風雲児  烈風伝
  ・爆釣情報あり。撃沈フラグはためく足摺岬のグレにチャレンジ

2023年3月7〜8日 高知県松尾、伊佐
・リベンジマッチ
 ちょうど1月前の磯釣り復帰戦でコッパグレの顔さえ見られず、納竿直後はガックリきていた私でしたが、やはり磯釣りの魅力と撃沈の悔しさには抗えず、消化が必要な年休もまだ残っていることもあって道具が片付く前に再挑戦を決意していました。

 今回はY先生の都合がつかず単独行。釣り場に迷っていた私に釣巧会のリョータさんがプッシュしてくれたのは伊佐でした。通常なら伊佐のグレは年明けには食わなくなっているはずなのに今季はなぜか未だに連日大漁で、しかも尾長ばかりというイレギュラー。しかもこれまで3軒あった渡船屋のうち岡野渡船以外の2軒が辞めてしまったのでどこでも上がり放題というのです。
 伊佐は一般的には全天候型の中型グレの数釣り場として語られますが、実は私はグレ釣りではこの場所にいいイメージを持ちあわせていませんでした。これまで何回か行ったけど釣れたのはコッパ尾長を1枚だけですし、同行者が目の前で漁船の引き波にさらわれ落水(自力で生還)するという経験もあります。まあ釣れてないのはいずれも3月というオフシーズン中のオフシーズンにしか行ってないというのが大きいんでしょうけど、ここで想起される上限40cmというサイズがどうにも物足りず、これまで候補地に上がることもありませんでした。でもまあ今シーズンそこまで凄いのであれば試してみない手はないでしょう。
 ただ爆釣情報が出ている釣り場、しかも天気予報も上々というのは私にとっては絶望的なフラグなんですよね。こういう時は撃沈する自信しかありませんので、伊佐は2日目に回し、初日は全く情報の無い松尾でやってみましょうか。

・寄り道しながら足摺へ
 釣行した週は3月上旬というのに連日20度前後の予報気温でした。夜はさすがに冷えますがそれでも随分暖かいので、暗くなってからはついついあちこちに寄り道してしまうのがモスマニアとなった今の私。ライトトラップをしても期待できない月齢だからこそ来たんだし、そもそもこの時代、虫の寄ってくる外灯なんて絶滅寸前なんですが、それでも冬の名残のシモフリトゲエダシャクや早春の訪れを告げるシロテンエダシャク、ウスバキエダシャク、ミカヅキナミシャクなどを撮影し、兵庫県では見られないのではないか思われるクロズエダシャクを採集しつつ0時過ぎに松尾港に到着。屋根の無くなった駐車場で先着の方に挨拶し、餌やクーラーを外に出した車内で寝袋に入って目を閉じました。目を閉じただけでなぜか一睡もできませんでしたが。
ミカヅキナミシャク クロズエダシャク

・松尾 ホンカゲ低場
 出港予定時間の6時、正丸の乗客10人は既に準備を整えていましたが、時間にルーズなもう一軒の渡船屋の船長と乗客がなかなかやって来なかったため出港は6時半前にまでずれ込んでしまいました。
 この日の陣容は沖のフタツバエに2人、ウス1番に2人、ホンカゲ高場に2人で、私を含めた単独行の4人はまとめてホンカゲ低場に並ぶというもので、私は船着きから3番目の所に釣り座を構えました。4人まとめてというのにはちょっとビックリしましたが、一級磯でお互いの釣りを見ながらみんなで釣果を伸ばせるようにとの船長の思いでこうなりました。
すっかり明るくなった松尾漁港を出発 沖ウスには激流なし

 潮は非常にゆっくりと左側の高場方向へ流れています。私はとりあえずG5のウキを2ヒロの設定で様子を見ていました。
 右隣の常連さんは7時過ぎにはもうグレをヒットさており、7時20分過ぎには両隣でダブルヒット。私はそれを横目に見ながら苦戦中です。いや〜、眼がさらに悪くなってしまってウキがどこにあるのか分からないんです。ウキを棒ウキに換え、両隣の方よりかなり手前を流すようにしているのですが、少し目を離すとたちまち行方不明で再発見に一苦労。普段なら流しっぱなしでもいいけど今回は並んで釣る状況なので、流せる限界点が分からないと安心して釣れませんからねえ。
ホンカゲ低場の高場側 ホンカゲ低場の船着き側

 まだまだ日陰のホンカゲも8時ごろには随分明るさが増してきたのと、私も慣れてきたので随分と釣りやすくなってきました。ヒットを代わる代わるグレをヒットさせている3人の常連さんの釣りに引っ張られずに、棒ウキできっちりタナを決めてサシエの状態を見ながらアタリの出る場所を探すという今日の自分の釣りを貫く私のファーストヒットは、30cmちょいのサンノジでした。直後の8時17分にはウキ下2ヒロ半で28.5cmの尾長グレがヒット。今回のキープサイズは30cmと決めていたのでリリースしましたが、その3分後には31cmの口太グレがクーラーに収まりました。

 その後が続かなかったので再び色々なタナを細かく探していくと、8時50分に2ヒロ弱の所で30cmの口太が掛かりました。その時にグレが上ずってきていることを察知したのですぐに棒ウキを0の円錐ウキに換え、視認性重視のマーカーを取り付けて上層を狙うとすぐにヒット!水面下に見えたのは40cm弱の尾長グレ!しかしあと一歩で足元のエッジに突っ込まれてラインブレイク。
 すぐに仕掛けを作り直して投入すると数投目にまたヒット!今度も素晴らしい引きを見せる魚に対し、磯際まで走り寄って突入を躱してネットインしたのは36.5cmの旨そうな尾長グレでした。
尾長グレ36.5cm

 この勢いで出遅れを取り戻せればよかったけど、グレが上ずったのはほんの一瞬だったようです。そこからまた棒ウキとウキ止めでコツコツとタナを探していく釣りでサンノジがたまに掛るだけという展開になり、4枚目のキープサイズ、34cmの口太にたどり着いたのは10時48分でした。この日、両隣の方がメインで狙っていたのは25〜30mくらい沖、それに対して私は最初はウキの視認の問題、途中からはお互いに干渉せずに釣れる快適さから15〜20m沖を釣り続けていました。その私のエリアに陽光が差し始め、日向と日陰の境界線がやってきたタイミングでのヒットでした。ついでにリリースサイズの尾長と足摺名物のシラコダイも久しぶりにヒット。

 正午前に風向きが変わり、南西つまり左前からの波が出始めました。私の釣り座の前には小さなサラシという形をしたチャンスが出現したのです。
 そのサラシの10mほど沖にサシエを待機させ、サラシから出ていくマキエの合流を待つ釣りで11時48分に36.5cmの尾長を仕留めた後、35cm、33.5cm、34cmの口太と34cmの尾長、それにサンノジを連発させました。
 しかし13時すぎにはサラシがきつくなり13時半にはアタリがストップ。打開策なら思い浮かぶけどこの時点で釣果に満足してしまっていたし、昨夜眠れなかったのが効いてきて半分眠りながら仕掛けも変えずに釣っていました。でもこれではさすがにもったいないなと思い直して3Bの円錐ウキにオモリをしっかり打った仕掛けに作り直して投入するとすぐに34cmの口太グレがヒット。ただヒットはこの1枚のみで終了となりました。
昼頃から波気が出てきました 口太グレ35cm

 猫の目のようにグレのタナが変わる中、終わってみれば足摺サイズの30〜36.5cmを10枚取り込んで9枚キープと、コロナのかなり前から続く不調からやっと抜け出したかのような釣果でした。並んで釣っていた3人の釣果には全然及びませんが私にとっては充分すぎる状況です。揃って無口ながら過度に気を遣うことも無く、平穏に安心して釣ることができましたし。

 でもこういう釣れ方だと面白い釣行記にならないし、筆というか指も全く進まないものですねえ。釣行記作成中の私はそう実感しっぱなしでした。

 ● 松尾 matsuo
利用渡船 正丸 出港地 高知県土佐清水市・松尾漁港
時間(当日) 6:25〜15:00
料金 3500円
駐車場 無料 弁当 600円
宿/仮眠所 近隣に民宿あり システム 一部の磯は磯割り制
磯替わり 可能 特記事項
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

 今回は足摺の中心街の民宿に1泊し、前夜の不眠を取り返すかのように10時間近く眠り続けました。おかげで体力もバッチリ回復!前日の釣果もあるので安心して問題の伊佐に挑むことができます。

・伊佐 クロハエ
 平日にもかかわらず15人以上を乗せた岡野渡船は6時10分頃に出港し、まず西磯へ。いくつかの磯を経て西磯の中央部にあるクロハエに至り、東西約70m、南北約40m、高さ25m程のこの磯の北東側(地向き)に私が、南西側(沖向き)に2人の底物師が渡礁しました。
この日は有明の月に導かれるように西磯へ 回収時のクロハエ。でかい!

 最初の釣り座はクロハエ北西面の真ん中付近。足元にある小さな払い出しとその左側からにぶつかってくる緩い流れの関係性がいい感じです。
 とりあえず0のウキを選択し、2ヒロの位置にウキ止めを付けて投入すると数投でウキがスルスルと消し込みましたが、伊佐ではちょっと太すぎるかなと思っていた2号のハリスがアワセる前にハリ上10cmくらいの所から切られていました。私の釣りでしょっちゅう起こるこの「合わせず切れ」、これって何なんでしょうね。見かけ上は傷も無かったし、オモリも打ってなかったし・・・。ハリスそのものの問題か、ハリを結ぶときに道具でしっかり締め上げているのでその時に問題が出ているのか・・・。

 気を取り直して仕掛けを再編して続行すると35cmくらいのサンノジが数枚連発しました。そして開始から30分も経っていない7時4分には払い出しの切れ目付近で34cmの口太グレがヒット。おおっ!伊佐では初めてのまともなサイズのグレではありませんか!ここでもグレは釣れるものなんですね!


クロハエの地向きの釣り座と、生涯初の伊佐のキープサイズグレ!

 その数投後に払い出しと潮流との境目でウキがゆっくり沈んでいったのでアワセを入れると竿は大きく曲がって強い引きが襲ってきます。その突進はサンノジのひとのし程の勢いはない代わりに何度も繰り返されました。それを数回凌ぐと水中の口太グレの姿が見えました。
 「でかっ!」
 それは昨日から見慣れた足摺サイズのグレではなく、45cmを軽く超え、50cmにも迫ろうかというものでした。これには驚いたけど竿は1.75号、ハリスは2号ですし、前日から釣り続けてきた私は切られるわけがないという謎の確信しかありませんでした。そしてこの過剰な自信が謎の行動を取らせてしまったのです。魚に空気も吸わせていない状況で、道糸も充分に巻き取っていない状況で早々にタモを取りに行くという行動を。ふと我に返って愚行に気づいたのは魚が水面近くの磯際に突入し、竿先が天へと跳ね上がった瞬間でした。

・いつもより酷い伊佐
 この大グレのバラシは想像以上に深刻な影響をもたらしました。その直後から一切のアタリが無くなってしまったのです。バラシがどうこうというより潮が止まったことによるものでしょうけど、精神的な影響は大きすぎました。
 それからは遠近深浅どう釣っても、釣り座を動かしてもサシエは全く触られません。グレが全くいない私にとってのいつもの伊佐が戻ってきた・・・というかエサトリさえもいないさらに酷い伊佐に、開始30分ちょっとで移行してしまったのです。

 ブツブツと独り言で嘆きながら釣っていた11時頃、不意に背後から声が掛かってビックリ仰天。振り返るとこの大きな磯の沖向きで釣っている底物の方がそこにいたのです。うわ・・・独り言を聞かれたかも(汗)
 底物でもエサトリもいない状況なのはこちらと同じだそうで、こういう時の釣り人が登山家になるのもまた同じようですね。私もちょっと前に磯をよじ登って沖向きの釣り座の近くまで行ってましたし。
 その底物の方は、このポイントはこの潮では釣れないので大きく山越えして松尾向きの先端でやってみてはという提案をしてくださいました。私はとりあえず空身でそのポイントまで行ってみたものの、荷物を抱えてこの道のりを往復するには気力が足らず、体力も帰りの運転に使う分まで消費してしまうと判断して大移動を見送りました。
釣れない釣り師は今日も登山家に。クロハエ頂上近くからの展望。

・時間との勝負
 地向きのポイントに留まる決断をしてから30分ほどが経過するとずっと止まっていた潮が左向きに流れ始めました。近距離では変化はなかったものの30mちょっと沖にある磯の付近まで遠投すると、潮が引いてハッキリと見えるようになったその磯のハエ根の周辺でウキが消えて27cmの尾長がヒット。時刻は11時48分、実に4時間ぶりのアタリでした。続けて同サイズの尾長がヒットしたところで潮が速度を落としてしまいました。

 沖はそれ以降サッパリでしたが、しばらくすると竿下付近にアタリが戻ってきました。アタリといっても掛かってくるのはことごとく35cm程のサンノジで、無駄に体力ばかり奪われていくけど餌も取られずに気力を奪われ続けるよりは遥かにましです。
 13時ごろになると磯際に大きなアオブダイと赤いナガブダイ、それに種までは確認できなかった緑色のブダイが集まってきて中距離まで出ていくようになりました。サンノジのヒットもさらに多くなり、もう勘弁してくれという思いでいっぱいです。

 もうすぐ14時という頃には潮が朝一と同じ左向きに戻っていて、その流速が上がった瞬間にマキエめがけて浮上する白い尾鰭の魚が見えました。私は即座に0号のウキを通したスルスル仕掛けにして、その時釣り座を構えていた水道の一番右側の釣り座から投入。ウキが沈んでしまわないように注意しながら先打ちのマキエに合わせるとすぐに35cmの口太グレがヒットしてくれました。しかしこの時点ですでに13時43分、片付けの時間を考えると残り時間は僅かです。
 大急ぎで釣果を処置し、大急ぎで打ち返し、何度も妨害してくるサンノジを大急ぎで取り込んで、14時3分に33cmの口太を追加。しかしその先は潮が緩んでグレの浮上が見えなくなり、サンノジも食わなくなって14時25分に終了。荷物を洗って14時50分にやってきた迎えの船に乗り込み、南風で波気が出ていた広大な渡船区を回ってから港に戻りました。

・釣れた理由
 グレも石鯛もみなさんよく釣れていて、グレも石鯛も釣れていなかったのはクロハエだけだった模様です。ただ私はあの酷い状況で3枚もキープできたという達成感が半分、驕りが招いたバラシに対する悔い、怒り、呆れ、高揚など様々な感情が半分という心境で数に関してはむしろ満足していました。船長からはひどく哀れまれましたけどね。伊佐へグレ釣りに行くのはエスケープ以外ではこれで最後。最後に釣れてよかったです。

 今回はなぜ釣れたのか、その答えは松尾で釣っている最中に既に気付いていました。磯の周りにメスのグレがいっぱいいたからだと。
 それはメジャーを貼ったクーラーの蓋には魚体からこぼれた卵が付着していたことで気付かされ、キープした9尾の口太グレの全てから完熟の真子が現れたことで証明されました。クーラーの蓋を見た正丸の船長が釣れるのはほとんどオスばかりなのにと珍しがっていましたが、私にとってはオスがそんなに釣れるというのが未だに信じられないんです。まあどっちにしても美味しいからいいんですけどね。

 とりあえず結果が出たので、磯釣りはこれでまたしばらくお休みです。アシズリエダシャクの飛ぶ季節になったらまた松尾に行こうかな。

今回キープしたグレ達。左向きは松尾、右向きは伊佐の釣果。

 ●足摺岬 (伊佐) ashizurimisaki (isa)
利用渡船 岡野渡船 出港地 高知県土佐清水市・伊佐
時間(当日) 6:00〜14:50
料金 4500円
駐車場 無料 弁当 800円
宿/仮眠所 近隣に民宿あり システム 磯割り制(現在1軒のみ営業)
磯替わり 可能
*データは釣行日のものです。間違いや営業内容の変更があるかもしれませんので、
必ず渡船店にご確認ください。(内容については一切責任を負いません)

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