はないのか。高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処するしかないのか・・・。
 いやいや、要するに行き当たりばったりというような作戦を取るのではなく、たった一度だけでもエサが通る可能性があることを信じて、投入、回収、投入と気の遠くなるほどの反復行動を繰り返すことが結局は一番の近道なのではないか?
 
 こう思い直してひたすら投入と回収を繰り返したけど、風とは反対の右側への速い潮が流れ出してからもコッパグレすら掛からず、掛かっていたらキープしていたであろうボラも回ってこず、チャリコ数枚と小さなヒブダイ、それにコモンフグが上がってきただけで終了。風が南に変わり、雨もドンドン強まってくる前に帰らなければということで13時にお願いしていた迎えの船に乗り込んでアジロを後にしました。

・帰還
 初日に1枚、二日目に2枚。30cmの壁すら越えられなかった頃に比べれば随分とましになったものの、釣果が上向いていた四国南西部に水温低下をもたらし、我が家の晩御飯をどうにか確保しただけに終わってしまいました。無念だが、撤退だ。(といっても、この日、国見さんは56.5cmのチヌ、連れの方はナイスサイズの口太グレを仕留めておられたようですが・・・)
 宿毛湾のグレ(左)と下川口のグレ(右)
2枚は生殖腺未発達、1枚は白子があったものの
まだまだ小さく、産卵時期がいつになるのかの
予測もつきません。
 さあ、地元に帰りましょう。刺身パーティーの開催を心待ちにしているといつも言ってくれている仲間たちが待つ地元へ。
 ごめん、プレーパークの学生ボランティアたち。ごめん、お向かいの刺身好きの小学生Sちゃん。ごめん、みんな・・・。

 貧果の歴史が、また1ページ。

 ● 宿 毛 湾 sukumowan
利用渡船 西田渡船 出港地 高知県宿毛市 宇須々木の専用突堤
時間(当日) 7:00〜12:50
(日没まで可)
料金 3000円
駐車場 無料 弁当 客数の多い時のみ予約可。
宿/仮眠所 仮眠所あり システム 特になし
磯替わり 可能 特記事項
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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